特許法 第175条(再審により回復した特許権の効力の制限)
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- 取り消し、若しくは無効にした特許に係る特許権若しくは無効にした存続期間の延長登録に係る特許権が再審により回復した場合又は拒絶をすべき旨の審決があつた特許出願若しくは特許権の存続期間の延長登録の出願について再審により特許権の設定の登録若しくは特許権の存続期間を延長した旨の登録があつた場合において、その特許が物の発明についてされているときは、特許権の効力は、当該取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に輸入し、又は日本国内において生産し、若しくは取得した当該物には、及ばない。
- 2.取り消し、若しくは無効にした特許に係る特許権若しくは無効にした存続期間の延長登録に係る特許権が再審により回復したとき、又は拒絶をすべき旨の審決があつた特許出願若しくは特許権の存続期間の延長登録の出願について再審により特許権の設定の登録若しくは特許権の存続期間を延長した旨の登録があつたときは、特許権の効力は、当該取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前における次に掲げる行為には、及ばない。
- 一当該発明の善意の実施
- 二特許が物の発明についてされている場合において、善意に、その物の生産に用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をした行為
- 三特許が物の発明についてされている場合において、善意に、その物を譲渡等又は輸出のために所持した行為
- 四特許が方法の発明についてされている場合において、善意に、その方法の使用に用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をした行為
- 五特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、善意に、その方法により生産した物を譲渡等又は輸出のために所持した行為
この条文の基本情報
再審により回復した特許権の効力の制限とは何ですか?
定義再審により回復した特許権の効力の制限とは、特許法第175条に定められた規定で、「取り消し、若しくは無効にした特許に係る特許権若しくは無効にした存続期間の延長登録に係る特許権が再審により回復した場合又は拒絶をすべき旨の審決があつた特許出願若し…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第175条(再審により回復した特許権の効力の制限)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第175条の条文原文は「取り消し、若しくは無効にした特許に係る特許権若しくは無効にした存続期間の延長登録に係る特許権が再審により回復した場合又は拒絶をすべき旨の審決があつた特許出願若し…」で始まります。
- 特許法第175条は第七章に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第175条の前の条は特許法第174条です。
- 特許法第175条の次の条は特許法第176条です。
- 特許法第175条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第175条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第175条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/175
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法175条は、再審で回復した特許権の効力が、無効審決の確定後・再審請求の登録前に善意で生産・取得した物には及ばないと定める。空白期間と善意が保護の要件となる。
Q · 無効になった特許が再審で復活したら、その間に作った在庫は全部アウトになるの?
空白期間に善意で作った在庫は復活後も守られます
特許法175条により、無効と確定した特許が再審で回復しても、その効力は『取消決定又は審決の確定後、再審請求の登録前』の空白期間に善意で輸入・国内生産・取得した物には及びません。2項では善意の実施や、譲渡・輸出のための所持まで保護されます。鍵は二つ、空白期間内であることと善意(再審で権利が回復するとは知らなかったこと)であること。この二つが揃えば、復活した特許はあなたの過去の行為を遡って侵害とはできません。
解説
競合の特許が無効審決で消えた。あなたはこれで自由に作れると判断し、同じ技術で製品を量産して倉庫に在庫を積み上げた。ところが数年後、相手が再審で争い、その特許が生き返る。普通に考えれば、復活した特許権はあなたの在庫すべてに襲いかかるはずだ。だが175条は別の答えを出す。特許が無効と確定してから、再審の請求が登録されるまでの『空白期間』に、あなたが善意で(つまり再審で復活するとは知らずに)輸入・国内生産・取得した物には、復活した特許権の効力は及ばない。2項では、善意の実施そのものや、その物を売るために所持した行為まで保護する。鍵は二つ。『空白期間内であること』と『善意であること』。この二つが揃えば、復活した特許はあなたの過去の行為を遡って罰せない。逆に、空白期間が始まる前から作っていた物や、再審の動きを察知した後に作った物は、この盾の外に出る。
法的な位置づけ
特許法175条は、再審により回復した特許権の効力の時間的制限を定める規定である。取消決定又は審決が確定した後、再審請求の登録前の期間(空白期間)に、善意で輸入・国内生産・取得された物、および善意の実施・所持等の行為には、回復した特許権の効力が及ばない。無効審決の確定を信頼した善意の第三者を保護する、いわゆる中用権の一種である。
よくある質問 AI による整理
Q1中用権とは何ですか?
