人事訴訟法 第3条の5(特別の事情による訴えの却下)
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裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地、当該訴えに係る身分関係の当事者間の成年に達しない子の利益その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができる。
この条文の基本情報
特別の事情による訴えの却下とは何ですか?
定義特別の事情による訴えの却下とは、人事訴訟法第3条の5に定められた規定で、「裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地、当該訴えに係る身分関係の当事者…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 人事訴訟法第3条の5(特別の事情による訴えの却下)は、日本の人事訴訟法に含まれる条文です。
- 人事訴訟法第3条の5の条文原文は「裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地、当該訴えに係る身分関係の当事者…」で始まります。
- 人事訴訟法第3条の5は第一款 日本の裁判所の管轄権に置かれています。
- 人事訴訟法の公布日は平成15年7月16日です。
- 人事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 人事訴訟法第3条の5の前の条は人事訴訟法第3条の4です。
- 人事訴訟法第3条の5の次の条は人事訴訟法第4条です。
- 人事訴訟法第3条の5には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第3条の5 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000109 - 本サイト収録
人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第3条の5(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/415AC0000000109/3_5
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点人事訴訟法3条の5は、日本の裁判所に管轄権がある人事訴訟でも、被告の負担や証拠の所在地、子の利益等から特別の事情があれば訴えを却下できると定める。
Q · 日本の裁判所に管轄があれば、国際離婚の裁判は必ず日本でできるの?
特別の事情があれば、管轄があっても却下されうる
人事訴訟法3条の5により、日本の裁判所が3条の2以下の規定で管轄権を有する場合でも、事案の性質、被告の応訴負担の程度、証拠の所在地、未成年の子の利益などを考慮して、日本での審理が当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理を妨げる特別の事情があると認められれば、訴えの全部又は一部が却下されます。却下は門前払いであり、請求の当否は判断されません。
解説
日本の裁判所に管轄権がある。その確認をもらって安心した瞬間に、この条文があなたの訴えを丸ごと消すことがある。人事訴訟法3条の5は、離婚や親子関係の訴えについて「日本で裁判できる」と認定された後でもなお、裁判所が事案の性質、応訴する被告の負担、証拠の所在地、そして未成年の子の利益などを総合的に見て、日本で審理すると当事者間の衡平を害する、あるいは適正迅速な審理を妨げる特別の事情があると判断すれば、訴えの全部または一部を却下できると定める。ここで効いてくるのがあなたの現実だ。国際結婚が破綻し、配偶者と子はブラジルに、財産も向こうにあり、あなただけが日本に帰国している。管轄はある。だが証拠も証人も子の生活実態も全部向こうにあるなら、裁判所はこの条文で却下しうる。却下は請求棄却ではないから内容の判断すら受けられない。あなたが数か月かけて準備した書面が、入口で止まる。
法的な位置づけ
人事訴訟法3条の5は、人事訴訟の国際裁判管轄に関する特則であり、日本の裁判所が管轄権を有する場合であっても、事案の性質、応訴による被告の負担、証拠の所在地、身分関係の当事者間の未成年の子の利益その他の事情から、当事者間の衡平又は適正迅速な審理を害する特別の事情があるときに、裁判所が訴えの全部又は一部を却下できる旨を定める規定である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.日本の管轄原因を特定する 人事訴訟法3条の2各号のどれに該当するか(被告の住所、当事者双方の日本国籍、最後の共通住所など)を確認し、管轄の根拠を書面で整理する
- 2.特別の事情の考慮要素を事案ごとに棚卸しする 事案の性質、被告の応訴負担(来日頻度・国内資産)、証拠の所在地、未成年の子の生活拠点の4軸について、日本寄りか外国寄りかを表にまとめる
- 3.日本との接点を示す証拠を提訴前に確保する 被告の日本への帰国実績、日本国内の資産や住民登録、過去の日本での手続への出頭記録などを、関係が悪化しきる前にメール等で確認し保存する
- 4.却下主張への反論(被告側は早期主張)を準備する 原告側は翻訳や嘱託尋問で証拠の偏在を補えることを具体的に反論する。被告側は本案に深入りする前の初期段階で、応訴負担と証拠・子の現地所在を資料付きで主張する
よくある質問 AI による整理
Q1人事訴訟法3条の5とは?
日本の裁判所に国際裁判管轄がある人事訴訟でも、特別の事情があれば訴えの全部又は一部を却下できると定めた規定です。2018年改正で新設されました。
Q2国際離婚 日本で裁判できる?
まず人事訴訟法3条の2などで日本の管轄が認められる必要があります。そのうえで3条の5の特別の事情による却下を受けなければ、日本で審理されます。
Q3特別の事情 却下 考慮される事情は?
