不動産登記法 第60条(共同申請)
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権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
この条文の基本情報
共同申請とは何ですか?
定義共同申請とは、不動産登記法第60条に定められた規定で、「権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 不動産登記法第60条(共同申請)は、日本の不動産登記法に含まれる条文です。
- 不動産登記法第60条の条文原文は「権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。」で始まります。
- 不動産登記法第60条は第一款 通則に置かれています。
- 不動産登記法の公布日は平成16年6月18日です。
- 不動産登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 不動産登記法第60条の前の条は不動産登記法第59条です。
- 不動産登記法第60条の次の条は不動産登記法第61条です。
- 不動産登記法第60条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第60条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 本サイト収録
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第60条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/416AC0000000123/60
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点不動産登記法60条は、権利に関する登記の申請を登記権利者と登記義務者の共同申請と定める。判決や相続など法令に別段の定めがある場合のみ、単独申請が認められる。
Q · 代金を全額払ったのに、売主が来ないと自分だけで登記できないの?
原則できません。登記義務者との共同申請が必要です
不動産登記法60条により、権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者(買主など)と登記義務者(売主など)が共同でしなければなりません。代金を全額支払っていても、売主の関与なしに買主単独で所有権移転登記を入れることはできません。相手が協力しない場合は、登記手続を命じる確定判決・和解調書・調停調書を得れば単独で申請できます(63条1項、民事執行法177条)。相続による所有権移転登記も単独申請が認められる例外にあたります(63条2項)。
解説
家の代金を全額払った。契約書も領収書も手元にある。それでも、あなた一人では所有権移転登記を入れられない。不動産登記法60条は、権利に関する登記は登記権利者(登記で得をする側、この場合は買主)と登記義務者(登記で失う側、売主)が共同で申請しなければならないと定める。理由は単純で、日本の登記官には提出書類の形式しか審査する権限がなく(形式的審査権)、しかも登記そのものに公信力がない。そこで「失う側が自分から窓口に出てくる」という一点を、登記の真正さの担保に使っている。裏を返せば、相手が死亡した、破産した、判断能力を失った、行方が分からなくなった、その瞬間にあなたの登記は止まる。不動産の決済がなぜ一日、一室に、司法書士立会いで全員を集めて行われるのか。その答えが60条という一行に書いてある。
法的な位置づけ
不動産登記法60条は共同申請主義を定める規定であり、権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない旨を規定する。登記官の審査権が形式的なものにとどまる日本の登記制度において、登記により不利益を受ける当事者の関与を、登記の真正担保の中核に据える原則規定である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.登記義務者が動ける状態かを最初に確認する 契約前または契約直後に、相手方(売主・贈与者・抵当権者)の生存、意思能力、所在、登記簿上の住所氏名の一致を確認する。高齢者や法人合併の履歴がある相手ほど、後で共同申請が崩れる危険が高い
- 2.登記義務者側の必要書類を洗い出す 登記識別情報(旧権利証)、発行後3か月以内の印鑑証明書、実印を押した委任状、登記原因証明情報をリスト化する。権利証を紛失している場合は、司法書士の本人確認情報で代替する段取りを決済日の設定前に組み込む
- 3.代金支払いと登記申請を同一日に固定する 契約書に、残代金の支払いと所有権移転登記申請書類の交付を同時に行う旨の条項を入れる。決済を一日でも空けると、その間の相手方の死亡・破産・翻意がそのまま登記不能のリスクになる
- 4.決済当日、司法書士の書類確認を通してから送金する 銀行の一室に売主・買主・司法書士・金融機関が同席し、司法書士が登記識別情報と印鑑証明書、本人確認を済ませて「登記できます」と告げた後に、残代金を送金する。順序を逆にしない
- 5.協力が得られない場合は判決・調停に切り替える 内容証明郵便で登記手続への協力を期限を切って求め、応じなければ登記手続請求訴訟または調停に移行する。確定判決・和解調書・調停調書のいずれかがあれば、登記権利者が単独で申請できる(63条1項、民事執行法177条)
よくある質問 AI による整理
Q1共同申請とは何ですか?
