不動産登記法 第101条(職権による信託の変更の登記)
クイックジャンプ
- 登記官は、信託財産に属する不動産について次に掲げる登記をするときは、職権で、信託の変更の登記をしなければならない。
- 一信託法第七十五条第一項又は第二項の規定による権利の移転の登記
- 二信託法第八十六条第四項本文の規定による権利の変更の登記
- 三受託者である登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記
この条文の基本情報
職権による信託の変更の登記とは何ですか?
定義職権による信託の変更の登記とは、不動産登記法第101条に定められた規定で、「登記官は、信託財産に属する不動産について次に掲げる登記をするときは、職権で、信託の変更の登記をしなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 不動産登記法第101条(職権による信託の変更の登記)は、日本の不動産登記法に含まれる条文です。
- 不動産登記法第101条の条文原文は「登記官は、信託財産に属する不動産について次に掲げる登記をするときは、職権で、信託の変更の登記をしなければならない。」で始まります。
- 不動産登記法第101条は第三節 権利に関する登記に置かれています。
- 不動産登記法の公布日は平成16年6月18日です。
- 不動産登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 不動産登記法第101条の前の条は不動産登記法第100条です。
- 不動産登記法第101条の次の条は不動産登記法第102条です。
- 不動産登記法第101条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第101条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 本サイト収録
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第101条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/416AC0000000123/101
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点不動産登記法101条は、信託財産の不動産について受託者変更等の三類型の登記をするとき、登記官が職権で信託の変更の登記をしなければならないと定める。受託者による別途の申請は不要。
Q · 受託者が代わったら、信託目録の変更登記も別に申請しないといけないの?
不要です。三つの場面では登記官が職権で信託目録を直します
不動産登記法101条により、信託財産に属する不動産について、受託者変更に伴う権利の移転の登記(信託法75条1項・2項)、受託者の任務終了等に伴う権利の変更の登記(同法86条4項本文)、受託者である登記名義人の氏名・名称・住所の変更または更正の登記がされるときは、登記官が職権で信託の変更の登記をします。受託者側で申請すべきは権利部の登記一本のみで、信託目録のための申請書も登録免許税も存在しません。ただし受益者の変更や信託の目的の変更は職権の対象外で、受託者が遅滞なく申請する義務を負います(103条1項)。
解説
登記は申請しなければ動かない。それが日本の不動産登記の大原則である。101条は、その原則に三つだけ穴を開けた条文だ。信託された不動産には、権利部という表の帳簿と、その先にぶら下がる信託目録という二枚目の帳簿がある。受託者が交代したり、引っ越したり、受託者法人が商号を変えたりすると、二枚とも同時に古くなる。原則として受託者は信託目録の変更を遅滞なく申請する義務を負う(103条1項)。ところが1号から3号の場面だけは、登記官が職権で目録を直す。あなたが入れるべき登記は権利部側の一本だけで、目録のための申請書も、そのための登録免許税も存在しない。しかも受託者交代による移転登記は新受託者の単独申請ででき(100条1項)、登録免許税は非課税(登録免許税法7条1項3号)。相続登記の重さを想定して身構えている人ほど、この軽さを知らないまま、二重の手間と二重の報酬を払っている。
法的な位置づけ
不動産登記法101条は、登記官が職権で信託の変更の登記をすべき場合を定める規定である。信託財産に属する不動産につき、信託法75条1項・2項による権利の移転の登記、同法86条4項本文による権利の変更の登記、受託者である登記名義人の氏名・名称・住所の変更または更正の登記がされるときが対象であり、受託者の申請を要しない。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.登記事項証明書を取り、権利部と信託目録のずれを確認 対象不動産の全部事項証明書を取得し、権利部(甲区)の登記名義人の表示と、末尾の信託目録の受託者欄を突き合わせる。氏名・名称・住所のどこがずれているかを特定する
- 2.ずれの原因を「受託者の交代」か「表示の変更」かに切り分ける 前受託者の死亡・辞任・解任など受託者そのものが替わったのか、同一受託者の氏名・名称・住所が変わっただけなのかを判定する。この切り分けで、次に入れるべき権利部側の登記が決まる
- 3.受託者交代なら、新受託者の単独申請で権利の移転の登記 受託者の任務終了と新受託者の就任を証する書面を添えて、新受託者が単独で権利の移転の登記を申請する(100条1項)。この登記がされると101条1号により信託目録の受託者欄は職権で書き換わる
- 4.表示の変更なら、登記名義人表示変更登記を一本だけ入れる 受託者の氏名・名称・住所が変わった場合は、権利部の登記名義人表示変更登記を申請する。101条3号により信託目録の受託者の表示も職権で直る。信託目録だけを直す申請方法を探しても存在しない
- 5.完了後にもう一度証明書を取り、目録が直ったか確認 登記完了後に全部事項証明書を再取得し、権利部と信託目録の双方が最新になっているか確認する。金融機関や買主への提出はこの一通で足りるため、提出前の順序を間違えないこと
よくある質問 AI による整理
Q1信託目録とは何ですか?
