保険業法 第324条(会社財産を危うくする罪)
クイックジャンプ
- 保険業を営む株式会社(以下この編において「株式会社」という。)の保険管理人又は保険計理人は、次の各号のいずれかに該当する場合には、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
- 一会社法第百九十九条第一項第三号又は第二百三十六条第一項第三号に掲げる事項について、裁判所又は株主総会若しくは種類株主総会に対して虚偽の申述を行い、又は事実を隠蔽したとき。
- 二何人の名義をもってするかを問わず、株式会社の計算において不正にその株式を取得し、又は質権の目的としてこれを受けたとき。
- 三法令又は定款の規定に違反して、剰余金の配当をしたとき。
- 四株式会社の目的の範囲外において、投機取引のために株式会社の財産を処分したとき。
- 2.相互会社の保険管理人、保険計理人、第三百二十二条第一項第二号から第九号までに掲げる者又は第三十条の十一第二項若しくは第七十九条第三項において準用する会社法第九十四条第一項の規定により選任された者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、前項と同一の刑に処する。
- 一相互会社の設立の場合において社員の数、基金の総額の引受け若しくは基金の拠出に係る払込みについて、又は第二十四条第一項各号に掲げる事項について、裁判所又は創立総会に対して虚偽の申述を行い、又は事実を隠蔽したとき。
- 二法令又は定款の規定に違反して、基金の償却、基金利息の支払又は剰余金の分配をしたとき。
- 三相互会社の目的の範囲外において、投機取引のために相互会社の財産を処分したとき。
- 3.相互会社が株式会社となる組織変更をする場合において、相互会社の保険管理人、第三百二十二条第一項第四号から第六号まで若しくは第九号に掲げる者又は株式会社の取締役、会計参与、監査役若しくは執行役となるべき者が、株式の引受け、払込み若しくは金銭以外の財産の給付について、又は第九十二条第三号に掲げる事項について、内閣総理大臣若しくは裁判所又は社員総会若しくは総代会に対して虚偽の申述を行い、又は事実を隠蔽したときは、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
- 4.株式会社が相互会社となる組織変更をする場合において、株式会社の保険管理人、取締役、会計参与、監査役、執行役、民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された株式会社の取締役、会計参与、監査役若しくは執行役の職務を代行する者、会社法第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項若しくは第四百一条第三項(同法第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者若しくは検査役又は相互会社の取締役、会計参与、監査役若しくは執行役となるべき者が、基金の総額の引受け若しくは基金の拠出に係る払込みについて、保険契約者総会又は保険契約者総代会に対して虚偽の申述を行い、又は事実を隠蔽したときも、前項と同様とする。
この条文の基本情報
会社財産を危うくする罪とは何ですか?
定義会社財産を危うくする罪とは、保険業法第324条に定められた規定で、「保険業を営む株式会社(以下この編において「株式会社」という。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 保険業法第324条(会社財産を危うくする罪)は、日本の保険業法に含まれる条文です。
- 保険業法第324条の条文原文は「保険業を営む株式会社(以下この編において「株式会社」という。」で始まります。
- 保険業法第324条は第六編に置かれています。
- 保険業法の公布日は平成7年6月7日です。
- 保険業法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 保険業法第324条の前の条は保険業法第323条です。
- 保険業法第324条の次の条は保険業法第325条です。
- 保険業法第324条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
保険業法(平成七年法律第百五号)第324条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105 - 本サイト収録
保険業法(平成七年法律第百五号)第324条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/407AC0000000105/324
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点保険業法324条は、保険会社の保険管理人や保険計理人が違法な剰余金の配当や目的外の投機取引を行った場合に、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金を科す。
Q · 保険会社の不正って、社長や役員だけが刑事責任を負うんですか?
