意匠法 第35条(質権)
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- 意匠権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をすることができない。
- 2.特許法第九十六条(物上代位)の規定は、意匠権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権に準用する。
- 3.特許法第九十八条第一項第三号及び第二項(登録の効果)の規定は、意匠権又は専用実施権を目的とする質権に準用する。
この条文の基本情報
質権とは何ですか?
定義質権とは、意匠法第35条に定められた規定で、「意匠権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をすることが…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 意匠法第35条(質権)は、日本の意匠法に含まれる条文です。
- 意匠法第35条の条文原文は「意匠権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をすることが…」で始まります。
- 意匠法第35条は第一節に置かれています。
- 意匠法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 意匠法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 意匠法第35条の前の条は意匠法第34条です。
- 意匠法第35条の次の条は意匠法第36条です。
- 意匠法第35条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第35条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000125 - 本サイト収録
意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第35条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000125/35
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点意匠法35条は、意匠権を目的とする質権では、質権者は別段の定めがない限り登録意匠を実施できず、意匠権への質権は登録が効力発生要件となると定める。
Q · 意匠権を担保にお金を借りたら、もう自分でその製品を作れなくなるの?
作れます。使えなくなるのは質権者の方です
作れます。意匠法35条1項により、質権者は契約で別段の定めをしない限り登録意匠やその類似意匠を実施できず、逆に設定者である権利者本人は従来どおり実施を続けられます。動産質と違い担保物を引き渡す必要もありません。ただし貸す側は要注意で、3項が準用する特許法98条により意匠権・専用実施権への質権は登録して初めて効力が生じます。契約書だけで登録を怠ると、相手が倒産したとき一般債権者と同じ扱いになり回収ゼロもありえます。
解説
腕時計を質屋に入れれば、その時計は質屋の手に渡り、あなたは使えなくなる。ところが意匠権を担保に資金を借りても、その登録意匠を使い続けるのは、債権者ではなくあなた自身だ。意匠法35条1項は、質権者は契約で別段の定めをしない限り、当該登録意匠やこれに類似する意匠を実施できないと定める。つまり知財を担保に差し出しても、あなたは事業を止めずに製品を作り、売り続けられる。これが知財質権の逆転構造だ。さらに2項は物上代位を準用し、あなたがその意匠のライセンス料や侵害賠償金を受け取る前に、質権者がそれを差し押さえられる。3項は登録の効果を準用し、意匠権や専用実施権への質権は、契約だけでは発生せず、登録して初めて効力を持つ。契約書にサインしただけで安心していると、質権者は無担保の一般債権者に転落する。
法的な位置づけ
意匠法35条は、意匠権・専用実施権・通常実施権を目的とする質権について定める規定である。質権者は契約で別段の定めをしない限り登録意匠を実施できず、物上代位が準用され、意匠権および専用実施権への質権は登録が効力発生要件となる。
手順
- 1.登録簿で先行する質権・専用実施権を確認 貸す側は質権設定の前に意匠登録原簿を確認し、先行する質権や専用実施権の有無をチェックする。優先順位は登録の前後で決まるため、先行権利の把握が回収可能額を左右する
- 2.融資実行と同時に質権設定登録を申請 35条3項が準用する特許法98条により、意匠権・専用実施権への質権は登録して初めて効力が生じる。融資実行と登録申請を同時並行で進め、契約書だけで満足して登録を後回しにしない
- 3.別段の定め(1項但書)を契約に仕込む 債務不履行時に質権者も登録意匠を実施できる特約を交渉段階で盛り込む。この特約の有無で、いざというとき担保物を自ら活用して回収できるかどうかが分かれる
- 4.ライセンス料の物上代位を準備 対象意匠にライセンスがあれば、35条2項の物上代位でロイヤリティを押さえられるよう、支払口座と支払時期を事前に把握する。設定者への払渡し前に差し押さえるのが要件で、払渡し後は行使できない
よくある質問 AI による整理
Q1意匠権の質権とは何ですか?
意匠権・専用実施権・通常実施権を担保として設定する権利質のことです。意匠法35条が根拠で、質権者は別段の定めがない限り登録意匠を実施できず、意匠権への質権は登録が効力発生要件となります。
Q2意匠権の質権はどうやって登録しますか?
