保険業法 第308条の7(業務規程)
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- 指定紛争解決機関は、次に掲げる事項に関する業務規程を定めなければならない。
- 一手続実施基本契約の内容に関する事項
- 二手続実施基本契約の締結に関する事項
- 三紛争解決等業務の実施に関する事項
- 四紛争解決等業務に要する費用について加入保険業関係業者が負担する負担金に関する事項
- 五当事者である加入保険業関係業者又はその顧客(以下この編において単に「当事者」という。)から紛争解決等業務の実施に関する料金を徴収する場合にあっては、当該料金に関する事項
- 六他の指定紛争解決機関その他相談、苦情の処理又は紛争の解決を実施する国の機関、地方公共団体、民間事業者その他の者との連携に関する事項
- 七紛争解決等業務に関する苦情の処理に関する事項
- 八前各号に掲げるもののほか、紛争解決等業務の実施に必要な事項として内閣府令で定めるもの
- 2.前項第一号の手続実施基本契約は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
- 一指定紛争解決機関は、加入保険業関係業者の顧客からの保険業務等関連苦情の解決の申立て又は当事者からの紛争解決手続の申立てに基づき苦情処理手続又は紛争解決手続を開始すること。
- 二指定紛争解決機関又は紛争解決委員は、苦情処理手続を開始し、又は加入保険業関係業者の顧客からの申立てに基づき紛争解決手続を開始した場合において、加入保険業関係業者にこれらの手続に応じるよう求めることができ、当該加入保険業関係業者は、その求めがあったときは、正当な理由がないのに、これを拒んではならないこと。
- 三指定紛争解決機関又は紛争解決委員は、苦情処理手続又は紛争解決手続において、加入保険業関係業者に対し、報告又は帳簿書類その他の物件の提出を求めることができ、当該加入保険業関係業者は、その求めがあったときは、正当な理由がないのに、これを拒んではならないこと。
- 四紛争解決委員は、紛争解決手続において、保険業務等関連紛争の解決に必要な和解案を作成し、当事者に対し、その受諾を勧告することができること。
- 五紛争解決委員は、紛争解決手続において、前号の和解案の受諾の勧告によっては当事者間に和解が成立する見込みがない場合において、事案の性質、当事者の意向、当事者の手続追行の状況その他の事情に照らして相当であると認めるときは、保険業務等関連紛争の解決のために必要な特別調停案を作成し、理由を付して当事者に提示することができること。
- 六加入保険業関係業者は、訴訟が係属している請求を目的とする紛争解決手続が開始された場合には、当該訴訟が係属している旨、当該訴訟における請求の理由及び当該訴訟の程度を指定紛争解決機関に報告しなければならないこと。
- 七加入保険業関係業者は、紛争解決手続の目的となった請求に係る訴訟が提起された場合には、当該訴訟が提起された旨及び当該訴訟における請求の理由を指定紛争解決機関に報告しなければならないこと。
- 八前二号に規定する場合のほか、加入保険業関係業者は、紛争解決手続の目的となった請求に係る訴訟に関し、当該訴訟の程度その他の事項の報告を求められた場合には、当該事項を指定紛争解決機関に報告しなければならないこと。
- 九加入保険業関係業者は、第六号若しくは第七号の訴訟が裁判所に係属しなくなった場合又はその訴訟について裁判が確定した場合には、その旨及びその内容を指定紛争解決機関に報告しなければならないこと。
- 十加入保険業関係業者は、その顧客に対し指定紛争解決機関による紛争解決等業務の実施について周知するため、必要な情報の提供その他の措置を講じなければならないこと。
- 十一前各号に掲げるもののほか、保険業務等関連苦情の処理又は保険業務等関連紛争の解決の促進のために必要であるものとして内閣府令で定める事項
- 3.第一項第二号の手続実施基本契約の締結に関する事項に関する業務規程は、保険業関係業者から手続実施基本契約の締結の申込みがあった場合には、当該保険業関係業者が手続実施基本契約に係る債務その他の紛争解決等業務の実施に関する義務を履行することが確実でないと見込まれるときを除き、これを拒否してはならないことを内容とするものでなければならない。
- 4.第一項第三号に掲げる事項に関する業務規程は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。
- 一苦情処理手続と紛争解決手続との連携を確保するための措置が講じられていること。
- 二紛争解決委員の選任の方法及び紛争解決委員が保険業務等関連紛争の当事者と利害関係を有することその他の紛争解決手続の公正な実施を妨げるおそれがある事由がある場合において、当該紛争解決委員を排除するための方法を定めていること。
- 三指定紛争解決機関の実質的支配者等(指定紛争解決機関の株式の所有、指定紛争解決機関に対する融資その他の事由を通じて指定紛争解決機関の事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にあるものとして内閣府令で定める者をいう。)又は指定紛争解決機関の子会社等(指定紛争解決機関が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配する関係にあるものとして内閣府令で定める者をいう。)を保険業務等関連紛争の当事者とする保険業務等関連紛争について紛争解決手続の業務を行うこととしている指定紛争解決機関にあっては、当該実質的支配者等若しくは当該子会社等又は指定紛争解決機関が紛争解決委員に対して不当な影響を及ぼすことを排除するための措置が講じられていること。
