特許法 第95条(質権)
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特許権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該特許発明の実施をすることができない。
この条文の基本情報
質権とは何ですか?
定義質権とは、特許法第95条に定められた規定で、「特許権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該特許発明の実施をすることができない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第95条(質権)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第95条の条文原文は「特許権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該特許発明の実施をすることができない。」で始まります。
- 特許法第95条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第95条の前の条は特許法第94条です。
- 特許法第95条の次の条は特許法第96条です。
- 特許法第95条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第95条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第95条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/95
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法95条は、特許権等に質権を設定しても、質権者は契約で別段の定めをしない限り当該特許発明を実施できないと定める。実施権は特許権者に残り、質権者は処分価値のみ押さえる。
Q · 特許を担保にお金を借りたら、貸した相手がその特許を使い始めるのでは?
いいえ。契約で特に定めない限り質権者は実施できません。
特許法95条により、特許権・専用実施権・通常実施権に質権を設定しても、質権者は契約で別段の定めをした場合を除き、当該特許発明を実施できません。実施権能は担保に供した特許権者の側に留保され、質権者に与えられるのは、債務不履行時に特許を換価して優先弁済を受ける処分価値だけです。つまり特許を担保に差し出しながら、その特許で製品を作り事業を回し続けられます。逆に契約書に「質権者も実施できる」旨の一文が入っていれば極めて異例であり、事業の生命線を相手に渡す危険な条項です。
解説
資金繰りに詰まったスタートアップが、唯一の資産である特許を担保に銀行から融資を受ける。ここで多くの経営者が身構えるのは「担保に取られたら、貸し手が自分の発明を使い始めるのではないか」という不安だ。特許法95条はその恐れを正面から否定する。質権を設定しても、質権者(お金を貸して担保を取った側)は、契約で別段の定めをしない限り、その特許発明を実施できない。つまりあなたは特許を担保に差し出しながら、その特許で製品を作り、事業を回し続けられる。担保とは「使わせない代わりに価値を凍結する」仕組みではなく、「所有と実施はあなたに残したまま、債権回収の保険として処分価値だけを押さえる」仕組みなのだ。逆に言えば、契約書に「質権者も実施できる」という一文が紛れていれば、それは極めて異例であり、あなたの事業の生命線を相手に渡す危険な条項だと気付かなければならない。
法的な位置づけ
特許法95条は、特許権・専用実施権・通常実施権を目的とする質権における質権者の権能を制限する規定である。質権者は、契約で別段の定めをした場合を除き、担保に取った特許発明を自ら実施することができない。実施権能は設定者たる特許権者に留保され、質権者には換価による優先弁済権のみが帰属する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.契約書の質権者実施条項を真っ先に確認 契約書は本文より先に「質権者の実施に関する条項」を確認する。別段の定めがなければ95条どおり質権者は実施できず、あなたは特許を使い続けられる
- 2.「質権者も実施できる」条項があれば削除を交渉 貸し手の雛形に別段の定め(質権者の実施可)が紛れていれば削除を申し入れる。ここが事業継続の生命線であり、標準の95条に戻すことで中核技術の相手への開放を防ぐ
- 3.設定登録(98条)のタイミングを融資実行と合わせる 質権は特許原簿への登録が効力発生要件のため、融資実行と登録を同時に押さえる。登録前は無担保状態であり、費用と順序を事前に合意しておく
- 4.物上代位と返済不能リスクを織り込む 特許がライセンス料を生む場合は物上代位(96条)を想定し、返済計画に無理があれば実行(競売)で特許を失うシナリオまで視野に入れて契約に臨む
よくある質問 AI による整理
Q1特許権の質権とは何ですか?
特許権・専用実施権・通常実施権を担保として差し入れ、債務不履行時に換価・優先弁済を受けられるようにする担保権です。特許法95条・96条・98条が規律します。
Q2特許を担保に融資を受けるメリットは何ですか?
株式を希薄化させずにデット(融資)で資金調達できます。特許法95条により質権者は実施できないため、担保に出しながら自社で特許を使い事業を継続できます。
Q3物上代位とは何ですか?
