実用新案法 第17条の2(実用新案権の移転の特例)
クイックジャンプ
- 実用新案登録が第三十七条第一項第二号に規定する要件に該当するとき(その実用新案登録が第十一条第一項において準用する特許法第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は第三十七条第一項第五号に規定する要件に該当するときは、当該実用新案登録に係る考案について実用新案登録を受ける権利を有する者は、経済産業省令で定めるところにより、その実用新案権者に対し、当該実用新案権の移転を請求することができる。
- 2.前項の規定による請求に基づく実用新案権の移転の登録があつたときは、その実用新案権は、初めから当該登録を受けた者に帰属していたものとみなす。
- 3.共有に係る実用新案権について第一項の規定による請求に基づきその持分を移転する場合においては、第二十六条において準用する特許法第七十三条第一項の規定は、適用しない。
この条文の基本情報
実用新案権の移転の特例とは何ですか?
定義実用新案権の移転の特例とは、実用新案法第17条の2に定められた規定で、「実用新案登録が第三十七条第一項第二号に規定する要件に該当するとき(その実用新案登録が第十一条第一項において準用する特許法第三十八条の規定に違反してされたときに限…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 実用新案法第17条の2(実用新案権の移転の特例)は、日本の実用新案法に含まれる条文です。
- 実用新案法第17条の2の条文原文は「実用新案登録が第三十七条第一項第二号に規定する要件に該当するとき(その実用新案登録が第十一条第一項において準用する特許法第三十八条の規定に違反してされたときに限…」で始まります。
- 実用新案法第17条の2は第一節 実用新案権に置かれています。
- 実用新案法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 実用新案法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 実用新案法第17条の2の前の条は実用新案法第17条です。
- 実用新案法第17条の2の次の条は実用新案法第18条です。
- 実用新案法第17条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第17条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000123 - 本サイト収録
実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第17条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000123/17_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点実用新案法17条の2は、冒認登録や共同出願違反の場合に、真の権利者が実用新案権の移転を請求できると定める。移転登録があれば権利は初めから請求者に帰属したとみなされる。
Q · 自分が考えた構造を、取引先が勝手に実用新案登録していました。取り戻せますか?
潰すだけでなく、名義ごと移転請求できます
実用新案法17条の2により、冒認登録(無権利者による登録)や共同出願義務違反があった場合、本来権利を有するあなたは、無効審判で「潰す」だけでなく、実用新案権そのものの移転を請求できます。第2項の遡及効により、移転登録があればその権利は初めからあなたに帰属していたものとみなされます。共有事案では第3項により他の共有者の同意(特許法73条1項)が不要となるため、相手が結託しても持分回収は止まりません。手続は経済産業省令で定められ、専門は弁理士です。
解説
町工場であなたが図面に起こした便利な留め具の構造。試作を頼んだ取引先が、いつの間にか自分の名義で実用新案登録していた。2012年3月以前なら、あなたにできたのは無効審判で「その登録を潰す」ことだけだった。潰せば権利は消えるが、消えた権利はあなたのものにはならない。誰のものでもなくなるだけだ。実用新案法17条の2が変えたのはここである。冒認登録(あなたの考案を、権利のない他人が勝手に登録したもの)や共同出願違反の場合、本来の権利者であるあなたは、その実用新案権そのものを「よこせ」と請求できる。しかも移転登録がされれば、第2項により、その権利は初めからあなたに帰属していたものとみなされる。過去にさかのぼってあなたが権利者だったことになる。潰すのではなく奪い返す。この一条が、盗まれた考案の運命を分ける。
