不動産登記法 第100条(受託者の変更による登記等)
クイックジャンプ
- 受託者の任務が死亡、後見開始若しくは保佐開始の審判、破産手続開始の決定、法人の合併以外の理由による解散又は裁判所若しくは主務官庁(その権限の委任を受けた国に所属する行政庁及びその権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関を含む。第百二条第二項において同じ。)の解任命令により終了し、新たに受託者が選任されたときは、信託財産に属する不動産についてする受託者の変更による権利の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、新たに選任された当該受託者が単独で申請することができる。
- 2.受託者が二人以上ある場合において、そのうち少なくとも一人の受託者の任務が前項に規定する事由により終了したときは、信託財産に属する不動産についてする当該受託者の任務の終了による権利の変更の登記は、第六十条の規定にかかわらず、他の受託者が単独で申請することができる。
この条文の基本情報
受託者の変更による登記等とは何ですか?
定義受託者の変更による登記等とは、不動産登記法第100条に定められた規定で、「受託者の任務が死亡、後見開始若しくは保佐開始の審判、破産手続開始の決定、法人の合併以外の理由による解散又は裁判所若しくは主務官庁(その権限の委任を受けた国に所属…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 不動産登記法第100条(受託者の変更による登記等)は、日本の不動産登記法に含まれる条文です。
- 不動産登記法第100条の条文原文は「受託者の任務が死亡、後見開始若しくは保佐開始の審判、破産手続開始の決定、法人の合併以外の理由による解散又は裁判所若しくは主務官庁(その権限の委任を受けた国に所属…」で始まります。
- 不動産登記法第100条は第三節 権利に関する登記に置かれています。
- 不動産登記法の公布日は平成16年6月18日です。
- 不動産登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 不動産登記法第100条の前の条は不動産登記法第99条です。
- 不動産登記法第100条の次の条は不動産登記法第101条です。
- 不動産登記法第100条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第100条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 本サイト収録
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第100条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/416AC0000000123/100
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点不動産登記法100条は、受託者の任務が死亡・後見開始・破産等の五事由で終了し新受託者が選任された場合、新受託者が単独で権利移転の登記を申請できると定める。辞任は対象外。
Q · 家族信託の受託者が亡くなったら、次の受託者ひとりで名義を移せますか?
死亡なら新受託者が単独で申請できる。辞任なら共同申請
不動産登記法100条1項により、受託者の任務が死亡、後見開始・保佐開始の審判、破産手続開始の決定、合併以外の理由による解散、裁判所又は主務官庁の解任命令の五事由で終了し、新受託者が選任されたときは、新受託者が単独で権利移転の登記を申請できます。前受託者の相続人の同意も遺産分割協議書も不要です。ただし辞任や委託者・受益者の合意による解任は五事由に含まれず、60条の共同申請に戻り、前受託者の協力が必要になります。
解説
家族信託で受託者になっていた長男が、ある朝倒れて亡くなった。信託した実家の登記名義は長男のまま。次の受託者へ名義を移すには亡くなった人の相続人全員の実印が要る、と思うだろうか。要らない。不動産登記法100条1項は、死亡、後見開始若しくは保佐開始の審判、破産手続開始の決定、合併以外の理由による解散、裁判所又は主務官庁の解任命令、この五つの事由で受託者の任務が終わり新受託者が選ばれた場合に限り、新受託者が単独で権利移転の登記を申請できるとする。原則は60条の共同申請、つまり相手方の協力が絶対条件だ。その原則を外す例外リストがここにある。裏を返せば、リストに載っていない事由、とりわけ「辞任」と「委託者・受益者の合意による解任」は、前の受託者と共同でしか申請できない。円満に降りたはずの人が印鑑を押さない、それだけで信託財産の名義が凍りつく。
