民事執行法 第155条(差押債権者の金銭債権の取立て)
クイックジャンプ
- 金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。
- 2.差し押さえられた金銭債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「一週間」とあるのは、「四週間」とする。
- 3.差押債権者が第三債務者から支払を受けたときは、その債権及び執行費用は、支払を受けた額の限度で、弁済されたものとみなす。
- 4.差押債権者は、前項の支払を受けたときは、直ちに、その旨を執行裁判所に届け出なければならない。
- 5.差押債権者は、第一項の規定により金銭債権を取り立てることができることとなつた日(前項又はこの項の規定による届出をした場合にあつては、最後に当該届出をした日。次項において同じ。)から第三項の支払を受けることなく二年を経過したときは、同項の支払を受けていない旨を執行裁判所に届け出なければならない。
- 6.第一項の規定により金銭債権を取り立てることができることとなつた日から二年を経過した後四週間以内に差押債権者が前二項の規定による届出をしないときは、執行裁判所は、差押命令を取り消すことができる。
- 7.差押債権者が前項の規定により差押命令を取り消す旨の決定の告知を受けてから一週間の不変期間内に第四項の規定による届出(差し押さえられた金銭債権の全部の支払を受けた旨の届出を除く。)又は第五項の規定による届出をしたときは、当該決定は、その効力を失う。
- 8.差押債権者が第五項に規定する期間を経過する前に執行裁判所に第三項の支払を受けていない旨の届出をしたときは、第五項及び第六項の規定の適用については、第五項の規定による届出があつたものとみなす。
この条文の基本情報
差押債権者の金銭債権の取立てとは何ですか?
定義差押債権者の金銭債権の取立てとは、民事執行法第155条に定められた規定で、「金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第155条(差押債権者の金銭債権の取立て)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第155条の条文原文は「金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執…」で始まります。
- 民事執行法第155条は第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第155条の前の条は民事執行法第154条です。
- 民事執行法第155条の次の条は民事執行法第156条です。
- 民事執行法第155条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第155条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第155条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/155
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法155条は、差押命令が債務者に送達された日から1週間を経過すると、債権者が第三債務者から直接債権を取り立てられると定める。給料・年金等の差押禁止債権は4週間となる。
Q · 差押命令が届いたら、すぐ相手の銀行口座からお金を回収できるの?
いいえ、送達から1週間(給料等は4週間)待つ必要があります
民事執行法155条1項により、取り立てられるのは債務者に差押命令が送達された日から1週間を経過した後です。給料・年金等の差押禁止債権を差し押さえた場合は4週間に延びます(同2項)。ただし養育費など扶養義務に係る債権を含む場合は1週間のままです。取立ては裁判所が代行するのではなく、債権者自身が第三債務者(銀行・勤務先)へ直接請求し、受領したら直ちに執行裁判所へ届け出ます(4項)。2年放置すると差押えごと取り消される危険があります。
解説
裁判で勝った、差押命令も取れた、これで相手の預金や給料から回収できる。そう思った瞬間に落とし穴が待っている。民事執行法155条は、差押命令が「債務者に」送達された日から1週間を経過しないと、あなたは第三債務者(銀行や勤務先)から取り立てられないと定める。相手の給料や年金を差し押さえた場合はさらに厳しく、待期間は4週間になる。しかも取り立ては裁判所が代わりにやってくれるものではない。あなた自身が銀行や勤務先へ直接請求して回収し、受け取ったら直ちに裁判所へ届け出る。そのうえ、動かないまま2年放置すると、差押えそのものが取り消されうる。差押命令を手にした時点はゴールではなく、複数の時計が同時に動き出すスタート地点だ。その針の読み方を知らない者は、勝訴判決を握ったまま1円も取れずに終わる。