- 四紛争解決委員が弁護士でない場合(司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第三条第一項第七号(業務)に規定する紛争について行う紛争解決手続において、紛争解決委員が同条第二項に規定する司法書士である場合を除く。)において、紛争解決手続の実施に当たり法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定めていること。
- 五紛争解決手続の実施に際して行う通知について相当な方法を定めていること。
- 六紛争解決手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行について定めていること。
- 七加入保険業関係業者の顧客が指定紛争解決機関に対し保険業務等関連苦情の解決の申立てをする場合又は保険業務等関連紛争の当事者が指定紛争解決機関に対し紛争解決手続の申立てをする場合の要件及び方式を定めていること。
- 八指定紛争解決機関が加入保険業関係業者から紛争解決手続の申立てを受けた場合において、保険業務等関連紛争の他方の当事者となる当該加入保険業関係業者の顧客に対し、速やかにその旨を通知するとともに、当該顧客がこれに応じて紛争解決手続の実施を依頼するか否かを確認するための手続を定めていること。
- 九指定紛争解決機関が加入保険業関係業者の顧客から第七号の紛争解決手続の申立てを受けた場合において、保険業務等関連紛争の他方の当事者となる当該加入保険業関係業者に対し、速やかにその旨を通知する手続を定めていること。
- 十紛争解決手続において提出された帳簿書類その他の物件の保管、返還その他の取扱いの方法を定めていること。
- 十一紛争解決手続において陳述される意見又は提出され、若しくは提示される帳簿書類その他の物件に含まれる保険業務等関連紛争の当事者又は第三者の秘密について、当該秘密の性質に応じてこれを適切に保持するための取扱いの方法を定めていること。第三百八条の十三第九項に規定する手続実施記録に記載されているこれらの秘密についても、同様とする。
- 十二保険業務等関連紛争の当事者が紛争解決手続を終了させるための要件及び方式を定めていること。
- 十三紛争解決委員が紛争解決手続によっては保険業務等関連紛争の当事者間に和解が成立する見込みがないと判断したときは、速やかに当該紛争解決手続を終了し、その旨を保険業務等関連紛争の当事者に通知することを定めていること。
- 十四指定紛争解決機関の紛争解決委員、役員及び職員について、これらの者が紛争解決等業務に関し知り得た秘密を確実に保持するための措置を定めていること。
- 5.第一項第四号及び第五号に掲げる事項に関する業務規程は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。
- 一第一項第四号に規定する負担金及び同項第五号に規定する料金の額又は算定方法及び支払方法(次号において「負担金額等」という。)を定めていること。
- 二負担金額等が著しく不当なものでないこと。
- 6.第二項第五号の「特別調停案」とは、和解案であって、次に掲げる場合を除き、加入保険業関係業者が受諾しなければならないものをいう。
- 一当事者である加入保険業関係業者の顧客(以下この項において単に「顧客」という。)が当該和解案を受諾しないとき。
- 二当該和解案の提示の時において当該紛争解決手続の目的となった請求に係る訴訟が提起されていない場合において、顧客が当該和解案を受諾したことを加入保険業関係業者が知った日から一月を経過する日までに当該請求に係る訴訟が提起され、かつ、同日までに当該訴訟が取り下げられないとき。
- 三当該和解案の提示の時において当該紛争解決手続の目的となった請求に係る訴訟が提起されている場合において、顧客が当該和解案を受諾したことを加入保険業関係業者が知った日から一月を経過する日までに当該訴訟が取り下げられないとき。
- 四顧客が当該和解案を受諾したことを加入保険業関係業者が知った日から一月を経過する日までに、当該紛争解決手続が行われている保険業務等関連紛争について、当事者間において仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項(定義)に規定する仲裁合意がされ、又は当該和解案によらずに和解若しくは調停が成立したとき。
- 7.業務規程の変更は、内閣総理大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
- 8.内閣総理大臣は、前項の規定による認可をしようとするときは、当該認可に係る業務規程が第四項各号及び第五項各号に掲げる基準(紛争解決手続の業務に係る部分に限る。)に適合していることについて、あらかじめ、法務大臣に協議しなければならない。
この条文の基本情報
業務規程とは何ですか?
