民事執行法 第83条の2(占有移転禁止の保全処分等の効力)
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- 強制競売の手続において、第五十五条第一項第三号又は第七十七条第一項第三号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずる決定の執行がされ、かつ、買受人の申立てにより当該決定の被申立人に対して引渡命令が発せられたときは、買受人は、当該引渡命令に基づき、次に掲げる者に対し、不動産の引渡しの強制執行をすることができる。
- 一当該決定の執行がされたことを知つて当該不動産を占有した者
- 二当該決定の執行後に当該執行がされたことを知らないで当該決定の被申立人の占有を承継した者
- 2.前項の決定の執行後に同項の不動産を占有した者は、その執行がされたことを知つて占有したものと推定する。
- 3.第一項の引渡命令について同項の決定の被申立人以外の者に対する執行文が付与されたときは、その者は、執行文の付与に対する異議の申立てにおいて、買受人に対抗することができる権原により不動産を占有していること、又は自己が同項各号のいずれにも該当しないことを理由とすることができる。
この条文の基本情報
占有移転禁止の保全処分等の効力とは何ですか?
定義占有移転禁止の保全処分等の効力とは、民事執行法第83条の2に定められた規定で、「強制競売の手続において、第五十五条第一項第三号又は第七十七条第一項第三号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずる決定の執行がされ、かつ、買受人の申立てにより当該…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第83条の2(占有移転禁止の保全処分等の効力)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第83条の2の条文原文は「強制競売の手続において、第五十五条第一項第三号又は第七十七条第一項第三号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずる決定の執行がされ、かつ、買受人の申立てにより当該…」で始まります。
- 民事執行法第83条の2は第二目 強制競売に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第83条の2の前の条は民事執行法第83条です。
- 民事執行法第83条の2の次の条は民事執行法第84条です。
- 民事執行法第83条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第83条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第83条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/83_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法83条の2は、占有移転禁止の保全処分の執行後に占有を始めた者にも、当初の引渡命令で不動産の引渡しの強制執行ができると定める。執行後の占有者は悪意と推定される。
Q · 競売で買った部屋の居座り屋が入れ替わったら、引渡命令を取り直すんですか?
保全処分を先に打っていれば、取り直し不要で執行できます
民事執行法83条の2により、占有移転禁止の保全処分(55条・77条)が執行され、その被申立人に対する引渡命令が出ていれば、買受人は同じ引渡命令に基づき、保全処分の執行を知って占有した者や被申立人の占有を承継した者にも強制執行できます。2項により保全処分の執行後に占有を始めた者は悪意と推定されます。ただし3項で、その者は執行文の付与に対する異議の申立てにおいて、買受人に対抗できる権原による占有であることなどを主張できます。
解説
競売で手に入れたマンションの一室に、見知らぬ男が居座っている。引渡命令をやっと取っても、いざ執行の当日には別の人間に入れ替わっている。取り直している間に、また別人へ。かつて占有屋と呼ばれた連中は、この占有者の入れ替えで買受人を疲弊させ、立退料を吊り上げてきた。民事執行法83条の2は、その無限ループを断ち切る。競売の前段階で占有移転禁止の保全処分(55条、77条の、占有者を固定して勝手に入れ替えさせないための裁判所の命令)を打っておけば、その執行後に占有を移された相手にも、当初の引渡命令だけで強制執行できる。しかも保全処分の執行後に占有を始めた者は、その執行を知っていたと推定される(2項)。占有屋が何人入れ替わっても、あなたの引渡命令は相手を追いかける。ただし相手にも反論の窓口はある(3項)。本物の賃借人まで巻き込まないための安全弁だ。
