人事訴訟法 第8条(関連請求に係る訴訟の移送)
クイックジャンプ
- 家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができる。この場合においては、その移送を受けた家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。
- 2.前項の規定により移送を受けた家庭裁判所は、同項の人事訴訟に係る事件及びその移送に係る損害の賠償に関する請求に係る事件について口頭弁論の併合を命じなければならない。
この条文の基本情報
関連請求に係る訴訟の移送とは何ですか?
定義関連請求に係る訴訟の移送とは、人事訴訟法第8条に定められた規定で、「家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 人事訴訟法第8条(関連請求に係る訴訟の移送)は、日本の人事訴訟法に含まれる条文です。
- 人事訴訟法第8条の条文原文は「家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、…」で始まります。
- 人事訴訟法第8条は第二款 管轄に置かれています。
- 人事訴訟法の公布日は平成15年7月16日です。
- 人事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 人事訴訟法第8条の前の条は人事訴訟法第7条です。
- 人事訴訟法第8条の次の条は人事訴訟法第9条です。
- 人事訴訟法第8条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第8条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000109 - 本サイト収録
人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第8条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/415AC0000000109/8
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点人事訴訟法8条は、離婚訴訟等の原因事実から生じた損害賠償訴訟を、申立てにより家庭裁判所へ移送できると定める。移送後、家裁は口頭弁論の併合を命じなければならない。
Q · 離婚裁判と不倫相手への慰謝料裁判は、同じ裁判所にまとめられる?
申立てがあり相当と認められれば家裁にまとめられる
人事訴訟法8条により、離婚訴訟などの人事訴訟が家庭裁判所に係属していれば、その原因事実から生じた慰謝料請求訴訟を家庭裁判所へ移送できます。係属している地裁・簡裁への申立てが必要で、移送するかどうかは裁判所が「相当」かで判断します。移送が決まると、家裁は離婚訴訟との口頭弁論の併合を命じなければなりません。なお、最初から家裁に一緒に提起する方法は同法17条が定めています。
解説
離婚訴訟を家庭裁判所に起こした。同時に、不倫相手への慰謝料請求もしたい。ここで多くの人が壁にぶつかる。離婚は家裁、慰謝料は地裁または簡裁、つまり二つの裁判所で二つの訴訟を並行して走らせることになるからだ。弁護士費用は二重、期日も二重、しかも同じ不貞の事実について、二人の裁判官が別々に心証を取る。人事訴訟法8条は、この不条理を壊す条文である。慰謝料請求訴訟が係属している第一審裁判所に「家裁へ移してくれ」と申し立てれば、相当と認められる場合、その訴訟は家裁へ移送される。移送を受けた家裁は自ら審理・裁判ができるだけでなく、2項により口頭弁論の併合が義務付けられる。「できる」ではなく「しなければならない」。あなたが動かせば、二つの戦場が一つになる。動かなければ、二つのままだ。
法的な位置づけ
人事訴訟法8条は関連損害賠償請求訴訟の移送を定める規定である。家庭裁判所に係属する人事訴訟の請求原因事実によって生じた損害の賠償請求訴訟について、その訴訟が係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは申立てにより当該家庭裁判所へ移送できる。移送を受けた家庭裁判所は自ら審理及び裁判をすることができ、口頭弁論の併合を命じる義務を負う。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.前提となる人事訴訟の係属を確認 離婚訴訟などの人事訴訟が既に家庭裁判所に係属しているかを確認する。調停段階では足りない。事件番号と係属部を控える
- 2.損害賠償請求が同じ原因事実から生じたかを整理 慰謝料請求の請求原因(不貞・暴力など)が、人事訴訟の請求原因事実と同一であることを主張書面・証拠の対照表で整理する
- 3.移送申立書を作成し、損害賠償訴訟が係属する裁判所へ提出 移送先の家裁と人事訴訟の事件番号を明記し、事実の同一性、証拠調べの重複、判断矛盾のおそれを具体的に記載。提出先は家裁ではなく、慰謝料訴訟が係属している地裁または簡裁
- 4.相手方の意見と決定を待ち、不服があれば即時抗告を検討 裁判所は相手方の意見も踏まえ相当性を判断する。移送決定・却下決定に不服がある場合は、即時抗告の可否と期間をすぐに確認する
- 5.移送後、併合審理と一括和解に備える 家裁は口頭弁論の併合を命じなければならない。離婚条件と慰謝料を一つのテーブルで扱えるため、総額での和解案を早めに設計する
よくある質問 AI による整理
Q1人事訴訟法8条とは?
離婚訴訟などの原因事実から生じた損害賠償訴訟を、地裁・簡裁から家庭裁判所へ移送し、人事訴訟と一緒に審理するための規定です。
Q2不倫の慰謝料は家庭裁判所に訴えられる?
単独では家裁の管轄外ですが、離婚訴訟と一緒に家裁に提起する(人訴17条)か、既に地裁にある訴訟を8条で移送すれば家裁で審理されます。
Q3移送申立ては誰ができる?
