民事執行法 第32条(執行文の付与等に関する異議の申立て)
クイックジャンプ
- 執行文の付与の申立てに関する処分に対しては、裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に、公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てることができる。
- 2.執行文の付与に対し、異議の申立てがあつたときは、裁判所は、異議についての裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又は担保を立てさせてその続行を命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。
- 3.第一項の規定による申立てについての裁判及び前項の規定による裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
- 4.前項に規定する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
- 5.前各項の規定は、第二十八条第二項の規定による少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本又は記録事項証明書の交付について準用する。
この条文の基本情報
執行文の付与等に関する異議の申立てとは何ですか?
定義執行文の付与等に関する異議の申立てとは、民事執行法第32条に定められた規定で、「執行文の付与の申立てに関する処分に対しては、裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に、公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第32条(執行文の付与等に関する異議の申立て)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第32条の条文原文は「執行文の付与の申立てに関する処分に対しては、裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に、公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄…」で始まります。
- 民事執行法第32条は第一節 総則に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第32条の前の条は民事執行法第31条です。
- 民事執行法第32条の次の条は民事執行法第33条です。
- 民事執行法第32条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第32条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第32条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/32
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法32条は、執行文付与の処分に対する異議申立てを定める。書記官の処分は所属裁判所、公証人の処分は役場所在地の地方裁判所へ申し立て、執行停止も求められる。
Q · 公正証書で執行文が出てしまった。差押えを止める方法はありますか?
民事執行法32条の異議申立てと執行停止を同時に申し立てます
民事執行法32条1項により、執行文の付与の申立てに関する処分には異議を申し立てられます。裁判所書記官の処分なら所属裁判所、公証人の処分なら役場所在地を管轄する地方裁判所が申立先です。異議を出しただけでは執行は止まらず、2項の執行停止命令が出て初めて止まります。急迫の事情があるときは裁判長も停止を命じられます。ただし3項の裁判には4項により不服申立てができません。
解説
強制執行の世界には、判決とは別に「執行文」という関門がある。勝訴判決を持っていても、裁判所書記官(または公正証書なら公証人)が正本の末尾に「この債権者はこの債務者に対しこの判決により強制執行をすることができる」と書き足してくれない限り、差押えは一歩も動かない。民事執行法32条は、その執行文をめぐる処分に不服がある側に、簡易な救済ルートを開く条文だ。あなたが債権者で「執行文をもらえない」と却下されたなら、書記官が所属する裁判所へ異議を申し立てる。あなたが債務者で「そんな条件は成就していないのに執行文が出た」と思うなら、同じく異議を申し立て、しかも2項で強制執行の停止まで求められる。訴えを起こす必要はない。口頭弁論も開かれない(3項)。つまり、書面一通で執行の車輪を止めうる。ただし4項が牙を隠している。停止・続行の裁判には不服申立てができない。一発勝負である。
法的な位置づけ
民事執行法32条は、執行文の付与の申立てに関する処分に対する異議申立て手続を定める規定である。裁判所書記官の処分は所属裁判所、公証人の処分は役場所在地の地方裁判所を申立先とし、審理中の強制執行の停止又は続行を担保の有無と併せて命ずることを可能にする。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.執行文の種類と付与日を確認する 債務名義の正本末尾を見て、単純執行文・条件成就執行文・承継執行文のどれか、誰が(書記官か公証人か)いつ付与したかを特定する。ここで申立先の裁判所が決まる
- 2.記録の閲覧謄写で付与の根拠文書を取る 条件成就執行文なら債権者が提出した条件成就を証する文書(27条1項)が記録にある。閲覧謄写を申請して中身を確認し、その文書が本当に条件成就を示しているかを検証する
- 3.申立先を確定して異議申立書を作成する 書記官の処分なら所属裁判所、公証人の処分なら役場所在地を管轄する地方裁判所へ。異議の理由は、付与要件の欠缺・条件不成就・承継の不存在など、処分の当否に絞って書く
- 4.同じ書面で2項の執行停止を申し立てる 異議申立書に「異議についての裁判があるまで強制執行の停止を求める」と明記する。急迫の事情があるときは、裁判長による処分を求める旨も併記し、事情を具体的に疎明する
- 5.担保(供託金)の準備を並行して進める 裁判所が担保を条件に停止を命ずる場合に備え、供託可能な資金又は支払保証委託契約の手配を先に始める。担保決定後に動き出すと、停止の効力発生が遅れる
- 6.並行ルート(33条・34条・35条)を準備する 4項により32条の裁判は不服申立てができないため、債権者は33条の執行文付与の訴え、債務者は34条の異議の訴え・35条の請求異議の訴えを同時並行で準備しておく
よくある質問 AI による整理
Q1執行文付与に対する異議とは何ですか?
