特許法 第97条(特許権等の放棄)
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- 特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる。
- 2.専用実施権者は、質権者又は第七十七条第四項の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権を放棄することができる。
- 3.通常実施権者は、質権者があるときは、その承諾を得た場合に限り、その通常実施権を放棄することができる。
この条文の基本情報
特許権等の放棄とは何ですか?
定義特許権等の放棄とは、特許法第97条に定められた規定で、「特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第97条(特許権等の放棄)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第97条の条文原文は「特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる。」で始まります。
- 特許法第97条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第97条の前の条は特許法第96条です。
- 特許法第97条の次の条は特許法第98条です。
- 特許法第97条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第97条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第97条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/97
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法97条は、専用実施権者や質権者がいる場合、その承諾を得たときに限り特許権を放棄できると定める。承諾を欠く放棄は効力を生じない。
Q · 自分の特許なら、いつでも自由に放棄できるの?
承諾がなければ放棄は無効。相手の同意が必須です
特許法97条により、専用実施権者または質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り特許権を放棄できます。承諾を欠く放棄は、たとえ放棄届を出しても登録段階で効力を生じません(特許法98条)。専用実施権の放棄には質権者・一定の通常実施権者の承諾、通常実施権の放棄には質権者の承諾が必要で、放棄の連鎖はチェーンの一番下まで保護が及びます。ライセンスや担保を受けた側から見れば、相手の一方的放棄を止める『承諾権』を握る強い立場になります。
解説
スタートアップを経営するあなたが、苦労して取った特許を大手メーカーに専用実施権(その特許を独占的に使わせる権利)として貸し出し、毎年ライセンス料を受け取っている。ある日、年金(特許維持費)の支払いが惜しくなり、あなたは特許庁に放棄届を出そうと考える。自分の特許なのだから自由に捨てられる、そう思っている。だが特許法97条がその手を止める。専用実施権者や質権者がいる場合、これらの者の承諾を得なければ、特許権を放棄できない。理由は単純だ。あなたが特許を手放した瞬間、その特許の上に乗っているライセンスも質権も土台ごと消える。相手は数億円を投じて生産ラインを組んだのに、あなたの一存で足場が崩れる。だから法律は、あなたの「放棄する自由」より、その特許を信じて投資した者の地位を上に置く。しかもこの構造は特許に限らない。専用実施権の放棄、通常実施権の放棄にも同じ連鎖で効く。権利を手放す側は、自分の下にぶら下がる者の承諾なしには動けない。
法的な位置づけ
特許法97条は特許権・専用実施権・通常実施権の放棄の制限を定める規定である。専用実施権者・質権者・一定の通常実施権者が存在する場合、権利者はこれらの者の承諾を得たときに限り当該権利を放棄できる。派生的権利を有する者の地位を保護するための処分制限として機能する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.自分の権利に乗る派生的権利を登録原簿で確認 放棄を検討したら、まず特許登録原簿を確認し、専用実施権・質権・一定の通常実施権が設定・登録されていないかを調べる。ひとつでもあれば単独では放棄できない
- 2.承諾権者を特定し、承諾を書面で取得 専用実施権者・質権者・該当する通常実施権者を特定し、放棄への承諾を書面で取得する。口頭やメールだけの承諾は登録手続で確認できず放棄が宙に浮くため、押印済みの承諾書を残す
- 3.承諾が取れない場合は代替手段を検討 承諾が得られないときは、放棄に代えてライセンス契約の合意解除・買い戻し・補償金による合意解消を検討する。承諾なしの放棄届は効力を生じず、年金負担だけが残るため強行は損になる
- 4.特許庁へ放棄の登録を申請 承諾書を添えて特許庁に特許権放棄の登録を申請する。放棄は登録して初めて効力を生じる(特許法98条)。登録完了までは特許権は権利者に残る点を前提に手続を進める
よくある質問 AI による整理
Q1特許権の放棄とは何ですか?
特許権者が自らの意思で特許権を消滅させる単独行為です。ただし専用実施権者・質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り放棄できます(特許法97条)。
Q2特許権を放棄する方法は?
特許庁への放棄の登録が必要です。放棄は登録しなければ効力を生じません(特許法98条1項)。専用実施権者・質権者がいる場合は、その承諾を証する書面も必要になります。
Q3特許権の放棄に登録は必要ですか?
