民事執行法 第83条(引渡命令)
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- 執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。
- 2.買受人は、代金を納付した日から六月(買受けの時に民法第三百九十五条第一項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)を経過したときは、前項の申立てをすることができない。
- 3.執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し第一項の規定による決定をする場合には、その者を審尋しなければならない。ただし、事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有しているものでないことが明らかであるとき、又は既にその者を審尋しているときは、この限りでない。
- 4.第一項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
- 5.第一項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。
この条文の基本情報
引渡命令とは何ですか?
定義引渡命令とは、民事執行法第83条に定められた規定で、「執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第83条(引渡命令)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第83条の条文原文は「執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人…」で始まります。
- 民事執行法第83条は第二目 強制競売に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第83条の前の条は民事執行法第82条です。
- 民事執行法第83条の次の条は民事執行法第83条の2です。
- 民事執行法第83条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第83条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第83条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/83
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法83条は、代金を納付した買受人の申立てにより執行裁判所が不動産の引渡しを命じる引渡命令を定める。申立ては代金納付日から6か月(一定の建物は9か月)以内に限られる。
Q · 競売で落札した物件に人が居座っていたら、明渡訴訟を起こすしかないんですか?
訴訟は不要。6か月以内なら引渡命令で明渡執行まで進めます
民事執行法83条により、代金を納付した買受人は執行裁判所に不動産引渡命令を申し立てられます。訴状も長い口頭弁論も不要で、確定すれば22条3号の債務名義となり、168条の明渡しの強制執行に直結します。ただし申立ては代金納付日から6か月(買受けの時に民法395条1項の抵当建物使用者が占有していた建物は9か月)以内に限られ、事件の記録上買受人に対抗できる権原により占有する者には命令できません。
解説
競売で不動産を落札した。だが中には前の所有者、あるいは正体不明の占有者が居座っている。多くの人はここで「立ち退き訴訟を起こして、勝訴判決を取って、それから強制執行か。1年以上かかるな」と青ざめる。それが最大の誤解だ。民事執行法83条は、代金を納付した買受人に、はるかに速い抜け道を用意している。執行裁判所に申し立てれば、債務者や占有者に対して「不動産を買受人に引き渡せ」と命じる決定(引渡命令)を出してもらえる。訴状も、長い口頭弁論も要らない。この決定は確定すれば債務名義になり、それを使って明渡しの強制執行(168条)へ一直線につながる。ただし落とし穴がある。使えるのは代金納付から6か月以内(抵当建物使用者が住んでいた建物なら9か月)。この期限を1日でも過ぎたら、あなたは元の高い壁、つまり通常の明渡訴訟に逆戻りする。そして買受人に対抗できる権原を持つ占有者(対抗力ある賃借人など)には、この命令は届かない。
法的な位置づけ
民事執行法83条の不動産引渡命令とは、不動産競売において代金を納付した買受人が、通常の明渡訴訟を経ずに、執行裁判所の決定によって債務者又は占有者から不動産の引渡しを受けるための簡易な手続である。確定した決定は民事執行法22条3号の債務名義となり、168条の不動産明渡しの強制執行の基礎となる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.代金納付日を起点に申立期限を確定する 代金を納付した日をカレンダーに記録し、原則6か月、買受けの時に民法395条1項の抵当建物使用者が占有していた建物なら9か月の期限を逆算する。この期限は催告等で延長できない失権期間である
- 2.占有者と占有権原を事件記録で特定する 物件明細書・現況調査報告書・評価書を確認し、現在誰がどの権原で占有しているかを把握する。債務者本人や無権原の不法占有者なら引渡命令が効き、買受人に対抗できる権原のある賃借人なら1項ただし書で対象外となる
- 3.執行裁判所に引渡命令を申し立てる 競売事件を担当した執行裁判所に、不動産引渡命令申立書と当事者目録・物件目録を提出する。相手方が債務者以外の占有者である場合は、原則として審尋手続(83条3項)を経ることになる
- 4.決定の確定を待ち、確定証明書を取得する 引渡命令の決定は確定しなければ効力を生じない(83条5項)。相手方の執行抗告期間(告知から1週間)の経過を確認し、裁判所書記官から確定証明書の交付を受ける
- 5.執行官に明渡しの強制執行を申し立てる 確定した引渡命令を債務名義(22条3号)として、執行官に不動産明渡しの強制執行(168条)を申し立てる。明渡しの催告を経て断行日が定まる。自分で鍵を替えるなどの自力救済は絶対に行わない
よくある質問 AI による整理
Q1不動産引渡命令とは何ですか?
