農地法 第20条(借賃等の増額又は減額の請求権)
クイックジャンプ
- 借賃等(耕作の目的で農地につき賃借権又は地上権が設定されている場合の借賃又は地代(その賃借権又は地上権の設定に付随して、農地以外の土地についての賃借権若しくは地上権又は建物その他の工作物についての賃借権が設定され、その借賃又は地代と農地の借賃又は地代とを分けることができない場合には、その農地以外の土地又は工作物の借賃又は地代を含む。)及び農地につき永小作権が設定されている場合の小作料をいう。以下同じ。)の額が農産物の価格若しくは生産費の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により又は近傍類似の農地の借賃等の額に比較して不相当となつたときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かつて借賃等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間借賃等の額を増加しない旨の特約があるときは、その定めに従う。
- 2.借賃等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の借賃等を支払うことをもつて足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払つた額に不足があるときは、その不足額に年十パーセントの割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
- 3.借賃等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の借賃等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた借賃等の額を超えるときは、その超過額に年十パーセントの割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
この条文の基本情報
借賃等の増額又は減額の請求権とは何ですか?
定義借賃等の増額又は減額の請求権とは、農地法第20条に定められた規定で、「借賃等(耕作の目的で農地につき賃借権又は地上権が設定されている場合の借賃又は地代(その賃借権又は地上権の設定に付随して、農地以外の土地についての賃借権若しくは地…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 農地法第20条(借賃等の増額又は減額の請求権)は、日本の農地法に含まれる条文です。
- 農地法第20条の条文原文は「借賃等(耕作の目的で農地につき賃借権又は地上権が設定されている場合の借賃又は地代(その賃借権又は地上権の設定に付随して、農地以外の土地についての賃借権若しくは地…」で始まります。
- 農地法第20条は第三章 利用関係の調整等に置かれています。
- 農地法の公布日は昭和27年7月15日です。
- 農地法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年4月5日時点では廃止情報はありません。
- 農地法第20条の前の条は農地法第19条です。
- 農地法第20条の次の条は農地法第21条です。
- 農地法第20条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第20条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000229 - 本サイト収録
農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第20条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年4月5日)https://lawplayer.com/jp/article/327AC0000000229/20
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点農地法20条は、農地の借賃等が経済事情の変動等で不相当になったとき、当事者が将来に向けて増減を請求できると定める。有効な特約は一定期間増額しない旨のみ。
Q · 農地の地代って、契約で決めた後でも値下げや値上げを求められるの?
求められる。「減額しない」特約では借り手の減額請求を止められない
農地法20条1項により、米価や生産費の変動などの経済事情の変動、または近所の似た農地の地代と比べて不相当になったときは、契約の条件にかかわらず、貸し手も借り手も将来に向かって地代の増減を請求できます。契約で優先されるのは「一定期間増額しない」特約だけです。協議がまとまらない間は相当と考える額の支払・受領で足りますが、裁判確定後の差額には年10パーセントの利息が付きます(同条2項・3項)。
解説
農地の貸し借りで多い誤解がある。「契約書に地代を書いた以上、期間中は動かせない」という思い込みだ。農地法20条は逆のことを定めている。米価や肥料代などの生産費が上がり下がりした場合、または近所の似た農地と比べて地代が不相当になった場合、契約に何と書いてあっても、貸し手も借り手も将来に向けて地代の増額や減額を求められる。注目すべきはただし書だ。契約で守られるのは「一定期間は値上げしない」という特約だけである。「減額はしない」という特約を盾にしても、借り手の減額請求は止められない。この条文は借り手を守る方向に傾いている。さらに2項と3項には、話し合いがまとまらない間の支払いのルールがある。裁判が確定するまでは、自分が相当と考える額を払えば済む。ただし、後で差額が出ると年10パーセントの利息が付く。民法の法定利率3パーセントとは比べものにならない高さであり、強気に構えた側ほどこのリスクを背負う。
法的な位置づけ
農地法20条の借賃等増減請求権とは、耕作目的の農地に設定された賃借権・地上権の借賃・地代および永小作権の小作料が、農産物価格や生産費の変動その他の経済事情の変動、または近傍類似農地の借賃等との比較により不相当となった場合に、契約の条件にかかわらず当事者が将来に向かってその増減を請求できる権利である。一定期間増額しない旨の特約のみが優先する。
手順
- 1.契約書の特約の向きを確認する 契約書の地代条項と特約欄を読み、「一定期間増額しない」特約か、「減額しない」「地代不変」の特約かを確かめる。効力が認められるのは前者だけである
- 2.不相当を裏付ける資料を集める 米価や生産費の推移、農業委員会が提供する近傍類似農地の借賃等の情報を集め、現在の地代が不相当であることを示す
- 3.内容証明郵便で増減を請求する 増減後の額と理由を明記し、内容証明郵便で相手方に請求する。効果は到達日から将来に向けて生じるため、早めに書面で送る
- 4.協議不調なら相当額の支払・受領を続け、第三者を入れる 協議がまとまらない間は相当と認める額で支払または受領を続ける。農業委員会の和解の仲介(農地法25条)や農事調停を申し立て、決着しなければ訴訟で額を確定させる
よくある質問 AI による整理
Q1農地の借賃等とは何ですか?
