民事執行法 第153条(差押禁止債権の範囲の変更)
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- 執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。
- 2.事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押命令が取り消された債権を差し押さえ、又は同項の規定による差押命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。
- 3.前二項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで、第三債務者に対し、支払その他の給付の禁止を命ずることができる。
- 4.第一項又は第二項の規定による差押命令の取消しの申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。
- 5.第三項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
この条文の基本情報
差押禁止債権の範囲の変更とは何ですか?
定義差押禁止債権の範囲の変更とは、民事執行法第153条に定められた規定で、「執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第153条(差押禁止債権の範囲の変更)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第153条の条文原文は「執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない…」で始まります。
- 民事執行法第153条は第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第153条の前の条は民事執行法第152条です。
- 民事執行法第153条の次の条は民事執行法第154条です。
- 民事執行法第153条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第153条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第153条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/153
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法153条は、執行裁判所が生活状況などを考慮して、給料等の差押命令を取り消し、または差押禁止部分にまで差押えを広げられると定める規定である。
Q · 給料を差し押さえられて生活できない。裁判所に減らしてもらえるって本当?
生活状況を疎明すれば、裁判所に給料差押えの減額や取消しを申し立てられる
民事執行法153条1項により、執行裁判所は債務者・債権者双方の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部または一部を取り消せます。家計が赤字になるほど生活が苦しいなら、収支を疎明して減額・取消しを申し立てられます。逆に債務者が高収入の場合、債権者は同項後段で差押えの範囲拡大を申し立てられます。ただし申立て自体には天引きを止める効力はなく、止めたければ3項の支払禁止の仮の命令を別途求める必要があります。
解説
給料を差し押さえられた。手取りの4分の1が毎月消えていく。多くの人はここで「法律で決まったことだから仕方ない」と諦める。それが153条を知らない人の反応だ。民事執行法152条は給料の4分の3を守るが、153条はその線を『動かせる』と定める。しかも両方向に。あなたが差押えのせいで家賃も払えず生活が立ち行かないなら、執行裁判所に申し立てて差押えを減らす、あるいは全部取り消すことができる。逆にあなたが債権者で、相手が高給取りなのに4分の1しか取れないと感じるなら、範囲を広げる申立てができる。鍵は『生活の状況その他の事情』という一文。裁判官はあなたの家計を見て線を引き直す。この申立てを知っているかどうかで、毎月の手取りが数万円変わる。
法的な位置づけ
民事執行法153条は差押禁止債権の範囲変更を定める規定であり、執行裁判所が債務者および債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部もしくは一部を取り消し、または152条により差押禁止とされた債権部分について新たに差押命令を発することを認める。一律の差押禁止基準に対する個別調整手続として機能する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.天引き開始時期を確認する 差押命令が届いたら、まず勤務先(第三債務者)への天引きがいつから始まるかを確認する。始まる前に動けばキャッシュフローを傷つけずに戦えるため、タイミングが最重要になる
- 2.生活状況を証拠化する 直近数か月の収支を証拠化する。家賃・光熱費・医療費・扶養家族の生活費の領収書を集め、153条1項の『生活の状況その他の事情』を疎明する資料を家計簿レベルで作成する
- 3.範囲変更を申し立てる 執行裁判所に差押えの範囲変更(減額または全部取消し)を申し立てる。同時に153条3項の支払禁止の仮の命令も求め、裁判が確定するまでの天引きを止める
- 4.却下されたら執行抗告する 取消しの申立てが却下された場合、裁判の告知を受けた日から1週間以内に執行抗告を申し立てる。この不変期間(民事執行法10条2項)を逃すと決定が確定する
よくある質問 AI による整理
Q1差押禁止債権とは何ですか?
給料や年金など、債務者の生活維持のため差押えが法律で制限される債権です。民事執行法152条が原則4分の3を保護し、153条でその範囲を個別に変更できます。
Q2給料の差押えを減額する申立ての方法は?
執行裁判所に差押えの範囲変更(減額・取消し)を申し立てます。家賃・医療費・扶養家族の生活費など収支を疎明する資料を添え、153条1項の『生活の状況』を示すのが要点です。
Q3民事執行法153条の執行抗告の期限は?
取消しの申立てを却下する決定に対する執行抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間です(民事執行法10条2項)。これを過ぎると確定します。
Q4差押えの範囲変更の申立てに期限はありますか?