取締役だけでなく保険計理人や保険管理人も処罰対象です
保険業法324条は、保険会社の保険管理人と保険計理人を正面から刑事責任の主体に据えています。会社法963条が捉えるのは会社法上の機関だけなので、数理で支払能力を保証する保険計理人や、破綻時に経営を引き継ぐ保険管理人はそこに含まれません。その隙間を埋めるのが本条です。法令・定款に違反する剰余金の配当や基金の償却、目的の範囲外での投機取引のための財産処分には、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金が科され、併科もありえます。
解説
生命保険の契約者であるあなたは、実は「お客様」ではないかもしれない。日本生命、明治安田生命、住友生命といった相互会社では、契約者は「社員」であり、会社を構成する側にいる。その会社財産を守る最後の刑事的な砦が保険業法324条だ。この条文が名指しするのは取締役だけではない。将来の保険金を払えるかを数理計算で保証する保険計理人と、会社が破綻したときに乗り込んでくる保険管理人が、正面から刑事責任の主体に据えられている。違法な剰余金の配当、定款の目的の範囲外での投機取引、自己株式の不正取得。これらに手を染めれば5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、しかも併科もありうる。あなたが毎月払ってきた保険料が積み上がった責任準備金は、この条文が背後で支えている。
法的な位置づけ
保険業法324条は、会社財産を危うくする罪を定める罰則規定である。保険会社の保険管理人および保険計理人、相互会社の取締役等を主体とし、裁判所や総会に対する虚偽の申述、法令・定款に違反する剰余金の配当や基金の償却、目的の範囲外における投機取引のための財産処分を処罰する。会社法963条が捉えない保険業特有の主体を補う位置づけを持つ。
よくある質問 AI による整理
Q1保険業法324条とは何ですか?
会社財産を危うくする罪の規定です。保険管理人・保険計理人や相互会社の取締役等が、虚偽の申述、違法な配当や基金償却、目的外の投機取引をした場合に刑罰を科します。
Q2保険業法324条の刑罰はどのくらいですか?
1項・2項は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金で併科もありえます。組織変更に関する3項・4項は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
Q3保険業法324条は誰が処罰されますか?
株式会社形態の保険会社では保険管理人と保険計理人、相互会社ではこれに加えて322条1項2号から9号に掲げる取締役等の者が主体になります。
Q4違法な配当は刑事罰になりますか?
なります。法令または定款の規定に違反して剰余金の配当をしたときは、324条1項3号により5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金の対象です。
Q5目的の範囲外における投機取引とは何ですか?
定款に定めた事業目的の範囲を越えて、投機を目的に会社財産を処分する行為です。324条1項4号・2項3号は、損害の発生を待たず処分の時点で成立します。
Q6基金の償却を違法に行うとどうなりますか?
相互会社で法令・定款に違反して基金の償却、基金利息の支払、剰余金の分配をすると、324条2項2号により5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金の対象です。
Q7保険業法324条の公訴時効は何年ですか?
1項・2項の罪は5年、3項・4項の罪は3年です(刑事訴訟法250条2項)。起算点は犯罪行為が終わった時で、損害が発覚した時ではありません。
Q8保険業法324条3項・4項は何を罰するのですか?
相互会社と株式会社の間の組織変更の場面で、株式の引受けや基金の拠出に係る払込みについて虚偽の申述や事実の隠蔽をした場合を罰します。
この条文についての質問 AI による整理
Q1保険計理人って何をする人なんですか? なんで刑事罰まであるんですか?
保険業法120条で選任が義務づけられた数理の専門職で、責任準備金が十分か、契約者配当が妥当かを算定して意見書を提出します。何十年先の支払能力を保証する立場なので、324条1項は取締役とは別に名指しで刑事責任の主体にしています。実務のポイント:意見書は経営に不都合な内容でも提出義務がある。だから経営陣は提出前に文言の調整を持ちかけてくる。その調整のやりとりの記録が、後に共犯かどうかを分ける
Q2相互会社って普通の株式会社と何が違うんですか?
株主がいません。契約者が「社員」として会社を構成し、資本金の代わりに「基金」があります。だから324条2項は、配当ではなく基金の償却、基金利息の支払、剰余金の分配を違法に行った場合を罰します。実務のポイント:社員は数百万人いるので実際の議決は少数の「総代」による総代会で決まり、総代の選出過程は会社側が実質的に握っている。発言力を使いたいなら、まず総代会の傍聴制度と質問窓口を調べる
Q3保険会社が潰れたら、保険管理人が私の保険を勝手に減らせるんですか?