定義業務規程とは、保険業法第308条の7に定められた規定で、「指定紛争解決機関は、次に掲げる事項に関する業務規程を定めなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 保険業法第308条の7(業務規程)は、日本の保険業法に含まれる条文です。
- 保険業法第308条の7の条文原文は「指定紛争解決機関は、次に掲げる事項に関する業務規程を定めなければならない。」で始まります。
- 保険業法第308条の7は第二章に置かれています。
- 保険業法の公布日は平成7年6月7日です。
- 保険業法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 保険業法第308条の7の前の条は保険業法第308条の6です。
- 保険業法第308条の7の次の条は保険業法第308条の8です。
- 保険業法第308条の7には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
保険業法(平成七年法律第百五号)第308条の7 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105 - 本サイト収録
保険業法(平成七年法律第百五号)第308条の7(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/407AC0000000105/308_7
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点保険業法308条の7は、指定紛争解決機関の業務規程と手続実施基本契約の内容を法定する。保険会社は正当な理由なく手続を拒めず、顧客が受諾した特別調停案は原則受諾義務を負う。
Q · 保険金が払われないとき、ADR の和解案で保険会社を縛れるの?
顧客が受諾した特別調停案は、保険会社は原則として拒めません。
保険業法308条の7第6項により、紛争解決委員が提示した特別調停案を顧客が受諾した場合、加入保険業関係業者は原則としてこれを受諾しなければなりません。例外は四つだけで、顧客が受諾しない場合、受諾を知った日から一月以内に訴訟が提起され取り下げられない場合、仲裁合意がされた場合、別の和解または調停が成立した場合に限られます。さらに同条2項2号・3号により、保険会社は正当な理由なく手続への応諾も帳簿書類の提出も拒めません。片側だけに重い拘束がかかる設計です。
解説
保険金が出ない。その一言で交渉が止まったとき、多くの人は弁護士費用と裁判の時間を天秤にかけて引き下がる。だがこの条文は、引き下がらなくていい理由を制度として組み立てている。指定紛争解決機関(生命保険協会や日本損害保険協会の窓口)は業務規程を作る義務を負い、その規程の中身、とくに保険会社と結ぶ「手続実施基本契約」に何を書かせるかまで法律が決めている。核心は三つ。保険会社は正当な理由なく手続を拒めない。帳簿書類の提出を求められても正当な理由なく拒めない。そして紛争解決委員が出す「特別調停案」は、あなたが受諾すれば保険会社側が原則として受諾しなければならない。片側だけを縛る設計である。あなたは蹴って裁判に行く自由を持ったまま、相手だけが縛られている。
法的な位置づけ
保険業法第308条の7は、指定紛争解決機関の業務規程に関する規定であり、業務規程の必要的記載事項(手続実施基本契約の内容、紛争解決等業務の実施、負担金および料金、他機関との連携等)と、手続実施基本契約に定めるべき応諾義務・報告および帳簿書類提出義務・特別調停案の片面的拘束力、ならびに業務規程の変更に対する内閣総理大臣の認可と法務大臣への協議を定める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.相手が縛られている指定紛争解決機関を特定する 申立て先は自分で選べない。保険証券、約款、保険会社サイトの表示から、その会社が手続実施基本契約を結んでいる指定紛争解決機関(生命保険協会・日本損害保険協会など)を先に確定する