法的な位置づけ
民事執行法83条の2は、強制競売における引渡命令の効力が及ぶ人的範囲を定める規定である。占有移転禁止の保全処分(55条・77条)の執行後に、その執行を知って占有した者および被申立人の占有を承継した者に対しても、当初の引渡命令で強制執行できる。2項は執行後の占有者を悪意と推定し、3項は異議の申立てを認める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.入札前に三点セットで占有状況を読む 物件明細書・現況調査報告書・評価書で、占有者の有無、その権原(対抗力ある賃借権か否か)、既に保全処分が執行されているかを確認する。占有付き物件は割安になりやすいが、追跡効の前提が整っているかどうかで難易度が一変する
- 2.売却前・買受け段階で占有移転禁止の保全処分を申し立てる 占有者がいるなら、執行裁判所に55条1項3号(売却のための保全処分)または77条1項3号(買受人のための保全処分)の占有移転禁止・公示保全処分を申し立てる。83条の2の追跡効はこの執行を起点とするため、打つのが早いほど守備範囲が広がる
- 3.保全処分の執行日を記録し公示書を保全する 執行官による保全処分の執行日と公示書の掲示状況を、日付入りの写真と執行調書で記録する。この日付が2項の悪意推定が働く境界線になり、後の執行文付与の申立てで決定的な資料になる
- 4.代金納付後、期限内に引渡命令を申し立てる 代金を納付したら速やかに執行裁判所へ引渡命令(83条)を申し立てる。申立ては原則として代金納付日から6か月以内に限られるため、占有者との交渉を優先して期限を空費しない
- 5.占有者が入れ替わったら承継執行文の付与を受けて執行する 保全処分の執行後に占有を始めた者や被申立人の占有を承継した者に対しては、引渡命令を取り直さず、27条に基づく承継執行文の付与を受けて執行する。2項の悪意推定があるため、相手が執行を知らなかったことの立証責任は相手側にある
- 6.占有者側は執行が完了する前に異議を申し立てる 被申立人以外の者に執行文が付与されたら、3項および32条により執行文の付与に対する異議を申し立て、買受人に対抗できる権原(対抗力ある賃借権など)による占有であること、または1項各号に該当しないことを主張する。引渡しの強制執行が完了すると実益を失うため、権原の証拠を揃えて早期に動く
よくある質問 AI による整理
Q1引渡命令とは何ですか?
競売で不動産を買い受けた人が、代金納付後に執行裁判所へ申し立てて得る明渡しの債務名義です。民事執行法83条が根拠で、明渡訴訟を経ずに占有者を退去させられます。
Q2引渡命令はいつまでに申し立てる?
民事執行法83条2項により、原則として代金を納付した日から6か月以内です。占有者の権原によってはより長い期間が定められる場合もあります。期限を過ぎると明渡訴訟が必要になります。
Q3占有移転禁止の保全処分を打たないとどうなる?
83条の2の追跡効が使えません。占有者が入れ替わるたびに引渡命令を取り直すことになり、時間と費用が積み上がります。これがかつて占有屋の収益源でした。
Q4民事執行法83条の2の悪意推定とは?
2項の規定で、保全処分の執行後に不動産を占有した者は、その執行を知って占有したと推定されます。買受人が相手の悪意を立証する必要がなくなり、事実上の立証責任が占有者側に移ります。
Q5引渡しの強制執行にはどんな費用がかかる?
執行官への予納金、明渡しの催告と断行の実施費用、残置動産の運搬・保管費用などがかかります。金額は物件の広さや動産の量で大きく変わるため、事前に執行官と段取りを確認してください。
Q6引渡命令に不服がある場合はどうする?
引渡命令の申立てについての裁判には執行抗告ができます(民事執行法83条4項)。期間は裁判の告知から1週間と非常に短いため、通知が届いたら直ちに動く必要があります。
Q7占有屋は今もいるの?
平成15年改正で83条の2などの執行妨害対策が整い、占有者を入れ替える手口は採算が合わなくなって激減しました。ただし居座り自体が消えたわけではなく、事前の保全処分は今も有効です。
Q8競売物件の占有状況はどこで確認できる?
三点セット(物件明細書・現況調査報告書・評価書)で確認します。裁判所の不動産競売物件情報サイトで閲覧でき、占有者の氏名・権原・保全処分の有無まで読み取るのが入札前の基本です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1競売の物件、占有者がいると絶対に買っちゃダメって本当ですか?