法的な位置づけ
民事執行法155条は、金銭債権を差し押さえた債権者の取立権を定める規定である。債務者への差押命令送達日から1週間(差押禁止債権は4週間)の経過により、債権者は第三債務者から直接の取立てが可能となる。取立額は差押債権者の債権額および執行費用の限度に制限され、支払受領後は執行裁判所への届出義務を負う。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.債務者への送達日を確認し取立開始日を計算 差押命令の送達記録で「債務者に」送達された日を特定する。起算日は銀行への送達日ではない。通常債権なら送達日+1週間、給料・年金等の差押禁止債権なら+4週間、養育費等の扶養義務債権を含むなら+1週間が取立開始日となる
- 2.取立開始日以降に第三債務者へ書面で請求 取立開始日を過ぎたら、第三債務者(銀行・勤務先)へ書面で支払いを請求する。差押債権者の債権額と執行費用の限度を超えて受け取ることはできない(1項但書)。任意に応じない場合は取立訴訟(157条)を提起する
- 3.支払いを受けたら直ちに取立届を提出 第三債務者から支払いを受けたら、直ちに執行裁判所へ取立届を提出する(4項)。支払いを受けた限度で債権と執行費用は弁済されたものとみなされる(3項)。全額回収なら手続は終了する
- 4.2年の期限を管理し非支払届を忘れず出す 取立可能日から2年支払いを受けられない場合は、非支払届を執行裁判所へ提出する(5項)。届出を怠ると差押命令が取り消されうる(6項)。取消決定が届いても告知から1週間以内に届出すれば決定は失効する(7項)
よくある質問 AI による整理
Q1取立権とは何ですか?
差し押さえた金銭債権を、債権者自身が第三債務者(銀行・勤務先)から直接取り立てる権利です。民事執行法155条が根拠で、裁判所が代行するものではありません。
Q2差押命令 取立て いつから
債務者に差押命令が送達された日から1週間経過後です。給料・年金等の差押禁止債権は4週間、養育費等の扶養義務債権を含む場合は1週間となります。
Q3転付命令と取立ての違いは何ですか?
取立ては債権を回収する権限のみで他の債権者と按分の危険があります。転付命令は債権そのものを自分に移すため独占できますが、第三債務者が無資力なら焦げ付きリスクを一人で負います。
Q4取立届を出さないとどうなりますか?
支払いを受けたのに届け出ないと手続が進まず、取立可能日から2年放置して非支払届も怠ると、執行裁判所が差押命令を取り消せます(155条5・6項)。
Q5養育費の差押えは給料の何分の一までですか?
扶養義務に係る債権は通常の4分の1ではなく給料の2分の1まで差押え可能です(152条3項)。待期間も4週間でなく1週間に短縮されます。
Q6差押えを2年放置すると取り消されますか?
取立可能日から2年支払いを受けず届出もしないと、その後4週間以内に届出しなければ執行裁判所が差押命令を取り消せます。令和2年施行の新制度です。
Q7取立訴訟とは何ですか?
第三債務者が任意に支払わない場合に、支払いを命じる判決を求めて提起する訴訟です(民事執行法157条)。勝訴すれば強制的に回収できます。
Q8差押禁止債権はなぜ4週間待つのですか?
給料・年金は生活の糧のため、債務者に請求異議や差押禁止範囲変更の申立てをする猶予を与える趣旨です。令和元年改正で1週間から4週間へ延長されました。
この条文についての質問 AI による整理
Q1差押命令が出たら、すぐ相手の口座からお金を引き出せるんですよね?
できません。取り立てられるのは、債務者に差押命令が送達された日から1週間を経過した後です(155条1項)。給料や年金の差押えならさらに4週間かかります(同2項)。実務のポイント:実務で第三債務者(銀行)は待期間の経過を厳格に確認し、1日早いだけでも支払いを拒みます。しかも起算日は「銀行への送達日」ではなく「債務者への送達日」。ここを取り違えて空振りする申立人が本当に多い。送達通知が届いたら、真っ先に債務者送達日を押さえる
Q2給料を差し押さえたら、毎月ずっと自動で入ってくるんですか?
給料は継続的な債権なので将来分にも効力が及びますが、取立ての開始には4週間の待期間があります(155条2項、152条)。ただし養育費など扶養義務に係る債権が含まれる場合は1週間です(151条の2、155条2項括弧書き)。実務のポイント:養育費の差押えは通常債権の4分の1ではなく給料の2分の1まで可能(152条3項)、しかも待期間も短い。養育費回収は制度上、圧倒的に有利に設計されている。この差を知らずに通常債権として申し立てると、取れる額も速度も損をする
Q3差し押さえたまま、しばらく放っておいても大丈夫ですか?
