民事執行法 第55条の2(相手方を特定しないで発する売却のための保全処分等)
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- 前条第一項第二号又は第三号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる決定については、当該決定の執行前に相手方を特定することを困難とする特別の事情があるときは、執行裁判所は、相手方を特定しないで、これを発することができる。
- 2.前項の規定による決定の執行は、不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができない場合は、することができない。
- 3.第一項の規定による決定の執行がされたときは、当該執行によつて不動産の占有を解かれた者が、当該決定の相手方となる。
- 4.第一項の規定による決定は、前条第八項の期間内にその執行がされなかつたときは、相手方に対して送達することを要しない。この場合において、第十五条第二項において準用する民事訴訟法第七十九条第一項の規定による担保の取消しの決定で前条第四項の規定により立てさせた担保に係るものは、執行裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによつて、その効力を生ずる。
この条文の基本情報
相手方を特定しないで発する売却のための保全処分等とは何ですか?
定義相手方を特定しないで発する売却のための保全処分等とは、民事執行法第55条の2に定められた規定で、「前条第一項第二号又は第三号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる決定については、当該決定の執行前に相手方を特定することを困難とする特別の事情があるときは、執行…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第55条の2(相手方を特定しないで発する売却のための保全処分等)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第55条の2の条文原文は「前条第一項第二号又は第三号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる決定については、当該決定の執行前に相手方を特定することを困難とする特別の事情があるときは、執行…」で始まります。
- 民事執行法第55条の2は第二目 強制競売に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第55条の2の前の条は民事執行法第55条です。
- 民事執行法第55条の2の次の条は民事執行法第56条です。
- 民事執行法第55条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第55条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第55条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/55_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法55条の2は、相手方の特定が困難な特別の事情があるとき、執行裁判所が相手方を特定しないまま占有を解く保全処分を発し執行できると定める。占有者を特定できなければ執行はできない。
Q · 競売不動産に名乗らない占有屋が居座っていたら、相手の名前が分からなくても追い出せるの?
相手を特定できなくても占有排除の命令を出せます
民事執行法55条の2により、執行前に相手方の特定が困難な特別の事情があるときは、執行裁判所は相手方を特定しないまま売却のための保全処分を発し、執行できます。現実に占有を解かれた者が、その時点で決定の相手方になります(3項)。ただし、占有を解く際に占有者すら特定できない完全な空き家状態では執行できません(2項)。占有屋が『名を隠せば命令が出せない』という手続保障を逆手に取ってきたことへの、2003年改正による対抗規定です。
解説
競売にかけた不動産を見に行くと、見知らぬ男が住んでいる。名を尋ねても答えない、契約書も見せない、翌週行くと別の人物に入れ替わっている。これが「占有屋」の手口だ。かつては、保全処分を出すにも相手方を特定して名前を書かねばならず、名前が分からなければ手が出せなかった。占有屋はまさにそこを突いた。民事執行法55条の2は、その抜け穴を塞ぐ。相手方を特定することを困難とする特別の事情があれば、執行裁判所は相手を特定しないまま占有を解く保全処分を発することができる。そして現実に占有を解かれた者が、その時点で相手方になる(3項)。ただし占有を解く際に占有者すら特定できなければ執行はできない(2項)。名前を隠して逃げ回る妨害には、名前を書かない命令で応じる、それがこの条文の設計思想だ。
法的な位置づけ
民事執行法55条の2は、売却のための保全処分における相手方不特定の特則を定める規定である。執行前に相手方の特定が困難な特別の事情がある場合、執行裁判所は相手方を特定せず決定を発することができ、現実に占有を解かれた者がその相手方となる。占有の際に占有者を特定できない場合は執行することができない。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.占有妨害の兆候を証拠化する 名乗らない占有者、数日単位での入れ替わり、内覧拒否といった妨害の兆候を、執行官の現況調査報告書と現場写真で記録し証拠化する。相手が入れ替わる前に固めるのが要点
- 2.特別の事情を疎明する資料を揃える 『相手方を特定することを困難とする特別の事情』を疎明できる資料を整える。単に手間がかかるだけでは足りず、名を隠し短期で入れ替わる組織的妨害の実態を示す必要がある
- 3.相手方不特定の保全処分を申し立てる 執行裁判所に対し、民事執行法55条の2に基づく相手方を特定しない売却のための保全処分を申し立てる。55条4項に基づく担保提供の準備も同時に進める
- 4.執行期間内に必ず執行する 命令が出たら55条8項の執行期間(原則2週間)内に必ず執行する。期間管理を最優先にし、執行時に現に占有を解かれた者が相手方になる(3項)ため占有者の特定を確実に行う
よくある質問 AI による整理
Q1相手方を特定しない保全処分とは何ですか?