- 2.不払いの経緯を時系列一枚に整理する 不払通知書の理由欄、診断書、告知書の控え、担当者とのやりとりを日付順に一枚へ落とす。不払通知書に ADR 窓口の案内がなければ、2項10号の周知措置義務の不履行として指摘材料になる
- 3.まず苦情処理手続、不成立なら紛争解決手続へ 2項1号に基づき苦情処理手続を申し立て、解決しなければ紛争解決手続へ進む。4項1号は両手続の連携確保を業務規程に求めているため、段階を踏むこと自体が不利にはならない
- 4.出させたい資料を名指しで求める 紛争解決委員に対し、支払査定記録、査定基準の適用部分、担当者との通話録音など、相手に提出させたい物件を具体的に特定して求める。2項3号により保険会社は正当な理由なく拒めない
- 5.特別調停案の受諾は日付入りの書面で伝える 特別調停案が提示されたら、受諾の意思を日付入りの書面で明確に伝える。保険会社が受諾を知った日から一月の期間が起算され(6項2号・3号)、曖昧な伝え方は相手に無期限の検討時間を与える
- 6.一月の期間内の相手の動きを監視する 一月以内に請求に係る訴訟が提起され取り下げられなければ拘束力は生じない。訴訟提起の有無を確認し、提起された場合は訴訟対応へ切り替える。手続で得た資料はそのまま訴訟資料として使える
よくある質問 AI による整理
Q1保険金が払われないときの相談先はどこ?
相手の保険会社が手続実施基本契約を結んでいる指定紛争解決機関です。保険証券や約款、会社サイトに窓口が表示されており、保険業法308条の7第2項10号は保険会社に顧客への周知措置義務を課しています。
Q2保険会社は ADR の手続を断れる?
断れません。308条の7第2項2号により、顧客からの申立てに基づく苦情処理手続・紛争解決手続について、加入保険業関係業者は正当な理由がないのに応諾を拒んではならないと法定されています。
Q3保険 ADR で保険会社に資料を出させられる?
求められます。308条の7第2項3号は、指定紛争解決機関または紛争解決委員が報告や帳簿書類その他の物件の提出を求めることができ、保険会社は正当な理由なく拒めないと定めます。支払査定記録も対象になり得ます。
Q4特別調停案を受諾したら、いつまでに何が起きる?
顧客の受諾を保険会社が知った日から一月が起算されます(6項2号・3号)。その日までに請求に係る訴訟が提起され、かつ取り下げられなければ拘束力は生じません。受諾日を明確にしないと相手の期間が進みません。
Q5業務規程は誰が作って誰が認可する?
作るのは指定紛争解決機関です(1項)。変更は内閣総理大臣の認可を受けなければ効力を生じず(7項)、紛争解決手続に係る部分については、あらかじめ法務大臣への協議が必要です(8項)。
Q6紛争解決委員は弁護士以外でもなれる?
なれます。ただし4項4号により、弁護士でない委員が法令の解釈適用に専門的知識を要する場面では、弁護士の助言を受けられる措置を業務規程に定めなければなりません。司法書士には別の例外枠があります。
Q7手続で出した資料の秘密は守られる?
守る仕組みが法定されています。4項11号は、陳述された意見や提出物件に含まれる当事者・第三者の秘密を性質に応じて適切に保持する取扱方法を業務規程に定めるよう求め、手続実施記録の秘密も同様に扱われます。
Q8保険会社側から紛争解決手続を申し立てられたらどうなる?
4項8号により、指定紛争解決機関は他方当事者である顧客へ速やかに通知し、顧客が手続の実施を依頼するか否かを確認する手続が必要です。顧客側には応じる義務はなく、応諾義務は保険会社側だけにあります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1保険会社と揉めてるんですけど、ADR ってお金かかるんですか?