登記で利益を受ける登記権利者と、不利益を受ける登記義務者が、そろって登記所に申請することです。不動産登記法60条が原則として要求しており、書類がそろっていても片方だけでは申請できません。
Q2登記権利者と登記義務者の違いは?
登記権利者は登記により直接に利益を受ける者(売買なら買主)、登記義務者は不利益を受ける者(売主)です。定義は不動産登記法2条12号・13号にあり、抵当権抹消では銀行が登記義務者になります。
Q3登記義務者が用意する書類は?
登記識別情報(旧権利証)、発行後3か月以内の印鑑証明書、実印を押した委任状、登記原因証明情報が基本です。住所が登記簿と違う場合は、先に住所変更登記が必要になります。
Q4住宅ローン完済後の抵当権抹消も共同申請ですか?
共同申請です。抵当権者である金融機関が登記義務者になります。完済後に書類を放置すると、銀行の合併や書類の失効で再発行に時間がかかり、売却の決済日に間に合わなくなります。
Q5登記の申請は司法書士に頼まないとダメですか?
法律上は本人申請も可能です。ただし共同申請では双方が同時に窓口へ行くか、双方から委任を受けた代理人が必要で、実務では代金決済と同時履行を成立させるため司法書士に双方代理で依頼するのが通例です。
Q6買主が登記を移してくれないときは?
売主の側から登記の引取りを請求できます(登記引取請求、最判昭和36年11月24日)。登記名義が残る限り固定資産税の納付書や近隣からの問い合わせが売主に届き続けるため、放置は不利益です。
Q7単独申請ができるのはどんな場合ですか?
登記手続を命じる確定判決・和解調書・調停調書がある場合(63条1項)、相続や法人合併による移転(63条2項)、登記名義人の氏名・住所の変更登記(64条)などです。いずれも法令の別段の定めにあたります。
Q8登記義務者が海外に住んでいる場合はどうしますか?
印鑑証明書が取得できないため、在外公館で署名証明(サイン証明)を取得し、それを印鑑証明書の代わりに使います。取得に日数がかかるので、決済日から逆算して早めに着手する必要があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1売主が登記に協力してくれません。もう泣き寝入りですか?
泣き寝入りではない。登記手続を命じる確定判決を得れば、あなた一人で申請できる(63条1項、民事執行法177条による意思表示の擬制)。実務のポイント:和解調書と調停調書も判決と同じ効力を持つが、公正証書は使えない。金銭の支払いは公正証書で強制執行できるのに、登記手続だけは対象外である。財産分与や代物弁済の合意を公正証書だけで済ませている人は、この一点で足を取られる。
Q2権利証をなくしました。もう登記できないんでしょうか?
登記できる。登記識別情報(旧権利証)を提供できない場合、登記官からの事前通知(23条1項)、資格者代理人による本人確認情報の提供(23条4項1号)、公証人の認証のいずれかで代替できる。実務のポイント:事前通知は郵送のやり取りで2週間前後かかるため、代金と登記を同時に動かす決済の場では使えない。実務はほぼ司法書士の本人確認情報一択で、別途費用が数万円から発生する。紛失に気付いた時点で司法書士に伝えれば、決済日の設定自体が変わる。
Q3相続で親の家を継いだときも、共同申請が必要ですか?
不要である。相続による所有権移転登記は60条の例外として相続人が単独で申請できる(63条2項)。むしろ2024年4月1日から申請が義務化され、取得を知った日から3年、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる(76条の2)。実務のポイント:遺産分割がまとまらず期限に間に合わないときは、相続人申告登記(76条の3)を出せば、その相続人については義務を履行したものとして扱われる。分割の結論を待つ必要はない。
Q4登記していなくても自分の家なんだから、急がなくてもいいですよね?
