特許法 第93条(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)
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- 特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
- 2.前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。
- 3.第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二までの規定は、前項の裁定に準用する。
この条文の基本情報
公共の利益のための通常実施権の設定の裁定とは何ですか?
定義公共の利益のための通常実施権の設定の裁定とは、特許法第93条に定められた規定で、「特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めるこ…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第93条(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第93条の条文原文は「特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めるこ…」で始まります。
- 特許法第93条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第93条の前の条は特許法第92条です。
- 特許法第93条の次の条は特許法第94条です。
- 特許法第93条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第93条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第93条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/93
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法93条は、公共の利益のため特に必要なとき、経済産業大臣の裁定により特許発明の通常実施権を強制的に設定できると定める。ただし要件は極めて高く、発動例は事実上ない。
Q · 公共のためなら、他人の特許を強制的に使わせてもらえるの?
原則できるが、要件が極めて高く発動例は事実上ない
特許法93条により、特許発明の実施が公共の利益のため特に必要なときは、実施を望む者がまず特許権者に通常実施権の協議を申し入れ、協議が不成立なら経済産業大臣の裁定を請求できます(1項・2項)。認められれば通常実施権が強制設定されますが、対価の支払が必要で、無償召し上げではありません。ただし「公共の利益のため特に必要」の要件は国民の生命・健康や国家的危機級の必要性を要し、極めて高いため、実際に裁定が下された例は事実上存在しません。
解説
特許は私有財産であり、原則として権利者の許可なく使えば侵害になる。ところが日本の特許法には、その大原則を国の判断で突き破る非常口が用意されている。それが93条だ。ある特許発明の実施が「公共の利益のため特に必要」なとき、その技術を使いたい者は、まず特許権者に通常実施権、つまり使用許可を求めて協議できる。協議が決裂すれば、経済産業大臣に裁定を請求し、国の判断で強制的にライセンスを設定させる道が開く。あなたが必須の医薬や社会インフラ技術を一社の特許に握られて動けないとき、これは交渉の最後のカードになる。ただし要件のハードルは極めて高く、現実に裁定が下された例は事実上存在しない。存在自体が圧力になる、抜かれない刀のような制度だ。
法的な位置づけ
特許法93条は、公共の利益のため特に必要な特許発明について、実施を望む者が特許権者と通常実施権の協議を行い、協議が成立しない場合に経済産業大臣の裁定により通常実施権を設定できる制度を定める規定である。対価の支払を伴う強制実施権の一類型であり、不実施を理由とする83条、利用関係の92条と並ぶ。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.公共の利益の根拠を具体的に整理 その特許発明の実施が「公共の利益のため特に必要」と言える根拠(国民の生命・健康、社会インフラ、国家的危機級の必要性)を、単なる価格・産業振興論に陥らないよう具体的な事実で整理する
- 2.通常実施権の協議を書面で申し入れ、経緯を記録 特許権者・専用実施権者に通常実施権の許諾について正式に協議を申し入れ、日時・内容・相手の回答をすべて書面で記録する。93条は協議の不成立が裁定請求の前提のため、拒否された証拠がないと入口に立てない
- 3.協議決裂なら経済産業大臣に裁定を請求 協議が成立せず、又は協議をすることができないとき、支払う対価の案を添えて経済産業大臣に裁定を請求する。裁定権者は特許庁長官ではなく経済産業大臣である点に注意
- 4.並行して任意交渉・独占禁止法上の主張も検討 93条のハードルは極めて高いため、任意ライセンス交渉を継続しつつ、ライセンス拒絶が独占禁止法上の不公正な取引方法に当たらないかも別経路として検討する
よくある質問 AI による整理
Q1強制実施権とは何ですか?
特許権者の許可がなくても、国の裁定により対価を払って特許発明を実施できる権利です。特許法93条は公共の利益のため特に必要な場合の一類型を定めます。
Q2特許の裁定通常実施権はどこに請求しますか?
特許法93条の場合は経済産業大臣に請求します。不実施の83条や利用関係の92条が特許庁長官の裁定であるのと異なり、政策判断として大臣に引き上げられています。
Q3特許法83条と93条の違いは何ですか?
