権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
要点不動産登記法 60 条は、権利に関する登記の申請を登記権利者と登記義務者の共同申請と定める。判決や相続など法令に別段の定めがある場合のみ、単独申請が認められる。
Q · 代金を全額払ったのに、売主が来ないと自分だけで登記できないの?
原則できません。登記義務者との共同申請が必要です
不動産登記法 60 条により、権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者(買主など)と登記義務者(売主など)が共同でしなければなりません。代金を全額支払っていても、売主の関与なしに買主単独で所有権移転登記を入れることはできません。相手が協力しない場合は、登記手続を命じる確定判決・和解調書・調停調書を得れば単独で申請できます(63 条 1 項、民事執行法 177 条)。相続による所有権移転登記も単独申請が認められる例外にあたります(63 条 2 項)。
家の代金を全額払った。契約書も領収書も手元にある。それでも、あなた一人では所有権移転登記を入れられない。不動産登記法 60 条は、権利に関する登記は登記権利者(登記で得をする側、この場合は買主)と登記義務者(登記で失う側、売主)が共同で申請しなければならないと定める。理由は単純で、日本の登記官には提出書類の形式しか審査する権限がなく(形式的審査権)、しかも登記そのものに公信力がない。そこで「失う側が自分から窓口に出てくる」という一点を、登記の真正さの担保に使っている。裏を返せば、相手が死亡した、破産した、判断能力を失った、行方が分からなくなった、その瞬間にあなたの登記は止まる。不動産の決済がなぜ一日、一室に、司法書士立会いで全員を集めて行われるのか。その答えが 60 条という一行に書いてある。
不動産登記法 60 条は共同申請主義を定める規定であり、権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない旨を規定する。登記官の審査権が形式的なものにとどまる日本の登記制度において、登記により不利益を受ける当事者の関与を、登記の真正担保の中核に据える原則規定である。
AI 輔助整理,以條文原文為準
登記で利益を受ける登記権利者と、不利益を受ける登記義務者が、そろって登記所に申請することです。不動産登記法 60 条が原則として要求しており、書類がそろっていても片方だけでは申請できません。
登記権利者は登記により直接に利益を受ける者(売買なら買主)、登記義務者は不利益を受ける者(売主)です。定義は不動産登記法 2 条 12 号・13 号にあり、抵当権抹消では銀行が登記義務者になります。
登記識別情報(旧権利証)、発行後 3 か月以内の印鑑証明書、実印を押した委任状、登記原因証明情報が基本です。住所が登記簿と違う場合は、先に住所変更登記が必要になります。
共同申請です。抵当権者である金融機関が登記義務者になります。完済後に書類を放置すると、銀行の合併や書類の失効で再発行に時間がかかり、売却の決済日に間に合わなくなります。
法律上は本人申請も可能です。ただし共同申請では双方が同時に窓口へ行くか、双方から委任を受けた代理人が必要で、実務では代金決済と同時履行を成立させるため司法書士に双方代理で依頼するのが通例です。
売主の側から登記の引取りを請求できます(登記引取請求、最判昭和 36 年 11 月 24 日)。登記名義が残る限り固定資産税の納付書や近隣からの問い合わせが売主に届き続けるため、放置は不利益です。
登記手続を命じる確定判決・和解調書・調停調書がある場合(63 条 1 項)、相続や法人合併による移転(63 条 2 項)、登記名義人の氏名・住所の変更登記(64 条)などです。いずれも法令の別段の定めにあたります。
印鑑証明書が取得できないため、在外公館で署名証明(サイン証明)を取得し、それを印鑑証明書の代わりに使います。取得に日数がかかるので、決済日から逆算して早めに着手する必要があります。
泣き寝入りではない。登記手続を命じる確定判決を得れば、あなた一人で申請できる(63 条 1 項、民事執行法 177 条による意思表示の擬制)。業界裏話ヒント:和解調書と調停調書も判決と同じ効力を持つが、公正証書は使えない。金銭の支払いは公正証書で強制執行できるのに、登記手続だけは対象外である。財産分与や代物弁済の合意を公正証書だけで済ませている人は、この一点で足を取られる。
登記できる。登記識別情報(旧権利証)を提供できない場合、登記官からの事前通知(23 条 1 項)、資格者代理人による本人確認情報の提供(23 条 4 項 1 号)、公証人の認証のいずれかで代替できる。業界裏話ヒント:事前通知は郵送のやり取りで 2 週間前後かかるため、代金と登記を同時に動かす決済の場では使えない。実務はほぼ司法書士の本人確認情報一択で、別途費用が数万円から発生する。紛失に気付いた時点で司法書士に伝えれば、決済日の設定自体が変わる。
不要である。相続による所有権移転登記は 60 条の例外として相続人が単独で申請できる(63 条 2 項)。むしろ 2024 年 4 月 1 日から申請が義務化され、取得を知った日から 3 年、正当な理由なく怠ると 10 万円以下の過料の対象になる(76 条の 2)。業界裏話ヒント:遺産分割がまとまらず期限に間に合わないときは、相続人申告登記(76 条の 3)を出せば、その相続人については義務を履行したものとして扱われる。分割の結論を待つ必要はない。
所有権は移っている(民法 176 条)が、登記がなければ第三者に対抗できない(民法 177 条)。売主が同じ物件を別の人に売り、その人が先に登記を入れれば、あなたは家を失う。業界裏話ヒント:現実に多いのは二重譲渡より、売主の債権者による差押えである。登記が売主名義のまま残っている間、その不動産は外形上まだ売主の財産で、税務署や金融機関の差押えの標的になる。決済から登記までの空白は、日数ではなくリスクの量で考える。
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 申請人の構成 | 60 条:登記権利者と登記義務者が共同で申請 | — |
| 典型的な適用場面 | 売買・贈与による所有権移転、抵当権設定・抹消 | — |
| 手続の重さ | 相手の書類と実印がそろえば即日申請可能 | — |
| 使えないケース | 相手が死亡・行方不明・判断能力喪失の場合は機能しない | — |
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