耕作目的の農地の賃借権の借賃、地上権の地代、永小作権の小作料の総称です。分けられない付随地や倉庫等の賃料も含まれます(農地法20条1項)。
Q2農地 地代 値上げ 拒否できる?
一定期間増額しない旨の特約があれば、その期間は拒めます。特約がなければ、経済事情の変動等で不相当になった場合の増額請求は拒めません。
Q3農地の地代 減額請求 いつから効果がある?
請求の意思表示が相手方に届いた時点から将来に向けて効果が生じます。過去分にさかのぼって減額を求めることはできません。
Q4農地の地代 相場 どこで調べる?
市町村の農業委員会が提供する借賃等の情報(農地法52条)が手がかりになります。近傍類似農地との比較は増減請求の理由にもなります。
Q5農地の地代増減請求に期限はありますか?
請求そのものに行使期限はありません。ただし精算する差額や超過額の債権には、民法166条の一般の消滅時効が適用されます。
Q6農地 地代 揉めたら 払わないとどうなる?
支払を止めると債務不履行を主張されるおそれがあります。協議がまとまらない間は相当と認める額を払い続けるのが基本です(農地法20条2項)。
Q7農地 地代 年10パーセント 利息とは?
裁判で確定した額と既払額の差額に付く利息です。増額では支払期後から、減額では受領時から年10パーセントで計算されます。
Q8永小作権の小作料も増減請求できますか?
できます。農地法20条1項の借賃等には永小作権の小作料が含まれます。小作料の減免を否定する民法274条とは扱いが異なります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1米が安くなったからって、地代の値下げなんて本当に頼めるんですか?
頼めます。農地法20条1項は、農産物の価格の低下を増減請求の理由としてはっきり挙げています。契約の条件にかかわらず請求できます。実務のポイント:多くの人は「相談」という形で切り出すので、正式な請求がいつだったのか証拠が残りません。効果は請求が相手に届いた日から生じるため、最初の一通を書面で送っておくかどうかが、後で差額を取り戻せるかどうかを分けます。
Q2契約書に「地代は減額しない」って書いてあるんですけど、もう無理ですか?
無理ではありません。20条1項ただし書で効力が認められるのは「一定の期間増加しない」特約だけで、減額を禁じる特約は条文上守られていません。実務のポイント:古い契約書のひな型には「地代の変更は双方の合意による」といった条項が入っていることがありますが、本条は「契約の条件にかかわらず」と定めているので、この条項で一方的な請求を封じることはできないと考えられます。
Q3地主が値上げを言ってきて揉めてます。今までどおりの額を払っていればいいんですか?
2項により、増額を正当とする裁判が確定するまでは、あなたが相当と認める額を払えば足ります。従来の額を払い続けるのが一般的です。ただし、判決で増額が確定すれば、不足分に支払期の後から年10パーセントの利息が付きます。実務のポイント:争いが長引くほど利息が積み上がるので、相手の請求に一定の根拠がありそうなら、従来の額に少し上乗せして払う方法もあります。そうすれば精算時の負担を抑えられます。
Q4この10パーセントの利息って、民法の金利改正で下がったりしないんですか?
