要点雇用保険法 79 条は、行政庁の職員が事業主の事業所等に立ち入り、関係者に質問し帳簿書類を検査する権限を定める。犯罪捜査には転用できないが、拒否や虚偽陳述には 83 条の罰則がある。
Q · ハローワークや労働局の立入検査は断れますか?
事実上断れません。拒めば 83 条の罰則対象です
雇用保険法 79 条は、行政庁の職員が事業主の事業所や労働保険事務組合の事務所に立ち入り、関係者に質問し、帳簿書類(電磁的記録を含む)を検査する権限を定めています。令状は不要で、3 項により犯罪捜査への転用は禁止されます。もっとも、答弁をしない、偽りの陳述をする、検査を拒み妨げ忌避する行為には 83 条の罰則が科され、86 条の両罰規定で法人にも罰金が及びうるため、実務上「断る」という選択肢はありません。
ハローワークの職員が二人、アポイントなしで会社の受付に立っている。目的は帳簿の確認だと告げられる。総務担当のあなたは、この瞬間に何を判断すべきか。雇用保険法 79 条は、行政庁の職員が事業主の事業所や労働保険事務組合の事務所に立ち入り、関係者に質問し、帳簿書類を検査する権限を定める。押さえるべき点は三つある。第一に、検査対象には電磁的記録が明記されている。勤怠クラウド、給与計算ソフト、業務指示のチャットログまで射程に入る。紙の帳簿がないから出せない、は通用しない。第二に、対象は現に雇用している事業主だけでなく「雇用していたと認められる」事業主も含む。退職者が出た後でも、事業をたたんだ後でも、遡って来る。第三に、3 項は「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」と書く。犯罪捜査ではないから令状は要らない。だが答弁を拒めば 83 条の罰則が待つ。断る自由はあるが、断れば罰せられる。この非対称な構造こそが、行政調査という制度の正体である。
雇用保険法 79 条は行政庁の立入検査権を定める規定であり、被保険者等を雇用し又は雇用していたと認められる事業主の事業所、及び労働保険事務組合の事務所への立入り、関係者への質問、帳簿書類(電磁的記録を含む)の検査を内容とする。2 項は職員の身分証明書の携帯及び提示義務を、3 項は当該権限を犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない旨を定める。
行政庁の職員が事業所に立ち入り、関係者に質問し帳簿書類を検査する行政調査です。雇用保険法 79 条が根拠で、令状は不要ですが犯罪捜査への転用は禁止されています。
出勤簿、賃金台帳、労働者名簿、雇用契約書、被保険者資格関係の届出控えなどです。79 条 1 項は電磁的記録も明記しており、勤怠クラウドや給与ソフトのデータも対象になります。
条文上、事前通知は義務づけられていません。日程調整の連絡が入る場合もありますが、予告なく来訪することもあり得ます。日頃から帳簿を整えておくことが唯一の備えです。
雇用保険に関する書類は 4 年間の保存が求められます(雇用保険法施行規則)。検査は保存期間内の資料を対象とするため、廃棄の判断は保存年限を確認してから行ってください。
対象です。79 条 1 項は帳簿書類に代えて電磁的記録が作成・保存されている場合、当該電磁的記録を含むと明記しています。紙がないことは提出しない理由になりません。
されます。79 条 1 項の対象は現に雇用する事業主だけでなく「雇用していたと認められる」事業主も含みます。退職者が出た後や事業を終了した後でも遡って調査され得ます。
支給決定の取消しと返還命令の対象となり、悪質な場合は事業主名の公表や刑事告発に至ることもあります。検査で得られた事実がその根拠資料として引用されます。
条文上、専門家の同席を禁じる規定はなく、実務上も同席は行われています。日程調整の連絡があった段階で顧問社労士や弁護士に相談し、立会いを依頼するのが安全です。
答弁をしない、偽りの陳述をする、検査を拒み妨げ忌避する、いずれも 83 条の罰則対象で、6 か月以下の拘禁刑又は 30 万円以下の罰金です。86 条の両罰規定により法人にも罰金が科されうる。業界裏話ヒント:実際に刑事立件される例は稀である。だが拒否した事実は調査記録に残り、助成金の不支給決定や支給決定の取消理由として引用される。刑事罰より行政的な不利益の方がはるかに早く、確実に来る
その前提が誤っている。3 項は令状なしの検査権限を犯罪捜査に流用することを禁じる規定であって、調査で判明した事実が後に詐欺罪(刑法 246 条)の告発や不正受給の返還命令(雇用保険法 10 条の 4)につながることまで遮断しない。業界裏話ヒント:職員が「これは犯罪捜査ではありませんので」と告げるのは事実だが、安心材料ではない。行政調査に憲法 35 条・38 条の保障がどこまで及ぶかは川崎民商事件(最大判昭和 47.11.22)以来、限定的に解されており、実務上も解釈が分かれる領域である
2 項は職員に証明書の携帯と提示を義務づけているので、提示を求めるのは完全に正当である。ただし提示を受けた後に立入りを拒めば 83 条の忌避に該当しうる。なお提示義務違反そのものに罰則規定は置かれていない。業界裏話ヒント:提示を求める真の意味は追い返すことではなく、求めた事実と職員名を記録に残すことにある。後日、処分の適正性を争うとき、その一行のメモが唯一の突破口になる
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