担保物が生む対価やライセンス料に質権の効力が及ぶ制度です。特許法96条が定め、質権者はロイヤルティ等を差し押さえて優先弁済を受けられます。
Q4専用実施権や通常実施権にも質権を設定できますか?
できます。特許法95条は特許権だけでなく専用実施権(77条)・通常実施権(78条)も質権の対象と明記しています。ライセンスを受ける権利自体が担保になります。
Q5質権者が特許発明を実施できる場合はありますか?
契約で別段の定めをした場合のみ実施できます(95条但書)。貸し手の雛形にこの一文が紛れていると事業の中核技術を相手に開放することになるため要注意です。
Q6特許の質権と抵当権はどう違いますか?
抵当権の登記は対抗要件ですが、特許の質権は特許原簿への登録が効力発生要件(98条)です。登録前の質権者は無担保の一般債権者にすぎません。
Q7被担保債権が時効になると特許の質権はどうなりますか?
付従性により質権も消滅します。債権は権利行使を知った時から5年、または権利行使できる時から10年で時効消滅します(民法166条)。
Q8スタートアップが特許担保融資を使うのはどんな時ですか?
唯一の資産が特許で、量産投資やブリッジ資金が必要な場面です。エクイティに絞ると創業者持分を手放しますが、95条により特許を使い続けながら調達できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1特許を担保にお金を借りたら、貸した側がその特許で勝手に商売を始めたりしませんか?
始められません。特許法95条は、質権者(お金を貸して担保を取った側)は契約で別段の定めをしない限りその特許発明を実施できないと定めています。あなたは担保に出しながら、これまで通り製品を作り売り続けられる。実務のポイント:貸し手の雛形に、ごくまれに「質権者も実施できる」条項が紛れていることがある。これは事実上あなたの事業を相手に開放する危険な一文。署名前に有無を必ず確認し、あれば削除を求める
Q2返済できなくなったら、担保の特許はどうなるんですか?
質権者は担保権を実行し、特許権を競売にかけて換価、その代金から優先的に弁済を受けます。落札した第三者が新たな特許権者になり、あなたは特許を失います。実務のポイント:実行前に弁済の猶予や任意売却での残債圧縮を交渉できる余地は大きい。特許は競売だと買い手が限られ安く叩かれがちで、貸し手にも任意売却に応じる動機がある。実行通知が来ても諦めず交渉する
Q3特許を担保に入れるのに、特許庁に何か手続きは要りますか?
必要です。特許法98条1項3号により、質権の設定は特許原簿への登録が効力発生要件です。契約書を交わすだけでは質権は発生せず、登録して初めて正式な担保になります。実務のポイント:登録が効力発生要件である点が、不動産抵当(登記は対抗要件)と決定的に違う。登録前の質権者は無担保の一般債権者にすぎない。貸し手側は融資実行と登録を同時に押さえないと、借り手に二重設定される危険がある
間違えやすい点 AI による整理
- 「特許を担保に取られたら、相手がその発明を使い始める」と多くの経営者が身構えるが、95条は逆を定める。質権者は契約で別段の定めをしない限り実施できない。実施し続けるのはあなたの側であり、これが特許担保融資の最大の利点だ
- 「特許を担保に入れるには、特許を相手に引き渡さなければならない」と思い込んでいる人がいるが、その問いの立て方自体が誤っている。動産質と違い、特許の質権は特許原簿への登録(98条)で効力を生じ、物理的な引渡しは存在しない。特許権者は手元で使い続けたまま担保に供せる
- 「質権者は実施できない」という結論は知っていても、その例外である「別段の定め」がどれほど危険かを軽視している人が多い。貸し手が用意した契約書にこの一文が入っていれば、あなたの事業の中核技術を相手も自由に使えることになり、担保の枠を超えて事業そのものを明け渡す結果になりかねない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律内容 | 95条:質権者は別段の定めなき限り特許発明を実施できない | 96条:物上代位(対価・実施料に質権の効力が及ぶ) 98条:質権設定は特許原簿への登録が効力発生要件 |
| 誰の権利を扱うか | 質権者の実施権能を制限(実施は特許権者に残る) | 質権者の優先弁済権を対価・実施料へ拡張 質権の効力発生要件(第三者対抗ではなく効力そのもの) |