法的な位置づけ
実用新案法17条の2は、移転の特例を定める規定である。冒認登録(無権利者による登録)または共同出願義務違反により実用新案登録がされた場合、本来実用新案登録を受ける権利を有する者が、実用新案権者に対して当該実用新案権の移転を請求できる旨を規定する。無効審判による登録抹消とは別個の、真の権利者への権利回復手段として機能する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.考案が自分発であることの証拠を保全 図面の作成日、相手へ開示した日のメールや LINE、試作の記録、開発ノートを時系列で保全する。自分発の創作だと客観的に示せる資料を最優先で確保する
- 2.冒認か共同出願違反かを切り分ける 相手の登録が冒認(37条1項5号)か共同出願違反(同項2号、特許法38条準用)かを切り分ける。どちらに当たるかで請求の組み立てと主張立証が変わる
- 3.無効審判ではなく移転請求を選ぶ判断 自分が権利者として事業に使いたいなら、無効審判で潰す前に移転請求を選ぶ。潰すと権利は消滅して誰のものでもなくなるが、移転請求なら第2項の遡及効で初めから自分の権利だったことになる
- 4.経済産業省令の手続で移転を請求 経済産業省令の定めにより実用新案権者に対し移転を請求し、移転登録まで進める。共有事案なら本条3項で他共有者の同意が不要な点を主張に組み込む
- 5.移転後の権利行使に備え評価書を取得 移転登録後に製造販売の差止や警告を行う場合に備え、実用新案技術評価書(12条)を取得しておく。無審査登録の弱点を補い、無理筋の権利行使による責任を避ける
よくある質問 AI による整理
Q1冒認出願とは何ですか?
実用新案登録を受ける権利を持たない者が、他人の考案を勝手に出願・登録することです。実用新案は無審査で登録されるため、特許より冒認が成立しやすい構造があります。
Q2実用新案の移転請求はどんな手続が必要ですか?
経済産業省令の定めにより、実用新案権者に対して移転を請求し、移転登録まで進めます。冒認・共同出願違反の事実と、自分が真の権利者であることを示す証拠が必要です。専門は弁理士です。
Q3実用新案の移転請求に期限はありますか?
本条の移転請求権に固有の時効規定はありませんが、一般の消滅時効の適用が議論されます。なお実用新案権の存続期間は出願日から10年で、満了すれば移転の実益が失われます。
Q4共同出願違反になるのはどんな場合ですか?
共同で考案した相手が、あなたに無断で単独名義の実用新案登録を済ませた場合です。特許法38条(実用新案法11条で準用)の共同出願義務に違反し、移転請求の要件となります。
Q5移転登録されると過去に結ばれたライセンスはどうなりますか?
第2項の遡及効により権利は初めから請求者に帰属していたものとみなされます。冒認者がその間に与えたライセンスの効力や実施に対する立場まで、過去にさかのぼって請求者の問題になり得ます。
Q6移転請求に実用新案技術評価書は必要ですか?
移転請求そのものに評価書は必須ではありませんが、移転後に権利行使する段階では実用新案技術評価書(12条)が事実上必要です。無審査登録の弱点を補う書面です。
Q7冒認を証明するにはどんな証拠を集めればいいですか?
図面の作成日、相手へ開示した日のメールや LINE、試作の記録、開発ノートなどを時系列で保全します。自分発の創作であることを客観的に示せる資料が鍵になります。
Q8移転請求された側(被告)はどう対応すればいいですか?
まず自分の登録が本当に冒認・共同出願違反に当たるか精査します。独自に到達した考案なら創作の独自性を示す証拠で争い、相手の「権利を有する者」該当性も検証します。弁理士・弁護士と早期に相談を。
この条文についての質問 AI による整理
Q1無効審判で潰すのと、移転請求で取り戻すのって、結局どっちが得なんですか?
あなた自身がその考案を事業に使いたいなら移転請求が圧倒的に有利です。無効審判(実用新案法37条)で潰すと権利は消滅し、誰のものでもなくなる。あなたは権利を得られません。移転請求(17条の2)なら権利はあなたに移り、第2項で初めから自分のものだったとみなされます。実務のポイント:実務では、相手をただ排除したいだけなら無効審判、自分が権利者として市場を押さえたいなら移転請求、と目的で使い分けます。両方を同時に持ち出すと矛盾しかねないので、最初の方針決めが弁理士の腕の見せ所です
Q2相手が共有名義にしていて、他の共有者が移転に同意しないと言っています。詰みですか?