顧客側は原則として費用がかからない。308条の7第1項4号が、紛争解決等業務の費用は加入保険業関係業者の負担金で賄う構造を定めているからだ。実務のポイント:2項10号は保険会社に、顧客へ ADR の存在を周知する措置義務を課している。不払いの通知書に窓口の案内が見当たらなければ、その不作為自体を交渉の場で指摘できる。
Q2特別調停案って、結局保険会社が嫌だと言えば終わりじゃないんですか?
終わりではない。6項は、顧客が受諾した特別調停案を加入保険業関係業者が原則受諾しなければならないと定め、例外を四つに限っている。顧客が受けない場合、一月以内に訴訟が提起され取り下げられない場合、仲裁合意や別の和解が成立した場合だけだ。実務のポイント:訴訟で振り切る選択は会社側に社内説明と監督上の説明コストを生む。実務では特別調停案の提示に至る前に会社側が折れる例が多いとされる。
Q3担当者が「ADR に出しても結果は変わりません」と言うんですが、本当ですか?
変わりうる。2項2号で保険会社は正当な理由なく手続を拒めず、2項3号で帳簿書類の提出も正当な理由なく拒めない。4項2号は、利害関係のある紛争解決委員を排除する方法を定めるよう求めている。実務のポイント:申立てが入ると、対応窓口が営業や支払査定の担当者から本社の対応部署へ移る。交渉相手が変わること自体が結果を変える。
Q4裁判と ADR、両方やったらどうなるんですか?
併存できる。2項6号から9号は、訴訟が係属した場合や裁判が確定した場合に保険会社が指定紛争解決機関へ報告する義務を定めている。ただし6項2号、3号により、訴訟が提起され取り下げられなければ特別調停案の拘束力は生じない。実務のポイント:先に訴訟を起こすと、相手だけを縛る片面的拘束というカードを自分から捨てることになる。順番は ADR が先である。
間違えやすい点 AI による整理
- ADR が「話し合いの場」であることは多くの人が知っている。知られていないのは、その拘束力が対等ではないという点だ。特別調停案は、顧客が受諾すれば保険会社側が原則として受諾義務を負う(6項)。単なる調停案ではなく、片面的な拘束力を持つ和解案である。「どうせ話し合いでしょう」と使わないまま終わる人が大量にいる。
- 「どこの ADR に申し立てればいいのか」という問いの立て方がすでにずれている。選ぶのはあなたではなく、相手の保険会社がどの指定紛争解決機関と手続実施基本契約を結んでいるかで決まる。保険証券、約款、会社サイトの表示を見るのが先。問いは「どこへ出すか」ではなく「相手はどこに縛られているか」である。
- あなたから見れば「資料を見せてくれない不誠実な会社」。法律から見れば、手続に入った瞬間に帳簿書類の提出を正当な理由なく拒めなくなる当事者(2項3号)。同じ資料が、電話交渉では絶対に出てこないのに手続の中では出てくる。この落差を知らずに交渉だけを続けるのが、いちばん損をする。
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律対象 | 308条の7:業務規程の記載事項と手続実施基本契約の内容 | 308条の2:指定紛争解決機関そのものの指定要件 308条の13:紛争解決手続の実施と手続実施記録 |
| 名宛人 | 指定紛争解決機関(規程策定義務)+加入保険業関係業者(契約上の義務) | 内閣総理大臣(指定権者)と申請法人 紛争解決委員・指定紛争解決機関(手続実施主体) |
| 顧客への効果 | 応諾義務・資料提出義務・特別調停案の片面的拘束力という交渉上のてこ | 申立て先となる機関が公的に確定する 手続の進行と記録の保存により後の訴訟で使える材料が残る |
| 行政の関与 | 業務規程の変更に内閣総理大臣の認可+法務大臣協議(7項・8項) | 指定および指定の取消し 手続実施記録の作成・保存に関する監督 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は金融消費評議中心という単一機構に集約し、一定金額以下の評議決定は金融業者側のみを拘束する。日本の特別調停案と同じ片面的拘束の発想だが、金額基準で線を引く点が異なる
韓国は少額紛争について金融会社側の調停離脱(訴訟提起)を制限する仕組みを採る。日本は離脱を一月の訴訟提起で認めるのに対し、韓国は離脱自体を禁じる設計に踏み込んでいる