信託の登記がされた不動産について、委託者・受託者・受益者や信託条項を記録した登記記録の一部です。権利部の記載とセットで公示され、登記事項証明書に添付されて出てきます。
Q2職権による信託の変更の登記とは?
当事者の申請なしに登記官が自ら信託目録の記載を書き換える手続です。不動産登記法101条が定める三類型に限られ、権利部の登記内容から目録の記載が機械的に導ける場面だけが対象です。
Q3受益者が変わったら信託目録は自動で直りますか?
直りません。受益者の変更は101条の職権対象外です。受託者が遅滞なく信託の変更の登記を申請する義務を負います(103条1項)。信託の目的や信託財産の処分の制限の変更も同じく申請が必要です。
Q4受託者の住所変更を放置するとどうなりますか?
受託者は所有権の登記名義人なので、氏名・住所の変更登記は変更から2年以内が申請義務です。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になります(76条の5、164条2項。最新の改正状況をご確認ください)。
Q5信託目録の変更に登録免許税はかかりますか?
101条の職権による信託の変更の登記には、当事者が納める登録免許税は生じません。申請という手続自体が存在しないためです。権利部側で入れる登記の課税関係は、その登記の種類によって判断します。
Q6信託目録は誰でも見られますか?
登記記録の一部なので、手数料を納めれば誰でも登記事項証明書の交付を請求できます。受益者や信託条項が第三者に見えるため、信託契約の設計段階で記載範囲を検討する実務上の論点があります。
Q7信託目録が古いままだと融資や売却に影響しますか?
影響します。金融機関や買主は登記事項証明書で受託者の同一性を確認するため、目録の氏名・住所が現状とずれていると審査や決済が止まります。権利部の変更登記を先に入れれば目録も職権で直ります。
Q8受託者が2人いて1人が欠けたらどうなりますか?
残った受託者が単独で権利の変更の登記を申請でき(100条2項)、その登記がされると信託目録の受託者欄から欠けた受託者の記載が職権で消えます。動ける受託者が1人でも残れば手続は止まりません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1受託者が変わったんですけど、信託目録の変更登記も別に出さないとダメですよね?
その場面では不要です。101条1号により、受託者変更による権利の移転の登記をすれば、登記官が職権で信託の変更の登記をします。103条1項の受託者の申請義務は、この三場面には及びません。実務のポイント:見積書に「信託変更登記」が独立の行で立っていたら、その中身が受益者変更など職権の対象外のものかを確認する。1号から3号の話なら申請という手続自体が存在しないので、根拠を聞ける
Q2受託者が亡くなったら、その家は受託者の相続人のものになりませんか?
なりません。信託財産は受託者の固有財産と分離され、死亡から新受託者の就任までの間は信託財産自体が法人とみなされます(信託法74条1項)。新受託者が就任すれば任務終了時に遡って承継したとみなされ(同75条1項)、移転登記は新受託者の単独申請で足ります(不動産登記法100条1項)。実務のポイント:この移転登記は登録免許税が非課税(登録免許税法7条1項3号)。相続登記の税率を想定して身構える人ほど、この差を知らない
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託目録は登記官が直してくれる」と知っている人でも、直る範囲が三場面に限られることまでは押さえていない。受益者の変更、信託の目的の変更、信託財産の処分の制限に関する定めの変更は職権の対象外で、受託者が遅滞なく自分で申請しなければならない(103条1項)。「勝手に直る」と一般化した瞬間、直らないものを何年も放置することになる
- 「信託目録の変更登記はどう申請すればいいのか」という問いの立て方そのものが、1号から3号の場面では成立しない。申請という手続が存在しない領域なので、申請書の書式や必要書類を探しても答えは出てこない。探すべきは、権利部側でどの登記を一本入れるかである
- あなたから見れば受託者の住所変更は単なる事務連絡だが、法から見れば所有権の登記名義人としての法定義務であり、2年の期限と5万円以下の過料が張り付いている(76条の5、164条2項)。この落差が、善意で親の財産を預かっただけの家族信託の受託者を、静かに義務違反の側に置く
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 登記が動く契機 | 101条:登記官の職権(権利部の登記が引き金) | 103条:受託者による申請 102条:裁判所書記官等の嘱託 |
| 対象となる変更事由 | 受託者変更に伴う移転・変更、受託者の氏名・名称・住所の変更または更正の3類型 | 受益者の変更、信託の目的の変更、信託財産の処分の制限の変更など職権外の事由 裁判所の関与により信託内容が変動した場合 |
| 当事者の負担 | 申請書・添付書類・登録免許税いずれも不要(権利部側の登記のみ) | 遅滞なく申請する義務あり、司法書士報酬も別途発生 当事者の申請は不要だが裁判手続が前提 |