条文は事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地、身分関係の当事者間の未成年の子の利益を例示し、「その他の事情」も総合考慮します。
Q4相手が海外在住 離婚訴訟 却下される?
被告の国外居住だけで当然に却下されるわけではありません。応訴負担は考慮事情の一つで、証拠の所在や子の生活拠点などと総合して判断されます。
Q5訴え却下と請求棄却の違いは?
却下は訴訟要件を欠くとして本案に入らず退ける判断、棄却は請求に理由がないと中身を判断して退けるものです。3条の5による判断は却下です。
Q6特別の事情による却下 控訴できる?
できます。訴え却下も判決なので、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴を提起する必要があります(民事訴訟法285条)。
Q7人事訴訟法3条の5いつから施行?
平成30年法律第20号による人事訴訟法等の改正で新設され、2019年4月1日から施行されています。人事訴訟の国際裁判管轄規定と同時に整備されました。
Q8民事訴訟法3条の9との違いは?
民訴3条の9は財産事件の特別の事情による却下です。人訴3条の5は身分関係事件を対象とし、未成年の子の利益を明文の考慮事情に加えている点が特徴です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1却下されたら、もう二度と離婚できないんですか?
いいえ。却下は訴訟要件を欠くという門前払いで、請求の当否を判断したものではありません。相手方の国で提訴する、または事情が変わってから改めて日本で提訴する道は残ります。実務のポイント:却下判決の理由中に「証拠の所在」が主因と書かれているか「子の利益」が主因かで、再訴の見通しが全く違います。前者は翻訳や証拠収集で克服しうるが、後者は子の生活基盤が動かない限り同じ結論になる。却下されたら理由の内訳を必ず読む
Q2被告が海外にいるだけで、いつも却下されてしまうんでしょうか?
そうではありません。本条は「特別の事情」があると認めるときの裁量的な却下であり、被告の国外居住は考慮事情の一つにすぎません。原告側に日本での審理を必要とする事情(3条の2の管轄原因が強い、証拠の多くが国内にある)があれば維持されます。実務のポイント:相手が日本で就労歴があり、日本の銀行口座や年金記録が残っているケースでは応訴負担の主張が弱まります。提訴前に相手の日本との接点を洗い出しておくと、この条文への防波堤になる
Q3子どもの利益って、具体的に何を見られるんですか?
子がどの国で生活し、どの言語で教育を受け、どちらの国の手続で調査や面会交流の調整を受ける方が負担が少ないかが見られます。親権の帰属そのものではなく、審理を行う場所が子にとってどうかという観点です(本条の考慮事情)。実務のポイント:家庭裁判所調査官による調査を実施できるかどうかが、実務上の隠れた分水嶺です。子が国外にいると調査官調査が事実上できず、それ自体が「適正な審理を妨げる事情」として評価されることがある
間違えやすい点 AI による整理
- 「日本の裁判所に管轄権がある=日本で裁判できる」という等式そのものが成り立っていない。3条の2から3条の4で管轄の有無を判断したうえで、なお3条の5が別の関門として立っている二段構造だ。管轄の議論だけで安心する人は、問いの立て方を一段間違えている
- 却下という言葉を「負け」と同じ意味で捉えている人が多いが、却下は訴訟要件を欠くとして門前払いする判断で、請求の当否を判断した棄却とは違う。既判力が及ぶ範囲が違うため、事情が変われば再び日本で訴えられる余地が残る。ただし却下までに費やした時間と費用は戻らない
- 「子の利益」は親権や監護権を決めるときの話で、管轄の段階では関係ないと思われがちだが、本条は身分関係の当事者間の未成年の子の利益を考慮事情として明文で挙げている。子がどの国で生活し、どの言語で教育を受け、どちらの国の手続で調査を受ける方が負担が少ないか。それが訴えの生死を左右する
- あなたから見れば「相手が海外に逃げたから日本で訴えるしかない」という切実な事情でも、法律から見れば「証拠が海外にあり被告の応訴負担が重い」という却下方向の事情に変換されうる。この視点の落差に気付かないまま提訴すると、正当な主張を持ちながら入口で終わる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 役割 | 人訴3条の5:管轄があっても特別の事情で却下できる安全弁 | 人訴3条の2:人事訴訟の国際裁判管轄の有無を定める原則規定 民訴3条の9:財産事件における特別の事情による却下 |
| 判断の性質 | 裁判所の総合考慮による裁量的判断 | 各号の管轄原因の有無による類型的判断 裁判所の総合考慮による裁量的判断 |