そうとは限りません。占有者がいても、占有移転禁止の保全処分(55条・77条)を先に打って引渡命令(83条)を取れば、83条の2で入れ替わりにも強制執行できます。実務のポイント:実務では占有者の有無より『その占有に対抗力ある権原があるか』が本当の分かれ目。三点セット(物件明細書・現況調査報告書・評価書)の占有状況欄を読み込める人だけが、割安な占有付き物件を安全に拾える
Q2居座ってる人がコロコロ入れ替わるんですが、そのたび引渡命令を取り直すんですか?
保全処分が執行されていれば取り直し不要です。83条の2 1項は、その執行後に占有を承継・開始した者にも当初の引渡命令で執行できると定め、2項でその者は悪意と推定されます。実務のポイント:逆に保全処分を打っていないと入れ替わるたびに取り直しになり、これがかつて占有屋の飯の種だった。先に打つか打たないかで天国と地獄が分かれる
Q3自分は普通に部屋を借りてただけなのに、買った人から出て行けと言われました。従うしかない?
いいえ。3項で『執行文の付与に対する異議の申立て』(民事執行法32条)ができ、買受人に対抗できる権原(対抗力ある賃借権など)で占有していること、または1項各号に該当しないことを主張できます。実務のポイント:対抗力の有無は『保全処分の執行より前から占有していたか』と『賃借権が競売の差押えに対抗できるか(抵当権設定との先後)』で決まる。契約書の日付より、賃料の振込履歴のほうが証拠として強いことが多い
間違えやすい点 AI による整理
- 「引渡命令さえ取れば、誰が住んでいようと追い出せる」と思われがちだが、逆だ。引渡命令は原則として名宛人にしか効かない。占有者が入れ替われば、原則もう一度取り直しになる。83条の2は、保全処分を先に打った場合だけ例外的にこの追跡効を認める、限定的な武器である
- 保全処分が大事なことは知っていても、その「執行のタイミング」がすべてを決めることまでは知られていない。保全処分の執行より前から入っていた占有者には、この追跡効も2項の悪意推定も及ばない。わずか数日の前後で、追い出せるか追い出せないかがひっくり返る
- 「居座っている占有者=悪質な占有屋」と決めてかかると足をすくわれる。3項は、正当な権原を持つ占有者に反論の窓口を残している。あなたが買受人でも、相手が本物の賃借人なら追い出せない。問いは『追い出せるか』ではなく『相手が保全処分の執行後に、悪意で入り込んだ占有者か』だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 民執83条の2:引渡命令の効力が及ぶ人的範囲を拡張する追跡効 | 民執83条:買受人に引渡命令という債務名義を与える根拠 民保62条:占有移転禁止の仮処分の当事者恒定効(一般規定) |
| 効力が及ぶ相手 | 保全処分の執行を知って占有した者、執行を知らずに被申立人の占有を承継した者 | 原則として引渡命令の名宛人(債務者・対抗できない占有者)のみ 仮処分執行後の承継人・占有取得者(訴訟物一般に妥当) |
| 発動の前提 | 55条1項3号・77条1項3号の保全処分および公示保全処分の執行が先行していること | 代金納付と、原則として納付日から6か月以内の申立て 本案訴訟に先立つ仮処分命令の発令と執行 |
| 相手方の反論手段 | 3項・32条の執行文付与に対する異議(対抗権原、1項各号非該当) | 83条4項の執行抗告(告知から1週間) 仮処分に対する保全異議・保全取消し、承継執行文への異議 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も査封後に占有した第三者について執行法院が占有を解いて拍定人に点交できる構造をとり、日本の追跡効と発想が近い。ただし保全処分の執行日を基準時とする明文の悪意推定は置かれていない
韓国も買受人の申立てによる引渡命令制度を持ち、点有移転禁止仮処分の当事者恒定効と組み合わせて執行妨害に対処する点で日本と同型の設計である
ドイツは競落許可決定そのものが占有者に対する明渡しの債務名義となり、承継人には ZPO § 727の執行文で対応する。日本のように保全処分の執行を追跡効の起点とする建て付けではない