必要です。特許権の放棄は登録が効力要件で(特許法98条)、放棄届を出しても登録されるまで効力は生じません。登録手続では承諾の存在も確認されます。
Q4特許の年金を払わないとどうなりますか?
所定の追納期間を過ぎても特許料を納付しないと、特許権は放棄とは別ルートで遡って消滅します。放棄が承諾で止められても、年金不納による消滅は防げない点に注意が必要です。
Q5専用実施権とは何ですか?
設定行為で定めた範囲で、特許発明を独占的に実施できる強い権利です(特許法77条)。専用実施権者がいると、特許権者は原則その承諾なしに特許権を放棄できません。
Q6特許権の放棄と消滅の違いは?
放棄は権利者の意思による消滅原因の一つです。消滅にはほかに存続期間満了、年金不納、無効審決の確定などがあり、放棄はそのうち承諾要件が課される類型です。
Q7実用新案権や商標権の放棄にも承諾は必要ですか?
実用新案法・商標法が特許法97条を準用しており、専用実施権者や質権者の承諾を要する同様の制限が及びます(現行の準用条文は要確認)。
Q8特許を放棄したら誰に影響しますか?
その特許に乗る専用実施権者、通常実施権者(サブライセンシー)、質権者に影響します。特許という幹が倒れると、上に乗ったライセンスや担保も土台ごと失われるためです。
この条文についての質問 AI による整理
Q1ライセンスを出した相手に黙って特許を放棄したら、どうなるんですか?
承諾を欠いた放棄は登録段階で効力を生じません(特許法97条1項、98条)。たとえ放棄届を出しても、専用実施権者や質権者の承諾がなければその放棄は無効で、特許権はあなたに残ったままです。実務のポイント:実務では、特許権者が承諾を取らずに放棄登録を試みても、特許庁は登録原簿上の専用実施権・質権の存在を確認するため弾かれることが多い。だからこそライセンシー側は『自分の権利を登録しておく』だけで、相手の一方的放棄をほぼ完全に封じられる
Q2通常実施権(普通のライセンス)しか持っていない場合でも、放棄を止められますか?
原則として、特許権者の放棄を止める承諾権は専用実施権者と質権者にあり(97条1項)、ただの通常実施権者は含まれません。ただし2011年改正で通常実施権は当然対抗制度になり、登録なしでも後の権利者に対抗できます。実務のポイント:通常実施権者は放棄そのものは止められなくても、契約上『特許を維持する義務』を特許権者に負わせておけば、放棄は債務不履行になる。条文の保護に頼れない部分は、契約条項で先に埋めておくのが玄人の手当てだ
Q3特許を担保に取って融資したのに、相手が勝手に特許を捨てたら担保がパーですか?
心配いりません。質権者であるあなたの承諾がなければ、特許権者は特許を放棄できません(97条1項)。承諾なしの放棄は効力を生じず、担保は守られます。実務のポイント:IP ファイナンスでは、質権設定の登録を確実に済ませることが命綱。登録された質権があれば、債務者が特許を放棄しようとしても、年金の不納による消滅という別ルートを塞ぐため、貸し手が代わりに年金を払える特約を入れておく実務もある
間違えやすい点 AI による整理
- 「自分の特許なのだから、いつでも自由に放棄できる」と思い込んでいる人が大半だが、専用実施権・質権という他人の権利が乗っている限り、放棄は単独ではできない。承諾を欠いた放棄届は登録されても効力を生じない。あなたが思っている「所有権の自由」は、他人の地位を巻き込む場面では止まる
- 承諾が要るのは知っていても、その承諾を「口約束やメールで足りる」と軽く見ている人がいる。だが特許権の放棄は登録(特許法98条)が効力要件であり、登録手続では承諾の存在が確認される。曖昧な承諾は後で「言った言わない」の紛争を生み、放棄そのものが宙に浮く。深刻さを甘く見ると手続が一歩も進まない
- 「これは特許権者だけの話で、ライセンスを受けた自分には関係ない」と多くのライセンシーが考えている。視点が逆だ。法律から見れば、あなたは『承諾権者』という強い立場にいる。相手が放棄したくてもあなたが首を縦に振らなければ動けない。この承諾権をカードとして使えると気付くかどうかで、ライセンス再交渉の力関係が変わる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 特許法97条:放棄には承諾が必要(処分制限) | 特許法77条:専用実施権の設定(承諾を要する権利の源) 特許法98条:放棄は登録が効力要件 |