| 実務での勘所 | 契約の「別段の定め」の有無が事業継続を左右 | 差押えはライセンシーの払渡し前でなければ効力を失う 登録前の質権者は無担保の一般債権者にすぎない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も特許権(専利権)を質権の目的とすることを認める。質権者の実施可否は明文の実施制限より民法の権利質規定と契約解釈に依存する点で日本と構造が異なる
韓国特許法121条は、特許権・専用実施権・通常実施権を目的とする質権につき、契約で別段の定めをした場合を除き質権者は実施できないと定め、日本95条とほぼ同一の規律
ドイツは特許(無体財産権)への質権を権利質(Pfandrecht an Rechten)の一般規定で処理し、質権者の実施制限は質権の非利用的性質から導かれる
米国は特許を担保とする際に UCC 第9編の security interest を用い、USPTO への譲渡担保記録が実務上重要。質権者の実施可否は担保契約(security agreement)の条項に委ねられる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 創業三年のディープテック企業が、量産投資のために唯一の特許を担保に銀行融資を受ける。経営者は「担保に入れたらこの特許で稼げなくなる」と覚悟したが、95条により貸し手は実施できない。あなたは特許で製品を作り続けながら、株式を希薄化させずに数千万円を調達できる。これを知らずにエクイティ一本に絞ると、創業者持分を不必要に手放す
- もし返済が滞ったら、担保に入れた特許はどうなる? 質権者は担保権を実行し、特許権を競売(オークション)にかけて換価、その代金から優先的に弁済を受ける。落札した第三者が新たな特許権者になり、あなたは発明を完全に失う。融資契約にサインする時点で、この最終シナリオまで視野に入れているか
- あなたが他社の特許のライセンス(通常実施権)を受けて事業をしている。実はそのライセンスそのものを担保に資金調達できる。95条の質権は通常実施権にも設定でき、貸し手は契約に別段の定めがなければやはり実施できない
- あなたが貸し手側で、担保に取った特許がライセンス料を生んでいる。借り手の支払い不能が見えてきた。物上代位(96条)でそのロイヤルティを押さえられるが、差押えはライセンシーが債務者に払い渡す前でなければ効力を失う。残された時間で差押命令が間に合うかが、回収の成否を分ける
取るべき行動
被害を受けた側:1. 契約書は本文より先に「質権者の実施に関する条項」を確認、別段の定めがなければ95条どおり相手は実施できない2. 「質権者も実施できる」旨の条項があれば削除を交渉、ここが事業継続の生命線3. 被担保債権の範囲(元本・利息・遅延損害金)が過大でないか精査4. 設定登録(98条)の費用と順序を確認、融資実行と登録のタイミングを合意5. 返済計画に無理があれば実行(競売)で特許を失うリスクを織り込む
訴えられた側:1. 融資実行と質権設定登録(98条)を同時に押さえる、登録前は無担保の一般債権者にすぎない2. 特許の有効性・存続期間・特許料(年金)納付状況・先順位質権の有無を原簿で確認3. ライセンス料が出る特許なら物上代位(96条)に備え、ライセンス契約の存在を把握、差押えは払渡し前に打つ4. 自ら実施したいなら別段の定めを契約に明記(95条但書)、ただし借り手の抵抗は強い5. 債務不履行時の実行(競売・任意売却)の段取りを事前設計しておく
時効(請求できる期限):質権の設定自体に期間制限はないが、被担保債権が消滅時効(民法166条、債権は権利行使できると知った時から5年又は権利行使できる時から10年)にかかれば、付従性により質権も消滅する。物上代位(96条)による差押えは、ライセンス料等が債務者に払い渡される前に行う必要がある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:特許法95条の実施制限は、民法350条が準用する留置権規定(担保物の使用制限)と権利質の一般構造を無体財産に及ぼしたものと解される。質権者は担保価値の確保のみを目的とし、実施は設定者に留保するのが原則で、別段の定め(95条但書)による例外は当事者合意で認められる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 改正:現行特許法(昭和34年法律第121号)制定により、特許権・専用実施権・通常実施権を目的とする質権における質権者の実施制限を明文化。旧特許法の担保規律を整理・承継した。
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