中用権とは、無効等で消滅した特許権が再審で回復した場合に、空白期間中に善意で実施等をした第三者を保護し、回復した特許権の効力を及ばせない地位をいいます。特許法175条・176条が根拠です。
Q2再審回復特許権の効力制限とは?
無効と確定した特許が再審で復活しても、確定後・再審請求の登録前に善意で生産・取得した物には効力が及ばないという制限です。取引安全を守る趣旨で、175条が定めます。
Q3特許の空白期間はいつからいつまで?
空白期間は、取消決定又は審決が確定した日から、再審請求が登録される日までです。この期間内の善意の行為だけが175条で保護され、始点と終点が保護の境界線になります。
Q4特許が無効になった後に作った製品は違法?
空白期間に善意で作った製品は、後で特許が復活しても侵害になりません。ただし空白期間の前から作っていた物や、再審の動きを察知した後に作った物は保護されず、侵害となり得ます。
Q5特許法175条と176条の違いは?
175条は空白期間中の過去の行為を遡って侵害としない規定、176条は回復後も実施を続けられる法定通常実施権を与える規定です。175条で過去を守り、176条で未来を確保します。
Q6特許の再審請求はどこで確認できる?
特許の再審請求は登録され、特許庁の包袋(出願経過)で確認できます。競合特許の包袋を定期的にウォッチすれば、再審の動きを早期に掴み、生産判断を切り替えられます。
Q7先使用権と中用権の違いは?
先使用権(79条)は出願前から実施していた者を守る制度、中用権(175・176条)は無効特許の空白期間に善意で実施した者を守る制度です。保護の起点となる時点が異なります。
Q8ジェネリック医薬品で特許が復活したらどうなる?
先発品の特許が無効になった隙に製造・出荷したジェネリックは、先発側が再審で特許を復活させても、空白期間内の善意の分は175条で保護されます。出荷時期の記録が巨額賠償を分けます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1特許って一度無効になったら終わりじゃないんですか? なんで復活するんですか?
終わりではありません。再審(特許法171条以下)という制度があり、確定した無効審決でも、判断の基礎になった証拠が偽造だった等の重大な瑕疵があれば特許権を回復できます。確定後でも復活しうるからこそ、その間に善意で行動した人を守る175条が必要になるのです。実務のポイント:再審で特許が復活する事例は実務上きわめて稀ですが、ゼロではない。だからこそ無効になった特許技術に大規模投資する前に、無効審決が『確定』しているか(上訴期間が過ぎたか)を必ず確認する。確定前と確定後では立場がまったく違う
Q2『善意』って、悪気がなければいいってことですよね?
違います。ここでの善意は道徳的な『悪気のなさ』ではなく、『再審によって特許権が回復することを知らなかった』という特定事実の不知を指す法律用語です。あなたが誠実でも、再審の動きを知り得る立場にいたなら善意と認められないことがあります。実務のポイント:実務では、善意の立証責任を誰が負うかが争われます。一般に保護を主張する実施者側が善意を立証する負担を負うため、生産開始時に『特許は無効で確定済み、再審の兆候なし』と確認した記録を残しておくと、後の立証で決定的に有利になる
Q3空白期間に作った在庫は守られるとして、その後も作り続けていいんですか?
いいえ。175条が守るのは『空白期間内』(再審請求の登録前)に善意で行った行為だけです。再審請求が登録された後の新たな生産・販売は保護されず、復活した特許権の侵害になります。実務のポイント:ただし空白期間中に実施または準備をしていた場合、176条により法定の通常実施権が発生し、対価を払えば継続できる余地があります。175条で過去を守り、176条で未来を確保する、この二段構えを知っているかどうかで事業継続の可否が変わる
間違えやすい点 AI による整理
- 特許が無効になればもう二度と復活しない、と思い込んでいる。だが再審(特許法171条以下)という制度があり、確定した無効審決でも、判断の基礎になった証拠に重大な瑕疵があれば特許権は生き返る。あなたが『この特許はもう死んだ』と判断した日は、必ずしも終わりではない
- 再審で特許が復活したら過去の行為が全部アウトになる、と漠然と恐れている人は、その恐怖の中身を正確に知らない。実際は『空白期間に善意で行った行為』は完全に保護される。恐れるべきは全期間ではなく、空白期間の外で行った行為と、悪意を立証された行為だけだ。守られる範囲を知らないまま過剰に萎縮するのが本当の損失
- 『善意』を『悪気がなかった』という日常の意味で捉えていると足をすくわれる。法律上の善意とは『再審によって特許権が回復することを知らなかった』という、特定事実の不知を指す。あなたから見れば誠実に商売していたつもりでも、法律から見て再審の動きを察知できる立場にいたなら、善意とは認められない。この落差が保護の有無を分ける
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 保護される時期の起点 | 175条:取消決定・審決の確定後、再審請求の登録前(空白期間) | 176条:空白期間中の実施または準備(回復後に継続) 79条:特許出願の際に実施または準備をしていた時点 |
