特許法 第88条(対価の供託)
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- 第八十六条第二項第二号の対価を支払うべき者は、次に掲げる場合は、その対価を供託しなければならない。
- 一対価の弁済の提供をした場合において、その対価を受けるべき者がその受領を拒んだとき。
- 二その対価を受けるべき者がこれを受領することができないとき。
- 三その対価について第百八十三条第一項の訴えの提起があつたとき。
- 四当該特許権又は専用実施権を目的とする質権が設定されているとき。ただし、質権者の承諾を得たときは、この限りでない。
この条文の基本情報
対価の供託とは何ですか?
定義対価の供託とは、特許法第88条に定められた規定で、「第八十六条第二項第二号の対価を支払うべき者は、次に掲げる場合は、その対価を供託しなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第88条(対価の供託)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第88条の条文原文は「第八十六条第二項第二号の対価を支払うべき者は、次に掲げる場合は、その対価を供託しなければならない。」で始まります。
- 特許法第88条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第88条の前の条は特許法第87条です。
- 特許法第88条の次の条は特許法第89条です。
- 特許法第88条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第88条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第88条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/88
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法88条は、裁定対価を支払うべき者が受領拒否・受領不能・第183条の訴え提起・質権設定の場合に対価を供託しなければならないと定める。供託を怠れば第89条で裁定が失効する。
Q · 裁定で特許を使えるようになったのに、相手が対価を受け取ってくれない。放っておいていい?
いいえ。受領拒否などの場合は供託が必要、怠ると実施権が失効します
よくありません。特許法88条により、対価の受領を拒まれたとき、相手が受領できないとき、対価をめぐり第183条の訴えが提起されたとき、又は特許に質権が設定されているときは、対価を供託所(法務局)へ供託しなければなりません。供託を怠ると第89条によって裁定そのものが失効し、せっかく得た通常実施権が消滅します。相手が受け取らないなら払わなくてよい、ではなく、受け取らないからこそ供託する義務が生じる点に注意が必要です。
解説
他人の特許を、相手の同意なしに合法的に使える。そんな制度が日本にもある。特許庁の裁定による通常実施権だ。あなたがこの裁定を勝ち取り、対価を払う側になったとする。ところが特許権者は怒って受け取りを拒否し、対価が安すぎると裁判(183条)まで起こしてきた。ここであなたが「相手が受け取らないなら払わなくていい」と放置すると、致命傷になる。特許法89条は、対価を支払わず供託もしない者の裁定を失効させるからだ。せっかく得た実施権が消え、設備投資も事業計画も水の泡になる。88条は、相手が受領を拒んだとき、受領できないとき、対価をめぐる訴訟があるとき、特許に質権が付いているときに、供託所(法務局)へ対価を預ければ支払ったのと同じ効果を得られると定める。供託は面倒な事務ではない。あなたの実施権を生かし続ける生命線だ。
法的な位置づけ
特許法88条は裁定対価の供託義務を定める規定であり、第86条第2項第2号の対価を支払うべき者が、受領拒否・受領不能・第183条の訴えの係属・質権の設定という一定の場合に、対価を供託所へ供託しなければならない旨を規定する。民法494条の弁済供託の特則として機能する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.まず対価の弁済の提供を行う 裁定で定められた対価を、支払時期までに現実に提供する。相手が受領するならここで完了。受領を拒まれた場合に初めて供託の要否を検討する段階に進む
- 2.供託原因と質権の有無を確認する 受領拒否・受領不能・第183条の訴えの係属・特許への質権設定のいずれに当たるかを特定する。質権がある場合は質権者の承諾を取れば供託を省いて直接支払える(第4号但書)
- 3.管轄供託所へ供託する 債務履行地を管轄する法務局(供託所)へ、裁定の事件番号・当事者・対価である旨・供託原因を明記した供託書で弁済供託する。金額と供託原因の記載を誤らないこと
- 4.支払時期までに供託を完了させる 第183条の訴えが係属中でも判決を待たず、裁定で定められた支払時期までに供託を完了する。期限を過ぎると特許法89条で裁定が失効し、実施権が消滅する
よくある質問 AI による整理
Q1対価の供託とは何ですか?