特許庁に質権設定登録を申請します。意匠法35条3項が準用する特許法98条により、意匠権・専用実施権への質権は登録して初めて効力が生じるため、融資実行と同時に申請するのが実務の鉄則です。
Q3質権者は担保にした意匠を自分で使えますか?
原則使えません。意匠法35条1項により、質権者は契約で別段の定めをしない限り登録意匠およびその類似意匠を実施できません。使い続けるのは設定者である権利者本人です。
Q4意匠権の質権における物上代位とは何ですか?
35条2項が特許法96条を準用し、意匠のライセンス料や侵害による損害賠償金にも質権の効力が及ぶ仕組みです。ただし設定者に払い渡される前に差し押さえる必要があります。
Q5通常実施権にも質権を設定できますか?
できます。意匠法35条は意匠権・専用実施権・通常実施権のいずれも質権の目的になると定めます。ただし登録が効力発生要件となるのは意匠権と専用実施権への質権で、通常実施権は3項の対象外です。
Q6意匠権の質権はいつ消滅しますか?
被担保債権が弁済や消滅時効で消滅すれば、付従性により質権も消滅します。消滅後は速やかに質権抹消登録を行い、意匠権を完全な状態に戻すのが実務上の手当てです。
Q7別段の定めとは何ですか?
35条1項但書のことで、契約で特約を設ければ質権者も登録意匠を実施できます。債務不履行時に質権者が自ら意匠を実施して回収する道を確保するため、交渉段階で仕込む条項です。
Q8意匠権の質権と特許権の質権は同じですか?
基本構造は同じです。意匠法35条は物上代位(特許法96条)と登録の効果(特許法98条)を準用しており、特許権の質権と同様のルールが適用されます。母法は特許法95条です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1意匠権を担保に入れたら、もう自社製品を売れなくなるんですか?
売れます。35条1項により、質権者は別段の定めがない限り登録意匠を実施できず、逆に設定者であるあなたは従来どおり実施を続けられます。動産質と違い、担保物を引き渡す必要もありません。実務のポイント:金融機関側は「別段の定め」で債務不履行時に自ら実施できる特約を入れたがります。契約交渉でこの特約の発動条件と範囲を狭めておくと、万一のときも事業継続の余地が残ります
Q2質権の設定契約書にサインすれば、もう担保は確保できたと考えていいですか?
いいえ。3項が準用する特許法98条により、意匠権や専用実施権への質権は登録して初めて効力が生じます(効力発生要件)。契約書だけでは質権は存在せず、債務者が倒産すれば一般債権者と同じ扱いです。実務のポイント:意匠権の質権は登録が完了するまで「ない」のと同じです。融資実行と登録申請は同時並行で進めるのが鉄則で、登録の遅れがそのまま回収不能に直結します
Q3担保の意匠権がライセンスされていて、ロイヤリティが入っています。これも担保に含まれますか?
