要点健康保険法 55 条は、労災保険や介護保険から相当する給付を受けることができる場合、健康保険の給付を行わないと定める。実際に受給したかではなく、受給できる立場かどうかが基準となる。
Q · 仕事中のケガで健康保険証を使ったら、後からどうなるの?
労災を使える立場なら健保は不支給。保険者負担分の返還を求められます
健康保険法 55 条 1 項により、労災保険等から相当する給付を「受けることができる場合」には健康保険の給付は行われません。実際に労災申請をしたかどうかではなく、申請できる立場かどうかが基準です。そのため健康保険証で受診すると、保険者が負担した分(通常は医療費の 7 割)の返還を求められ、返還後にあらためて労災へ請求し直す順序になります。逆に労災保険の適用がない立場(特別加入していない一人親方など)であれば、業務中のケガでも健康保険を使えます。
仕事中に脚立から落ちて骨折した。病院の窓口で、痛みをこらえながら財布から健康保険証を出す。これが日本の医療保険で最も頻発する事故である。健康保険法 55 条 1 項は、労災保険から相当する給付を「受けることができる場合」には健康保険の給付を行わないと定める。核心は「受けることができる場合」であって「実際に受けた場合」ではない点だ。あなたが労災申請をしていなくても、申請できる立場にあるなら健保は最初から動いていない。つまり健保証で受けた治療費のうち保険者が負担した 7 割は、後から協会けんぽや健保組合に返還を求められる。逆に、労災の対象にならない立場(特別加入していない一人親方、被保険者 5 人未満の法人の役員)なら、業務中のケガでも健康保険が使える。境界線は「業務上か否か」ではない。「労災から給付を受けられるか否か」である。この一語の違いが、あなたの口座から数十万円が出ていくかどうかを決めている。
健康保険法 55 条は保険給付の調整を定める規定であり、同一の疾病、負傷または死亡について労働者災害補償保険法等により相当する給付を受けることができる場合、介護保険法により相当する給付を受けることができる場合、および他の法令により国または地方公共団体の負担で療養もしくは療養費の支給を受けた場合に、健康保険の給付を行わない旨を規定する。
健康保険と他制度の給付調整を定める規定です。労災保険等(1 項)、介護保険(3 項)、国や地方公共団体の負担による療養(4 項)から給付を受けられる場合、健康保険は給付しません。
労災が優先します。55 条 1 項は労災保険等から相当する給付を受けることができる場合に健康保険を不支給とするため、労災適用のある業務災害・通勤災害では健康保険証を使えません。
診療報酬明細書が審査支払機関へ提出される前なら、医療機関側の付け替えで済む場合があります。原則として診療の翌月 10 日が目安で、気付いたらすぐ医事課と保険者へ連絡してください。
窓口で払った自己負担分ではなく、保険者が負担した分(通常は医療費の 7 割)です。入院を伴えば数十万円規模になり、労災給付が入るまで立て替える形になります。
通勤災害は労働者災害補償保険法の対象であり、労災から給付を受けられる場合は 55 条 1 項により健康保険は不支給です。駅の階段での転倒なども通勤災害になり得ます。
適用されます。55 条 1 項は国家公務員災害補償法および地方公務員災害補償法(同法に基づく条例を含む)を明示しており、労災保険と同じ扱いで健康保険は不支給になります。
労災保険の適用がなければ 55 条 1 項の対象外となり、業務中の傷病でも健康保険を使えます。被保険者 5 人未満の法人役員については健康保険法 53 条の 2 の特例も確認してください。
55 条 4 項により、他の法令で国または地方公共団体の負担により療養や療養費の支給を受けたときは、その限度で健康保険の給付を行いません。全部ではなく重複する限度での調整です。
すぐに受診した医療機関と加入先の保険者に申し出ること。健康保険法 55 条 1 項により給付自体が行われないため、保険者負担分の返還が必要になる。業界裏話ヒント:診療報酬明細書(レセプト)は原則として診療の翌月 10 日までに審査支払機関へ提出される。この締切前に医事課へ連絡できれば、病院側で労災に付け替えるだけで済み、返還手続きそのものが発生しない。気付いたのが月初か月末かで、手間も立替額も丸ごと変わる
労災保険に特別加入していなければ労災から給付を受けることができないため、55 条 1 項の適用外となり健康保険が使える。2013 年(平成 25 年)の改正で、判断基準が「業務上か否か」から「労災給付を受けられるか否か」へ移った。業界裏話ヒント:特別加入している一人親方は逆に健保が使えない。手続きは重くなるが、労災は療養給付が原則全額かつ休業補償も出るため、受け取る総額では特別加入の方が手厚い。目先の手間だけで判断すると損をする
選べない。健康保険法 55 条 3 項により、要介護認定を受けていれば原則として介護保険が優先する。ただし厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合や、主治医が特別訪問看護指示書を交付した場合は医療保険が優先する。業界裏話ヒント:該当すると訪問看護が区分支給限度基準額の枠外になる。同じ要介護度でも、ヘルパーや通所に回せる枠がその分そのまま増える。主治医に該当疾病かどうか確認するだけで、月に使えるサービス量が変わる
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 調整の相手方 | 55 条:労災保険・公務災害補償(1 項)、介護保険(3 項)、国・地方公共団体の公費負担療養(4 項) | — |
| 健康保険の給付の有無 | 行わない(4 項のみ「その限度において」の一部調整) | — |
| 判断基準 | 相当する給付を「受けることができる」か(実際の受給ではなく受給可能性) | — |
| 最終的な費用負担者 | 労災保険(事業主負担)・介護保険・国庫等 | — |
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