土地収用法 第90条(起業利益との相殺の禁止)
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同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用する場合において、当該土地を収用し、又は使用する事業の施行に因つて残地の価格が増加し、その他残地に利益が生ずることがあつても、その利益を収用又は使用に因つて生ずる損失と相殺してはならない。
この条文の基本情報
起業利益との相殺の禁止とは何ですか?
定義起業利益との相殺の禁止とは、土地収用法第90条に定められた規定で、「同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用する場合において、当該土地を収用し、又は使用する事業の施行に因つて残地の価格が増加し、その他残地に利益…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 土地収用法第90条(起業利益との相殺の禁止)は、日本の土地収用法に含まれる条文です。
- 土地収用法第90条の条文原文は「同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用する場合において、当該土地を収用し、又は使用する事業の施行に因つて残地の価格が増加し、その他残地に利益…」で始まります。
- 土地収用法第90条は第一節 収用又は使用に因る損失の補償に置かれています。
- 土地収用法の公布日は昭和26年6月9日です。
- 土地収用法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 土地収用法第90条の前の条は土地収用法第89条です。
- 土地収用法第90条の次の条は土地収用法第90条の2です。
- 土地収用法第90条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第90条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0100000219 - 本サイト収録
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第90条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/326AC0100000219/90
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点土地収用法90条は、土地の一部収用・使用で事業により残地の価格が上がっても、その利益を収用・使用による損失と相殺してはならないと定める。
Q · 道路用地で一部を買収されたとき、残りの土地が値上がりするなら補償金は減らされるの?
減らせません。90条が値上がり益との相殺を禁じています
土地収用法90条により、土地の一部が収用・使用される場合に、事業のおかげで残地の価格が上がるなどの利益が生じても、その利益を収用・使用による損失と相殺することはできません。収用部分の価格は71条で事業認定告示時を基準に算定され、残地の形状悪化や接道の変化などによる損失は74条の残地補償として別に算定されます。ただし受益者負担金など、別制度による負担の可能性は残ります。
解説
「残りの土地は道路に面して値上がりしますから」。用地交渉の席では、この一言がよく出てくる。世間話のように聞こえるが、補償額の話と結びつけた瞬間、法律上は通らない理屈になる。土地収用法90条は、土地の一部が収用または使用されるとき、事業のおかげで残地(収用されずに手元に残る部分)の価格が上がっても、その利益を補償から差し引いてはならないと定める。理由は公平にある。向かい側で一坪も取られなかった隣人も同じ値上がりを手にするのに、土地を差し出したあなただけが値上がり分を「精算」されるのは筋が通らない。しかも収用される部分の価格は、71条により事業認定の告示時点を基準に固定され、事業による値上がりは原則として乗らない。だから交渉では、残地の値上がりはあなたのもの、残地の使いにくさ(形がいびつになる、出入口が減る)は74条で別に請求できるもの、と切り分けて考えるのが正しい。
法的な位置づけ
土地収用法90条は起業利益との相殺禁止を定める規定であり、同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用または使用する場合に、事業の施行によって残地の価格が増加し、その他残地に利益が生じても、その利益を収用または使用によって生ずる損失と相殺してはならない旨を規定する。
手順
- 1.補償内訳書を書面で受け取る 用地担当者から提示された補償額について、土地価格・残地補償・工事費補償など項目ごとの内訳と算定根拠を書面で求める。口頭説明だけで判を押さない
- 2.残地補償欄と値上がり説明の有無を確認 残地補償(74条)と工事費補償(75条)の欄が計上されているか確認する。値上がりを理由に残地補償をゼロまたは減額としている説明があれば、その旨を記録する
- 3.土地収用法90条を示して再算定を求める 残地の値上がり益は損失と相殺できないことを90条を根拠に指摘し、形状悪化・接道減少・利用制限などの損失を要素ごとに再積算するよう書面で申し入れる
- 4.専門家の意見を得て次の手続を判断 不動産鑑定士や補償に詳しい弁護士に内訳を検証してもらう。合意が困難なら、事業認定告示後に起業者へ収用委員会への裁決申請を請求(39条2項)することや、残地収用請求(76条)を検討する
よくある質問 AI による整理
Q1起業利益の相殺禁止とは?
公共事業で残地に生じた値上がりなどの利益を、収用・使用による損失補償から差し引くことを禁じるルールです。土地収用法90条が根拠です。
Q2残地補償とは何ですか?
土地の一部収用により、残った土地の形状悪化や接道の変化などで価値が下がった分を補う補償です。土地収用法74条が定めています。
Q3道路用地買収で補償額はどう決まる?