米国では foreclosure sale 後に裁判所が占有回復令状を発し、lis pendens 登録後に占有を取得した者は手続の結果に拘束される。州法により手続と保護の厚みが大きく異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 競売でアパートを落札したら、一室に賃借人でも元所有者でもない男が住んでいた。引渡命令を出したら、執行当日には別人に入れ替わっていた。だが売却前に占有移転禁止の保全処分を打っていれば、入れ替わった相手にも同じ引渡命令で執行できる。打っていなければ、また一から取り直しだ
- もし、落札後に占有者が次々と入れ替わっていったら、あなたは何度も引渡命令を取り直すのか? 実は分水嶺は保全処分を執行したタイミング。その執行より前に入った占有者と、後に入った占有者とで、追い出せるかどうかが完全に変わる
- あなたが競売にかかった物件を正当に借りて住んでいる賃借人だとする。ある日、買受人から引渡命令の執行が来た。だが3項に、あなたには異議を申し立てる窓口が残されている
- 買受人から自分に執行文が付与されたと知った。あと数日で明け渡しを迫られる。3項の「執行文の付与に対する異議の申立て」で、買受人に対抗できる権原(対抗力ある賃借権など)があると主張できる。動くなら、執行が完了する前だ
取るべき行動
被害を受けた側:1. 競売の売却前または買受けを狙う段階で、占有者がいるなら執行裁判所に占有移転禁止の保全処分(55条・77条)を申し立てる、これが追跡効の前提2. 保全処分の執行日を記録、これより後に入った占有者には2項の悪意推定が働く3. 落札後、買受人の申立てで引渡命令を取得(83条) 4. 占有者が入れ替わっても、当初の引渡命令に承継人向けの執行文を付与してもらって執行、取り直し不要5. 執行は執行官に依頼し、残置動産の扱いまで段取りを組む
訴えられた側:1. 買受人から引渡命令の執行文が付与されたら、まず自分が保全処分の執行より前から占有していたか、対抗できる権原(賃借権など)があるかを確認2. あれば『執行文の付与に対する異議の申立て』(3項、民事執行法32条)で、買受人に対抗できる権原、または1項各号に該当しないことを主張3. 賃貸借契約書・賃料支払記録など権原の証拠を揃える4. 手続は引渡しの強制執行が完了する前に、遅れると住居を失う
時効(請求できる期限):3項の反論は『執行文の付与に対する異議の申立て』(民事執行法32条)で行い、明文の期間制限はないが、引渡しの強制執行が完了する前に申し立てなければ実益を失う。保全処分・引渡命令自体への不服は各手続の即時抗告等の期間に服する(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:83条の2の追跡効は、占有移転禁止の保全処分の執行を基準時として人的範囲を画するものであり、執行前から占有していた者には及ばない。2項の悪意推定は事実上の立証責任を占有者側へ転換する趣旨と解される
実務的理解:3項の異議事由は、買受人に対抗できる権原による占有であることと1項各号への非該当に限定され、引渡命令自体の当否は83条4項の執行抗告で争うべきものと整理されている
改正沿革 AI による整理
- 平成15年(2003年) 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律(法律第134号)により新設。占有者の入れ替えによる執行妨害(占有屋対策)を封じるため、占有移転禁止の保全処分の執行後に占有を承継・開始した者へ引渡命令の効力を及ぼす追跡効と、悪意推定、占有者側の異議権を導入した
改正の年表
- 1.平成15年(2003年) 新設:担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律(法律第134号)により新設。占有者の入れ替えによる執行妨害を封じるため、占有移転禁止の保全処分の執行後に占有を承継・開始した者へ引渡命令の効力を及ぼす追跡効、悪意推定、占有者側の異議権を導入した
- 民事執行法 第55条追跡効の前提となる売却のための占有移転禁止の保全処分
- 民事執行法 第77条買受人のための占有移転禁止の保全処分
- 民事執行法 第83条追跡効を及ぼす引渡命令の根拠規定
- 民事執行法 第27条承継人・後続占有者に対する承継執行文の付与
- 民事執行法 第32条3項の占有者による執行文付与への異議手続
- 民事保全法 第62条占有移転禁止の仮処分の当事者恒定効、同一構造の一般規定
- 民事保全法 第25条の2係争物に関する占有移転禁止の仮処分命令の要件
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