競売で代金を納付した買受人の申立てにより、執行裁判所が債務者や占有者に不動産の引渡しを命じる決定です。民事執行法83条が根拠で、明渡訴訟より格段に速く占有を回収できます。
Q2引渡命令はいつまでに申し立てる必要がありますか?
代金を納付した日から6か月以内です。買受けの時に民法395条1項の抵当建物使用者が占有していた建物なら9か月に延びます。経過すると申立てはできません(83条2項)。
Q3引渡命令の申立てはどこにしますか?
その競売事件を担当した執行裁判所(不動産所在地を管轄する地方裁判所)に申し立てます。買受人であること、代金納付済みであることが前提です。
Q4引渡命令に不服があるときはどうすればよいですか?
執行抗告ができます(83条4項)。抗告は告知を受けた日から1週間の不変期間内に行う必要があり、この期間を過ぎると争えなくなります。
Q5引渡命令はいつから効力を生じますか?
決定が確定してはじめて効力を生じます(83条5項)。決定が出た日ではありません。確定後に債務名義として明渡しの強制執行を申し立てる流れになります。
Q6引渡命令の申立費用はいくらですか?
申立手数料は低額で、別途郵便切手の予納が必要です。明渡訴訟の印紙代・弁護士費用と比べると桁違いに安く済むのが最大の利点です。
Q7引渡命令を出す前に占有者の言い分は聞かれますか?
債務者以外の占有者には原則として審尋が必要です(83条3項)。ただし記録上対抗権原がないことが明らかなとき、既に審尋済みのときは省略されます。
Q8引渡命令が使えないとどうなりますか?
通常の明渡訴訟を提起し、勝訴判決を債務名義として強制執行することになります。期間は数か月から1年以上、費用も大きく膨らみます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1引渡命令が出たら、その日から自分で占有者を追い出していいんですか?
追い出せません。引渡命令は確定して初めて効力を生じ(83条5項)、それ自体は債務名義(22条3号)にすぎません。実際の明渡しは、これを根拠に執行官へ明渡しの強制執行(168条)を申し立てて行います。実務のポイント:命令が出た後に自分で鍵を替えたり荷物を出したりすると、逆にあなたが自力救済として不法行為・住居侵入に問われます。急いでいても必ず執行官を通す、これが弁護士が真っ先に釘を刺す一点です
Q2落札した部屋に賃貸借契約書を持った人が住んでいたら、もう追い出せないんですか?
