受講中の講座ブックマーク無料で登録

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)e-Gov法令検索出典公布 収録時点 令和8年7月4日読了 8 分8 分8 分

特許法 第96条

クイックジャンプ

特許権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権は、特許権、専用実施権若しくは通常実施権の対価又は特許発明の実施に対しその特許権者若しくは専用実施権者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行うことができる。ただし、その払渡又は引渡前に差押をしなければならない。

この条文の基本情報

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)

  1. 特許法第96条は、日本の特許法に含まれる条文です。
  2. 特許法第96条の条文原文は「特許権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権は、特許権、専用実施権若しくは通常実施権の対価又は特許発明の実施に対しその特許権者若しくは専用実施権者が受けるべ…」で始まります。
  3. 特許法第96条は第一節に置かれています。
  4. 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
  5. 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
  6. 特許法第96条の前の条は特許法第95条です。
  7. 特許法第96条の次の条は特許法第97条です。
  8. 特許法第96条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。

この条文を引用する

下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。

  • 正式書式特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第96条
  • 官報・e-Gove-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121
  • 本サイト収録特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第96条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/96

わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です

要点特許法96条は、特許権等を目的とする質権の効力が実施料や売却代金などにも及ぶ物上代位を定める。ただし、その払渡又は引渡前に差押えをしなければ、物上代位の効力は及ばない。

Q · 特許を担保に取ったら、その特許のライセンス料も自動的にもらえるの?

自動ではなく、支払前の差押えが必須です

特許法96条により、質権の効力は特許権そのものだけでなく、実施料や特許権の売却代金など権利者が受けるべき金銭にも及びます(物上代位)。ただし条文ただし書は、その金銭が権利者に払い渡される前に差押えをしなければならないと定めています。実施料が債務者の口座に振り込まれた後では手遅れで、質権者は一般債権者に転落します。担保を取ったことと収益を掴めることは別問題です。

解説

スタートアップが銀行から融資を受けるとき、自社の特許を担保に差し入れる。これが特許権への質権設定だ。だが経営者も貸し手も見落としがちなのが、この96条が定める「物上代位」の射程である。質権の効力は特許権そのものに留まらず、その特許を他社にライセンスして得る実施料や、特許権を売却した代金にまで及ぶ。つまり担保価値は、特許という一個の資産より広い。ただし、ここに罠がある。ただし書が命じる「払渡又は引渡前に差押をしなければならない」。実施料が特許権者の口座に振り込まれた後では、もう手遅れだ。あなたが貸し手なら、債務者がその金を受け取る一瞬前に差押えという一手を打てるかどうかで、担保が生きた回収源になるか、ただの紙切れになるかが決まる。

法的な位置づけ

特許法96条は質権の物上代位を定める規定であり、特許権・専用実施権・通常実施権を目的とする質権の効力が、それらの対価や特許発明の実施に対して権利者が受けるべき実施料等の金銭その他の物にも及ぶ旨を規定する。ただし物上代位の行使には、当該金銭等の払渡又は引渡前の差押えを要件とする。

手順・フロー

AI による整理。効力は条文原文が基準です

手順

  1. 1.融資契約に実施料の通知義務条項を組み込む 融資実行時の契約書に、債務者がライセンス契約を締結・変更した場合は質権者へ通知させる条項を入れる。実施料の支払時期を事前に把握できれば、払渡前の差押えが間に合う
  2. 2.質権を特許原簿に登録する 特許権・専用実施権を目的とする質権は特許法98条により特許原簿への登録が効力発生要件。融資実行と同時に登録申請を行い、無担保状態の空白期間を作らない
  3. 3.債務者の信用悪化の兆候を掴んだら差押え準備に入る 返済遅延や信用悪化を察知した瞬間に、ライセンス契約の有無と実施料の支払時期を調査し、物上代位に基づく債権差押命令の申立て準備を始める
  4. 4.払渡前に差押命令を申し立てる 実施料や売却代金が債務者に払い渡される前に、民事執行法193条の担保権実行としての債権執行として、裁判所へ差押命令を申し立てる。払渡後は物上代位できず一般債権者に転落するため時間との勝負

よくある質問 AI による整理

Q1物上代位とは何ですか?

担保の目的物が売却代金・賃料・保険金などの価値に姿を変えたとき、担保権の効力がその価値にも及ぶ制度です。特許法96条は特許の質権について実施料や売却代金への物上代位を認めています。

Q2特許の質権の物上代位はいつまでに差押えが必要ですか?

