特許法 第64条の3
クイックジャンプ
- 出願公開の請求をしようとする特許出願人は、次に掲げる事項を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない。
- 一請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
- 二出願公開の請求に係る特許出願の表示
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第64条の3は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第64条の3の条文原文は「出願公開の請求をしようとする特許出願人は、次に掲げる事項を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない。」で始まります。
- 特許法第64条の3は第三章の二に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第64条の3の前の条は特許法第64条の2です。
- 特許法第64条の3の次の条は特許法第65条です。
- 特許法第64条の3には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第64条の3 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第64条の3(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/64_3
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法64条の3は、出願公開の請求をする特許出願人が、請求人の氏名・住所と対象出願の表示を記載した請求書を特許庁長官に提出すべきことを定める。
Q · 特許を早く公開してもらうには、何をどこに出せばいいの?
氏名・住所と対象出願を書いた請求書を特許庁長官に出せば早期公開できます
特許法64条の3により、出願公開の請求をしようとする特許出願人は、請求人の氏名または名称および住所または居所と、請求に係る特許出願の表示を記載した請求書を特許庁長官に提出します。これにより、自動公開である出願から1年6月を待たずに早期公開を起動できます。目的は、第65条の補償金請求権を早く発生させ、模倣者を牽制することにあります。ただし、いったん請求すると撤回はできません(64条の2第2項)ので、技術内容を秘匿すべき発明では慎重な判断が必要です。
解説
特許を出願すると、原則として一年六月後に自動的に内容が公開される。だが、それを待たずに早く公開してほしいと請求できる制度があり(特許法64条の2)、その請求の入口がこの64条の3である。請求人の氏名・住所と、どの出願についての請求かを書いた請求書を特許庁長官に出す。たったこれだけの手続だ。だが、この一枚の請求書が起動するのは、第65条の補償金請求権という牽制力である。出願が公開されれば、あなたの発明を勝手に使う相手に警告書を送り、特許が成立した後に、公開から成立までの実施分について補償金を請求できる。つまり、競合があなたのアイデアを真似しそうな気配があるとき、自動公開を待たずにこの請求書を出すことで、補償金の時計を自分の手で早く回し始められる。書類の中身は事務的だが、出すタイミングが戦略そのものだ。
法的な位置づけ
特許法64条の3は、出願公開の請求における請求書の記載事項を定める手続規定である。出願公開の請求をしようとする特許出願人は、請求人の氏名または名称および住所または居所と、請求に係る特許出願の表示を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない。これは自動公開の特則として、早期公開を起動する手続的入口に位置づけられる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.自分の出願が公開済みかを確認する まず対象の特許出願が既に出願公開されているか(出願から1年6月経過・公開公報発行済みか)を確認する。未公開で、かつ模倣の兆候があるなら早期公開の請求を検討する
- 2.出願公開請求書を作成する 特許法64条の3に従い、①請求人の氏名または名称および住所または居所、②請求に係る特許出願の表示(出願番号等)を記載した請求書を作成する。記載事項はこの2点のみで、発明内容の追記は不要
- 3.特許庁長官に提出し、撤回不可を確認する 請求書を特許庁長官に提出する。提出前に、この請求は撤回できない(64条の2第2項)ことを最終確認する。秘匿すべき技術が含まれていないか、公開の是非を経営判断として固める
- 4.公開後、模倣者へ警告書を送付する 公開特許公報が発行されたら、模倣している相手に内容証明郵便で警告書を送り、補償金請求権(65条)の前提となる警告の事実を証拠として残す。相手の実施数量・期間も記録する
- 5.出願審査請求を並行して急ぐ 補償金は特許権の設定登録後でなければ請求できないため、早期公開と並行して出願審査請求(48条の3、原則出願から3年以内)を行い、特許成立を急ぐ。公開だけ先行させても特許にならなければ補償金はゼロ
よくある質問 AI による整理
Q1出願公開の請求とは何ですか?