法的な位置づけ
不動産登記法100条は、信託財産に属する不動産について、受託者の任務が法定の五事由により終了し新受託者が選任された場合に、新受託者が単独で権利移転の登記を申請できる旨を定める規定である。受託者が複数のときは、残存する受託者が単独で権利の変更の登記を申請する(同条2項)。共同申請主義を定める60条の特則にあたる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.任務終了の事由が五事由に当たるか判定する 死亡、後見開始若しくは保佐開始の審判、破産手続開始の決定、合併以外の理由による解散、裁判所又は主務官庁の解任命令のいずれかに該当するかを確認する。辞任と委託者・受益者の合意による解任は該当せず、60条の共同申請になる
- 2.任務終了を証する公的書面を収集する 死亡なら死亡の記載のある戸籍(除籍)、後見開始・保佐開始なら審判書と確定証明書、破産なら破産手続開始決定書、解任なら解任命令の裁判書を取得する。単独申請では相手方の関与による真正担保がないため、公的書面だけで登記原因を立証しきる必要がある
- 3.新受託者の選任を証する情報と就任承諾書を整える 信託契約の後継受託者指定条項、委託者・受益者の合意書、又は裁判所の選任審判書のいずれかで新受託者の選任を証明し、新受託者の就任承諾書と住所証明情報を揃える。後継指定がない案件は選任自体に時間がかかるため、この工程が全体の律速になる
- 4.登記の目的を単独受託者と複数受託者で書き分ける 単独受託者が欠けた場合は受託者変更による権利の移転の登記(100条1項)、複数受託者の一人が欠けた場合は任務終了による権利の変更の登記(100条2項)として申請書を作成する。合有であるため後者は移転ではない点に注意する
- 5.管轄法務局へ申請し、非課税と職権変更を確認する 不動産所在地を管轄する法務局へ申請する。登録免許税は非課税(登録免許税法7条1項3号)として申請書に根拠条項を記載し、完了後は登記事項証明書で信託目録の受託者欄が職権で変更されているか確認する
よくある質問 AI による整理
Q1受託者変更登記とは何ですか?
信託財産である不動産の登記名義を、任務が終了した受託者から新受託者へ移す登記です。登記原因は相続ではなく受託者の変更で、不動産登記法100条が申請方法を定めます。
Q2受託者変更の登記は単独申請できますか?
死亡、後見開始・保佐開始の審判、破産手続開始の決定、合併以外の解散、裁判所又は主務官庁の解任命令の五事由なら新受託者が単独で申請できます(100条1項)。
Q3受託者が辞任した場合の登記はどうなりますか?
辞任は100条1項の五事由に入らないため、60条の共同申請に戻ります。前受託者の登記識別情報と印鑑証明書が必要で、協力が得られないと登記が止まります。
Q4受託者変更の登記に登録免許税はかかりますか?
受託者の変更に伴う権利移転の登記は非課税です(登録免許税法7条1項3号)。相続登記の税率0.4% と比べると、評価額次第で数十万円の差が生じます。
Q5受託者変更登記に必要な書類は何ですか?
任務終了を証する公的書面(死亡の記載のある戸籍、審判書、破産手続開始決定書、解任命令の裁判書)、新受託者の選任を証する情報、就任承諾書、住所証明情報などです。
Q6受託者が二人いて一人が亡くなったらどう登記しますか?
登記の目的は移転ではなく権利の変更の登記で、残った受託者が単独で申請します(100条2項)。信託財産は受託者の合有とされるためです。
Q7受託者が変わったら信託目録も申請し直しますか?
不要です。権利移転(又は変更)の登記に伴い、信託目録の受託者の表示は登記官が職権で変更します(不動産登記法101条)。信託の登記自体は残ります。
Q8受託者変更の登記に期限はありますか?
100条自体に申請期限の定めはありません。ただし前受託者名義のまま放置すると第三者への処分リスクが残るため、任務終了を知った時点で動くのが実務です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1受託者が亡くなった場合、普通の相続登記と何が違うんですか?
信託財産は受託者個人の相続財産に含まれないため、相続を登記原因にしません。登記原因は受託者の変更で、新受託者が単独で申請します(不動産登記法100条1項)。遺産分割協議書も相続人の同意も不要です。実務のポイント:この移転登記には登録免許税がかかりません(登録免許税法7条1項3号)。相続登記の0.4% と比べると、評価額3,000万円で12万円の差が出ます
Q2受託者が辞任したときも、新しい受託者ひとりで登記できますよね?