条文は「申立てにより」とだけ定めており、損害賠償訴訟の当事者であれば原告・被告のいずれからも申し立てられると解されています。
Q4簡易裁判所の慰謝料訴訟も家裁に移送できる?
できます。条文は「第一審裁判所」としており、地方裁判所に限りません。140万円以下の請求で簡裁に係属していても対象です。
Q5離婚調停中でも8条で移送できる?
できません。前提は家裁に「人事訴訟」が係属していることで、調停は人事訴訟ではありません。離婚訴訟の提起後に申し立てることになります。
Q6婚約破棄の慰謝料も8条で家裁に移せる?
原則としてできません。婚約の不当破棄をめぐる紛争は人事訴訟の対象ではないため、それに基づく損害賠償請求は本条の要件を満たしません。
Q7移送の決定に不服があるときは?
移送決定や却下決定には、民事訴訟法21条により即時抗告ができると解されています。期間が短いため、決定の告知を受けたらすぐ検討が必要です。
Q8移送申立ては訴訟のどの段階まで出せる?
法定の期限はありませんが、証拠調べが進むほど「相当」と認められにくくなります。実務上は第一回期日前後までに出すのが通常です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1離婚裁判と不倫相手への慰謝料、弁護士に「別々の裁判です」と言われたんですが、本当ですか?
制度上は別の訴訟で正しい。離婚は人事訴訟で家裁の専属管轄、慰謝料は通常の民事訴訟だからだ。ただし人事訴訟法8条の移送申立てで家裁に一本化でき、移送後は家裁が併合を命じなければならない(同条2項)。実務のポイント:弁護士が併合を提案しないケースは珍しくない。事件が二本のままの方が着手金・報酬の計算単位が二つになるからだ。悪意とは限らないが、併合の可否は自分から質問する価値がある
Q2移送を申し立てたら、必ず家庭裁判所に移してもらえるんですか?
確約はない。8条1項は「相当と認めるときは」と定めており、裁判所の裁量判断である。判断材料は請求原因事実の共通性、証拠調べの重複度合い、審理の進行段階など。すでに地裁で尋問まで済んでいれば、訴訟経済を理由に却下されうる。実務のポイント:移送が認められる確率を上げる実務的な鍵は、申立書に「同一の不貞事実について二重の証拠調べが必要になる」ことを証拠目録レベルで具体的に書くこと。抽象的に「関連する」と書くだけの申立書は通りにくい
Q3移送されて一緒に審理されると、私の何が変わるんですか?
まず期日が一本化され、同じ証拠を二度出す必要がなくなる。さらに家裁の裁判官が離婚原因と慰謝料額を同じ心証で判断するため、判断の矛盾が避けられる。和解の場面では離婚条件と慰謝料を一括でパッケージ化できる。実務のポイント:家裁は地裁より和解志向が強い。慰謝料の「判決での相場」を狙うか、離婚条件全体での「総額の実質」を狙うかで、移送の損得は逆転する。判決額の最大化だけを目指すなら、あえて地裁に残す選択も実務上ありうる
間違えやすい点 AI による整理
- 「関連する訴訟なら裁判所が勝手にまとめてくれる」と期待している人は多い。8条1項は明確に「申立てにより」と書いている。職権移送ではない。誰も申し立てなければ、二つの訴訟は最後まで別々に進む
- 移送の可否だけに注目しがちだが、本当の威力は2項にある。移送を受けた家裁は口頭弁論の併合を「命じなければならない」。裁量ではなく義務だ。つまり移送のハードルさえ越えれば、審理の一体化は自動的に保障される。1項の「相当と認めるとき」という裁量的要件と、2項の義務規定、この落差が本条の設計思想である
- 「不貞相手への慰謝料請求は家事事件だから、最初から家裁に出せばいい」と考える人がいるが、この問いの立て方自体が誤っている。不法行為に基づく損害賠償請求は本来、民事の通常訴訟であり家裁の事物管轄ではない。8条という特別の通路を経由して初めて家裁で審理できるようになる。順序が逆なのだ
- 移送は当然に得だと思われがちだが、立場によって損得は反転する。離婚訴訟の当事者ではない不貞相手にとって、併合は配偶者間の生々しい事情がすべて同じ法廷に出ることを意味する。有利な材料が増えることもあれば、心証が悪化することもある。申立てを出すかどうかは戦略判断である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 使う場面 | 人訴8条:慰謝料訴訟が既に地裁・簡裁に係属している | 人訴17条:最初から家裁に人事訴訟と一緒に(または係属中の家裁に)提起する 人訴7条:人事訴訟自体を別の裁判所へ移送する |
| 発動のきっかけ | 当事者の申立てが必要(職権不可) | 原告が家裁に提起することを選ぶ 申立てまたは職権 |
| 裁判所の判断 | 「相当と認めるとき」の裁量判断 | 要件を満たせば家裁が自ら審理・裁判できる 遅滞の回避・当事者間の衡平などを考慮 |
