民事執行法 第167条の8(差押禁止債権の範囲の変更)
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- 執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押処分の全部若しくは一部を取り消し、又は第百六十七条の十四第一項において準用する第百五十二条の規定により差し押さえてはならない金銭債権の部分について差押処分をすべき旨を命ずることができる。
- 2.事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押処分が取り消された金銭債権について差押処分をすべき旨を命じ、又は同項の規定によりされた差押処分の全部若しくは一部を取り消すことができる。
- 3.第百五十三条第三項から第五項までの規定は、前二項の申立てがあつた場合について準用する。この場合において、同条第四項中「差押命令」とあるのは、「差押処分」と読み替えるものとする。
この条文の基本情報
差押禁止債権の範囲の変更とは何ですか?
定義差押禁止債権の範囲の変更とは、民事執行法第167条の8に定められた規定で、「執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押処分の全部若しくは一部を取り消し、又は第百六十七条の十四第一項において準用す…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第167条の8(差押禁止債権の範囲の変更)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第167条の8の条文原文は「執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押処分の全部若しくは一部を取り消し、又は第百六十七条の十四第一項において準用す…」で始まります。
- 民事執行法第167条の8は第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第167条の8の前の条は民事執行法第167条の7です。
- 民事執行法第167条の8の次の条は民事執行法第167条の9です。
- 民事執行法第167条の8には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第167条の8 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第167条の8(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/167_8
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法167条の8は、少額訴訟で差し押さえられた給料について、生活状況を理由に執行裁判所へ差押えの取消し・縮小を申し立てられると定める規定。逆に債権者も拡張を申し立てられる。
Q · 給料を差し押さえられたら、払い終わるまで我慢するしかないの?
生活が苦しければ裁判所に差押えの縮小を申し立てられる
いいえ。民事執行法167条の8第1項により、債務者は執行裁判所に差押処分の取消し・縮小を申し立てられます。給料は原則4分の3が差押禁止ですが、残りの4分の1すら生活に必要なら、その分の取消しも可能です。逆に債権者は、債務者に十分な資力があれば、保護部分(4分の3)への差押えの拡張を申し立てられます。事情が変われば、双方とも同条2項で後から再調整を求められます。給料等の差押えには送達から取立猶予期間があり、この間に申し立てるのが定石です。
解説
給料日、明細を見たら「差押」の欄が引かれている。裁判で負けた、あるいは払えなかった借金の債権者が、簡易裁判所の書記官を通じてあなたの給料に差押処分をかけたのだ。これが少額訴訟債権執行。ここで多くの人が誤解する。「差し押さえられたら、払い終わるまで我慢するしかない」と。違う。給料は原則として手取りの4分の3(政令で定める額、現行は月額33万円を超える部分はこの限りでない)が差押禁止で、取れるのは4分の1。だが民事執行法167条の8は、その残りすら生活が立ち行かないなら、あなたの申立てで裁判官が差押処分の取消し・縮小を命じられると定める。逆に、あなたに十分な資力があると債権者が示せば、保護されているはずの4分の3にまで差押えを広げることもできる。差押えは一方通行ではない。扉は両側に開く。
法的な位置づけ
民事執行法167条の8は、少額訴訟債権執行における差押禁止債権の範囲変更を定める規定である。執行裁判所は、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮し、申立てにより差押処分の全部又は一部を取り消し、あるいは差押禁止部分についても差押処分を命ずることができる。事情変更による再調整も認められる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.執行裁判所に範囲変更の申立書を提出 差押処分をした簡易裁判所(執行裁判所)に「差押禁止債権の範囲変更の申立書」を提出する。給料等なら債務者送達からの取立猶予期間のうちに動くのが定石。書記官ではなく裁判官への申立てである点に注意
- 2.生活困窮を数字で示す疎明資料を添付 家計収支表、扶養家族の状況、家賃・医療費・教育費の領収書を添え、可処分所得が最低生活費を割ることを具体的な数字で示す。抽象的に『苦しい』と訴えても通らない。生活保護基準額が一つの目安
- 3.審理中の取立ての一時停止を同時に申立て 範囲変更の申立てと同時に、167条の8第3項が準用する153条の措置により、審理が終わるまでの取立ての一時停止も求める。単に申し立てるだけでなく停止までセットで求めると、審理中の数か月の生活が守られる
- 4.事情が悪化したら第2項で再申立て 後で収入がさらに減るなど事情が変わったら、167条の8第2項に基づき、いったん決まった差押処分の取消し・縮小を再度申し立てられる。状況は流動的で、動いた側が有利になる
よくある質問 AI による整理
Q1少額訴訟債権執行とは何ですか?
少額訴訟の判決などを債務名義として、簡易裁判所の書記官が差押処分により給料や預金を差し押さえる簡易な執行手続です。通常の債権執行より手軽に利用できます。
Q2差押禁止債権の範囲変更はどこに申し立てますか?