民事執行法55条の2の制度で、占有屋のように名を隠す妨害者に対し、相手方を特定しないまま売却のための保全処分を発し執行できる仕組みです。2003年改正で新設されました。
Q2占有屋とは何ですか?
競売不動産に組織的に居座り、内覧を妨げて入札を減らし落札価格を暴落させたり、立退料を要求する妨害者を指す俗称です。名を明かさず短期で入れ替わる手口が典型です。
Q3相手方を特定しない保全処分はいつ執行しなければなりませんか?
民事執行法55条8項の執行期間(原則、申立人への告知から2週間)内に執行する必要があります。期間内に執行しないと相手方への送達が不要となり担保取消しへ進みます(4項)。
Q4占有者を特定できない空き家でも55条の2で執行できますか?
できません。2項により、占有を解く際に占有者を特定できない場合は執行できません。誰も見当たらない完全な空き家状態の妨害には、この条文の射程が及びません。
Q5占有を解かれた人はその後どうなりますか?
3項により、執行によって現実に占有を解かれた者が、その時点で決定の相手方になります。名を隠して依頼を受け居座っただけの人でも、現に占有していれば相手方にされます。
Q655条の2の申立てにはどんな証拠が必要ですか?
『相手方を特定することを困難とする特別の事情』を疎明する資料が必要です。執行官の現況調査報告書、名乗らない占有者や短期入れ替わりを示す写真などで固めます。
Q7買受人のための保全処分にも55条の2は使えますか?
使えます。民事執行法77条が本条を準用しており、買受人のための保全処分でも相手方不特定の特則が適用されます。
Q855条の2の保全処分には担保が必要ですか?
はい。55条4項により担保提供が課されます。この担保は執行期間内に執行されなかった場合、民訴79条を準用する担保取消しの手続で処理されます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1占有屋って、警察を呼べば追い出せるんじゃないですか?
追い出せません。占有をめぐる争いは民事であり、警察は原則として介入しません。だからこそ民事執行法の保全処分(55条、55条の2)という司法手続が用意されている。実務のポイント:占有屋はこの『警察は動かない』ことを熟知して居座る。自力で締め出そうとすれば、逆に不法行為や自力救済禁止の問題を自分が抱え込む。正攻法は執行裁判所への保全処分申立て、それ以外の近道は基本的にない
Q2相手の名前も分からないのに命令を出すなんて、乱用されて無関係な人が追い出されませんか?
歯止めがあります。要件は『特定を困難とする特別の事情』で、単に手間がかかるだけでは足りない。さらに2項で、占有を解く際に占有者を特定できなければ執行はできず、担保提供(55条4項)も課される。実務のポイント:この制度は2003年の担保・執行法改正で執行妨害対策として新設された。狙いは正体を隠す妨害者であり、普通に住む対抗力ある賃借人などには別の保護が働く。無差別に排除される仕組みではない
間違えやすい点 AI による整理
- 「相手が分からなければ裁判所は動けない」と思われているが、55条の2はまさにその常識を裏返す。特定困難という特別の事情があれば、相手方を特定しないまま保全処分を発し、執行できる
- 占有屋の存在は名前だけ知られているが、その被害の深刻さは想像を超える。組織的に占有を回し、買受希望者を怯えさせて入札を減らし、落札価格を意図的に暴落させる。あなたの担保の回収額が数百万円単位で削られていることに、多くの債権者は気付いてすらいない
- 「占有を排除しさえすれば終わり」と考えがちだが、問いの立て方が違う。2項は、占有を解く際に占有者を特定すらできない場合は執行できないと定める。つまり『現場に誰も見当たらない完全な空き家状態の妨害』には、この条文でも届かない。射程の外がどこかを知らないと、空振りの申立てで貴重な期間を失う
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 相手方の特定 | 55条の2:特別の事情があれば相手方を特定しないで発令可 | 55条:相手方を特定して発令(原則) 83条:買受人が相手方(占有者)を特定して申立て |
| 手続段階 | 売却前の妨害排除(保全処分の特則) | 売却のための保全処分(母体規定) 代金納付後の引渡命令 |
| 執行の限界 | 占有時に占有者を特定できなければ執行不可(2項) | 相手方への送達を経て執行 引渡命令の相手方に対して執行 |