執行文の付与や却下という処分に不服がある側が、訴訟によらず書面で申し立てる簡易な救済手続です。民事執行法32条1項が根拠で、債権者・債務者の双方が使えます。
Q2執行文の異議はどこに申し立てますか?
裁判所書記官の処分なら、その書記官が所属する裁判所です。公証人の処分なら、公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所であり、申立人の住所地の裁判所ではありません。
Q3異議を申し立てれば差押えは止まりますか?
自動では止まりません。32条2項により裁判所が執行停止を命じて初めて止まります。異議申立書に停止の申立てを併記しないと、審理中に差押えが進みます。
Q4執行停止には担保が必要ですか?
2項は「担保を立てさせ、若しくは立てさせないで」と定めており、無担保の停止もあり得ます。実務では供託金を求められることが多く、並行して資金の準備が必要です。
Q5執行文の異議に口頭弁論はありますか?
3項により、異議についての裁判も停止・続行の裁判も口頭弁論を経ないですることができます。法廷での主張の機会は保障されず、書面の完成度が結果を左右します。
Q6執行文の異議で負けたら抗告できますか?
できません。4項が3項の裁判に対する不服申立てを明確に禁じています。次の手は34条の執行文付与に対する異議の訴えや35条の請求異議の訴えへの切替えです。
Q7急迫の事情があるときはどうなりますか?
2項後段により、裁判長も単独で停止・続行の処分を命ずることができます。差押命令が週末直前に届いた場合など、合議を待たずに時間を確保できる仕組みです。
Q8少額訴訟の判決にもこの異議は使えますか?
使えます。5項が28条2項による少額訴訟の確定判決、仮執行宣言付判決、支払督促の正本又は記録事項証明書の交付にも、前各項を準用しています。
この条文についての質問 AI による整理
Q1執行文の異議って、弁護士なしで自分で出せるものですか?
出せる。訴訟ではなく申立てなので、書面で理由を書いて所属裁判所または公証人役場所在地の地方裁判所に提出する形になる(民事執行法32条1項)。口頭弁論も開かれない(同3項)。実務のポイント:異議申立てだけを出して2項の執行停止を書き忘れる本人申立てが非常に多い。停止は自動ではないので、同じ書面に「執行停止を求める」と明記できているかどうかで、実務上の結果が正反対になる
Q2公正証書で借りたお金、条件が成就していないのに執行文が出ました。どこに文句を言えばいいですか?
公証人の処分なので、その公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てる(民事執行法32条1項)。あなたの住所地の裁判所ではない点が落とし穴。実務のポイント:条件成就執行文は債権者が条件成就を証する文書を提出して初めて付与される(同27条1項)。異議では、その提出文書が本当に条件成就を示しているかを突く。文書の中身は記録の閲覧で確認できるので、まず閲覧謄写の申請から入るのが実務の定石
Q3異議で負けたら、上級審に持っていけますよね?
持っていけない。第3項の裁判(異議についての裁判、停止・続行の裁判)には不服を申し立てることができないと4項が明記している。実務のポイント:だからこそ実務では、32条の異議と並行して34条の執行文付与に対する異議の訴え、あるいは35条の請求異議の訴えを準備しておく。32条は速いが一発勝負、訴えは遅いが審理が厚い。速度と厚みのどちらを取るかを最初に決めるのが弁護士の判断だ
間違えやすい点 AI による整理
- 「執行文の異議も裁判なのだから、負けたら控訴・抗告できる」と考えるのが自然だが、4項が明確に否定している。停止・続行の裁判は不服申立て不可。ここで負けた側は、同じ土俵での上訴ではなく、執行文付与に対する異議の訴え(34条)や請求異議の訴え(35条)という別の土俵に移るしかない
- 執行文の異議は債務者だけの武器だと思われがちだが、条文は「執行文の付与の申立てに関する処分」と書いている。付与を拒否された債権者の側からも申し立てられる。攻める側にも守る側にも同じ入口が開いている、双方向の条文である
- 「異議を申し立てれば執行は自動的に止まる」と信じている人が多い。止まらない。異議の申立てと執行停止は別の判断であり、2項で裁判所が停止を「命じる」ことで初めて止まる。しかも担保を求められることが多い。申立書を出しただけで安心して待っていると、その間に預金が差し押さえられる
- あなたから見れば「執行文なんて事務手続の書類」だが、法律から見れば執行機関が債務名義の執行力を公証する行為である。この落差が命取りになる。事務手続と侮って放置した数日で、執行はもう完了しうる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 手続の性質 | 32条:申立て(決定手続、口頭弁論不要) | 34条:訴え(判決手続、実体審理) 35条:訴え(債務名義の請求権自体を争う) |
| 争える内容 | 執行文付与という処分の当否(形式的要件・条件成就の疎明) | 条件成就・承継の存否を実体的に審理 弁済・免除・相殺など請求権の消滅事由 |
| 不服申立ての可否 | 4項により不可(一発勝負) | 判決なので控訴・上告が可能 判決なので控訴・上告が可能 |