差押処分をした簡易裁判所(執行裁判所)に「差押禁止債権の範囲変更の申立書」を提出します。書記官への抗議ではなく、裁判官への申立てが必要です。窓口を間違えると時間だけが過ぎます。
Q3給料はいくらまで差し押さえられますか?
原則として手取りの4分の1までです。ただし手取りが月額33万円を超える部分は全額差押えの対象になります(民事執行法152条、施行令で定める額)。
Q4差押えの取立てはいつから始まりますか?
給料等の債権では、債務者への差押処分の送達から4週間は債権者が取り立てできません(155条2項、令和元年改正で1週間から延長)。この猶予が範囲変更申立ての勝負どころです。
Q5差押禁止範囲の変更に申立て期限はありますか?
申立て自体に特定の期限はなく、執行手続が続く間は可能です。ただし取立猶予の4週間を過ぎると当月分は引かれるため、実質的な期限はこの猶予期間です。
Q6収入が減ったら差押えを見直してもらえますか?
はい。167条の8第2項は事情変更による再調整を認めます。収入が落ちれば債務者が縮小を、隠れ資力が判明すれば債権者が拡張を、後からでも申し立てられます。
Q7少額訴訟債権執行と通常の債権執行の違いは何ですか?
通常の債権執行は地方裁判所が差押命令で行い、少額訴訟債権執行は簡易裁判所の書記官が差押処分で行う簡易版です。範囲変更は153条(通常)と167条の8(少額)で同趣旨です。
Q8差押処分に不服がある場合はどうすればいいですか?
範囲変更の申立てのほか、167条の8が準用する153条により、審理中の取立ての一時停止も同時に求められます。結論に不服なら即時抗告で争う余地があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1給料を差し押さえられたら、借金を払い終わるまで我慢するしかないんですか?
いいえ。民事執行法167条の8第1項で、生活状況を理由に差押処分の取消し・縮小を執行裁判所に申し立てられます。給料は原則4分の3が差押禁止ですが、残りの4分の1すら生活に必要なら、その分の取消しも可能です。実務のポイント:給料等の差押えは債務者への送達から4週間、債権者が取り立てできません(155条2項)。この猶予は債務者が範囲変更を申し立てる時間を確保するため令和元年改正で1週間から延長された。動くなら、この4週間のうちに
Q2差押えを減らしてもらうには、何を見せればいいんですか?
執行裁判所は債務者と債権者双方の生活状況その他の事情を考慮します(167条の8第1項)。実務では家計収支表、扶養家族の状況、家賃・医療費・教育費の領収書など、生活が立ち行かないことを数字で示す疎明資料が要ります。実務のポイント:抽象的に「苦しい」と訴えても通りません。可処分所得と最低生活費の差額を具体的な数字で示せた申立てが通る。生活保護基準額が一つの目安として参照されることがあります
Q3相手に十分な収入があるのに4分の1しか取れない。もっと差し押さえられませんか?
可能な場合があります。167条の8第1項後段は、債権者の申立てにより、本来差押禁止の部分(4分の3)についても差押処分を命じられると定めます。債務者に十分な資力があり、保護の必要性が低いと裁判所が判断すればです。実務のポイント:この債権者側の拡張申立ては、存在は知られていても実際の認容例は多くありません。相手の他の収入源や資産を示す客観資料を添えられるかが分かれ目で、単に『払えるはず』では動きません
間違えやすい点 AI による整理
- 給料は4分の3が守られると知っている人でも、その深刻度までは知らない。守られる4分の3の側は、債権者の申立てで削られることがあり、取れる4分の1の側は、債務者の申立てでゼロにできる。保護ラインは固定の壁ではなく、両側から動かせる可動式の仕切りだ
- 「書記官の差押処分をどうやって止めるか」と問いを立てる人が多いが、その問いの立て方自体がずれている。差押処分を出すのは書記官でも、取消し・縮小を判断するのは執行裁判所の裁判官であり、必要なのは書記官への抗議ではなく、裁判官への167条の8の申立てだ。窓口を間違えると時間だけが過ぎる
- 「差押えが始まったら払い終わるまで固定」と思われているが、167条の8第2項は事情変更による再調整を双方向で認める。収入が落ちれば債務者が縮小を、隠れ資力が判明すれば債権者が拡張を、後からでも申し立てられる。状況は流動的で、動いた側が有利になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象手続 | 167条の8:少額訴訟債権執行(簡裁書記官の差押処分)の範囲変更 | 153条:通常の債権執行(差押命令)の範囲変更 152条:差押禁止債権そのものの範囲(原則4分の3) |
| 変更を判断する主体 | 執行裁判所(簡易裁判所の裁判官) | 執行裁判所(地方裁判所の裁判官) 法律・政令が定める固定枠(33万円等) |
| 双方向性 | 債務者は取消し・縮小、債権者は禁止部分への拡張を申立て可(第1項) | 同趣旨(153条1項)で双方向に調整可 固定枠で調整機能はなし |
