金融商品取引法 第178条(審判手続開始の決定)
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- 内閣総理大臣は、次に掲げる事実のいずれかがあると認めるときは、当該事実に係る事件について審判手続開始の決定をしなければならない。
- 一第百七十二条第一項、第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)又は第三項に該当する事実
- 二第百七十二条の二第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)又は第六項に該当する事実
- 三第百七十二条の三各項に該当する事実
- 四第百七十二条の四第一項又は第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)に該当する事実
- 五第百七十二条の五に該当する事実
- 六第百七十二条の六第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)に該当する事実
- 七第百七十二条の七に該当する事実
- 八第百七十二条の八に該当する事実
- 九第百七十二条の九に該当する事実
- 十第百七十二条の十各項に該当する事実
- 十一第百七十二条の十一第一項に該当する事実
- 2.11_2 第百七十二条の十二第一項に該当する事実
- 十二第百七十三条第一項に該当する事実
- 十三第百七十四条第一項に該当する事実
- 十四第百七十四条の二第一項に該当する事実
- 十五第百七十四条の三第一項に該当する事実
- 十六第百七十五条第一項(同条第九項において準用する場合を含む。)又は第二項に該当する事実
- 十七第百七十五条の二第一項(同条第十三項において準用する場合を含む。)又は第二項(同条第十四項において準用する場合を含む。)に該当する事実
- 3.内閣総理大臣は、審判手続開始の決定をした場合においては、当該決定に係る前項各号に掲げる事実が当該各号のうち他の号に掲げる事実にも該当することを理由として、審判手続開始の決定をすることができない。
- 4.第四条第一項の規定による届出を必要とする有価証券の募集若しくは売出し、同条第二項の規定による届出を必要とする適格機関投資家取得有価証券一般勧誘又は同条第三項の規定による届出を必要とする特定投資家等取得有価証券一般勧誘を開始した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該募集若しくは売出し、適格機関投資家取得有価証券一般勧誘又は特定投資家等取得有価証券一般勧誘に係る第一項第一号に掲げる事実(第百七十二条第一項に該当する事実に限る。)について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 5.第十五条第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、同項に規定する有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付けた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該取得させ、又は売り付けた有価証券に係る第一項第一号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 6.第十五条第二項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、目論見書を交付しないで売出しにより有価証券を売り付けた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該売り付けた有価証券に係る第一項第一号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 7.第二十三条の八第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、同項に規定する有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付けた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該取得させ、又は売り付けた有価証券に係る第一項第一号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 8.重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている第百七十二条の二第三項に規定する発行開示書類を提出した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該発行開示書類に係る第一項第二号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 9.第百七十二条の二第四項に規定する重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき同項に規定する重要な事項の記載が欠けている目論見書に係る売出しを開始した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該目論見書に係る第一項第二号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 10.発行開示訂正書類を提出しないで募集又は売出しにより有価証券を取得させ、又は売り付けた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該発行開示訂正書類に係る第一項第二号に掲げる事実(第百七十二条の二第六項に該当する事実に限る。)について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 11.有価証券報告書又は半期報告書のそれぞれの提出期限(第二十四条第三項(同条第五項において準用し、及びこれらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による有価証券報告書にあつては当該有価証券報告書を提出しなければならない事由が生じた日)から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該有価証券報告書又は半期報告書に係る第一項第三号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 12.重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている有価証券報告書等又は半期・臨時報告書等のそれぞれを提出した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該有価証券報告書等又は半期・臨時報告書等に係る第一項第四号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 13.臨時報告書を提出しなければならない事由が生じた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該臨時報告書に係る第一項第四号に掲げる事実(第百七十二条の四第三項において準用する同条第二項に該当する事実に限る。)について審判手続開始の決定をすることができない。