83条は3年以上の不実施を理由とする裁定で特許庁長官が裁定します。93条は公共の利益のため特に必要な場合で、裁定権者は経済産業大臣です。要件も93条の方が厳格です。
Q4コロナ禍で特許は強制的に開放されましたか?
日本では93条は発動されませんでした。理論上は強制実施権の設定が可能でしたが、要件が極めて高く、実際には任意交渉や備蓄・輸入で対応されました。
Q5TRIPS 協定の強制実施許諾とは何ですか?
TRIPS 協定31条が定める、権利者の許諾なく特許を利用させる国際ルールです。事前協議や適切な補償を条件とし、日本の特許法93条もこの枠組みに整合します。
Q6特許の強制ライセンスに対価は必要ですか?
必要です。93条の裁定でも通常実施権の設定には相当の対価が定められ、無償ではありません。対価に不服がある場合は91条の2で訴えを提起できます。
Q7医薬品の特許は公共のために自由に使えますか?
自由には使えません。93条の裁定には「公共の利益のため特に必要」という高い要件と協議前置が求められ、価格が高いだけでは認められません。
Q8特許法93条の裁定は実際に使われたことがありますか?
現行特許法制定以来、93条に基づく裁定が実際に下された例は事実上ありません。制度は交渉上の圧力材料として機能しているのが実態です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1強制実施権って、公共のためなら他人の特許を勝手に使えるってことですか?
「勝手に」ではない。まず特許権者に協議を申し入れ、決裂して初めて経済産業大臣に裁定を請求でき、認められても対価の支払いが必要だ(93条1項・2項)。無償でも即時でもない。実務のポイント:そもそも93条の裁定が実際に下された例は事実上なく、制度は数十年ほぼ眠ったまま。弁護士や弁理士は「実際に使える武器」ではなく「交渉の脅し材料」として扱うのが実態だ
Q2「公共の利益のため特に必要」って、薬が高すぎるとかでも認められますか?
価格が高い、競合に勝ちたい、産業を振興したい程度では到底足りない。国民の生命・健康に直結する、あるいは国家的な危機級の必要性が求められる極めて高いハードルだ(93条1項)。実務のポイント:この要件が厳しすぎるため、コロナ禍ですら発動されなかった。日本は強制実施権より、権利者との任意交渉や備蓄・輸入で危機に対応してきた歴史がある
Q3自分の特許にいきなり裁定請求されたら、もう使われるのを止められないんですか?
止められる余地は大きい。準用される84条で答弁書を提出し、「公共の利益のため特に必要」という要件を争える。実務上この要件を満たすと判断された例はほぼない(93条)。実務のポイント:請求された側の定石は、要件を争いつつ、長期紛争を避けるため自社に有利な条件で任意ライセンスに持ち込むこと。裁定まで行くより、その手前で決着させる方が双方の利益になる
間違えやすい点 AI による整理
- 「公共の利益のためなら、高すぎる薬の特許を国が取り上げてくれる」と考える人がいるが、問いの立て方が違う。93条は特許を奪うのではなく、対価を払って使う権利を強制設定する制度だ。権利者の財産権は対価という形で必ず補償される。無償で召し上げる仕組みではない
- 強制実施権という制度の存在は知られていても、そのハードルの高さは知られていない。「公共の利益のため特に必要」という要件は、単に便利・安価・産業振興程度では到底足りず、国民の生命・健康や国家的危機級の必要性が求められる。だからこそ数十年、発動例が事実上ない
- 「裁定は特許庁が出す」と思われがちだが、93条の裁定権者は経済産業大臣だ。特許庁長官ではない。不実施を理由とする83条や利用関係の92条が特許庁長官の裁定なのに対し、公共の利益の93条だけは大臣レベルの政策判断に引き上げられている。この差は、制度の重さの違いを物語る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 発動理由 | 93条:公共の利益のため特に必要 | 83条:3年以上の不実施 92条:他人の特許との利用・抵触関係 |
| 裁定権者 | 経済産業大臣(政策判断レベル) | 特許庁長官 特許庁長官 |
| 要件の高さ | 極めて高い(生命・健康・国家的危機級) | 中程度(不実施の事実で足りる) 中程度(利用関係の存在) |