物上代位(2項、特許法96条準用)により、ライセンス料や侵害による損害賠償金にも質権の効力が及びます。ただし設定者に払い渡される前に差し押さえる必要があります。実務のポイント:払渡し後では物上代位できません。ライセンス契約があるなら、質権設定の段階で支払口座や支払時期を把握しておき、差押えのタイミングを逃さない準備が回収率を分けます
間違えやすい点 AI による整理
- 「質に入れたら使えなくなる」と思い込んでいるが、意匠権の質権は逆だ。35条1項により使えなくなるのは質権者の方であり、設定者であるあなたは原則として実施を続けられる。担保物を引き渡す必要もない
- 登録が必要なことは知っていても、その意味の深刻さを知らない人が多い。3項が準用する登録は単なる対抗要件ではなく効力発生要件だ。未登録なら質権は当事者間でも第三者にも存在しないに等しく、債務者倒産時にゼロ円回収もありうる
- 「担保に取った意匠権から直接稼いで回収できる」と考えるのは、問いの立て方が違う。質権者が回収するのは意匠の実施利益ではなく被担保債権だ。意匠から生じるライセンス料や賠償金は物上代位(2項)で押さえるのであって、自分で意匠を使って稼ぐのではない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 権利の性質 | 担保物権(権利質) | 排他的な実施権(専用実施権) 非排他的な実施権(通常実施権) |
| 登録の効果 | 意匠権・専用実施権への質権は登録が効力発生要件(35条3項) | 設定登録が効力発生要件(意匠法27条) 登録は対抗要件(登録なくても発生) |
| 設定者・権利者の実施 | 原則として設定者が実施を継続(35条1項) | 設定範囲で意匠権者の実施が制限される 意匠権者も併存して実施可能 |
| 質権の目的となるか | 質権そのものを規律 | 質権の目的になる(35条) 質権の目的になる(35条) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は設計を専利法で保護し、専利権への質権は民法の権利質規定によるが、登録の位置づけが対抗要件寄りである点で日本と運用が異なる
韓国もデザイン権への質権を認め、質権者の実施制限や登録の扱いは日本の意匠法と類似する
ドイツは権利質の一般規定を意匠権にも適用する。担保物権理論の母法として日本法に影響を与えた
米国は意匠特許への担保権を UCC 第9編の secured transaction として扱い、権利質という構成をとらない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- スタートアップとして自社の看板プロダクトの意匠権を担保に銀行から融資を受けた。心配は無用、35条1項により製品の製造販売は続けられる。返済が滞らない限り、意匠を実施するのはあなたであって、銀行ではない
- あなたが貸し手として取引先の意匠権に質権を設定した。だが契約書を交わしただけで登録を怠った。取引先が倒産したとき、3項が準用する登録要件を満たさないあなたの質権は効力を持たず、一般債権者と同列で按分されるだけになる
- もし担保に取った意匠権が第三者にライセンスされ、毎月ロイヤリティが入っていたとしたら? 2項の物上代位で、その料金が設定者に支払われる前に差し押さえれば、あなたは優先回収できる。だが払渡し後では手遅れ、タイミングがすべてを決める
- 意匠権を担保に取った。だが別段の定めで質権者も実施できる特約を入れ忘れた。結果、担保物を自分で使って回収する道は最初から閉ざされていた
- あと数日で取引先の支払期日。あなたは担保の意匠権から回収できると踏んでいたが、登録簿を見たら自分より先に別の質権が登録されていた。登録の前後だけで、優先順位は決まっていた
取るべき行動
被害を受けた側:1. 貸し手として意匠権に質権を取るなら、融資実行と同時に質権設定登録を申請、3項の効力発生要件を満たすまで気を抜かない2. 登録簿で先行する質権や専用実施権の有無を確認、優先順位を把握3. 対象意匠にライセンスがあれば、ロイヤリティの支払口座と時期を押さえ、設定者への払渡し前に差し押さえられるよう準備(2項、物上代位) 4. 契約に別段の定め(1項但書)を入れ、債務不履行時に自ら意匠を実施して回収する選択肢を確保
訴えられた側:1. 意匠権者として担保提供する側なら、35条1項により原則として実施を続けられることを前提に、事業計画を維持2. 質権者が実施できる特約(別段の定め)の範囲を交渉で最小限に絞る3. ライセンス収入があるなら、物上代位で差し押さえられる範囲を事前に把握し、資金繰りに織り込む4. 被担保債権を完済したら、速やかに質権抹消登録を行い、意匠権を完全な状態に戻す
時効(請求できる期限):質権自体に固有の時効はないが、付従性により被担保債権が時効消滅すれば質権も消滅する。被担保債権の消滅時効は民法166条(権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年)。物上代位(2項)は、ライセンス料等が設定者に払い渡される前の差押えが要件であり、払渡し後は行使できない(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:意匠法35条1項は質権者の実施を原則封じ、設定者の事業継続を保障する規定と解される。3項が準用する登録は効力発生要件であり、未登録の質権は当事者間でも成立しないとするのが通説的理解である
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行意匠法(昭和34年法律第125号)の制定に伴い、意匠権を目的とする質権について、質権者の実施制限・物上代位の準用・登録の効果の準用を定める規定として整備された
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