危険です。取立可能日から2年支払いを受けず届出もしないと、その後4週間以内に届出しなければ執行裁判所が差押命令を取り消せます(155条5・6項)。実務のポイント:令和2年施行の改正で新設された制度です。長期間眠ったままの差押えが第三債務者(特に銀行)の事務を圧迫していたため、裁判所が掃除できるようになった。ただし取消決定が届いても1週間以内に届出すれば決定は失効する(7項)。通知を放り投げず、必ず期限内に動く
Q4第三債務者が『払わない』と言ったら、どうすればいいですか?
取立訴訟(民事執行法157条)を提起して、第三債務者に支払いを命じる判決を求めます。相手が二重払いの危険などを理由に供託することもあります(156条)。実務のポイント:取立てより、転付命令(159条)で債権そのものを自分に移す方が確実な場面がある。転付は他の債権者を排除して独占できる反面、第三債務者が無資力なら回収不能のリスクを自分一人で負う。独占の魅力と焦げ付きの怖さ、この天秤を最初に検討するかどうかで結果が分かれる
間違えやすい点 AI による整理
- 「差押命令が届けばすぐ相手の金を取れる」と思われているが、命令の送達から取立てまでには1週間(給料・年金等の差押禁止債権なら4週間)の待期間がある。この間、第三債務者は正当に支払いを拒める
- 取立ては自分でやると知っている人でも、支払いを受けたら「直ちに届け出る」義務(4項)の重さは見落としがちだ。届出を怠って2年放置すると、裁判所は差押命令ごと取り消せる(5・6項)。取立権は、放っておけば腐る
- 「取立てにするか転付命令にするかは細かい手続選択」と考えて何となく取立てを選ぶ人が多いが、問いの立て方自体が誤っている。他に債権者がいる場面では、転付命令で債権を独占するか、取立てで按分の危険を負うか、最初の一手が回収額を丸ごと左右する
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 回収の仕組み | 155条 取立て:債権を回収する権限を得る(債権は移転しない) | 159条 転付命令:差押債権そのものを自分に移転 157条 取立訴訟:第三債務者に支払いを命じる判決を取得 |
| 他の債権者との関係 | 配当要求があれば按分され独占できない | 確定すれば独占でき他の債権者を排除 取立ての実効性を確保する手段(独占効はない) |
| 第三債務者無資力のリスク | 回収できなければ原債権は残る | 券面額で弁済とみなされ焦げ付きを一人で負担 判決を得ても無資力なら回収不能 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は執行法院が収取命令または移転命令を発する構造で、日本の取立て・転付命令に対応する。債権者自身が第三債務者から回収する点は共通する
韓国は추심명령(収取命令)と전부명령(転付命令)を明文で区別し、日本の155条取立て・159条転付命令とほぼ同型の二本立てを採る
ドイツは差押命令(Pfändung)に続き、取立てのための移付(Überweisung zur Einziehung)と弁済に代わる移付(an Zahlungs statt)を区別。日本法の源流にあたる
米国はガーニッシュメントにより第三債務者(garnishee)へ支払いを命じる。連邦法(Consumer Credit Protection Act)が給料差押えの上限を定める点は差押禁止債権と類似する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 貸した金を返さない相手にようやく勝訴判決を得て、相手の給料を差し押さえた。だが取り立てられるのは4週間後。その間に相手が退職・転職してしまえば、差押えの効力は次の勤務先には及ばない。時計の針が回るほど回収は遠のく
- もし差押命令が第三債務者である銀行に届いた翌日、あなたが銀行に電話して「口座の金を払え」と請求したら、どうなる? 銀行は正当に拒める。起算日は「銀行への送達」ではなく「債務者への送達」から1週間だからだ。ここを間違えて空振りする人は少なくない