一律には決まりません。鍵は対抗力の有無です。抵当権設定より前から建物の引渡しを受けている賃借人(借地借家法31条)なら1項ただし書の対抗できる権原者として引渡命令の対象外ですが、抵当権設定後の賃貸借は原則対抗できず、民法395条の抵当建物使用者として6か月の明渡猶予を受けるだけです。実務のポイント:入札前に物件明細書と現況調査報告書で占有者の権原と賃貸借の時期を読み解けるかが勝負。ここを読めない人が、引渡命令の効かない物件を高値で掴みます
間違えやすい点 AI による整理
- 「落札して代金を払えば所有者なのだから、占有者は当然出ていく」と思われがちだが、日本法では所有権があっても自力で追い出すこと(自力救済)は禁じられている。所有権の取得(79条)と、現実に占有を明け渡させること(83条・168条)は完全に別の手続。この二段構えを知らないと、鍵を勝手に替えるなどして逆に不法行為の加害者になる
- 引渡命令の存在は知っていても、その6か月の期限の重さを軽く見ている人が多い。これは時効のように催告で延長できる性質のものではなく、経過した瞬間に引渡命令という簡易な武器を永久に失う失権期間だ。任意交渉で粘っているうちに期限を溶かし、気付けば数十万円の弁護士費用と1年超の訴訟が必要になる、という転落は競売実務で最も多い事故の一つ
- 「引渡命令が出れば、その紙を持って自分で占有者を追い出せる」と考えるのは、問いの立て方そのものが間違っている。引渡命令は明渡しの許可証ではなく、あくまで債務名義(22条3号)にすぎない。確定後(5項)、それを根拠に執行官へ明渡しの強制執行(168条)を申し立てて初めて、占有者は法的手続の下で退去させられる。命令が出た地点は、ゴールではなくもう一つの手続の入口だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 手続の位置づけ | 民執83条:占有回収のための債務名義を簡易に取得する決定手続 | 民執168条:債務名義を使って現実に明け渡させる執行手続 民執77条:代金納付前に占有の悪化・移転を防ぐ保全処分 |
| 使えるタイミング | 代金納付後、6か月(一定の建物は9か月)以内 | 引渡命令等の債務名義が確定した後 差押え後、代金納付前の段階 |
| 担い手 | 執行裁判所(決定) | 執行官(明渡しの催告・断行) 執行裁判所(保全処分の発令) |
| 相手方の防御 | 審尋(3項)・執行抗告(4項)・確定まで効力なし(5項) | 請求異議・第三者異議等 執行抗告 |
他国ではどう定めているか 6 か国
台湾は買受人(拍定人)への「点交」を執行法院の職権的手続として構成し、執行官が占有を解いて引き渡す。日本のように別途の申立てと決定を要する二段構えではなく、より一体的な運用になっている
韓国は日本法をほぼそのまま継受し、代金納付後6か月以内の申立期限、対抗できる権原者の除外、債務者以外の占有者の審尋という構造が共通する
中国は拍賣成交裁定と協助執行通知書を基礎に、人民法院が強制遷出(強制立退き)を執行する。買受人の申立てによる独立の引渡命令という枠組みではなく、執行手続の一部として処理される
ドイツは競落決定(Zuschlagsbeschluss)そのものが占有者に対する明渡しの債務名義となり、別途の引渡命令を要しない。日本より一段階手続が少なく、買受人保護がより厚い設計
フランスも競落判決(jugement d'adjudication)が被差押債務者に対する退去名義となるが、住居からの退去には冬期の執行停止(trêve hivernale)など居住者保護の制約が重なる
米国は foreclosure sale 後に裁判所書記官が占有令状を発し、保安官(sheriff)が執行する。テナント保護法制により、賃借人には別途の通知期間が要求される州が多い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたが競売で一棟マンションを落札した後、1階に前オーナーの親族を名乗る男が居座っていたら、どうする? 訴訟を構える前に、まず引渡命令が使える相手かを見極める。事件記録上、買受人に対抗できる権原がないと明らかなら、審尋も省略され決定が一気に出る。数か月の訴訟が数週間に縮む