収用部分の土地価格(71条)、残地の価値減少(74条)、残地の工事費(75条)、移転料などを積み上げて算定します。残地の値上がり分は差し引かれません。
Q4任意買収でも土地収用法90条は適用される?
90条は収用・使用の補償ルールですが、公共用地の任意買収も収用を前提とした補償基準で算定されるのが通例です。値上がり益を理由とする減額は趣旨に反します。
Q5残地補償がゼロと言われたら違法?
直ちに違法とは限りませんが、値上がりを理由にゼロとしたなら90条に反します。残地補償の算定根拠を書面で求め、形状や接道の損失が評価されているか確認しましょう。
Q6残地の値上がり分に税金はかかる?
値上がりしただけでは課税されませんが、将来売却すれば譲渡所得として課税対象になりえます。固定資産税の評価額が上がる可能性もあります。
Q7兄弟名義の隣地も残地に含まれる?
90条の残地は「同一の土地所有者に属する一団の土地」が前提です。名義が別の土地は、一体利用していても残地として扱われない可能性があります。
Q8収用補償に不服があるときの期限は?
損失補償に関する訴えは裁決書正本の送達を受けた日から6か月以内です(土地収用法133条2項)。裁決自体の取消訴訟は3か月以内です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1「残りの土地は値上がりするから」って言われたんですけど、補償を減らされてるってことですか?
値上がりを理由に収用・使用による損失を差し引くことは、土地収用法90条で禁じられています。残地の損失は74条で別に計算されるべきものです。実務のポイント:口頭の説明は後から「そういう意味ではなかった」と言われます。残地補償の算定根拠を書面で出してほしいと頼むだけで、担当者の説明はぐっと慎重になります
Q2残った土地が細長くなって家も建てにくいんですが、何か請求できますか?
形状の悪化、接道の変化、利用制限などで残地の価値が下がる分は残地補償(74条)、塀や通路の工事が必要なら工事費補償(75条)の対象になりえます。従来の用途に使うことが著しく困難なら、残地も収用するよう請求できます(76条)。実務のポイント:残地収用の請求は手続の進行と時期が関係します。裁決が近づいてから考えるのでは遅いことがあるので、早めに専門家に相談してください
Q3相殺されないなら、値上がりした分はまるまる自分の得なんですか?
相殺はされませんが、都市計画法75条や道路法61条により、事業で著しく利益を受ける者に事業費の一部を負担させる受益者負担金の制度があります。実務のポイント:道路でこの負担金が課される例は多くありませんが、下水道の受益者負担金は全国的に一般的です。将来の売却益には譲渡所得税もかかります。「残地は丸得」と思い込まず、出ていく可能性のあるお金も見ておくことが大切です
Q4役所の提示額に納得できないけど、ずっと交渉し続けるしかないんですか?
事業認定の告示後なら、土地所有者の側から起業者に、収用委員会への裁決申請をするよう請求できます(39条2項)。第三者の委員会が補償額を判断する場に移せます。実務のポイント:裁決になっても、補償額が劇的に増えるとは限りません。それでも、根拠を示さない減額説明は委員会の場では通りにくくなります。交渉が平行線になったときの切り札として知っておく価値があります
間違えやすい点 AI による整理
- 「残りの土地が値上がりするのだから、その分補償が少なくなるのは仕方ない」と考えて判を押す地権者は多い。だが90条は、事業による残地の利益を収用・使用による損失と相殺することを明確に禁じている。値上がりは値上がり、損失は損失である
- 相殺禁止は知っていても、利益がまったく取られないとまでは言えない。都市計画法75条や道路法61条には、事業で著しく利益を受ける者に事業費の一部を負担させる受益者負担金の仕組みがある。身近な例は下水道の受益者負担金だ。相殺はされないが、別ルートで負担を求められる可能性は残る
- 「相殺されないなら得をした」という問いの立て方がずれている。収用される部分の価格は71条で事業認定告示時を基準に固定され、事業による値上がりは原則として乗らない。値上がりの恩恵は残地にしか生じない。そして残地の使いにくさによる損失は、自分から主張しなければ内訳書に十分反映されないことがある
- あなたから見れば親子や兄弟の土地は「うちの土地」でも、法律は「同一の土地所有者に属する一団の土地」かどうかで残地を判断する。名義が分かれていれば、隣の筆は残地として扱われない可能性がある。家族単位の感覚と所有者単位の法律、その落差が補償の範囲を狭める
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 90条:残地に生じた利益を損失と相殺することの禁止 | 74条:残地の価格減少等の損失に対する補償 71条:収用する土地の補償額の算定基準時 |