詰みません。本条3項が、共有持分を移転請求で移す場合には特許法73条1項(持分移転に他の共有者の同意が必要というルール、実用新案法26条で準用)を適用しないと定めています。つまり他の共有者が反対しても、あなたの持分回収は止まりません。実務のポイント:冒認側は『共有だから君は勝手に動けない』と牽制してくることが多い。この3項を知っているかどうかで、その牽制が効くか空振りに終わるかが決まります
Q3実用新案って無審査で登録されるんですよね? そんな弱い権利、取り戻す意味あります?
問いの立て方がずれています。無審査で登録される(実用新案法14条2項)からこそ、他人があなたの考案を横取り登録しやすく、しかも登録されれば一応の権利として機能し、あなたの製造販売を止める根拠に使われます。だから名義を取り戻す実益があります。実務のポイント:権利行使には実用新案技術評価書(12条)が事実上必要で、相手が無理筋の権利行使をすれば責任を負うこともある。『弱い権利だから放置』ではなく『弱点を突いて名義を取り戻す』のが定石です
間違えやすい点 AI による整理
- 「他人に冒認登録されたら無効審判で潰すしかない」と多くの人がいまだに思い込んでいる。これは2012年3月までの古い常識だ。17条の2の新設で、本来の権利者は潰すのではなく権利そのものを移転請求できるようになった。古い解説書やネット記事のままで動くと、取り戻せた権利をわざわざ消してしまう
- 「移転してもらえるのは、これからの話」と思いがちだが、深刻さの度合いが違う。第2項の遡及効により、移転登録があれば権利は初めからあなたに帰属していたものとみなされる。つまり、冒認者がその間に第三者へ与えたライセンスの効力や、その間の実施に対する立場まで、過去にさかのぼってあなたの問題になる。単なる名義変更ではなく、時間そのものを巻き戻す効果がある
- あなたは「実用新案だから大した権利じゃない、放っておけばいい」と問いを立てているかもしれないが、その問い自体がずれている。実用新案は無審査で登録される分、冒認登録が成立しやすく、しかも登録されてしまえば権利として一応機能する。放置すれば相手はそれを根拠にあなたの製造販売を止めにかかれる。守るべきは「権利の格」ではなく「誰の名義か」だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 得られる結果 | 17条の2移転請求:権利が自分に移り、遡及して自分のものとみなされる | 37条 無効審判:登録が消滅し、誰のものでもなくなる(自分は権利を得ない) 特許法74条:特許権の移転請求(実用新案17条の2の並行規定) |
| 適する目的 | 自分が権利者として市場を押さえたいとき | 相手をただ排除したいだけのとき 特許権で同じ救済を求めるとき |
| 遡及効 | あり(2項:初めから帰属していたものとみなす) | 登録抹消の効果(権利の消滅) あり(特許法74条2項) |
| 共有の同意要件 | 3項で適用除外(他共有者の同意不要) | — 特許法74条3項で同様に適用除外 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も新型專利(実用新案に相当)について、冒認登録に対する真の権利者の救済を用意する。撤銷後の再出願という構成で、日本の移転請求とは技術的に異なる
韓国は2016年改正で特許権の移転請求権を導入し、実用新案法で準用する。日本の2011年改正と発想が近い後発立法
ドイツは Vindikationsanspruch(移転請求権)として真の権利者の権利回復を古くから認める。日本の本条の比較法的源流に位置づけられる
米国に実用新案制度はなく、冒認類似の問題は AIA 下の derivation proceeding で処理される。制度設計が大きく異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 新製品の機構を共同開発した相手が、あなたに無断で単独名義の実用新案登録を済ませていた。共同出願義務(特許法38条、実用新案法11条で準用)違反だ。あなたは持分の移転を請求できる。共有のときは特許法73条1項の他の共有者の同意ルールが外れる(本条3項)ので、相手の協力がなくても手続が進む