- 14.第二十七条の三第一項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、公開買付開始公告を行わないで株券等又は上場株券等の買付け等が行われた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該買付け等に係る第一項第五号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 15.重要な事項につき虚偽の表示があり、又は表示すべき重要な事項の表示が欠けている公開買付開始公告等を行つた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該公開買付開始公告等に係る第一項第六号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 16.重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている公開買付届出書等を提出した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該公開買付届出書等に係る第一項第六号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 17.公開買付訂正届出書等の提出期限(第二十七条の八第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による訂正届出書又は第二十七条の十第十二項において準用する第二十七条の八第二項の規定による訂正報告書にあつては、これらの書類のそれぞれを提出しなければならない事由が生じた日)から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該公開買付訂正届出書等に係る第一項第六号に掲げる事実(第百七十二条の六第二項において準用する同条第一項に該当する事実に限る。)について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 18.大量保有・変更報告書の提出期限から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該大量保有・変更報告書に係る第一項第七号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 19.重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている大量保有・変更報告書等を提出した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該大量保有・変更報告書等に係る第一項第八号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 20.特定勧誘等を開始した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該特定勧誘等に係る第一項第九号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 21.虚偽等のある特定証券等情報を提供し、又は公表した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該虚偽等のある特定証券等情報に係る第一項第十号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 22.虚偽等のある発行者等情報を提供し、又は公表した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該虚偽等のある発行者等情報に係る第一項第十一号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 23.第百七十二条の十二第一項に規定する開示書類提出者等が同項に規定する虚偽開示書類等を提出し、提供し又は公表した日から七年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該虚偽開示書類等に係る第一項第十一号の二に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 24.第百七十三条第一項に規定する違反行為が終了した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該違反行為に係る第一項第十二号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 25.第百七十四条第一項に規定する違反行為が終了した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該違反行為に係る第一項第十三号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 26.第百七十四条の二第一項に規定する違反行為が終了した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該違反行為に係る第一項第十四号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 27.第百七十四条の三第一項に規定する違反行為が終了した日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該違反行為に係る第一項第十五号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 28.第百六十六条第一項に規定する売買等が行われた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該売買等に係る第一項第十六号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 29.第百六十七条第一項に規定する特定株券等若しくは関連株券等に係る買付け等又は同項に規定する株券等に係る売付け等が行われた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該買付け等又は売付け等に係る第一項第十六号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
- 30.第百七十五条の二第一項若しくは第二項に規定する違反行為又は同条第十三項若しくは第十四項に規定する特定伝達等行為が行われた日から五年を経過したときは、内閣総理大臣は、当該違反行為又は特定伝達等行為に係る第一項第十七号に掲げる事実について、審判手続開始の決定をすることができない。
この条文の基本情報
審判手続開始の決定とは何ですか?
定義審判手続開始の決定とは、金融商品取引法第178条に定められた規定で、「内閣総理大臣は、次に掲げる事実のいずれかがあると認めるときは、当該事実に係る事件について審判手続開始の決定をしなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 金融商品取引法第178条(審判手続開始の決定)は、日本の金融商品取引法に含まれる条文です。
- 金融商品取引法第178条の条文原文は「内閣総理大臣は、次に掲げる事実のいずれかがあると認めるときは、当該事実に係る事件について審判手続開始の決定をしなければならない。」で始まります。
- 金融商品取引法第178条は第二節 審判手続に置かれています。
- 金融商品取引法の公布日は昭和23年4月13日です。
- 金融商品取引法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 金融商品取引法第178条の前の条は金融商品取引法第177条です。
- 金融商品取引法第178条の次の条は金融商品取引法第179条です。
- 金融商品取引法第178条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第178条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025 - 本サイト収録
金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第178条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000025/178
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点金融商品取引法178条は、課徴金対象事実を認めたとき審判手続開始の決定を義務づけ、違反類型ごとの起算点から原則5年(172条の12関係は7年)で決定できなくなると定める。
Q · 金融庁の課徴金って、時効みたいなものはあるんですか?