保険管理人は内閣総理大臣の処分で業務と財産の管理を引き継ぎ(保険業法242条)、契約条件の変更もその手続の中で進みます。ただし管理人自身が会社財産を目的外の投機に回せば324条の対象です。実務のポイント:過去の破綻処理では予定利率の引下げと早期解約控除がセットで来る。焦って解約すると控除で損をする設計になっていることが多く、受け皿会社の条件が出るまで待つのが定石
間違えやすい点 AI による整理
- 「保険会社の不正なら会社法963条を見ればいい」という出発点そのものが誤っている。会社法963条が捉えるのは取締役・執行役・監査役といった会社法上の機関だ。保険計理人も保険管理人もそこに含まれない。だから保険業法324条が別に用意されている。探す条文を間違えると、主体が外れて「不可罰」という誤った結論に飛びつくことになる
- 違法配当は民事で返還させればよい、ということは多くの人が知っている。だが深刻度が見えていない。324条1項3号の違法配当は、会社に損害が現実化していなくても成立する抽象的危険犯だ。翌期に業績が回復しても、配当を実行した時点で犯罪はすでに完成している
- あなたから見れば、含み損を取り戻すための攻めの運用は経営判断だ。だが法律から見れば「目的の範囲外における投機取引のための財産処分」になりうる。経営判断原則は民事の責任を和らげる法理であって、324条の刑事構成要件を消す装置ではない。この落差が、結果が出なかったときに効いてくる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文と罪名 | 保険業法324条:会社財産を危うくする罪 | 保険業法322条:特別背任罪 会社法963条:会社財産を危うくする罪(一般規定) |
| 主体 | 保険管理人・保険計理人、相互会社では322条1項2号から9号に掲げる者等 | 発起人・取締役・執行役・監査役など322条1項各号の者 発起人・取締役・執行役・監査役など会社法上の機関(保険計理人・保険管理人は含まれない) |
| 図利加害目的 | 不要。違法配当や目的外の投機取引という行為そのものを捉える | 必要。自己もしくは第三者の利益を図り、または会社に損害を加える目的が要件 不要 |
| 法定刑の重さ | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科可、1項・2項) | 特別背任類型として本条より重い法定刑 本条と同等の水準 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は違法な盈餘分派の罰則を会社法制の側に置き、保険業負責人については保険法に背信類型を用意する二層構造。日本のように保険計理人を正面から主体に据える条文は置かれていない
韓国商法625条は日本の会社法963条とほぼ同型で、違法配当と目的外の投機取引を処罰する。保険業固有の主体拡張は日本ほど明示的ではない
ドイツは虚偽申述と不実開示を株式法の罰則で捉え、保険監督法が保険会社固有の義務違反を補う。監督法違反と会社法罰則の分業が明確
米国は保険業に従事する者の背信・横領・虚偽記載を連邦法で包括的に犯罪化し、加えて州の保険法典が監督上の制裁を課す。相互会社の基金という概念は存在しない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、相互会社の決算で、基金償却積立金を積まないまま基金の償却を通そうという方針が降りてきたら? 保険業法324条2項2号が正面から捉えるのは「法令又は定款の規定に違反して、基金の償却、基金利息の支払又は剰余金の分配をしたとき」だ。取締役も保険計理人も主体に含まれる。総代会まであと10日、数字を見ている人間しか止められない
- 相互会社の運用責任者として、含み損を取り戻そうと定款の目的の範囲を越えた取引にポジションを張った。結果が出れば英雄、出なければ324条2項3号の「目的の範囲外における投機取引のための財産処分」。損害の発生を待たず、処分した時点で犯罪は成立している