農地法20条2項と3項は年10パーセントと固定の率を定めています。民法の法定利率(現在は年3パーセント、変動制)とは別の扱いです(最新の改正状況をご確認ください)。実務のポイント:借地借家法11条の地代増減でも、精算時の利息は年1割です。土地の賃料をめぐる争いでは、法定利率よりはるかに高い率で精算するのが立法の一貫した設計です。
間違えやすい点 AI による整理
- 「特約を入れておけば地代は固定できる」と考えている地主は多い。しかし20条1項ただし書で効力が認められるのは「一定の期間増加しない」という特約だけである。「減額しない」「地代は不変とする」と書いても、借り手の減額請求は封じられない。特約が守るのは借り手の側だけである
- 裁判中は相当額を払えばよい、という点を知っている人は多い。見落とされがちなのは、精算するときの利息が年10パーセントだということだ。民法の法定利率は3パーセント(最新の改正状況をご確認ください)なので、3倍以上になる。裁判が数年かかれば、低めに見積もった額を払っていた借り手も、高めに受け取っていた地主も、利息だけでかなりの額を背負うことがある
- 「去年からずっと高すぎたのだから、さかのぼって返してほしい」という請求は、そもそも成り立たない。条文は「将来に向かつて」としており、増減の効果が生じるのは請求の意思表示が相手に届いた時点からだ。不満を口にするだけで正式に請求しなかった期間は、法的には全額正当な地代として扱われる
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は不動産賃貸借一般の租金増減請求(期間の定めがある場合は除外)と、耕作地租賃の不可抗力による減額を民法に置き、耕地には別途小作料上限規制がある
韓国は賃貸借一般の借賃増減請求権で対応し、日本のような農地専用の精算利息規定は置いていない
ドイツは農地用益賃貸借について、事情の根本的変化があれば契約内容の変更を求められる規定を置く
フランスは農事賃貸借の賃料が相場から大きく乖離した場合の改定を、農事賃貸借同数裁判所に求める制度を持つ
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 米価が下がり続けて3年、10アールあたりの地代を払うと赤字になる。借り手のあなたは地主に減額を申し入れたが、「契約書に減額しないと書いてある」と返された。ただ、20条1項ただし書で守られるのは「増額しない」特約だけだ。減額請求は、契約の条件にかかわらず出せる
- 地主の立場で考えると、話はどうなるか。隣の集落では同じ条件の田の地代が倍近くになっているのに、20年前に決めた地代のままで貸している。増額を求めることはできるが、効果があるのは請求の意思表示が相手に届いた時点からだ。過去の安すぎた分は取り戻せない
- 地主から一方的に増額を通告され、払わなければ契約を解除すると言われた。2項によると、裁判で増額が確定するまでは、自分が相当と考える額を払えば足りる。そこで従来の額を払い続けている。ただし、確定した額との差額には年10パーセントの利息が付く
- 減額請求を受けた地主が「裁判で決まるまでは従来どおり」と言って満額を受け取り続けた。3年後、減額を認める判決が確定した。受け取り過ぎた分には、受け取った時から年10パーセントの利息を付けて返すことになる
- ビニールハウスの敷地と農機具倉庫を、田と合わせて一つの地代で借りている。どこまでが田の地代なのか、契約書を見ても分からない。1項の括弧書により、分けられない地代は付随する土地や建物の分も含めて一括で増減請求の対象になる
- 農協の営農指導員として、組合員から地代の値下げ交渉について相談を受けた。最初に確認するのは契約書の特約の向きだ。値上げしない約束なのか、値下げしない約束なのか。どちらかで交渉の強さはまったく違う
取るべき行動
被害を受けた側:借り手として不相当な地代に困っている場合:1. 米価や生産費の推移、近所の地代の相場(農業委員会が公表する借賃等の情報が手がかりになる)を集める2. 内容証明郵便で、減額後の額と理由を明記して請求する。効果はこの到達日から生じる3. 協議がまとまらなければ、農業委員会の和解の仲介か農事調停を申し立てる4. 裁判までの間に地主が満額を受け取っていても、減額が確定すれば受け取り過ぎた分に年10パーセントの利息が付いて返ってくる
訴えられた側:増額や減額の請求を受けた側の場合:1. 相手の請求額と根拠になっている相場資料を確認し、契約書の特約の向きを見る(増額を受けた借り手なら、値上げしない特約で対抗できる可能性がある) 2. 協議がまとまらない間は、相当と考える額で支払いや受領を続ける。払わずに放置すると債務不履行を主張されるおそれがある3. 自分の相当額が判決の額から大きく外れると、年10パーセントの利息が膨らむので、相当額は控えめに見積もりすぎない4. 裁判の前に和解の仲介を活用する
時効(請求できる期限):増減請求そのものに行使期限はなく、効果が生じるのは意思表示が相手に届いた時点から将来に向けてである。精算する差額や返還すべき超過額の債権には、一般の消滅時効(民法166条、知った時から5年、権利を行使できる時から10年)が適用される。利息は、2項では支払期の後から、3項では受領の時から年10パーセントで計算する
学説
通説(形成権説):増減請求権は形成権であり、意思表示の到達により相当額への増減の効果が当然に生じる。協議不調時の2項・3項は、その相当額が裁判で確定するまでの暫定的な支払関係を定めたものと理解される。
- 農地法 第16条農地賃貸借の対抗力、地代関係の前提
- 農地法 第18条賃貸借の解約制限、地代紛争時の解除の歯止め
- 農地法 第21条契約の文書化、地代や特約の証拠
- 農地法 第25条農業委員会による和解の仲介
- 農地法 第52条農業委員会による借賃等の情報提供(現行効力を要確認)
- 民法 第609条耕作目的の賃借での減収による賃料減額請求
- 民法 第274条永小作料の減免否定、本条の増減請求との対比
- 借地借家法 第11条建物所有目的の借地の地代等増減請求、同じ構造の規定
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める