特許出願人が、自動公開(出願から1年6月)を待たずに出願内容を早く公開してもらうよう特許庁長官に求める手続です。根拠は特許法64条の2で、その請求書の記載事項を64条の3が定めます。
Q2出願公開請求書には何を書きますか?
特許法64条の3により、①請求人の氏名または名称および住所または居所、②請求に係る特許出願の表示、の2点を記載します。書式は事務的で、実質的な発明内容を書く欄はありません。
Q3特許の早期公開に費用はかかりますか?
出願公開の請求自体に手数料はかかりません。ただし特許を取得して補償金請求へ進むには、別途、出願審査請求料や特許料などが必要になります。
Q4出願公開の請求は取り下げできますか?
できません。特許法64条の2第2項により、いったんした出願公開の請求は取り下げることができません。秘匿したい技術では慎重に判断すべきです。
Q5出願公開の請求は誰ができますか?
特許出願人ができます。第三者は請求できません。共同出願の場合は全員での対応が基本となり、代理人(弁理士)を通じて提出することも一般的です。
Q6出願公開の請求からどのくらいで公開されますか?
請求後、特許庁の準備を経て公開公報(公開特許公報)が発行されます。自動公開の1年6月を待つよりも大幅に前倒しでき、その分だけ補償金の対象期間を前に延ばせます。
Q7出願公開されると誰でも内容を閲覧できますか?
はい。公開特許公報として発明の内容が公示され、競合を含む誰でも読めるようになります。撤回もできないため、公開は自己開示のリスクと表裏一体です。
Q8実用新案や意匠にも早期公開制度はありますか?
実用新案は登録主義で早期に登録・公開されるため出願公開請求はなく、意匠には出願公開制度自体がありません。早期公開の請求は特許出願に固有の制度です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1早く公開請求したら、競合に手の内を全部見せることになりませんか?
その通りで、それが最大のジレンマです。公開すれば内容は誰でも読めるようになり、しかも公開請求は撤回できません(64条の2第2項)。だから秘密にし続けたい技術には向きません。実務のポイント:早期公開が効くのは『どうせ製品で世に出る・もう真似される』技術で、補償金請求権(65条)を一日でも早く起動したい場合。逆に製造ノウハウのように隠せる技術は、特許出願自体をせず営業秘密で守る方が賢いことも多い。公開するかどうかは、その発明が『隠せる種類か』で先に切り分ける
Q2公開請求すれば、すぐに補償金がもらえるんですか?
もらえません。公開はあくまで補償金請求権の前提を作るだけで、実際に請求できるのは特許権の設定登録後です(65条)。しかも公開後に相手へ警告するか、相手が悪意で実施していたことが必要。実務のポイント:早期公開だけして審査請求を後回しにする人がいますが、これは片手落ち。補償金は特許成立が条件なので、早期公開と出願審査請求(48条の3、原則出願から3年以内)はセットで急ぐべき。公開だけ先行させても、特許にならなければ補償金はゼロになる
間違えやすい点 AI による整理
- 『公開請求の書類さえ正しく書けば手続は終わり』と問いを立てがちだが、本当の問いは別にある。なぜ、何のために早く公開するのか。公開請求は補償金請求権(65条)を起動するための手段であって、目的を見失うと、ただ自分の手の内を競合に早く見せただけで終わる
- 『どうせ一年半経てば勝手に公開されるのだから、わざわざ請求する意味はない』と思われがちだが、逆だ。その半年から一年の前倒しが、補償金の対象期間を前に延ばす。模倣が始まりそうな局面では、その数か月分が数百万円の差になりうる
- 公開されると内容が世に出ることは皆知っているが、その『取り消せなさ』の深刻さは見落とされる。一度公開請求をすれば撤回できない(特許法64条の2第2項)。出してから『やはり秘密にしておけばよかった』は通用しない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 性質・役割 | 64条の3:出願公開請求の請求書記載事項(手続) | 64条:出願公開の原則(自動公開・1年6月) 65条:出願公開の効果(補償金請求権) |
| 発動のきっかけ | 出願人による能動的な請求 | 出願から1年6月の経過により自動発生 出願公開+警告(または相手の悪意) |