- 加入していた保険会社が破綻し、金融庁の処分で保険管理人による管理が始まった。報道は「予定利率が引き下げられる」としか伝えない。だが乗り込んできたその保険管理人自身も、会社財産を目的外の投機に回せば5年以下の拘禁刑を負う立場にある。管理人は救済者であると同時に、刑事的に縛られた受託者だ
- 保険計理人として、責任準備金の積立が不足していると分かっているのに、経営陣から「今期は配当を出す」と告げられた。意見書の提出期限まで1週間。324条1項3号は、取締役ではなくあなたを名指しで違法配当の主体に含めている。署名するかどうかが、刑事の土俵に乗るかどうかの分岐点になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 相互会社の社員(契約者)なら、総代会の招集通知と事業報告で基金償却・剰余金分配の適法性を確認し、疑義は書面質問で記録に残す2. 破綻局面では生命保険契約者保護機構と金融庁の金融サービス利用者相談室に事実関係を通報3. 犯罪の疑いが具体的なら刑事訴訟法239条の告発を検討、証拠の中心は決算書類と総代会資料4. 相互会社にも会社法の責任追及の訴えが準用されており、民事の回収は刑事と並行して走らせる
訴えられた側:1. 324条は故意犯で過失では成立しない。適法性の判断過程を示す資料(取締役会議事録、保険計理人の意見書、法務・監査の助言メール)を直ちに保全2.「目的の範囲外の投機取引」は評価を伴う要件なので、定款の目的と資産運用方針との整合性を時系列で組み立てる3. 金融庁の行政検査と刑事手続は別軌道、検査対応での供述が刑事に流れる前提で弁護人を先に入れる4. 弁護人は金融規制刑事の経験者を選ぶ
時効(請求できる期限):公訴時効は、1項・2項の罪(5年以下の拘禁刑)が5年、3項・4項の罪(3年以下の拘禁刑)が3年(刑事訴訟法250条2項)。起算点は犯罪行為が終わった時(同法253条1項)で、違法配当なら配当を実行した時、投機取引なら財産を処分した時。損害が発覚した時ではない
学説
通説:会社財産を危うくする罪は、会社債権者および契約者の引当てとなる会社財産の維持を保護法益とする抽象的危険犯と解されている。保険業法324条はこの枠組みを保険業に及ぼし、会社法963条が捉えない保険計理人・保険管理人を主体に加えた特別規定と位置づけられる。
実務的理解:324条は故意犯であり過失では成立しない。そのため実務では、取締役会議事録、保険計理人の意見書、法務・監査部門の助言記録といった適法性の判断過程を示す資料が、故意および共犯性の認定を左右する中心証拠となる。
改正沿革 AI による整理
- 平成17年(2005年)会社法制定に伴う整備 引用条文が旧商法から会社法(199条1項3号、236条1項3号、346条2項ほか)に置き換えられ、相互会社の機関に関する準用構造が整理された
- 平成26年(2014年)会社法改正の反映 4項の列挙に監査等委員会設置会社および監査等委員である取締役が組み込まれ、一時役員の職務を行うべき者の範囲が拡張された
- 令和4年(2022年)公布、令和7年(2025年6月1日)施行 「懲役」を「拘禁刑」に置き換える刑法改正に伴う整備。法定刑の重さ自体は5年以下・3年以下のまま変わらない
改正の年表
- 1.平成7年(1995年) 新設:保険業法の全部改正(平成7年法律第105号)に伴い、保険業特有の主体を対象とする会社財産を危うくする罪として整備された
- 2.平成17年(2005年) 改正:会社法制定に伴う整備。引用条文が旧商法から会社法(199条1項3号、236条1項3号、346条2項ほか)に置き換えられ、相互会社の機関に関する準用構造が整理された
- 3.平成26年(2014年) 改正:会社法改正の反映により、4項の列挙に監査等委員会設置会社および監査等委員である取締役が組み込まれ、一時役員の職務を行うべき者の範囲が拡張された
- 4.令和4年(2022年)公布・令和7年(2025年6月1日)施行 改正:刑法改正に伴う整備により「懲役」が「拘禁刑」に置き換えられた。法定刑の重さ自体は5年以下・3年以下のまま変わらない
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める