| 保護の内容 | 175条:過去の輸入・生産・取得・実施・所持を遡って侵害としない | 176条:回復後も実施を続けられる法定通常実施権 79条:出願後も実施を続けられる法定通常実施権 |
| 対価の要否 | 175条:不要(そもそも効力が及ばない) | 176条:相当の対価を要する(法定実施権) 79条:無償(法定通常実施権) |
| 将来の実施の可否 | 175条:将来の新たな生産は保護外(過去のみ) | 176条:対価を払えば将来も継続可 79条:実施事業の範囲内で将来も継続可 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は再審回復特許の中用権を明文化していないが、善意で実施または準備をしていた者を保護する第59条が機能的に類似する
韓国は日本特許法をほぼ踏襲し、再審により回復した特許権の効力制限を第181条で明文化。空白期間・善意の枠組みが日本と酷似する
中国は無効宣告の遡及効を制限し、既に履行された判決・契約や善意の実施を保護する。再審回復という枠組みではないが善意者保護の趣旨が近い
米国は intervening rights(中用権)の法理により、再発行・再審査で変更された特許の前に善意で行った行為を保護し、エクイティ上の継続実施も認め得る
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 競合の主力特許が無効審決で消えた。あなたの会社は半年かけて同等品を量産し、全国の倉庫に在庫を積んだ。一年後、相手が再審を申し立てたという連絡が入る。この瞬間、倉庫の在庫が『守られる山』と『守られない山』に割れる。どちらに何個あるかを言えなければ、交渉の主導権は相手に渡る
- もし、あなたが無効になった特許技術で製品を作り始めた『後』に、相手の再審請求が登録されたとしたら? 登録日より前に善意で作った分は175条で守られるが、登録日以降に作った分はもう盾の外。たった一日違いで、在庫の運命が変わる
- ジェネリックを出荷した。先発の特許は無効で確定していた。だが半年後、その特許が再審で復活する
- あなたが特許権者の側で、無効にされた特許を再審で必死に復活させ、勝った。だが相手が空白期間に売り抜けた大量の製品には、あなたの権利は届かない。175条が勝利の取り分を削る。この限界を知らずに損害賠償額を皮算用すると、後で足元をすくわれる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 再審で特許権が回復したら、相手の侵害行為が『空白期間より前』か『再審請求の登録より後』に行われたものを特定する。この期間外の行為には175条の保護が及ばず、通常通り権利行使できる2. 空白期間内の行為については、相手が悪意(再審回復を知っていた、または知り得た)だった証拠を探す。再審の動きを察知できる立場にいたかが鍵3. 過去の在庫が175条で守られても、再審請求登録後の継続販売は差止め可能。将来に向けた権利行使へ切り替える4. 相手に176条の法定通常実施権が発生していないかも確認する
訴えられた側:1. まず自社の行為が『空白期間内』(取消決定・審決の確定後、再審請求の登録前)に行われたかを日付で確定する。これが第一の盾2. 次に『善意』(再審で特許権が回復するとは知らなかった)を主張・立証できるか検討し、生産開始時の判断資料、無効確定を確認した記録を集める3. 物の発明なら、空白期間内に生産・取得した在庫の譲渡・所持は2項で保護される。保護対象の行為類型を条文に照らして整理する4. 空白期間外の行為や再審を察知した後の行為は保護外。これらは先使用権(79条)など別の防御を検討する
時効(請求できる期限):175条自体に固有の期間制限はないが、保護される行為の範囲は『取消決定又は審決が確定した後、再審の請求の登録前』という時間枠で画される。この空白期間の始点(確定日)と終点(再審請求の登録日)が保護の境界線。なお特許権侵害に基づく損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年(民法724条)で時効消滅する(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:175条は、無効審決の確定を信頼して行動した善意の第三者の取引安全と、再審で正当に権利を取り戻した特許権者の財産権とを調整する規定と解される。空白期間と善意という二要件で保護範囲を限定し、第三者を過去について保護しつつ、特許権者の将来に向けた権利行使は妨げない均衡点を置いたと理解されている。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 制定:現行特許法(昭和34年法律第121号)制定。再審により回復した特許権の効力制限を規定し、無効審決の確定を信頼した善意の実施者を保護する枠組みを整備した。
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