あります。原則5年、一部類型のみ7年です
金融商品取引法178条1項は、課徴金対象事実があると認めるときは審判手続開始の決定を「しなければならない」と定め、行政の裁量で見逃す余地を排除しています。他方で同条3項から29項は、違反類型ごとに起算点を定め、原則としてその日から5年を経過すると決定ができないとします。172条の12の虚偽開示書類等の提出を容易にすべき行為のみ7年です。起算点は「提出した日」「売買等が行われた日」「違反行為が終了した日」「提出期限」と類型ごとに異なります。
解説
課徴金という制度を「金融庁がだいたいの裁量で罰金を課すもの」と思っているなら、その認識は逆である。金融商品取引法178条1項は「内閣総理大臣は、次に掲げる事実のいずれかがあると認めるときは、審判手続開始の決定をしなければならない」と定める。「できる」ではなく「しなければならない」。つまり課徴金は行政の裁量で見逃せる制度ではなく、要件に該当すれば必ず審判手続が開始される羈束(きそく)行為である。刑事事件の起訴猶予のような「情状で見逃す」余地が、制度設計上そもそも存在しない。そしてあなたが本当に見るべきは3項以下の27項にわたる「五年を経過したときは、決定をすることができない」の列挙である。これは課徴金版の除斥期間であり、しかも違反類型ごとに起算点が全部違う。有価証券報告書の虚偽記載なら「提出した日」から5年、インサイダー取引なら「売買等が行われた日」から5年、開示書類の虚偽に関与した第三者(172条の12)だけは7年。この起算点の一日のズレが、数千万円の課徴金納付命令が出るか出ないかを分ける。
法的な位置づけ
金融商品取引法178条は、課徴金制度における審判手続開始の決定の要件と期間制限を定める規定である。1項は同項各号の対象事実を認めたときの決定を内閣総理大臣の義務とし、2項は同一事実について他の号を理由とする重複決定を禁じる。3項以下は違反類型ごとの起算点と原則5年(一部7年)の期間経過による決定不能を定める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.対象行為がどの号に当たるかを特定する 監視委員会の照会や審判手続開始決定書を受け取ったら、問題とされている行為が178条1項各号(172条〜175条の2のどれ)に対応するかを特定する。号が決まらなければ起算点も決まらない
- 2.号に対応する起算点条項から除斥期間の残日数を計算 特定した号に対応する178条3項から29項の該当項を読み、起算点(提出した日・売買等が行われた日・違反行為が終了した日・提出期限)を確定し、5年(172条の12関係は7年)の満了日をカレンダー上で確定する
- 3.自主報告による減額可能性を検討する 調査着手前であれば、185条の7の課徴金減算(自主報告による2分の1減額)の適用可能性を検討する。過去5年内の課徴金納付命令歴があれば加算対象となるため、その有無も同時に確認する
- 4.答弁書で争点を絞って提出する 審判手続開始の決定を受けたら、原則30日以内に答弁書を提出する。除斥期間経過を主張する場合は最優先の争点として明示する。事実を全部認めれば審判期日を開かずに決定が出る(183条2項)
- 5.課徴金納付命令後の不服申立てを判断する 納付命令に不服があれば取消訴訟を検討する。ただし審判段階で主張しなかった事実を訴訟で持ち出すのは実務上不利であり、納付命令の効力も原則として停止しない点を前提に判断する
よくある質問 AI による整理
Q1審判手続開始の決定とは何ですか?
課徴金を課すための行政手続の入口となる決定です。金商法178条1項の対象事実があると内閣総理大臣が認めたとき、必ず行われます。被審人はここから答弁の機会を得ます。
Q2課徴金の時効は何年ですか?
正確には時効ではなく除斥期間で、原則5年です。172条の12の虚偽開示書類等の提出を容易にすべき行為の類型のみ178条22項で7年とされています。
Q3課徴金の除斥期間はいつから数えますか?