ドイツは保険オンブズマンの決定が一定額まで保険者を拘束し、消費者側は拘束されない。片面的拘束という構造は日本と共通するが、根拠が業界団体の手続規程に置かれる度合いが大きい
米国は統一の保険 ADR 拘束制度を持たず、州保険局への苦情申立てと不公正保険金支払慣行の規制、さらに bad faith 訴訟による損害賠償で圧力をかける構造が中心
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 入院給付金の請求が「告知義務違反」を理由に不払いになった。電話で三十分粘っても担当者は同じ説明を繰り返す。この時点で、あなたには申立費用のかからない紛争解決手続という入口がある。
- もし保険会社が「当社は ADR には応じません」と言ってきたら、どうなる? その会社が加入保険業関係業者である以上、それは通らない。手続実施基本契約で応諾義務を負っており(2項2号)、正当な理由なく拒めば手続上の問題であると同時に監督上の問題になる。担当者個人の判断で断れる話ではない。
- あなたが保険会社や代理店の担当者側だとする。顧客から申立てが行けば、社内の支払査定記録や通話録音の提出を求められ、正当な理由がなければ拒めない(2項3号)。社内で「外に出したくない資料」ほど、手続で出る前提の品質で作る必要がある。
- 特別調停案が提示され、あなたが受諾した。それを保険会社が知った日から一月。この一月のあいだに訴訟が提起され、かつ取り下げられなければ、保険会社は和解案に縛られない。逆に言えば、あなたが受諾日をはっきりさせないかぎり、相手の時計は動き出さない。
- 親が亡くなり死亡保険金の受取で揉めている、と友人から相談された。裁判の話を始める前に、その保険会社がどの指定紛争解決機関に加入しているかを調べる。それだけで相談の筋道が変わる。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 保険証券・約款・会社サイトで相手が加入する指定紛争解決機関を特定する2. 不払い通知書、診断書、告知書の控え、担当者とのやりとりを時系列で一枚に整理する3. まず苦情処理手続を申し立て、解決しなければ紛争解決手続へ進む4. 紛争解決委員には、相手に出させたい資料を名指しで求める(2項3号) 5. 特別調停案が出たら、受諾の意思は日付入りの書面で明確に伝える
訴えられた側:1. 申立てが来た時点で、正当な理由なく応諾を拒めない前提で体制を組む(2項2号) 2. 提出を求められる帳簿書類を想定し、支払査定記録や通話録音を手続で開示されうる品質で作る3. 特別調停案が出てからでは選択肢が一月しかない。苦情処理段階での解決余地を先に潰さない4. 業務規程の変更には内閣総理大臣の認可が要る(7項)ため、自社都合でルールを動かせないことを社内に周知する
時効(請求できる期限):特別調停案については、顧客が受諾したことを加入保険業関係業者が知った日から一月(6項2号、3号)。この期間内に訴訟が提起され、かつ取り下げられなければ拘束力は生じない。原資となる保険給付請求権自体の消滅時効は三年(保険法95条)。ADR の申立てで当然に時効が止まるわけではなく、手続不調後の一定期間内に訴えを提起した場合の完成猶予の特則が置かれている(保険業法308条の13関係、条項番号は現行効力を要確認)。
学説
通説:特別調停案の片面的拘束力は、情報と資金の非対称を前提にした実効的救済の要請と、保険会社の裁判を受ける権利(憲法32条)との調整として理解される。6項2号・3号の一月の訴訟提起という出口が、その均衡を保つ装置とされる
改正沿革 AI による整理
- 平成21年(2009年)改正、平成22年(2010年)施行 金融 ADR 制度の導入に伴い新設。指定紛争解決機関に業務規程の策定を義務づけ、手続実施基本契約の内容として応諾義務、資料提出義務、特別調停案の片面的拘束力を法定した。その後の改正の有無と内容は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成21年(2009年) 新設:金融 ADR 制度の導入に伴い新設(施行は平成22年=2010年)。指定紛争解決機関に業務規程の策定を義務づけ、手続実施基本契約の内容として応諾義務、報告・帳簿書類提出義務、特別調停案の片面的拘束力を法定した。その後の改正の有無と内容は人的検証が必要
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