裁定対価を相手に直接払えないとき、法務局(供託所)へ預けることで支払ったのと同じ効果を得る制度です。特許法88条が根拠で、弁済供託(民法494条)の特則にあたります。
Q2特許の裁定通常実施権とは?
特許権者の同意がなくても、経済産業大臣の裁定により他人の特許を使える通常実施権です。不実施などが要件で、その代償として対価の支払義務が生じます(特許法83条以下)。
Q3供託はどこの供託所にすればいいですか?
原則として債務履行地を管轄する法務局・地方法務局(供託所)に供託します。管轄を誤ると受理されないため、事前に管轄供託所を確認する必要があります。
Q4供託の期限はいつまでですか?
裁定で定められた対価の支払時期までに供託を済ませる必要があります。これを過ぎると特許法89条により裁定が失効し、実施権そのものが消えます。
Q5供託書には何を書けばいいですか?
裁定の事件番号、当事者、対価である旨と金額、供託原因(受領拒否・受領不能など)を正確に記載します。記載不備は受理拒否や期限徒過の原因になります。
Q6特許法89条とは何ですか?
対価を支払わず供託もしない者について、その裁定が効力を失うと定める規定です。88条の供託義務を怠ると、この89条により実施権が消滅します。
Q7対価の額に不服がある場合はどうすればいいですか?
対価を受けるべき者・支払うべき者は、裁定謄本の送達から一定期間内に第183条の訴えを提起して額を争えます。係属中も支払義務者は供託で実施権を維持します。
Q8弁済供託と特許法88条の供託の違いは?
基本構造は民法494条の弁済供託と同じですが、88条は裁定対価に特化し、質権設定時の供託(第4号)など特許固有の場面を明文で定めている点が異なります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1相手が対価を受け取らないなら、こっちは払わなくて済むんじゃないですか?
逆です。受領を拒まれたときこそ供託義務が生じます(88条1号)。供託しなければ特許法89条で裁定が失効し、勝ち取った実施権が消えます。実務のポイント:受領拒否は、相手が対価額に不満で183条の訴えを準備しているサインのことが多い。拒否=放置していいと誤解した実施権者が失権する、これが典型的な落とし穴です
Q2供託したお金は、あとで取り戻せますか?
条件付きで可能です。錯誤や事情変更があれば取戻し請求できますが、特許権者が供託を受諾したり供託有効が確定すると取り戻せなくなります。実務のポイント:183条の訴訟で対価が減額されれば差額が戻る余地はあるものの、その清算は供託の還付・取戻し手続を正確に踏まないと滞る。供託して終わりではなく、出口の手続まで設計しておく必要がある
Q3特許に銀行の質権が付いていると、なぜ特許権者に直接払えないんですか?