違反類型ごとに異なります。有価証券報告書の虚偽記載なら提出した日、インサイダー取引なら売買等が行われた日、相場操縦等なら違反行為が終了した日が起算点です。
Q4課徴金は裁量で免除してもらえますか?
できません。178条1項は「しなければならない」と定める羈束規定で、対象事実を認めた以上は手続が開始されます。減額は185条の7の自主報告など法定事由のみです。
Q5同じ行為で複数の号を理由に課徴金を重ねられますか?
できません。178条2項は、審判手続開始の決定をした事実が他の号にも該当することを理由として、重ねて決定をすることを禁じています。
Q6インサイダー取引の課徴金は何年前まで遡られますか?
178条27項により、166条1項の売買等が行われた日から5年です。公開買付け等関係のインサイダー(167条)は28項で同じく5年とされています。
Q7大量保有報告書の出し忘れも課徴金の対象ですか?
対象です。172条の7に該当し、178条1項7号で審判手続が開始されます。除斥期間は17項により報告書の提出期限から5年です。
Q8課徴金と刑事罰は両方科されますか?
別軌道です。178条2項が禁じるのは課徴金手続内の重複決定のみで、刑事罰との関係は185条の7ただし書・185条の8の調整規定で処理されます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1課徴金って、反省してますって言えば減らしてもらえるんですか?
情状による減額という仕組みは課徴金にはない。178条1項が「しなければならない」と定める以上、該当すれば手続は開始される。ただし金商法185条の7には、調査前に自ら違反事実を報告した場合の2分の1減額と、過去5年内に課徴金納付命令を受けた者への1.5倍加算が規定されている(最新の改正状況をご確認ください)。実務のポイント:減額の分岐点は「監視委員会が調査に着手する前か後か」であり、着手の有無は照会文書が届いた時点ではなく内部的な立件時点で決まる。社内で不正の端緒を掴んだら、調査の完了を待たずに部分的にでも報告する判断が、数千万円単位の差を生む
Q25年経てば絶対にセーフなんですよね?
課徴金についてはそのとおりで、178条各項の期間を過ぎれば内閣総理大臣は審判手続開始の決定をすることができない。ただし刑事罰は別軌道で、インサイダー取引や虚偽記載は刑事罰の対象でもあり公訴時効は刑事訴訟法250条で別に計算される。実務のポイント:課徴金の除斥期間が切れかかっている事案ほど、監視委員会は課徴金勧告ではなく刑事告発ルートに切り替える判断をすることがある。「もうすぐ5年だから逃げ切れる」と社内で言い出した時点が、最も危険な瞬間である
Q3審判手続って、裁判みたいに公開の法廷でやるんですか?
審判は金融庁内に設置される手続で、審判官が主宰する。審判期日は原則公開だが(金商法181条3項)、裁判所の法廷ではなく金融庁の審判廷であり、争うのは行政処分の当否である。答弁書で事実を全部認めれば期日を開かずに決定が出る(183条2項)。実務のポイント:審判で争って敗れた後も、課徴金納付命令の取消訴訟を東京地裁に提起する道は残っている。ただし審判段階で主張しなかった事実を訴訟で持ち出すのは実務上きわめて不利であり、最初の答弁書の書き方がその後の全工程を拘束する
間違えやすい点 AI による整理
- 「金融庁が悪質と判断したら課徴金、軽微なら見逃してくれる」という理解は、条文の構造を逆に読んでいる。178条1項の文言は「しなければならない」であり、該当事実があると認めた時点で審判手続開始は義務である。裁量があるのは「該当事実があると認めるか」の認定段階であって、認定後の処分段階ではない。情状酌量を期待して調査に消極的に対応するのは、最も損な戦略である
- 課徴金には時効があると知っている人は多いが、その起算点が違反類型ごとに27通りに分かれていることまで押さえている人は少ない。同じ「開示の虚偽」でも、発行開示書類なら提出日(7項)、目論見書に係る売出しなら売出しを開始した日(8項)、有価証券報告書なら提出した日(11項)、臨時報告書の不提出なら提出事由が生じた日(12項)と全部違う。「事件が発覚した日」でも「調査が始まった日」でもないという一点が、実務の分水嶺である