96条ただし書により、実施料や売却代金が権利者に払い渡される前に差押えをしなければなりません。支払い後は物上代位できず、質権者は一般債権者に転落します。

Q3通常実施権にも質権を設定できますか?

できます。96条は特許権・専用実施権・通常実施権のいずれも質権の目的になり得ることを前提としています。ただし通常実施権への質権も含め、効力発生や対抗要件は各権利の登録・承諾ルールに従います。

Q4物上代位は実施料と売却代金の両方に及びますか?

及びます。96条は特許権等の対価(売却代金)と、実施に対して受けるべき金銭(実施料)その他の物の双方を物上代位の対象としています。いずれも払渡前の差押えが条件です。

Q5特許法96条と民法304条の関係は?

民法304条は先取特権の物上代位を定める一般規定で、96条はその法理を特許の質権に取り込んだ特則です。差押えを要件とする構造も民法304条ただし書と共通します。

Q6物上代位はどんな手続で行使しますか?

民事執行法193条の担保権実行としての債権執行により、裁判所へ差押命令を申し立てます。担保権の存在を証する文書(質権設定登録の証明等)を添えて申し立てます。

Q7専用実施権に設定した質権も物上代位できますか?

できます。96条は専用実施権を目的とする質権も対象に含めており、専用実施権者が受けるべき対価や実施料にも払渡前の差押えを条件に物上代位が及びます。

Q8特許の質権は登録しなくても物上代位できますか?

質権そのものが特許法98条により特許原簿への登録が効力発生要件です。登録がなければ質権が成立せず、物上代位以前に担保権が存在しないことになります。

この条文についての質問 AI による整理

Q1特許を担保に取れば、その特許のライセンス料も自動的にもらえるんですか?

自動ではありません。96条は物上代位を認めますが、ただし書で「払渡又は引渡前に差押をしなければならない」と定めています。実施料が特許権者に支払われる前に差押えをして初めて、そこから優先的に回収できます。実務のポイント:実務では、債務者が実施料を受け取るタイミングを質権者が把握できないことが回収失敗の最大原因です。融資契約に「ライセンス契約締結時の通知義務」を入れておかないと、気付いたときには支払い済み、ということが起きる

Q2担保にした特許が無効審判で取り消されたら、質権はどうなりますか?

特許権が遡及的に消滅すれば、その特許権を目的とする質権も消滅します(特許法125条、無効審決が確定すると特許権は初めから存在しなかったとみなされる)。担保価値はゼロになり得ます。実務のポイント:だからこそ知財金融では、融資前に特許の有効性デューデリ、先行技術調査や無効リスク評価が事実上必須です。特許1件に依存した担保設計はリスクが高く、ポートフォリオで分散するのが定石

Q3質権を設定する契約だけで、登録していなくても担保として有効ですか?

特許権や専用実施権を目的とする質権は、特許原簿に登録しなければ効力そのものが生じません(特許法98条1項3号、登録が効力発生要件)。契約書にサインしただけでは質権は成立せず、登録して初めて担保権が発生します。実務のポイント:不動産抵当が登録を対抗要件とするのに対し、特許の質権は登録が効力発生要件である点が落とし穴です。登録を後回しにしている間、貸し手は無担保債権者と同じ。融資実行と登録を同時に進めるのが鉄則

間違えやすい点 AI による整理

  • 「特許を担保に取ったのだから、特許が生む収益も当然もらえる」と思いがちだが、96条ただし書は冷酷だ。実施料や売却代金が債務者に払い渡される前に差押えをしなければ、物上代位の効力は及ばない。担保を取ったことと、収益を掴めることは、まったく別の話である
  • 物上代位ができること自体は、条文を読めば分かる。だが本当に見落とされるのは「タイミングの厳しさ」の方だ。差押えは払渡し前という一点を逃すと、二度と取り返せない。制度を知っていても、その一瞬の重大さを軽く見た貸し手が回収に失敗する
  • 「特許の質権なんて大企業の金融部門の話で、自分には縁がない」と問いを立てた時点で、すでにずれている。スタートアップが知財を担保に資金調達する時代、担保を取る側にも、差し入れる側にも、この条文は直接効いてくる
比較の観点この条文ほかの条文
条文が扱う場面96条:質権の物上代位(実施料・売却代金への効力拡張)95条:質権設定後の特許権者の実施権の制限
98条:質権設定登録の効力発生要件
権利者への効果対価・実施料への優先回収(払渡前差押えが条件)質権者は原則実施できず、権利者の実施も契約で制限
登録して初めて質権が発生(未登録なら無効)
見落とすと起きること払渡後に気付き一般債権者へ転落、担保が紙切れ化設定範囲の誤認で権利者の実施継続を巡り紛争
登録前は貸し手が無担保債権者と同じ扱い