| 承諾が必要な者 | 専用実施権者・質権者・一定の通常実施権者 | 設定は特許権者の意思のみ(承諾不要) 登録手続で承諾の存在を確認 |
| 違反した場合の効果 | 承諾を欠く放棄は効力を生じない | 設定登録なしでは第三者に対抗不可 未登録の放棄は効力を生じない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も専利権者は被授権人・質権者の同意なしに専利権を拋棄できないと定め、日本97条とほぼ同一の構造をとる
韓国も専用実施権者・質権者等がある場合の特許権放棄の制限を定めており、日本法と近い(現行条番号は要確認)
ドイツは放棄(Verzicht)による特許権の消滅を定めるが、実施権者の同意を明文の要件とする構造は日本ほど前面に出ない
米国は disclaimer による権利放棄を認めるが、ライセンシーの同意を放棄の要件とはしない。物権的ライセンス観に立つ大陸法系との差が表れる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、特許権者が来月の年金期限を前に「もう要らない」と放棄届を出したら、独占ライセンスを受けて工場を建てたあなたはどうなる? 答えは、放棄に対するあなたの承諾なしには成立しない。97条があなたを守る盾になる。逆に言えば、あなたが承諾しなければ相手は捨てられない
- あなたが銀行で、企業の特許に質権(借金のカタとして押さえる担保)を設定して融資した。ところが債務者がこっそり特許を放棄しようとする。担保が消えれば貸金の回収が危うい。97条1項により、質権者であるあなたの承諾なしにその放棄は通らない。担保価値を勝手に蒸発させられない仕組み
- 親会社から特許の専用実施権を受けたあなたが、さらに下請けに通常実施権(サブライセンス)を出していた。親会社の都合で専用実施権を放棄したいと言われても、97条2項により、下請け(通常実施権者)や質権者の承諾がなければ放棄できない。チェーンの一番下まで保護が伸びている
- あなたが特許権者で、維持コストを削るために放棄したい。だが過去にライセンスを出した相手の連絡先が分からない。承諾が取れなければ、放棄したくても法的に放棄が成立せず、年金を払い続ける羽目になる。手放す自由すら、相手の承諾という鍵がないと開かない
- 残り3日で特許の更新期限。放棄するか維持するか決めかねている間に、専用実施権者から「絶対に放棄するな」と内容証明が届く。あなたに承諾を強制する権利はないが、相手の承諾なしには放棄もできない。にらみ合いのまま期限を迎える緊張
取るべき行動
被害を受けた側:あなたが専用実施権者・質権者・サブライセンスを受けた通常実施権者で、相手が特許や権利を放棄しそうな兆候があるとき。1. まず自分の権利が登録されているか確認、登録があれば97条の承諾権が確実に働く2. 承諾を求められても、自分の事業・担保への影響を計算するまで安易に承諾しない3. 相手が承諾なしに放棄登録を進めた形跡があれば、その登録は効力を生じないと主張し、登録の抹消や無効を争う4. 紛争化する前に、放棄の条件(補償金・残ライセンス期間の保証など)を交渉材料にする
訴えられた側:あなたが特許権者・専用実施権者で、コスト削減のため権利を放棄したいとき。1. まず自分の権利に専用実施権・質権・通常実施権が登録されていないか調査2. いれば全員の承諾を書面で取得、口頭やメールだけでは登録手続で詰まる3. 承諾が取れない相手には、放棄に代えてライセンスの解除・買い戻し・補償による合意解消を検討4. 承諾なしに放棄届を出しても登録は効力を生じず年金負担も残るので、強行は損になると理解する
時効(請求できる期限):放棄そのものに特定の時効はないが、特許権の放棄は登録しなければ効力を生じない(特許法98条1項1号)。承諾を得た上で速やかに登録すること。年金(特許料)の納付期限を過ぎると別途特許権が消滅する点にも注意(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:特許法97条の承諾は放棄の効力要件であり、承諾を欠く放棄は登録されても効力を生じないと解される。承諾は放棄の登録手続における添付書面で確認されるため、口頭やメールのみの承諾では手続が進まず、放棄が宙に浮くとされる。
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