- クラウドファンディングで日用品のアイデアを公開した三週間後、見ず知らずの第三者が同じ構造を実用新案登録していた。実用新案は無審査で登録されるから、こういう横取りが特許より起きやすい。発見したあなたに残された道は、無効化か、移転請求か。選び方で得られる結果がまるで違う
- もし、あなたが OEM 先に量産を委託した直後、その会社が考案を自社名義で登録していたと知ったら? 製品はもう市場に出ている。相手はその登録を盾に、あなたに「うちの権利だ、勝手に作るな」と言い始める。あなたが先に動くか、相手が先に売り抜けるか、時間との勝負になる
- 登録名義人として、ある日突然「その実用新案権を移転せよ」という請求書面が届いた被告側のあなた。身に覚えのない請求か、それとも本当に他人の考案だったのか。応じれば権利は遡及的に相手のものになり、あなたが集めたライセンス料の立場まで揺らぐ
取るべき行動
被害を受けた側:1. その考案が本当に自分発の創作だと示す証拠を固める。図面の作成日、相手へ開示した日のメールや LINE、試作の記録、開発ノートを時系列で保全する2. 相手の登録が冒認(37条1項5号)か共同出願違反(同項2号、特許法38条準用)かを切り分ける。どちらに当たるかで請求の組み立てが変わる3. 無効審判に走る前に移転請求を選ぶ判断をする。経済産業省令の定める手続で実用新案権者に移転を請求し、移転登録まで進める4. 共有事案なら本条3項で他共有者の同意が不要な点を主張に組み込む。専門は弁理士、争訟化すれば知財に強い弁護士へ(最新の改正状況をご確認ください)
訴えられた側:1. 届いた移転請求書面に対し、まず自分の登録が本当に冒認・共同出願違反に当たるのかを精査する。自分が独自に到達した考案なら、創作の独自性を示す証拠で正面から争う2. 相手の「権利を有する者」該当性を検証する。本来の権利者でない者の請求なら、その前提自体を崩せる3. 第2項の遡及効で過去のライセンス関係まで影響するため、既存の実施許諾先への通知と契約上の手当てを早めに検討する4. 安易に応諾も全面拒否もせず、弁理士・弁護士と移転 vs 争訟のコストを試算してから対応を決める
時効(請求できる期限):本条の移転請求権そのものに特定の時効規定はないが、一般の消滅時効(民法166条、債権は権利行使可能を知った時から5年または権利行使可能時から10年)の適用が議論されうる。実務上、解釈が分かれている論点である。なお実用新案権の存続期間は出願日から10年(実用新案法15条)であり、権利が満了すれば移転請求の実益は失われる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:17条の2の移転請求は、書面要件や一定の要件を満たす冒認・共同出願違反の場合に、真の権利者へ権利を回復させる手段である。無効審判による登録抹消とは目的・効果が異なり、潰すか取り戻すかは権利者の目的に応じて使い分けるべきと理解されている。
改正沿革 AI による整理
- 平成23年(2011年)改正、平成24年(2012年)4月1日施行 新設。従来は冒認・共同出願違反に対して無効審判による登録抹消しか手段がなかったところ、特許法74条と同時に、真の権利者が実用新案権そのものの移転を請求できる制度を創設し、第2項で遡及的帰属を、第3項で共有持分移転における同意要件の適用除外を定めた
改正の年表
- 1.平成23年(2011年) 新設:特許法74条と同時に新設。従来は冒認・共同出願違反に対して無効審判による登録抹消しか手段がなかったところ、真の権利者が実用新案権そのものの移転を請求できる制度を創設。2項で遡及的帰属、3項で共有持分移転における同意要件の適用除外を定めた。平成24年(2012年)4月1日施行。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める