| 明文の考慮事情 | 事案の性質、被告の応訴負担、証拠の所在地、未成年の子の利益 | 被告住所、国籍、最後の共通住所等の管轄原因 事案の性質、被告の応訴負担、証拠の所在地(子の利益の明文なし) |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は婚姻事件の国際管轄原因を列挙しつつ、被告が台湾で応訴することに著しい不便がある場合は管轄規定を適用しないとする。被告負担を考慮する点で本条と発想が近い
韓国は2022年施行の改正国際私法で、国際裁判管轄権の不行使を明文化。不適切な法廷での審理を回避する点で本条と同趣旨
米国は判例法理として forum non conveniens を広く認め、子の監護事件では UCCJEA が不便宜法廷を理由とする管轄不行使を定める
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- フィリピン人配偶者と8年暮らしたあと、あなただけ日本に帰国して離婚訴訟を起こした。子ども二人は向こうで母親と生活中、学校記録も医療記録も現地語。被告は来日費用が出せず、証人も全員現地。管轄はあるが、3条の5の「証拠の所在地」「応訴による被告の負担」がまとめてあなたに不利に働く
- もしあなたが被告側、つまり海外に住んでいて日本の家庭裁判所から訴状を受け取ったとしたら、どうする。応訴すれば旅費と滞在費が毎回かかり、無視すれば欠席判決で不利な離婚条件が確定する。この条文はその二択の外側にある第三の道だ。本案に入る前に「特別の事情による却下」を申し立てる
- 日本人夫婦がドバイに駐在中、夫だけ帰任して日本で離婚訴訟。妻と子はドバイに残り、財産もドバイの銀行にある。子の就学環境という「成年に達しない子の利益」が、どちらの国で審理する方が子にとって良いかの判断材料として正面から検討される
- 提訴から第一回期日まであと3週間。相手方代理人が「特別の事情による却下」の主張を準備している気配がある。ここであなたが証拠の日本所在性、被告の来日実績、子の日本との結びつきを具体的に書面で固められるかどうかで、訴訟が始まるか消えるかが決まる
- 友人から相談を受けた。「国際離婚だけど、日本の裁判所が管轄あるって弁護士が言ってたから大丈夫だよね」。あなたは一言返せる。管轄があっても却下される条文が別にある、と
取るべき行動
被害を受けた側:1. 提訴前に「日本で審理すべき理由」を事情ごとに整理する。証拠書類の所在(日本語の預金通帳、国内の不動産登記、日本の医療機関の診断書)、被告の来日頻度と国内資産、子の日本語能力や日本の学校との接点2. 被告が過去に日本で手続に応じた記録(調停出頭、書面提出)があれば必ず提出する3. 相手方が特別の事情を主張してきたら、証拠の所在は翻訳や嘱託尋問で代替可能であることを具体的に反論する4. 却下リスクが高い場合、相手方国での提訴や協議離婚、調停前置の活用と比較して戦略を選び直す
訴えられた側:1. 訴状を受け取ったら、まず日本の裁判所の管轄根拠(3条の2各号)と3条の5の却下主張を両方検討する2. 本案について弁論する前の早期段階で、応訴負担(渡航費、就労への影響)、証拠と証人の現地所在、子の現地での生活基盤を具体的な数字と資料で主張する3. 欠席して放置するのは最悪手。欠席判決は特別の事情の判断を経ずに不利な内容で確定しうる4. 自国で先行して手続を開始できるかも並行して検討する
時効(請求できる期限):本条自体に期間の定めはないが、特別の事情の主張は訴訟の初期段階で行う実益が大きい。審理が進むほど日本での審理実績が積み上がり主張が弱まる。なお訴えの却下は判決であるため、不服があれば判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴する必要がある(民事訴訟法285条)
学説
立法趣旨に沿った理解:人事訴訟の国際裁判管轄を明文化する際、管轄原因を比較的広く認めつつ、個別事案の不都合を是正する調整規定として置かれた。財産事件の民訴3条の9と同趣旨だが、身分関係事件の特質から未成年の子の利益を明示している
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成15年(2003年) 新設:人事訴訟法制定(平成15年法律第109号)。この時点では国際裁判管轄の明文規定はなく、判例法理に委ねられていた
- 2.平成30年(2018年) 新設:人事訴訟法等の一部を改正する法律(平成30年法律第20号)により、人事訴訟の国際裁判管轄規定(3条の2以下)とともに本条を新設。2019年4月1日施行
- 人事訴訟法 第3条の2人事訴訟の国際裁判管轄の原則規定
- 人事訴訟法 第3条の3併合請求における管轄権
- 人事訴訟法 第3条の4子の監護等の附帯処分の管轄権
- 人事訴訟法 第4条国内土地管轄の定め、本条と段階を異にする
- 民事訴訟法 第3条の9財産事件における同趣旨の特別の事情による却下
- 家事事件手続法 第3条の14家事審判における特別の事情による申立て却下
- 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律 第26条子の返還手続との実務上の連動
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