できません。単独申請が認められるのは死亡、後見開始・保佐開始の審判、破産手続開始の決定、合併以外の解散、裁判所又は主務官庁の解任命令の五つだけで、辞任と合意による解任は60条の共同申請に戻ります。実務のポイント:問題のある受託者を降ろすなら、合意解任ではなく裁判所への解任申立て(信託法58条4項)を選ぶと、相手の協力なしで登記まで完走できます
間違えやすい点 AI による整理
- 「受託者が代わったら信託の登記もやり直しになるのか」という問いの立て方自体が誤っている。信託の登記と信託目録は残り、受託者の表示は権利移転の登記に伴って登記官が職権で変更する(不動産登記法101条)。申請するのは権利の移転(又は変更)の登記であって、信託の登記の再申請ではない
- 単独で申請できることは知られていても、その代償として登記原因証明情報の負荷が全部自分側に来ることまでは意識されていない。共同申請なら相手方の関与で担保される真正性を、単独申請では死亡の記載のある戸籍、審判書、破産手続開始決定書、解任命令の裁判書といった公的書面だけで立証しきる必要がある。一枚欠ければ補正、そこが実務の詰まり所になる
- 受託者が二人いるうち一人が欠けたら残った一人へ「持分が移転する」と考えがちだが、登記の目的は移転ではなく2項の権利の変更の登記である。信託財産は受託者の合有とされているためだ(信託法79条)。移転だと思い込んで申請書を組むと、最初の一行で間違える
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 申請の構造 | 100条:五事由による任務終了時、新受託者(又は他の受託者)が単独申請 | 60条:登記権利者と登記義務者の共同申請が原則 98条:信託の登記は受益権移転等を除き受託者が単独で申請、権利変動の登記と同時申請 |
| 登記の目的 | 受託者変更による権利の移転(1項)/任務終了による権利の変更(2項) | 売買・贈与等の一般の権利変動 信託の登記(信託目録の作成) |
| 信託目録の扱い | 受託者欄は101条により登記官が職権で変更、再申請不要 | 信託目録と無関係 信託目録に記録すべき情報を申請時に提供 |
| 対象外となる場面 | 辞任、委託者・受益者の合意による解任は対象外で60条に戻る | 特則がある場合は排除される 102条:裁判所書記官等の嘱託による場合は嘱託登記 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も受託人の死亡・破産・監護宣告等で任務が終了し、信託財産は原受託人の任務終了時に新受託人へ移転したものとみなされる。登記手続の単独申請の可否は土地登記規則側で処理され、日本のように登記法本体に明文の単独申請規定を置く構造ではない
韓国も受託者の任務終了に伴う登記について単独申請的な処理を認める規定を不動産登記法に置いており、日本法と最も構造が近い。信託原簿(신탁원부)の変更処理も類似する
ドイツには英米法型の信託がなく、Treuhand は債権的構成にとどまるため本条の直接の対応物はない。名義人の交代は相続証明書による単独申請や遺言執行者の登記といった別の制度で処理される
米国では successor trustee の就任自体で信託財産の権原が承継され、不動産については affidavit of successor trustee 等を county recorder に記録する運用が中心。登記官の実質審査を前提とする日本の添付書面主義とは前提が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 受託者だった兄が急死したら、実家の名義はどう動く? 信託財産は兄個人の相続財産ではないので、遺産分割の対象にならない。次の受託者が単独で移転登記を申請できる。ただし兄の相続人が「これも遺産だ」と言い出すと、戸籍や書類を取り寄せるたびに衝突する。四十九日を迎えるまでに後継受託者の就任承諾書まで整えられるかどうかで、その後の半年の空気が変わる
- 受託者を降りたい側に立ってみる。あなたが辞任という形で降りれば、新受託者は単独では登記できない。あなたの実印、印鑑証明書、登記識別情報が必要になる。降りた後も書類のために呼び出されるのは、100条1項があなたの降り方を対象外にしているからだ