- 「課徴金は会社が払うもので、個人には来ない」というのは対象者の理解として不正確である。インサイダー取引(175条)は取引を行った個人に直接課される。さらに2014年改正で新設された172条の12(虚偽開示書類等の提出等を容易にすべき行為等)により、開示書類の虚偽を手助けした第三者、たとえば取引の相手方企業や仲介者も対象になり、この類型だけ178条22項で除斥期間が7年と長い
- 「課徴金は罰金より軽いから、争わずに払った方が早い」と考える経営者は多い。だが課徴金納付命令が確定すると、その事実は公表され、株主代表訴訟における役員の任務懈怠の有力な証拠になる。あなたから見れば行政手続の終結でも、法律の世界から見れば民事責任の起点である。この落差が、安易に認諾した役員を後から潰す
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 178条:審判手続開始の決定義務と除斥期間 | 179条:決定書の記載事項と送達 183条:答弁書の提出と審判期日を開かない決定 |
| 行政の裁量 | 対象事実を認めれば決定は義務(裁量なし) | 記載事項は法定、形式的処理 全部自白の場合は期日を開かない決定が可能 |
| 当事者が動く場面 | 除斥期間の経過を主張して手続を打ち切る | 決定書の送達日から答弁期限を起算する 争うか認めるかを答弁書で選択する |
| 期間の性質 | 起算点から5年(172条の12関係は7年)の除斥期間 | 送達に関する手続期間 決定の日から原則30日の答弁期限 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は課徴金ではなく行政罰鍰で対応し、裁處權時效は原則3年(行政罰法27条)と日本より短い。審判手続のような専門審判体は置かず、金管會の処分後に訴願・行政訴訟へ進む
韓国も資本市場法に課徴金制度を置き、金融委員会が賦課する。証券先物委員会の審議を経る点で日本の審判手続に近い機能を果たすが、独立した審判官制ではない
ドイツは秩序違反金(Bußgeld)方式で BaFin が賦課し、期間制限は秩序違反法の追訴時効(Verfolgungsverjährung)による。日本の除斥期間と異なり中断・停止の規定がある
米国 SEC の civil penalty は行政手続または連邦地裁への提訴で科され、28 U.S.C. § 2462の5年制限が及ぶ。5年という期間の長さは日本の原則と一致する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 上場企業の経理部長だったあなたが4年10か月前に提出した有価証券報告書に、売上の前倒し計上があったことが内部通報で発覚した。証券取引等監視委員会の調査が入る。残り2か月で審判手続開始の決定が出なければ、178条11項により課徴金は永久に課せない。あなたの弁護士が真っ先に確認するのは会計処理の是非ではなく、提出日のカレンダーである
- 取引先の役員から「来週、うちが TOB される」と聞き、その株を買った。4年前の話だ。178条27項は166条の売買等が行われた日から5年と定める。取引履歴は証券会社に残っており、監視委員会は過去5年分を遡って売買データを突き合わせる。あなたが忘れていても、システムは忘れていない
- 自分は課徴金の対象になりうるのか? 上場企業の役員でも、大株主でもない一般個人でも、5% 超の株式を取得して大量保有報告書を出し忘れれば172条の7の対象になり、178条1項7号で審判手続が開始される。相続で親の持株を引き継いだだけの人が、報告義務を知らずに引っかかる典型パターンである
- 審判手続開始の決定通知が届いた。ここから先、あなたは「被審人」という立場になる。答弁書の提出期限は決定の日から通常30日以内、期限内に事実を全部認めれば審判期日を開かずに決定が出る(金商法183条2項)。争うか認めるかを、書面一通で選ばされる