| 被収用者への作用 | 値上がり益を理由とする補償減額を防ぐ | 残地の使いにくさによる損失を補償として請求できる 収用部分の価格に事業による値上がりを原則として乗せない |
| 開発利益との関係 | 残地の開発利益は所有者の手元に残る | 利益ではなく損失のみを評価する 収用部分については開発利益を補償から除外する |
| 実務上の確認点 | 交渉で値上がりの話が補償額と結びついていないか | 形状・接道・利用制限の要素が積算されているか 事業認定告示時の価格に物価変動修正がされているか |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は徵收當期の市価による補償と殘餘地の一併徵收を定める。日本のような相殺禁止の明文規定の有無は個別に確認が必要
韓国は事業施行利益と損失の相殺禁止を明文で定めており、日本の90条と同じ方向の立法である
ドイツは収用により生じた財産上の利益を補償算定で考慮する立場をとり、日本とは逆の設計である
米国では州により残地の special benefits を補償から差し引くことを認める例があり、扱いが分かれる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 実家の田んぼ1,000㎡のうち300㎡がバイパス用地にかかった。用地課の担当者は「残りは沿道になるので坪単価が上がります。残地補償は要らないでしょう」と言う。補償内訳の残地補償欄はゼロ。値上がりを理由に損失を打ち消す説明は、90条が正面から禁じている考え方である
- 新駅の計画で残地の評価が倍になりそうだったら、補償金はその分減らされるのか? 減らされない。値上がり益は相殺できず、残地の形状悪化や利用制限による損失は74条で別に計算される
- あなたは市の用地担当職員。年度末までに契約を取りたくて、つい「残りの土地が値上がりする分で十分元が取れますよ」と言ってしまった。地権者がそれを録音して弁護士に渡せば、補償の説明が法の趣旨に反していたと指摘され、交渉全体の信頼が崩れる
- 店の駐車場が道路拡幅で半分になった。残った駐車場では10台が4台しか停められない。値上がりの話とは関係なく、この減少は残地の損失として請求の対象になりうる
- 収用委員会の裁決書が届いた。残地補償の額がどう見ても低い。補償額を争う訴えは、裁決書の正本を受け取った日から6か月以内。気付いたときには、もう4か月が過ぎていた
取るべき行動
被害を受けた側:1. 用地交渉の内容は日付ごとにメモし、可能なら同席者を置く2. 補償内訳書を書面でもらい、残地補償(74条)と工事費補償(75条)の有無と根拠を確認する3. 値上がりを理由とする減額や不計上の説明があれば、90条を示して再算定を求める4. 残地が従来の用途に使えなくなるほど著しく困るなら、残地収用の請求(76条)を早めに検討する5. 不動産鑑定士や補償に詳しい弁護士に内訳を見てもらう
訴えられた側:起業者側や用地担当者の場合:1. 交渉で残地の値上がりを補償額と結びつけて話さない。世間話のつもりでも記録に残れば説明の適法性を疑われる2. 残地の損失は形状・接道・利用制限などの要素ごとに積算し、根拠を開示できるようにしておく3. 合意が困難なら、事業認定後に収用委員会の裁決で補償額を確定させる道を検討する
時効(請求できる期限):収用委員会の裁決のうち損失補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内(土地収用法133条2項)。裁決そのものの取消訴訟は、送達を受けた日から3か月以内(同条1項)(最新の改正状況をご確認ください)。任意交渉の段階には特定の時効はないが、契約に署名すると後から争うのは極めて難しい
学説
通説:90条は被収用者と収用されなかった隣接地所有者との平等を確保する規定であり、開発利益の吸収は補償の場での相殺ではなく、71条の価格固定や受益者負担金制度に委ねられていると解される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和26年(1951年) 新設:現行土地収用法の制定により、残地に生じた利益と収用・使用による損失との相殺禁止を規定
- 土地収用法 第71条土地補償額の事業認定告示時価格固定
- 土地収用法 第74条残地の価格減少等に対する残地補償
- 土地収用法 第75条残地に必要な工事費用の補償
- 土地収用法 第76条残地の収用請求権
- 土地収用法 第133条損失補償に関する訴えの出訴期間
- 都市計画法 第75条都市計画事業の受益者負担金、利益の別途回収
- 道路法 第61条道路事業の受益者負担金、利益の別途回収
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