| 取立猶予との関係 | 155条2項(4週間の取立猶予)の間に申立てるのが実効的 | 同じく155条2項の猶予が適用 167条の14が152条を少額訴訟債権執行に準用 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も債務者とその共同生活の親族の生活に必要な債権の差押えを禁じ、裁判所が範囲を調整できる点で日本と同趣旨。給料差押えの割合制限も設けられている。
韓国も圧留禁止債権を定め、法院が債務者・債権者の生活状況を考慮して圧留範囲を変更できる。日本167条の8とほぼ並行する制度設計。
ドイツは執行裁判所が債務者の特別の必要や事情を考慮して差押可能額(unpfändbarer Betrag)を変更できる。Pfändungsschutzkonto(§ 850k)とあわせ、範囲調整と口座保護を組み合わせる。
米国連邦法は賃金差押えを可処分所得の25% 等に制限。個別の生活困窮に応じた裁判所の裁量的縮小より、一律の上限規制が中心で、州法が上乗せ保護を定める。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 差し押さえられた後で、差押えを減らしてもらうことはできるのか。できる。給料の手取りが少なく、扶養家族や家賃、医療費で生活が立ち行かないなら、執行裁判所に差押処分の取消し・縮小を申し立てられる。ポイントは、本来取れる4分の1の部分すら、生活状況次第で止められること
- あなたが少額訴訟で勝った債権者の側。相手の給料の4分の1を差し押さえたが、相手は明らかに払える資力があるのに、のらりくらりと逃げる。167条の8第1項後段を使えば、保護されている4分の3の一部にまで差押えを広げるよう裁判所に申し立てられる。単に泣き寝入りする必要はない
- 副業の業績が急に落ち、去年の収入を前提にした差押えでは今の生活が破綻する。事情が変わったのだ。167条の8第2項は、この事情変更を理由にした差押えの再調整を認める
- 差押処分の通知が勤務先に届いた。給料等の差押えでは取立てが始まるまで数週間の猶予がある。この間に範囲変更を申し立てなければ、来月の給料から容赦なく引かれる。残された時間は多くない、今夜から家計収支表を作り始めるかどうかで結果が変わる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 執行裁判所(差押処分をした簡易裁判所)に「差押禁止債権の範囲変更の申立書」を提出。給料等なら債務者送達からの取立猶予のうちに動くのが定石2. 家計収支表、扶養家族・家賃・医療費・教育費の疎明資料を添え、可処分所得が最低生活費を割ることを数字で示す3. 申立てと同時に、審理中の取立ての一時停止も求める(167条の8第3項の準用) 4. 後で事情が悪化したら167条の8第2項で再度申し立てられる
訴えられた側:1. 債務者が範囲変更を申し立てても自動では減額されない。生活が本当に困窮しているか、収支資料の不自然な点を突いて反論2. 逆に債務者に十分な資力があるなら、167条の8第1項後段で保護部分(4分の3)への差押え拡張を申し立てる3. 相手の他の収入源・資産を示す客観資料を用意する4. 裁判の結論に不服なら、準用される即時抗告で争う余地がある
時効(請求できる期限):申立て自体に特定の期限はなく、執行手続が続く間は可能。ただし給料等の差押禁止債権については、差押処分の債務者送達日から4週間は債権者が取り立てできず(民事執行法155条2項の趣旨)、この4週間が実質的な勝負どころ。取立てが始まる前に申し立てるのが定石
学説
通説:167条の8の範囲変更は、書面や資料により生活困窮または資力の存在が疎明されれば、執行裁判所が個別事情に応じて差押処分を上下双方向に調整できるとする。生存権(憲法25条)と債権者の財産権・回収の実効性(憲法29条)の調和を、静的な線引きではなく動的な運用で図る点に本条の意義があると解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年) 少額訴訟債権執行制度の創設に伴い新設。簡易裁判所の書記官による差押処分方式に、通常の債権執行にある差押禁止範囲の変更(153条)と同じ債務者・債権者保護の仕組みを準用の形で導入した
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 新設:少額訴訟債権執行制度の創設に伴い新設。簡易裁判所の書記官による差押処分方式に、通常の債権執行にある差押禁止範囲の変更(153条)と同じ債務者・債権者保護の仕組みを準用の形で導入した。
- 2.令和元年(2019年) 改正:本条が実効性を持つ前提となる155条2項の取立猶予が1週間から4週間に延長され、債務者が範囲変更を申し立てるための時間が確保された。
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