所有権は移っている(民法176条)が、登記がなければ第三者に対抗できない(民法177条)。売主が同じ物件を別の人に売り、その人が先に登記を入れれば、あなたは家を失う。実務のポイント:現実に多いのは二重譲渡より、売主の債権者による差押えである。登記が売主名義のまま残っている間、その不動産は外形上まだ売主の財産で、税務署や金融機関の差押えの標的になる。決済から登記までの空白は、日数ではなくリスクの量で考える。
間違えやすい点 AI による整理
- 「契約書と実印と印鑑証明があれば自分だけで登記できないのか」という問いの立て方が、そもそもずれている。60条が要求しているのは書類の枚数ではなく、登記義務者が申請人として名を連ねること。代理人への委任状でもよいが、その委任状も相手が今この時点で生きていて意思能力があることが前提になる。集めるべきは書類ではなく、相手が動ける時間である。
- 相手の協力が要ること自体は、多くの人が知っている。知られていないのは、協力が得られなくなった後にかかるコストの桁である。売主が死亡すれば相続人全員の関与が必要になり、一人でも反対すれば訴訟。判断能力を失っていれば成年後見の申立てから始まる。数か月から数年、費用は数十万円単位。放置した期間の長さが、そのまま回収不能なコストに変わる。
- あなたから見れば、代金を払った時点で家は自分のものである。実体法上もその通りで、所有権は原則として意思表示だけで移る(民法176条)。だが法律から見れば、登記がない限り第三者には対抗できない(民法177条)。この落差の隙間に、二重譲渡と売主の債権者による差押えが滑り込む。あなたが「もう自分のもの」と安心している期間が、そのまま危険な期間である。
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 申請人の構成 | 60条:登記権利者と登記義務者が共同で申請 | 63条:判決・相続の場合に登記権利者または相続人が単独で申請 62条:当事者が死亡した場合に一般承継人が申請 |
| 典型的な適用場面 | 売買・贈与による所有権移転、抵当権設定・抹消 | 相手が協力しない売買、相続登記、法人合併 決済後・登記前に売主が死亡したケース |
| 手続の重さ | 相手の書類と実印がそろえば即日申請可能 | 訴訟・調停で数か月から数年、費用は数十万円規模 相続人の範囲確定のため戸籍一式の収集が必要 |
| 使えないケース | 相手が死亡・行方不明・判断能力喪失の場合は機能しない | 公正証書しかない場合は単独申請の根拠にならない 相続人の一部でも協力しなければ訴訟が必要 |
他国ではどう定めているか 6 か国
台湾も「土地権利変更登記は権利人及び義務人が会同して申請する」と定め、日本の共同申請主義とほぼ同じ構造を採る。代理申請は地政士(日本の司法書士に相当)が担う
韓国も登記権利者と登記義務者の共同申請を原則とし、判決による単独申請、相続による単独申請の例外構成まで日本法とほぼ並行する
中国も売買・抵当権設定等については当事者双方の共同申請を原則とするが、登記機関の審査権はより実質的で、現地調査を行う場合がある点が日本と異なる
ドイツは共同申請ではなく、不利益を受ける者の登記承諾(Bewilligung)を公証人認証の形式で提出させる方式。承諾書があれば権利者側の単独申請で足り、公証人が実体面を事前に統制する
フランスは公証人が作成した公正証書を公示機関に提出する方式で、申請人の構成ではなく公証人の独占的関与によって真正を担保する
米国は grantor が署名した deed を買主側が登録機関に提出すれば足り、売主の窓口への出頭は不要。代わりに title insurance が実体的リスクを吸収する構造になっている
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 決済当日、売主が印鑑証明書を持たずに現れたら? 司法書士はその場で申請を止め、残代金も動かない。共同申請が崩れた瞬間に取引全体が凍る、それが60条の設計である。
- 離婚協議書に「自宅は妻の名義に変更する」と書いた。半年後、元夫は転居して連絡が取れない。協議書は登記所では通用せず、必要なのは登記手続を命じる確定判決か、和解調書・調停調書である。公正証書にしてあっても、金銭債権の強制執行はできるのに登記の単独申請はできない。
- 売った土地の登記を買主がいつまでも移さない。固定資産税の納付書は登記名義人であるあなたに届き続け、境界トラブルの問い合わせも来る。この場合、売主の側から買主に対して「登記を引き取れ」と請求できる(登記引取請求、最判昭和36.11.24)。登記義務者にも申請を求める立場がある。