質権者が対価に物上代位の優先権を持つからです(88条4号、民法304条・350条)。直接払うと質権者にもう一度払うリスクを負います。実務のポイント:第4号の但書で質権者の承諾さえ取れば直接払えます。承諾書一枚で供託手続をまるごと省ける。実務では、誰が対価の最終的な受取人なのかを支払い前に必ず確認するのが鉄則です
間違えやすい点 AI による整理
- 相手が受領を拒否したのだから、自分の支払義務は消えるか猶予されると考えがちだ。実際は逆で、拒否されたときこそ供託する義務が生じる。供託を怠れば特許法89条であなたの裁定が失効する。拒否は相手の問題ではなく、あなたの宿題になる
- 供託が必要なことは知っていても、その期限を甘く見ている人が多い。供託は裁定で定められた支払時期までに済ませなければならず、これを過ぎると実施権そのものが消える。単なる遅延損害金の問題ではなく、権利消滅の問題だという深刻さが見落とされている
- あなたから見れば「特許権者に払う」話だが、特許に質権が設定されていれば、法律から見れば対価は質権者(銀行など)の取り分でもある。この視点の差を知らずに特許権者へ直接払うと、二重払いのリスクを負う。第4号はそのために供託を要求している
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 第88条:一定の場合に対価の供託を義務づける | 第89条:対価を支払わず供託もしない場合に裁定が失効する 第183条:対価の額に不服がある場合の訴えを定める |
| 誰の行為か | 対価を支払うべき者(実施権者)の供託行為 | 支払・供託を怠った者への効果(失権) 対価を受ける者・支払う者いずれからの提訴 |
| 怠ったときの結果 | 供託を怠ると第89条で裁定が失効 | 失権そのものを定める終着点 提訴しなければ裁定額が確定 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も強制授権(compulsory license)に対価を要し、受領拒否時は民法の弁済提存で処理する点が日本と類似する。
韓国も재정による통상실시권に対価を伴い、受領拒否時は변제공탁(弁済供託)による点で日本と近い構造をもつ。
ドイツは強制実施権(Zwangslizenz)を裁判所が付与し、対価の受領拒否時は BGB § 372の Hinterlegung(供託)で処理する。
米国は一般的な特許強制実施制度を持たず、政府使用に対する補償という形で類似の対価問題が現れる点が大陸法系と大きく異なる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたは自社製品に不可欠な他社特許を、裁定で使えるようになった。対価を払おうとしたら、相手は受け取りを拒否。ここで供託しなければ、特許法89条で裁定は失効し、製造ラインごと止まる。受領拒否は相手の嫌がらせではなく、あなたへの時限爆弾だ
- もし特許権者が対価を不服として183条の訴えを起こし、裁判が長期化したらどうなる? 判決を待つ間も、あなたは裁定額を供託し続けることで実施権を維持できる。供託を止めた瞬間、訴訟の勝敗を待たずに権利が消える
- あなたの銀行が、融資先の特許に質権を持っている。その特許に裁定対価が発生したら、実施権者は銀行の承諾なしに勝手に払えない。対価は供託され、銀行が物上代位で押さえる
- 受領拒否された対価の供託期限まで、あと数日。供託書には裁定の事件番号と対価である旨を正確に書かないと受理されない。書式の不備で期限を越えれば、裁定失効という最悪の結果が待つ
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず裁定で定められた対価を現実に提供する(弁済の提供) 2. 相手が受領を拒否、または受領不能なら、特許に質権がないか確認し、ある場合は質権者の承諾を取るか供託する3. 管轄の法務局(供託所)へ、裁定の事件番号と裁定対価の弁済供託である旨を明記して供託4. 支払時期を過ぎると特許法89条で裁定が失効するため、訴訟(183条)が係属中でも待たずに供託を済ませる
訴えられた側:1. 特許権者として対価額に不服なら、裁定謄本の送達から6月以内に特許法183条の訴えを提起し増額を求める2. その間に実施権者が供託しても、争う権利は失われず、供託金は係争の担保になる3. 質権者(銀行等)なら対価への物上代位を主張し、供託金の還付請求で回収する4. 安易に承諾書を出すと直接払いを許し優先権を失うため、承諾は慎重に判断する
時効(請求できる期限):供託は裁定で定められた対価の支払時期までに行う必要があり、怠ると特許法89条により裁定が失効する。対価額を争う第183条の訴えは、裁定謄本の送達があつた日から6月以内に提起しなければならない(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:特許法88条の供託は民法494条の弁済供託の特則と解され、受領拒否・受領不能に加え、対価をめぐる訴訟の係属や質権設定という特許固有の場面を明文で供託原因としたものと理解される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行特許法(昭和34年法律第121号)の制定に伴い、裁定通常実施権の対価について供託義務を定める規定として置かれた。
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