- あなたが競売物件に住んでいる賃借人の側だとする。ある日「不動産引渡命令」という書面が届く。ここで諦めてはいけない。あなたの賃貸借に対抗力(借地借家法31条、建物の引渡しを受けていること)があれば、あなたは83条1項ただし書の「対抗できる権原者」として命令の対象から外れる。裁判所はあなたを審尋しなければならない(3項)。反論の場は法律上保障されている
- 代金を納付したのがちょうど半年前。買受人のあなたは占有者との任意交渉を続けていたが、決裂した。残された時間は数日。6か月の期限を過ぎれば引渡命令は使えず、通常訴訟へ逆戻りだ。今日中に申立書を出せるかどうかで、回収完了が半年後か2年後かが決まる
- 抵当権が付いた建物を競売で落札したら、賃借人が住んでいた。この場合、その賃借人は民法395条の抵当建物使用者として代金納付から6か月間は明渡しを猶予される。だからあなたの引渡命令の申立期限も特別に9か月へ延びている。この9月と6月の使い分けを知らないと、期限計算を丸ごと間違える
取るべき行動
被害を受けた側:1. 代金納付日を起点に、引渡命令の申立期限(原則6か月、抵当建物使用者が居た建物は9か月)を最初に確定し、カレンダー管理する2. 占有者が誰で、事件記録上どんな権原で占有しているかを確認、債務者本人や無権原の不法占有者なら引渡命令が効く3. 期限内に執行裁判所へ引渡命令を申し立てる、債務者以外の占有者は審尋(3項)を経る4. 決定が確定(5項)したら、それを債務名義として執行官へ明渡しの強制執行(168条)を申し立てる。自力で鍵を替える等の自力救済は絶対に避ける
訴えられた側:1. 届いた引渡命令(または申立て)に対し、まず自分に買受人へ対抗できる権原があるかを検討、建物の引渡しを受けた対抗力ある賃借人(借地借家法31条)なら1項ただし書で対象外を主張できる2. 抵当建物使用者(民法395条)なら6か月の明渡猶予を主張、その間の使用は保護される3. 決定に不服なら執行抗告(4項)ができる、決定は確定しなければ効力を生じない(5項)ため抗告期間内の対応が肝4. 対抗権原がなく退去が避けられない場合は、立ち退き時期や引越費用の任意交渉に切り替える
時効(請求できる期限):引渡命令の申立ては、代金を納付した日から6か月(買受けの時に民法395条1項の抵当建物使用者が占有していた建物は9か月)を経過すると、することができない(83条2項)。これは催告等で延長できない失権期間。決定への執行抗告(4項)は、告知を受けた日から1週間の不変期間内。決定は確定しなければ効力を生じない(5項)
学説
通説:引渡命令は、買受人の権利実現の実効性を確保するために判決手続を省略した簡易な救済手段であり、その相手方の範囲は事件の記録上の判断で画される。実体的権利関係の争いは執行抗告および別訴に委ねられる
通説:確定した引渡命令は22条3号の債務名義にとどまり、それ自体が明渡しを実現する効力を持つものではない。現実の占有回収は168条の執行官による明渡執行によってのみ適法に行われ、自力救済は許されない
改正沿革 AI による整理
- 平成15年(2003年)担保・執行法制改正 短期賃貸借保護制度(旧民法395条)を廃止し、抵当建物使用者の明渡猶予制度(現行民法395条)を新設。これに伴い民事執行法83条2項に、抵当建物使用者が占有していた建物の買受人について申立期間を6月から9月へ延長する括弧書きが加えられた
改正の年表
- 1.昭和54年(1979年) 新設:民事執行法の制定により、旧民事訴訟法の強制執行編と競売法を統合。買受人の占有回収手段として不動産引渡命令が現行の形で整備された
- 2.平成15年(2003年) 改正:担保・執行法制の改正により短期賃貸借保護制度(旧民法395条)を廃止し、抵当建物使用者の明渡猶予制度(現行民法395条)を新設。これに伴い83条2項に、抵当建物使用者が占有していた建物の買受人の申立期間を6月から9月へ延長する括弧書きが加えられた
- 民事執行法 第22条引渡命令は22条3号の債務名義となる
- 民事執行法 第79条代金納付による買受人の所有権取得、引渡命令申立ての前提
- 民事執行法 第77条買受人のための保全処分、占有移転の防止
- 民事執行法 第168条引渡命令を債務名義とする不動産明渡しの強制執行
- 民事執行法 第188条担保不動産競売への準用、抵当権実行局面での引渡命令
- 民法 第395条抵当建物使用者の明渡猶予、2項の9月期間の根拠
- 借地借家法 第31条建物賃貸借の対抗力、1項ただし書の対抗権原の有無を左右
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