| 期間経過の効果 | 執行期間経過で送達不要・担保取消しへ(4項) | 55条8項の執行期間による制約 代金納付を前提に申立可能な期間の制約 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は拍定(落札)後の不動産点交で占有を排除する枠組みを持つが、相手方を特定しないまま発令する日本55条の2型の特則を直接には備えていない。
韓国は不動産引渡命令等で占有排除に対応するが、相手方不特定の発令という日本独自の特則とは制度設計が異なる。
ドイツは強制競売法(ZVG)により競売手続内で占有排除・引渡しを扱うが、匿名妨害者向けの相手方不特定発令という特化した規定形式ではない。
米国は差押後の占有排除を writ of assistance や州法の eviction 手続で行い、相手方不特定の保全処分という統一的枠組みは持たない。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 銀行があなたの担保不動産を競売にかけた。現地には正体不明の男たちが交代で寝泊まりし、内覧予定の買受希望者が次々に手を引く。落札価格は本来の半値以下に沈んでいく。相手方を特定しない保全処分(55条の2)で占有を排除できれば、この意図的な価格破壊を止められる
- もし、あなたが競売不動産の現況調査に立ち会ったら、名乗らない占有者がいて、来週にはまた別人に入れ替わっていたとしたら? 保全処分の執行期間(55条8項)は限られている。この期間内に執行できなければ、相手方への送達すら要らなくなる(4項)。動くなら期間内、そこが分水嶺
- あなたが日雇いで「数日ここに寝泊まりしてくれ」と頼まれ、名を明かさず不動産に居座ったとする。ある日、執行官が来て占有を解かれる。その瞬間、依頼主ではなく、現に居たあなたが決定の相手方になる(3項)。名を隠す側にいたつもりが、法の名宛人にされている
取るべき行動
被害を受けた側:1. 占有妨害の兆候(名乗らない占有者、短期での入れ替わり、内覧拒否)を執行官の現況調査報告書と写真で記録し、証拠化する2. 『相手方を特定することを困難とする特別の事情』を疎明できる資料を揃え、執行裁判所に55条の2の保全処分を申し立てる3. 55条4項に基づく担保提供の準備をする4. 命令が出たら執行期間(55条8項)内に必ず執行、期間管理を最優先にする。占有を解かれた者が事後的に相手方になる(3項)ので、執行時の占有者の特定が実務上の鍵
訴えられた側:1. 自分がその不動産に居住する正当な権原(対抗力ある賃借権、留置権など)を持つなら、それを示す契約書・賃料支払記録を確保する2. 権原があるのに占有を解かれた場合、執行に対する不服(執行異議・執行抗告等)や、本案での権利主張を検討する3. 名を隠すよう頼まれただけの立場でも、現に占有していれば3項で相手方にされる点を理解し、早期に自らの立場を明らかにする4. 正当な占有者は本来この妨害対策の対象ではないので、賃借権の対抗要件を早く整えるほど保護は厚くなる
時効(請求できる期限):55条8項の執行期間(保全処分が申立人に告知された日から原則2週間)内に執行しなければならない。この期間内に執行されなければ、相手方への送達を要さず(4項)、担保取消しの手続に移る。(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:55条の2は、相手方の特定・送達という手続保障を逆手に取る執行妨害への対抗規定であり、相手方不特定の発令を認める一方、占有者を特定できない場合の執行不可(2項)、占有を解かれた者の事後的な相手方確定(3項)、担保提供により、妨害排除の実効性と名宛人の防御権を釣り合わせていると理解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成15年(2003年)担保・執行法改正 執行妨害(占有屋)対策として新設。従来は保全処分に相手方の特定が必要で、名を隠す占有者に対抗できなかった。相手方を特定しない保全処分を可能にし、現に占有を解かれた者を相手方とする仕組みを導入した
改正の年表
- 1.平成15年(2003年) 新設:担保・執行法改正により、占有屋による組織的執行妨害への対策として新設。従来は保全処分に相手方の特定が必要で名を隠す占有者に対抗できなかったが、相手方を特定しない保全処分を可能にし、現に占有を解かれた者を相手方とする仕組みを導入した。
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