| 速度と厚み | 速い。書面一通で執行停止を求めうる | 遅いが審理が厚く、証拠調べができる 最も遅いが、債務名義の効力自体を排除できる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は執行文(執行文付与)制度を持たず、執行名義に執行力を認めるのは執行法院である。手続上の不服は執行方法に対する聲明異議で争う点で入口の設計が異なる
韓国は執行文制度を含め日本法とほぼ同構造。集行文付与に関する異議申立てと、集行文付与에 대한 異議の訴え(제45조)の二段構えも共通する
執行文制度の源流。クラウゼル異議(§ 732)と、実体を争うクラウゼル異議の訴え(§ 768)の分離が日本の32条・34条の対応関係に相当する
米国は執行文に相当する事前の公証手続がなく、書記官が writ of execution を発付する。争う側は執行令状の取消申立てで対応し、通常は上訴も可能な点が4項と対照的
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 公正証書で「月々 8万円払う、滞納したら残額を一括」と約束した。あなたは1回遅れただけだったのに、公証人が条件成就執行文を付与し、翌週には給与が差し押さえられそうになっている。給料日まであと6日。争う場は公証人の役場所在地を管轄する地方裁判所であり、あなたの住所地の裁判所ではない。ここを間違えると期日が空転する
- 相続で被告が死亡し、あなたは相続人に対する承継執行文を申請したが、書記官に「相続放棄の可能性がある」として却下された。訴訟をやり直す必要はない。所属裁判所への異議申立てで、書記官の判断そのものを俎上に載せられる
- もし、執行文の付与に異議を申し立てたのに、裁判所が「担保を立てて執行を続行せよ」と命じたらどうなる? 差押えは進む。そしてその裁判に対して抗告はできない(4項)。あなたが次に打てる手は、別ルートの執行文付与に対する異議の訴え(34条)へ切り替えることだ
- 少額訴訟で40万円の未払い賃料の判決を得た。相手が払わないので執行文の代わりとなる正本の交付を求めたが、書記官の処分に納得がいかない。5項が少額訴訟の確定判決や支払督促の正本交付にもこの異議ルートを準用している
- 取引先の社長が「担保を立てさせずに執行を止めてくれ」と裁判所に泣きついている、と債権者側のあなたが聞いた。2項は無担保での停止命令も認めているので、あなたの差押えが翌日止まる可能性は現実にある
取るべき行動
被害を受けた側:債権者側で付与を拒否されたら、1. 却下の理由(証明書不足か、条件成就の疎明不足か)を書記官に確認2. 書記官所属の裁判所へ異議を申し立て、不足していた証明文書を補充して提出3. 承継執行文なら戸籍・登記事項証明書など承継を示す文書を揃える4. 異議が通らなければ執行文付与の訴え(民事執行法33条)へ移行し、判決手続で争う
訴えられた側:債務者として不当な執行文を突き付けられたら、1. 執行文の種類(単純・条件成就・承継)と付与日を確認2. 書記官なら所属裁判所、公証人なら役場所在地の地方裁判所へ異議申立て3. 同じ書面で2項の執行停止を必ず申し立て、急迫なら裁判長への処分を明示4. 担保の準備(供託金)を並行して手配5. 実体的な争い(弁済済み、条件不成就)なら34条の異議の訴え・35条の請求異議の訴えを併走させる
時効(請求できる期限):32条の異議申立てに法定の期間制限はないが、執行手続が完了してしまえば実益が失われるため、事実上の期限は差押え・換価が進む前まで。特定の時効はないが、原債権については一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)、確定判決で確定した権利は10年(民法169条)が適用される(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:32条の異議は執行文付与機関の処分の当否を争う形式的審査手続であり、請求権の実体的存否は34条・35条の訴えで審理すべきとされる。簡易迅速性と審理の厚みを役割分担させる二段構えの理解が支配的である。
実務通説:4項の不服申立て禁止は執行遅延の防止を目的とするが、一回的判断で確定するため、異議申立ての段階から34条・35条の訴えを並行準備するのが実務上の標準的対応とされる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和54年(1979年) 新設:民事執行法の制定により、それまで民事訴訟法の執行編に置かれていた強制執行手続が独立法典化され、執行文付与に関する異議手続が32条として整備された
- 民事執行法 第26条執行文の付与機関と付与方法の原則
- 民事執行法 第27条条件成就執行文・承継執行文の要件
- 民事執行法 第28条5項が準用する少額訴訟正本等の交付
- 民事執行法 第33条付与を拒否された債権者の訴訟ルート
- 民事執行法 第34条債務者側の実体審理ルート、本条の受け皿
- 民事執行法 第35条債務名義の実体を争う請求異議の訴え
- 民事訴訟法 第121条裁判所書記官の処分に対する異議の一般規定
- 公証人法 第57条公証人の執行文付与権限の根拠
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める