申立て自体に期限はなく、差押えが続く限りいつでも可能です。期限があるのは却下決定への執行抗告(1週間)の方です。
Q5退職金も差押えの範囲変更の対象になりますか?
退職金も『給料等』として152条・153条の保護対象になりうるため、全額を持っていかれるわけではなく、範囲変更を申し立てる余地が残ります。
Q6支払禁止の仮の命令とは何ですか?
153条3項の制度で、範囲変更の裁判が確定するまで、勤務先(第三債務者)に支払を禁じる命令です。天引きを止めるにはこれを別途求める必要があります。
Q7債権者側から差押えの範囲を広げられますか?
できます。債務者が高収入の場合、153条1項後段で差押えの範囲拡大を申し立て、生活に必要な分を超える部分をより厚く押さえられます。
Q8養育費の差押えでも4分の3は守られますか?
守られません。扶養義務等に係る債権(151条の2)では差押禁止の範囲が原則2分の1に縮小され、将来の支払期分まで一括で差し押さえられます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1給料を差し押さえられたら、もう生活できません。減らしてもらえるって本当ですか?
本当です。民事執行法153条1項で、執行裁判所に差押えの一部取消や全部取消を申し立てられます。判断材料は『生活の状況その他の事情』、つまりあなたの家計です。実務のポイント:申立てが認められる鍵は疎明資料の質。家賃・医療費・扶養家族の記録を家計簿レベルで揃えた人と、口頭で『苦しい』と言うだけの人では結果が全く違う。多くの債務者はこの制度自体を知らずに耐えている。
Q2申立てをしたら、その間の天引きは止まりますか?
申立てだけでは止まりません。ここが誤解の多いところで、天引きを止めるには153条3項の『支払その他の給付の禁止』の仮の命令を別途求める必要があります。実務のポイント:この3項の命令は裁判が確定するまでのつなぎで、これを求めるかどうかで申立て期間中に失う給料が変わる。しかもこの命令には不服申立てができない(5項)ので、一度出れば債権者は覆せない。申立てとセットで求めるのが実務の定石。
Q3養育費のための差押えでも、4分の3は守られるんですよね?
いいえ、そこが落とし穴です。養育費など扶養義務等に係る債権(民事執行法151条の2)では、差押禁止の範囲が原則2分の1に縮小されます。つまり手取りの半分まで押さえられる。実務のポイント:さらに養育費の差押えは、一度の手続で将来の支払期分まで継続的に差し押さえられる(151条の2)。借金の差押えより回収側に圧倒的に有利。養育費を払う側は、この差を知らずに『借金と同じ4分の3守られる』と油断すると足元をすくわれる。
Q4一度差押えを減らしてもらえば、もう安心ですか?
残念ながら固定ではありません。153条2項で、債権者は『事情の変更』があれば、取り消された差押えの復活や減額の取消しを申し立てられます。あなたが転職や昇給で収入が増えれば、線は引き直される。実務のポイント:逆に言えば、あなたの収入が減ったときも同じ2項であなた側から再度の減額を申し立てられる。この制度は債権者だけの武器ではなく双方向。収入状況が変わったら、そのつど動けることを覚えておく。
間違えやすい点 AI による整理
- 「差押禁止額は法律で一律に決まっていて動かせない」と思われているが、153条はまさにその額を個別事情で変更するための制度。全国一律の4分の3は出発点にすぎない
- 「申立てをすれば天引きが止まる」と考える人がいるが、問いの立て方が違う。申立てそれ自体には停止効はない。天引きを止めたければ、別途3項の支払禁止の仮の命令を求めなければならない。申立てと停止はまったく別の手続だ
- 「養育費の差押えでも4分の3は守られる」と知っている人は多いが、その深刻度を知らない。扶養義務等に基づく請求(151条の2)では差押禁止の範囲が2分の1に縮小され、しかも将来の支払期分まで一括で押さえられる。同じ給料差押えでも、原因が養育費か借金かで手元に残る額が倍違う
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 役割 | 153条:差押禁止範囲を個別事情で変更する調整弁 | 152条:差押禁止の原則ライン(給料の4分の3) 151条の2:扶養義務等に係る債権の特例(2分の1) |
| 判断基準 | 債務者・債権者双方の生活の状況その他の事情 | 支払期に受けるべき給付の4分の3相当額(政令の上限あり) 扶養義務等の請求権であること(2分の1に縮小) |