| 実務での発動 | 事実上ゼロ(圧力材料として機能) | 極めて稀 稀 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は国家緊急事態・その他重大緊急事態や公益的非営利実施等を理由に主務官庁が強制授権を行える。協議前置と補償を伴う点で日本と類似
韓国も特許庁長官への裁定請求により公共の利益等を理由とする通常実施権を認める。発動が極めて限定的である点も日本と近い
ドイツは連邦特許裁判所が公共の利益を理由に強制実施権を付与しうる。ラルテグラビル事件など実際に争われた例がある点で日本より運用実績がある
米国は正式な強制実施権制度を持たず、政府使用(補償付き)や Bayh-Dole の march-in rights が機能的代替。march-in は発動例が事実上ない点で日本と共通
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- ジェネリックメーカーとして、ある必須医薬の特許に阻まれて国内供給に踏み込めない。価格高騰で患者が薬を買えない状況が続く。任意交渉が決裂した先に、93条の協議と裁定という最終ルートがあると知っているかどうかで、交渉での立ち位置がまるで変わる
- もし国家的な感染症危機で、治療薬の特許が一社に独占され増産が間に合わなかったら、国は何ができるのか。理論上は93条で強制的にライセンスを設定できる。だが現実には発動されず、備蓄や輸入で凌いできた。あと数週間で在庫が尽きるという局面で、この条文は動くのか動かないのか
- あなたが大学発スタートアップで画期的な環境浄化技術の特許を持っている。突然、競合から「公共の利益」を理由に裁定請求の通知が届く。慌てる前に、その要件のハードルの高さを知っておくべきだ
- 電力や半導体の社会インフラに不可欠な特許のライセンス交渉が決裂し、設備更新が止まりかけた。発注側のあなたは、強制ライセンスを「検討している」と示すべきか、それとも条件を譲るべきか。判断の前提に、この制度が実際どれだけ機能するかの理解が要る
取るべき行動
被害を受けた側:1. その特許の実施が「公共の利益のため特に必要」と言える根拠(国民の生命・健康、社会インフラ、国家的危機級の必要性)を具体的に整理する2. まず特許権者・専用実施権者に通常実施権の協議を正式に申し入れ、日時・内容・相手の回答をすべて書面で記録する3. 協議が決裂または無回答なら、経済産業大臣に裁定を請求する(支払う対価の案も準備) 4. ハードルは極めて高いため、並行して任意ライセンス交渉や独占禁止法上の主張も検討する
訴えられた側:1. 裁定請求の通知が来たら、準用される84条に基づき答弁書で「公共の利益のため特に必要」という要件を正面から争う2. 自社が既に十分供給している、代替技術が存在する等、必要性を否定する事実を提示する3. 実務上は裁定が下りる例がほぼないが、長期化を避けるなら有利な条件での任意ライセンスに誘導するのが定石4. 裁定が出た場合でも、対価の額には91条の2で不服を申し立てられる
時効(請求できる期限):本条自体に出訴期限や時効はない。裁定は協議の不成立が前提となるため、まず協議の申入れが起点となる。裁定で定められた対価に不服がある場合は、裁定の謄本送達後の一定期間内に訴えを提起できる(特許法91条の2、出訴期間は最新の条文をご確認ください)
学説
通説:93条の強制実施権は、書面による協議前置と『公共の利益のため特に必要』という厳格要件を満たして初めて発動しうるが、この要件は国民の生命・健康や国家的危機級の必要性を要すると解され、単なる価格・産業政策上の必要では足りない。ゆえに制度は謙抑的に運用され、発動例は事実上存在しない。
改正沿革 AI による整理
- 平成11年(1999年)中央省庁等改革関連、平成13年(2001年)施行 中央省庁再編に伴い、裁定権者の名称が『通商産業大臣』から『経済産業大臣』へ変更された。条文の実質的枠組みは現行特許法(昭和34年)制定時から維持されている。改正の全件数は人的検証が必要
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行特許法(昭和34年法律第121号)制定時に、公共の利益のための裁定通常実施権として規定。協議前置と裁定制度の枠組みが確立
- 2.平成11年(1999年)中央省庁等改革関連、平成13年(2001年)施行 改正:中央省庁再編に伴い裁定権者の名称が『通商産業大臣』から『経済産業大臣』へ変更。実質的な要件・枠組みは維持
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