| 撤回の可否 | 撤回不可(64条の2第2項) | そもそも請求ではない(時の経過) 権利行使は特許権設定登録後に限る |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も発明特許は出願から18か月で公開する自動公開を採り、出願人は早期公開を請求できる。早期公開により暫定的な保護を早く得られる点で日本と同趣旨
韓国も出願から1年6月での出願公開を原則としつつ、出願人による早期公開請求を認める。公開後の補償金請求(제65조)の構造も日本に類似する
ドイツも出願から18か月で公開(Offenlegungsschrift)し、暫定的保護と補償(§ 33 Entschädigung)を認める。早期公開の運用は制度趣旨として近い
米国も出願から18か月で公開し、出願人は早期公開(early publication)を請求できる。公開後の暫定的権利(provisional rights, § 154(d))は日本の補償金請求権に対応する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 展示会で発表した直後、競合があなたの試作品とそっくりな製品を準備しているとの噂が入った。特許はまだ審査中。自動公開まであと半年待つか、今すぐ64条の3で公開請求して警告書を送れる状態に持ち込むか。この数週間の判断が、後で取り戻せる補償金の額を左右する
- 資金調達のピッチで、投資家から『その技術、もう公開されてる?模倣されたらどうするの』と問われたら? 出願中で非公開のままだと説得力が弱い。64条の3で早期公開を請求し、補償金請求権を起動済みだと示せれば、防御の絵が一枚増える
- 大学の研究室発のスタートアップ。論文発表のスケジュールと特許出願公開のタイミングがずれて、先に内容が世に出てしまう不安がある。早期公開請求で、公開の主導権を自分の側に握る
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず自分の特許出願が公開済みか未公開かを確認。未公開なら、64条の3の請求書(請求人の氏名・住所、対象出願の表示)を特許庁長官に提出し、早期公開を起動する2. 公開後すぐ、模倣している相手に内容証明で警告書を送り、補償金請求権(65条)の通知を残す3. 相手の実施数量・期間の証拠を記録4. 特許成立後に、警告から成立までの実施分について補償金を請求する。請求は特許成立が前提なので、審査請求も並行して急ぐ
訴えられた側:1. 警告書が来たら、まず相手の特許が本当に公開済みか、警告内容が具体的か(どの請求項のどの構成か)を確認2. 自社製品が本当にその技術的範囲に入るか、弁理士に侵害鑑定を依頼3. 入らないなら堂々と反論、入る恐れがあれば設計変更や先使用権(特許法79条)の主張を検討4. 補償金は特許が成立して初めて請求可能なので、相手の出願が拒絶される可能性も見て対応の緩急を決める
時効(請求できる期限):補償金請求権は、特許権の設定登録後でなければ行使できない(特許法65条)。警告(または相手の悪意)が補償金の起算要件。請求権自体は特許権設定登録後、消滅時効(民法166条、原則5年)に服する点に注意(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:64条の3は出願公開請求の形式的要件を定める手続規定であり、実体的根拠は64条の2にある。早期公開は補償金請求権(65条)を早期起動する手段であって、撤回不可(64条の2第2項)である点から、秘匿性の高い技術には慎重な判断が求められると解される
改正沿革 AI による整理
- 平成11年(1999年) 出願公開の請求制度の新設に伴い本条を新設。出願人が自動公開(一年六月)を待たずに公開を請求でき、補償金請求権を早期に起動する道を開いた。本条はその請求手続、すなわち請求書の記載事項を定める
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 新設:出願公開の請求制度の整備に伴い本条を新設。出願人が自動公開(1年6月)を待たずに公開を請求でき、補償金請求権を早期に起動する道を開いた。本条はその請求書の記載事項を定める
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める