| 動く方向 | 減額・取消しにも、範囲拡大にも両方向に動く | 一律固定の出発点(初期設定) 債権者に有利な方向に固定的に縮小 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も、債務者およびその共同生活の親族の生活に必要な債権部分を強制執行から除外する。生活必需性を基準とする点で日本152・153条と発想を共有する
韓国も圧留禁止債権を定め、法院が事情に応じて圧留命令を取消・変更できる仕組みを持つ。日本153条の裁判所裁量による範囲変更に近い
ドイツは債務者の特別の必要(Unterhaltspflicht・疾病等)に応じて差押禁止額を引き上げ、逆に一定要件で引き下げる。裁判所裁量による双方向調整という点で日本153条と構造が最も近い
米国連邦法は賃金差押えの上限(可処分所得の25% 等)を定めるが、日本の153条のような裁判所による個別増減の一般規定は連邦レベルには乏しく、州法で扱いが分かれる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 消費者金融の借金で給料を差し押さえられ、手取り20万のうち5万が毎月消える。家賃と子どもの学費で家計は赤字。153条1項で『生活の状況』を疎明して申し立てれば、差押えの一部取消、場合によっては全部取消が認められうる。家計簿と収支の証拠が結果を分ける
- あなたが貸金を回収する債権者側にいる。相手は月収80万の医師なのに、給料差押えでは原則4分の1しか取れず、回収に何年もかかる。153条1項後段で『差押えの範囲拡大』を申し立てれば、生活に必要な分を超える部分をより厚く押さえられる
- もし一度差押えを減らしてもらった後、あなたが転職して収入が倍増したら? 債権者は153条2項の『事情の変更』を理由に、取り消された差押えの復活を申し立てられる。線は一度引いたら固定、ではない
- 差押命令が届いた。来月には給料から天引きが始まる。減額を申し立てたいが、裁判が確定するまで天引きは止まらない。153条3項で勤務先(第三債務者)への支払禁止の仮の命令を求めれば、結論が出るまで差し押さえられずに済む。動くなら今週中だ
- 児童手当や年金が振り込まれた口座を差し押さえられた。振込後は預金債権に変わり差押禁止が及ばないとされてきたが、近年は実質的に差押禁止債権と同視して救済する裁判例も出ている。諦める前に申し立てる価値がある
取るべき行動
被害を受けた側:1. 差押命令が届いたら、まず勤務先(第三債務者)への天引き開始時期を確認2. 直近数か月の収支を証拠化:家賃・光熱費・医療費・扶養家族の生活費の領収書を集め、153条1項の『生活の状況』を疎明する資料を作る3. 執行裁判所に範囲変更(減額・取消)を申し立て、同時に3項の支払禁止の仮の命令も求めて天引きを止める4. 却下されたら1週間以内に執行抗告(4項)。この不変期間を逃すと確定する
訴えられた側:あなたが債権者の立場なら:1. 債務者が減額を申し立ててきたら、相手の『生活困窮』の疎明が過大でないか収支資料を精査して反論2. 逆に相手が高収入なら、153条1項後段で範囲拡大を積極的に申し立て回収を加速3. 減額決定が出ても、2項の『事情の変更』(相手の増収・転職)で範囲の再拡大を狙える4. 範囲変更の却下決定への執行抗告(4項)の期限は1週間、逃さない
時効(請求できる期限):範囲変更の申立て自体に期限はなく、差押えが続く限りいつでも可能。ただし申立て却下決定に対する執行抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間(民事執行法10条2項)。3項の支払禁止命令には不服申立てができない(5項)。
学説
通説:153条の範囲変更は、152条の一律基準が個別家計の実情との間に生む不公平を、執行裁判所の個別衡量で吸収する調整規定と解される。減額・取消しと範囲拡大の双方向に機能し、生存権保障(憲法25条)と債権回収の実効性を二層構造で両立させると位置づけられる。
- 民事執行法 第152条差押禁止債権の範囲、本条が変更する対象の基準規定
- 民事執行法 第151条の2扶養義務等に係る債権の差押禁止範囲の特例(2分の1)
- 民事執行法 第145条差押命令、変更の対象となる原処分
- 民事執行法 第10条執行抗告の手続と1週間の不変期間(4項の受け皿)
- 破産法 第42条破産手続開始による強制執行の失効、給料差押えに代わる救済経路
- 国税徴収法 第76条税滞納処分における給料差押禁止の別体系
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