| 審理の一体化 | 移送後は口頭弁論の併合が義務(2項) | 人事訴訟と同じ手続の中で審理 併合の問題は生じない |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾では離婚等に基づく損害賠償が家事訴訟事件(丙類)に含まれ、基礎事実が牽連する家事訴訟事件を家事法院に合併請求できる。最初から家事法院に集約する設計
韓国では離婚を原因とする損害賠償(第三者に対する請求を含む)が「다류」家事訴訟事件とされ、家庭法院が管轄し、関連事件の併合も認められる
ドイツでは配偶者間の婚姻関連の財産的請求は「その他の家事事件」として家庭裁判所の管轄だが、不貞相手に対する損害賠償は判例上原則として認められておらず、状況は日本と大きく異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 配偶者の不貞で離婚訴訟を家裁に提起した。不貞相手の女性・男性への慰謝料300万円は、別途地裁に訴えた。このまま放置すると、家裁と地裁で同じ不貞の証拠を二度提出し、期日も別々に入る。8条の移送申立てを出せば、家裁一本にまとめられる
- もし、地裁の裁判官が不貞を認定し、家裁の裁判官が「婚姻関係は不貞前から破綻していた」と判断したら、どうなる? 慰謝料は取れたのに離婚原因としては認められない、あるいはその逆。矛盾した二つの判断が同時に確定する事態は、実際に起こりうる。併合はそれを防ぐ装置だ
- あなたが訴えられた側、つまり不貞相手として慰謝料請求を受けている立場だとする。地裁で単独で戦えば「婚姻破綻の抗弁」を主張しても、配偶者間の実情証拠は出てこない。家裁に移送され離婚訴訟と併合されれば、配偶者双方の主張・陳述書がすべて同じ法廷に出る。あなたにとって有利にも不利にも働く、その見極めが分岐点になる
- 第一回口頭弁論まであと10日。地裁での慰謝料訴訟が始まってしまう前に移送申立てを出すか、始まってから出すか。移送に時期的な失権規定はないが、審理が進んだ後の移送は「相当と認める」の判断で不利に傾く。動くなら早い方がいい
- 友人から「離婚と慰謝料、弁護士に別々の着手金を請求された」と相談された。あなたは8条の存在を教えられる。訴訟が一本化されれば、弁護士費用の交渉余地も生まれる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 離婚等の人事訴訟が家裁に係属しているか、これから提起するかを確定させる。人事訴訟の係属が移送の前提である2. 損害賠償請求訴訟が係属している第一審裁判所(地裁または簡裁)に、移送申立書を提出。申立理由には、請求原因事実の同一性、証拠の共通性、二重審理の非効率を具体的に書く3. 実質審理が始まる前に出す。訴状提出直後が最良のタイミング4. 移送が認められたら、家裁は口頭弁論の併合を命じる義務がある(8条2項)。併合後は離婚条件と慰謝料を一括で和解交渉のテーブルに載せる
訴えられた側:1. あなたが不貞相手として慰謝料請求を受けている場合、移送・併合が自分に有利か不利かを先に判断する。婚姻関係が既に破綻していたという抗弁を立てるなら、配偶者双方の主張が同じ法廷に出る併合はむしろ有利に働きうる2. 逆に、離婚訴訟の生々しい事情が心証に響くと見るなら、移送申立てに対して意見書で反対の意思を示す。移送は「相当と認めるとき」という裁量判断なので、反対意見は考慮される3. 移送が決まった場合、家裁での和解では離婚条件と一括で金額調整される。総額での落としどころを早期に設計する
時効(請求できる期限):移送申立てそのものに法定の期間制限はない。ただし前提となる慰謝料請求権は、損害および加害者を知った時から3年(民法724条)で時効消滅する。不貞の慰謝料は、不貞の事実と相手方を知った時が起算点になるため、配偶者を問い詰めて相手が判明した日が実質的なスタートラインになる(個別事案での起算点判断は分かれるため、最新の裁判例をご確認ください)
学説
通説・実務:「損害の賠償に関する請求」には配偶者に対する請求だけでなく、不貞相手など第三者に対する請求も含まれると解されている。人事訴訟を家裁に移管した際、関連する民事請求を一体で審理できるよう設けられた特則である
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成15年(2003年) 新設:人事訴訟法の制定(平成15年法律第109号)により新設された。人事訴訟の第一審を地方裁判所から家庭裁判所へ移管するのに伴い、関連する損害賠償請求訴訟を家裁へ移送し併合する道を設けた。平成16年4月1日施行
- 人事訴訟法 第4条人事訴訟の管轄、家裁の専属管轄原則
- 人事訴訟法 第7条人事訴訟自体の移送に関する規律
- 人事訴訟法 第17条関連損害賠償請求の併合審理と附帯処分の扱い
- 民事訴訟法 第152条口頭弁論の併合命令の一般規定
- 民事訴訟法 第17条遅滞回避等のための移送の一般規定
- 民法 第709条不貞行為等に基づく慰謝料請求の実体的根拠
- 民法 第770条裁判上の離婚原因、本条の前提となる人事訴訟
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める