- 友人が「金融庁から課徴金を課された会社の役員も、同じ件で刑事告発されるって本当か」と相談してきた。178条2項は同一事実について複数号を理由に重ねて審判手続を開始することを禁じるが、刑事罰との併科は別問題である(185条の7第1項ただし書や185条の8で調整される)
取るべき行動
被害を受けた側:課徴金制度に被害者という立場は想定されていないが、虚偽開示によって損失を被った投資家の立場では動ける。1. 金融庁の課徴金納付命令の公表資料を入手する、これは虚偽記載の存在を行政が認定した強力な証拠になる2. 金商法21条の2(虚偽記載等のある書類の提出者の賠償責任)に基づく損害賠償請求を検討、こちらは損害額の推定規定があり民法709条より立証が軽い3. 請求権の期間制限は虚偽記載を知った時から2年、書類提出から5年(金商法21条の3、最新の改正状況をご確認ください)
訴えられた側:1. 審判手続開始の決定を受けたら、まず決定書記載の「事実」がどの号に該当するとされているかを特定し、その号に対応する178条の各項から除斥期間の起算点を確定する2. 決定日が起算点から5年(172条の12関係は7年)を過ぎていれば、その一点で手続を打ち切れる3. 期間内なら、答弁書の提出期限(通常30日)内に争点を絞る。全部認めれば審判期日なしで決定が出る(183条2項)、争うなら審判官の面前で主張立証する4. 課徴金納付命令に不服なら取消訴訟へ、ただし納付命令の効力自体は原則停止しない
時効(請求できる期限):原則として各違反類型の起算点から5年(178条3項から21項、23項から29項)。172条の12の虚偽開示書類等の提出を容易にすべき行為のみ7年(同22項)。起算点は類型ごとに「提出した日」「売買等が行われた日」「違反行為が終了した日」「提出期限」と異なるため、自社の行為がどの号かを先に特定すること。審判手続開始の決定を受けた後の答弁書提出期限は、決定の日から原則30日以内
学説
通説(羈束処分説):178条1項の「しなければならない」は文理上明確な義務規定であり、対象事実の認定後に手続を開始しない裁量は認められない。裁量は事実認定段階に限られ、減免は法定事由によるとする理解が実務上も共有されている
課徴金の法的性質論:課徴金は違反行為による経済的利得の剥奪を目的とする行政上の措置であって刑罰ではないと解され、この性質論が刑事罰との併科を憲法39条に違反しないと説明する根拠となっている
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 新設:証券取引法改正により課徴金制度が導入され、審判手続開始の決定に関する規定が置かれた
- 2.平成18年(2006年) 改正:証券取引法が金融商品取引法に改組され、課徴金の対象類型が拡大された
- 3.平成26年(2014年) 改正:172条の12(虚偽開示書類等の提出等を容易にすべき行為等)および175条の2(情報伝達・取引推奨)が新設され、178条にこれらに対応する号と期間の項が加えられた
- 金融商品取引法 第172条発行開示義務違反に対する課徴金、1項1号の対象事実
- 金融商品取引法 第173条風説の流布・偽計に対する課徴金、1項12号の対象事実
- 金融商品取引法 第175条内部者取引に対する課徴金、1項16号の対象事実
- 金融商品取引法 第179条審判手続開始決定書の記載事項と送達
- 金融商品取引法 第183条答弁書の提出と審判期日を開かない決定
- 金融商品取引法 第185条の7課徴金納付命令の決定と加算減算
- 金融商品取引法 第166条会社関係者の内部者取引禁止、27項の起算点の基礎行為
- 行政手続法 第13条不利益処分の聴聞手続、金商法審判が代替する一般法
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 第7条独占禁止法の課徴金除斥期間、課徴金制度の比較対象
- 金融庁設置法 第6条証券取引等監視委員会の設置と勧告権限
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