- 受託者を兄弟二人で務めていた。弟が破産手続開始の決定を受けた。この場合に入れる登記は移転ではなく2項の権利の変更の登記で、残った兄が単独で申請する
取るべき行動
被害を受けた側:1. 任務終了の事由が100条1項の五つ(死亡、後見開始・保佐開始の審判、破産手続開始の決定、合併以外の解散、裁判所又は主務官庁の解任命令)に当たるか確認、当たれば単独申請2. 登記原因証明情報を揃える。死亡なら死亡の記載のある戸籍、後見・保佐なら審判書、破産なら開始決定書、解任なら裁判書3. 新受託者の選任を証する情報(信託契約の後継指定、委託者・受益者の合意、裁判所の選任)と就任承諾書を準備4. 登記の目的は受託者変更による権利移転、登録免許税は非課税。信託目録の受託者欄は職権で直る
訴えられた側:辞任で降りるなら、新受託者との共同申請になることを先に織り込み、登記識別情報と印鑑証明書を確保したうえで降りる。死亡による終了の場合、前受託者の相続人は信託財産を自分の相続財産と混ぜずに保管し、新受託者へ引き継ぐ義務を負う。信託口口座と個人名義口座を分けていなかった案件はここで必ず難航する。相続人に求められているのは遺産分割ではなく引継ぎである、という前提を最初に共有しておく
時効(請求できる期限):100条自体に申請期限の定めはなく、特定の時効もない(一般消滅時効として民法166条、債権は5年または10年が適用される場面はありうる)。実務上の時間圧は別にある。前受託者名義のまま放置すると第三者への処分リスクが残り、死亡事案では戸籍等の収集が相続手続と絡んで長期化する。任務終了を知った時点から動くのが原則
学説
通説:100条が単独申請を認める事由を五つに限定したのは、任務終了の事実が戸籍・審判書・決定書・裁判書といった公的書面で外形的に証明でき、共同申請による真正担保を書面審査に置き換えられるためと解されている。当事者の意思が介在する辞任・合意解任が除かれたのはこの線引きの帰結である。
通説:受託者が二人以上ある場合の信託財産は合有に属し(信託法79条)持分の観念がないため、一人の任務終了時の登記は持分移転ではなく権利の変更の登記となる。100条2項はこの理解を登記手続の側で明文化したものと位置づけられる。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)不動産登記法全部改正 オンライン申請制度の導入を含む新法制定に伴い、信託に関する登記規定が第4章に再編された。条文番号が旧法から大きく移動しているため、旧法時代の文献の条番号は参照できない(現行効力を要確認)
- 平成18年(2006年)信託法制定に伴う整備 新信託法の任務終了事由の体系に合わせ、単独申請を認める事由の範囲および複数受託者の場合の処理が整理された。新設か改正かの区別、および施行時期は要検証
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 改正:不動産登記法の全部改正(平成16年法律第123号)により、オンライン申請制度の導入とともに信託に関する登記規定が再編され、受託者変更登記の単独申請規定が現行の条番号に配置された。旧法時代の文献の条番号は参照できない
- 2.平成18年(2006年)以降 改正:信託法の全面改正に伴う整備により、単独申請を認める任務終了事由が新信託法の体系に整合させられ、複数受託者の場合の処理が条文上整理された(施行時期および改正の細目は要検証)
- 不動産登記法 第60条共同申請の原則、本条が外す一般則
- 不動産登記法 第98条信託の登記の申請方法と受託者の単独申請
- 不動産登記法 第101条権利移転に伴う信託の変更登記の職権処理
- 不動産登記法 第102条裁判所書記官等の嘱託による信託の変更登記
- 不動産登記法 第104条の2信託財産に属する権利の変更登記の特則
- 信託法 第56条受託者の任務終了事由、本条の五類型の対応元
- 信託法 第75条新受託者による前受託者の権利義務の承継
- 登録免許税法 第7条受託者変更に伴う移転登記の非課税
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める