| 怠った場合のリスク | 職権のため懈怠という状態が生じない | 目録が長期間古いまま残り、融資・売却の場面で取引が停止 嘱託がされるまで公示が実態とずれる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も登記または登録を要する財産権の信託は信託登記をしなければ第三者に対抗できないとし、日本と同じく登記による公示を採る。受託者変更時の登記処理の細目は土地登記規則側に置かれる
韓国も受託者の氏名・住所の変更等について登記官の職権による信託変更登記を明文で認めており、日本の101条と発想がほぼ一致する
ドイツには英米型の信託がなく、遺言執行者の付記登記(Testamentsvollstreckervermerk)等が近い機能を果たす。登記簿の更正(Grundbuchberichtigung)は原則として申請または承諾を要し、職権による自動更新の射程は日本より狭い
米国は不動産の権原記録(recording)が州ごとに分かれ、信託目録に相当する統一的な公的帳簿は存在しない。受託者の交代は certification of trust の提出で証明するのが実務であり、公的帳簿が自動的に追随する仕組みはない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父が受託者を務めていた家族信託で、父が急死したとしたら、明日から誰の名前で家を管理する? 信託行為で定めた後継受託者が就任すれば、権利義務は任務が終了した時に遡って承継したものとみなされる(信託法75条1項)。あなたが入れるのは権利部の移転登記一本で、信託目録の受託者欄は登記官が職権で直す。金融機関の口座凍結解除や固定資産税の名義照会と並走するので、初動2週間で信託契約書と戸籍を司法書士に渡せるかが勝負になる
- 受託者が二人いて、そのうち一人が後見開始の審判を受けた。残った受託者が単独で権利の変更の登記を申請すれば(100条2項)、信託目録の受託者欄からその名前は職権で消える。合有名義の信託で、動ける人が一人でも残っていれば手続は止まらない。
- 引っ越した受託者自身の側に立つ話。所有権の登記名義人の氏名・住所変更登記は変更から2年以内が申請義務で、正当な理由なく怠れば5万円以下の過料の対象になる(76条の5、164条2項。最新の改正状況をご確認ください)。信託の受託者はまさにその所有権登記名義人だ。逆に言えば、権利部の住所変更登記を一本入れれば信託目録の住所も職権で直る。放置すれば二枚とも古いまま、融資審査や売却の決済直前で止まる
取るべき行動
被害を受けた側:信託目録の受託者欄が古いままで金融機関や取引相手に止められたら、まず全部事項証明書を取り、権利部(甲区)の記載と目録の記載のどちらがずれているかを切り分ける。ずれの原因が受託者の交代なら100条1項の単独申請、氏名・名称・住所なら登記名義人表示変更登記を一本入れる。いずれも申請すべきは権利部側で、目録は101条により登記官が直す。目録だけを直す申請方法を探して時間を溶かさないこと
訴えられた側:前受託者の相続人として新受託者から協力を求められた場合、受託者変更の移転登記は新受託者の単独申請が可能で(100条1項)、原則としてあなたの実印は不要。求められているのが信託契約書の写しや戸籍なら応じてよい。信託財産は前受託者の固有財産と分離されており遺産分割の対象ではないので、遺産と誤解して拒むと交渉が無関係な財産にまで広がり長期化する。受託者本人として住所変更を放置している側なら、過料の判断が回る前に期限内に表示変更登記を入れる
時効(請求できる期限):101条の職権登記自体に当事者側の期限はない。ただし職権の対象外である受益者や信託の目的の変更は、受託者が遅滞なく信託の変更の登記を申請する義務を負う(103条1項)。また受託者が所有権の登記名義人である場合、氏名・住所の変更登記は変更があった日から2年以内が申請義務で、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象となる(76条の5、164条2項。最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:101条の職権は、権利部に入れる登記の内容から信託目録の記載が機械的に導け、登記官に判断の裁量が生じない三類型に限定される。裁量を要する受益者や信託目的の変更を職権対象から外すことで、申請主義の建前を維持しつつ公示の正確性を確保していると理解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)不動産登記法全部改正 現行不動産登記法(平成16年法律第123号)の制定により、信託に関する登記の規定が第4章に体系的に整理された。条番号の対応関係は要検証
- 平成18年(2006年)信託法制定に伴う整備 信託法の全面改正(平成18年法律第108号)とその整備法により、信託登記の規定が新信託法の枠組みに合わせて改められ、本条各号が信託法75条・86条を引用する現在の形になったと解される。改正か新設かの区別は要検証
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 改正:不動産登記法の全部改正(平成16年法律第123号)により、信託に関する登記の規定が体系的に整理された
- 2.平成18年(2006年) 改正:信託法の全面改正(平成18年法律第108号)およびその整備法により、信託登記の規定が新信託法の枠組みに合わせて改められ、本条各号が信託法75条・86条を引用する形になったと解される
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