他国ではどう定めているか 4 か国

台湾
專利法第6条・民法第899条

台湾は專利権への質権設定を專利法で認め、物上代位は民法899条(権利質への準用を含む)で処理する。差押えを要件とする点は日本と近い

韓国
특허법 제121조・민법 제342조

韓国も特許権を質権の目的とし、物上代位は民法342条が規律。目的物が金銭等に変じた場合の差押要件も日本と類似

ドイツ
PatG § 15・BGB §§ 1273 ff., § 1287

ドイツは特許を権利質(Pfandrecht an Rechten)の目的とし、代償への効力拡張は BGB の権利質規定で処理。公示や差押えの構造は異なる

アメリカ
UCC Article 9

米国は特許担保を UCC 第9編の担保取引として扱い、proceeds(収益)への担保権の自動的拡張を認める。差押えではなく financing statement による公示が中心

AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です

想定される場面と対応 AI による整理

こんなときに使う

  • 債務者がライセンス契約を結び、来週その第一回実施料が債務者の口座に入る。あなたは特許に質権を持つ貸し手だが、債務者の返済はすでに滞っている。残された時間はあと5日。この5日以内に差押命令を取らなければ、96条の物上代位は空振りに終わり、あなたは一般債権者の列に並ぶことになる
  • もし担保に取った特許が他社に売却されてしまったら、あなたの質権はどうなる? 答えは、その売却代金に物上代位できる。ただし、代金が債務者に払い渡される前に差し押さえた場合に限られる
  • あなたが特許を担保に融資を受けた側だとする。資金繰りが苦しくなり、特許の実施料で食いつなごうとした。だがその実施料には、貸し手の質権が物上代位で伸びている
  • 製薬ベンチャーが基幹特許を担保に資金調達し、その後、大手と巨額のライセンス契約を締結した。貸し手にとっては、特許そのものより毎年入る実施料の方が現実的な回収源だ。96条を知る貸し手は、融資契約の段階で実施料への物上代位と差押えの段取りを設計に組み込む

取るべき行動

被害を受けた側:1. 債務者の返済遅延や信用悪化の兆候を察知したら、ただちに特許のライセンス契約の有無と実施料の支払時期を調査する2. 実施料や売却代金が債務者に払い渡される前に、裁判所へ物上代位に基づく差押命令を申し立てる(民事執行法193条の担保権実行としての債権執行) 3. 差押えは「払渡又は引渡前」が絶対条件、支払い後は一般債権者に転落するので時間との勝負4. 質権設定が特許原簿に登録されているか(特許法98条)も確認、未登録なら質権そのものが効力を持たない

訴えられた側:1. 実施料や売却代金にも質権が物上代位で及ぶことを前提に、資金繰りを設計する2. 実施料を運転資金に充てる前に質権者の権利関係を整理、無断で消費すると後で深刻なトラブルになる3. 返済が困難なら、差押えされる前に質権者と弁済計画やリスケジュールを交渉する余地がある4. 質権設定の範囲(契約で実施料を対象から外せる場合もある)を、設定時の契約書に遡って精査する

時効(請求できる期限):96条ただし書が定める通り、物上代位の差押えは対価・金銭等の「払渡又は引渡前」に行わなければならない。これが事実上の期限であり、債務者が支払いを受けた後は物上代位できない。被担保債権そのものの消滅時効(民法166条、債権は権利行使可能時から5年または10年)とは別の、独立した時間制約である

学説

通説:物上代位の行使に払渡前の差押えを要する趣旨について、通説は第三債務者(実施料の支払者)の二重弁済の危険を防ぎ、弁済者が権利者へ支払えば免責される取引の安全を確保する点にあると説く。差押えは物上代位の目的物の特定と公示の機能を果たす。

改正沿革 AI による整理

改正の年表

  1. 1.昭和34年(1959年) 改正:現行特許法(昭和34年法律第121号)制定に伴い、旧法から質権の物上代位に関する規定を承継。特許権等を目的とする質権の効力が対価・実施料に及ぶことと、払渡前差押要件を明文化。

ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。

特許法の全文を見る所属する編章節を開く:第一節

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)。AI による解説は理解の補助であり、法的効力は条文原文が基準です。

次に調べる

判例を探す:条文単位の判例の紐づけは準備中です。上のカードから法令名で検索できます。裁判所「裁判例検索」で探す ›