- 住宅ローンを完済し、銀行から抵当権抹消の書類一式を受け取って引き出しにしまい込んだ。抹消登記も60条の共同申請で、銀行が登記義務者になる。数年後に売却を決めたとき、銀行は合併して商号も会社法人等番号も変わっていた。決済まであと3週間、銀行の事務センターは差替え書類の発行に2週間かかると言う。
- 親名義の土地を生前贈与で受ける話がまとまり、贈与契約書に署名をもらった。その翌月、親が入院し意思の疎通が難しくなる。登記の委任状は申請の時点で本人に意思能力があることを前提とするため、先にもらった委任状の有効性まで疑われる。ここから先は成年後見の申立てが出発点になる。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 相手が生存し意思能力があるうちに登記を入れる、これが他の何より優先する。2. 協力を渋られたら、内容証明郵便で登記手続への協力を求め期限を切る。3. 動かないなら登記手続請求訴訟または調停へ。確定判決、和解調書、調停調書のいずれかがあれば単独申請できる(60条の例外=63条1項、民事執行法177条)。4. 相手が死亡していれば相続人全員、判断能力を失っていれば成年後見人が相手になる。放置した時間の分だけ、相手にすべき人数が増える。
訴えられた側:1. 代金未払いのまま登記だけ先に求められたら、同時履行の抗弁で拒める。書類は司法書士に預け、着金確認と同時に申請する段取りを崩さない。2. 逆に買主が登記を移さず固定資産税や管理責任だけ残るなら、こちらから登記引取請求ができる(最判昭和36.11.24)。3. 身に覚えのない登記請求には、登記識別情報と印鑑証明書を絶対に先渡ししない。この二つが揃うと形式審査は通過してしまう。
時効(請求できる期限):本条自体に期限はない。売買契約に基づく登記請求権は債権として一般消滅時効(民法166条、権利行使できると知った時から5年または行使できる時から10年)にかかりうるが、所有権に基づく登記請求権は時効で消えない。別枠の期限として、相続登記は取得を知った日から3年(76条の2、2024年4月1日施行、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料)、登記名義人の住所・氏名変更登記は変更から2年(76条の5、最新の改正状況をご確認ください)。
学説
通説(共同申請主義):登記官の審査権が形式的なものにとどまる以上、登記の真正は申請構造そのもので担保するほかない。不利益を受ける登記義務者を申請人とすることが最も安価かつ確実な担保手段であり、例外は法令の明文がある場合に限定して解釈すべきとされる。
手続的救済重視説:共同申請主義の副作用として真実の権利者が登記を得られない事態が生じるため、63条の判決による単独申請や62条の一般承継人による申請を柔軟に運用し、実体的権利と登記の乖離を短縮すべきとする立場。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)不動産登記法全部改正 オンライン申請の導入と申請情報体系への再編に伴い現行法が制定され、旧法下で確立していた共同申請主義が本条として明文化された。書面の物理的な受渡しを前提とした構造から、申請情報と添付情報を提供する構造へ組み替えられたが、登記義務者の関与を真正担保の中核に置く枠組みは維持された
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 改正:不動産登記法の全部改正により現行法が制定され、旧法下で確立していた共同申請主義が本条として明文化された。オンライン申請の導入に伴い、書面の物理的な受渡しを前提とする構造から申請情報・添付情報を提供する構造へ組み替えられたが、登記義務者の関与を真正担保の中核に置く枠組みは維持された。
- 不動産登記法 第2条登記権利者・登記義務者の定義(12号・13号)
- 不動産登記法 第22条登記義務者の登記識別情報提供義務、真正担保の補強
- 不動産登記法 第61条登記原因証明情報の提供義務
- 不動産登記法 第62条一般承継人による申請、当事者死亡時の受け皿
- 不動産登記法 第63条判決及び相続による単独申請、本条の主要例外
- 民法 第177条不動産物権変動の対抗要件、登記を急ぐ実体法上の理由
- 民事執行法 第177条意思表示の擬制、判決による単独申請の根拠
- 民法 第176条意思主義、登記なしで所有権が移る前提
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