- 給料を差し押さえられた側にとって、命令が届いてから4週間は無防備な待ち時間ではない。その間に請求異議、分割弁済の交渉、差押禁止範囲の変更申立てができる。この4週間の意味を知らずに、初日で諦めて泣き寝入りする人が多い
- 差押えから2年、あなたは第三債務者から1円も受け取っていない。ある日、裁判所から差押命令取消しの決定が届く。放置すれば差押えは消える
- 取消決定の告知を受けてから届出できるのは、たった1週間の不変期間。あと数日でこの窓が閉じれば、あなたの差押えは効力を失い、また一から手続をやり直すことになる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 差押命令の送達記録で「債務者に」送達された日を確認、そこから1週間(給料・年金等の差押禁止債権は4週間、ただし養育費等の扶養義務債権を含むなら1週間)後が取立開始日2. 開始日以降、第三債務者(銀行・勤務先)へ書面で支払いを請求、任意に応じなければ取立訴訟(157条)を提起3. 支払いを受けたら直ちに執行裁判所へ取立届を提出(4項) 4. 2年取り立てられない場合は非支払届を忘れず出す(5項)、怠れば差押えが取り消される(6項)
訴えられた側:1. 命令が届いたら、取立てが始まる前の1週間・4週間が勝負どころ、この間に執行抗告・請求異議の訴え・分割弁済の交渉を検討2. 給料差押えで生活が立ち行かないなら差押禁止範囲の変更申立て(153条)を検討3. 差押債権者の債権額+執行費用を超えて取られることはない(1項但書)、超過取立ては争える4. 2年放置された古い差押えは取消しの対象、現況を裁判所で確認する
時効(請求できる期限):取立ては債務者への差押命令送達日から1週間経過後(給料・年金等の差押禁止債権は4週間後、扶養義務に係る債権を含む場合は1週間後)。取立可能日から2年支払いを受けないと非支払届出義務が生じ、その後4週間以内に届出しないと裁判所が差押命令を取り消しうる(155条5・6項)。取消決定の告知から1週間の不変期間内に届出すれば失効を免れる(同7項)。この2年の届出制度は令和元年改正で新設(施行 令和2年4月1日)
学説
通説:155条の取立権は、差押債権者が債務者に代わって第三債務者から金銭債権を回収する権能であり、法定訴訟担当の一場面と理解される。取立ては債権を移転させない点で転付命令(159条)と区別され、他の債権者による配当要求があれば按分の対象となる。
改正沿革 AI による整理
- 令和元年(2019年)改正、施行 令和2年(2020年)4月1日 給料・年金等の差押禁止債権(152条)を差し押さえた場合の取立開始までの待期間を、原則の1週間から4週間に延長(2項)。あわせて、取立可能日から2年間支払いを受けず届出もしない差押えを執行裁判所が取り消せる制度を新設(5〜8項)し、長期間放置される差押えによる第三債務者の負担を軽減した
改正の年表
- 1.昭和54年(1979年) 新設:民事執行法の制定により、旧民事訴訟法の強制執行編から強制執行を独立法典化。金銭債権の差押債権者による取立権を整備した
- 2.令和元年(2019年)改正、施行 令和2年(2020年)4月1日 改正:給料・年金等の差押禁止債権(152条)を差し押さえた場合の待期間を1週間から4週間へ延長(2項)。あわせて取立可能日から2年間支払いを受けず届出もしない差押えを執行裁判所が取り消せる制度を新設(5〜8項)し、長期間放置される差押えによる第三債務者の負担を軽減した
- 民事執行法 第152条差押禁止債権、4週間待期間の対象を画定
- 民事執行法 第151条の2扶養義務等に係る債権、1週間への短縮要件
- 民事執行法 第156条第三債務者の供託、取立てへの対応手段
- 民事執行法 第157条取立訴訟、第三債務者が任意に支払わない場合の手段
- 民事執行法 第159条転付命令、取立てに代わる債権の移転手段
- 国税徴収法 第67条滞納処分における差押債権の取立ての対応規定
- 破産法 第42条破産手続開始による強制執行の失効、取立権の制約
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)。AI による解説は理解の補助であり、法的効力は条文原文が基準です。