取り消し、若しくは無効にした特許に係る特許権若しくは無効にした存続期間の延長登録に係る特許権が再審により回復したとき、又は拒絶をすべき旨の審決があつた特許出願若しくは特許権の存続期間の延長登録の出願について再審により特許権の設定の登録若しくは特許権の存続期間を延長した旨の登録があつたときは、当該取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
要点特許法 176 条は、無効・取消の確定後、再審の請求の登録前に善意で発明を実施・準備していた者に、回復した特許権についての通常実施権(中用権)を認める規定である。
Q · 無効になった特許が再審で復活したら、それを信じて始めた事業は全部やめないといけないの?
善意なら中用権で続けられる場合があります
特許法 176 条により、取消決定・無効審決が確定した後、再審の請求の登録前に、覆ることを知らず善意で日本国内でその発明を実施する事業や準備をしていた者は、復活した特許について通常実施権(中用権)を当然に取得します。ライセンス交渉も登録も不要で、その範囲では差止めや損害賠償も及びません。ただし保護されるのは、実施・準備していた発明および事業の目的の範囲内に限られ、その後の大幅な増産や別用途への転用には及ばないおそれがあります。
特許庁が一度「この特許は無効」と公示した。あなたはそれを信じて、その技術を使った製品ラインに数千万円を投じた。ところが特許権者が再審で逆転し、特許が復活する。理屈だけ追えば、復活の効力は過去に遡り、あなたは今や特許侵害者だ。だが特許法 176 条はそうはさせない。取消決定や無効審決が確定した後、再審請求が登録される前に、善意で(つまり覆ることを知らずに)日本国内でその発明を実施する事業をしていた者、またはその準備をしていた者には、復活した特許について「通常実施権」が法律上当然に与えられる。ライセンス交渉も登録も要らず、その発明を使い続けられる権利だ。ただし守られる範囲は、あなたが現に実施・準備していた発明と事業の目的の内側に限られる。公的な無効公示を信じて動いた者を、後出しの逆転劇から守る安全装置である。
特許法 176 条の中用権とは、取消決定または無効審決の確定後、再審の請求の登録前に善意で発明の実施である事業をし、またはその準備をしていた者に対し、再審により回復した特許権について法律上当然に付与される通常実施権をいう。権利範囲は当該実施・準備に係る発明および事業の目的の内側に限定される。
AI 輔助整理,以條文原文為準
再審で回復した特許権に対し、善意の先行実施者へ法律上当然に与えられる通常実施権です。特許法 176 条が根拠で、ライセンス交渉や登録は不要です。
無効審決や取消決定が確定した特許が、再審で回復した場面です。確定後・再審請求の登録前に善意で実施・準備していた事業者が保護されます。
先使用権は出願前からの実施が基準、中用権は再審請求の登録前の実施が基準です。どちらも無償の法定通常実施権ですが、発生原因となる時点が異なります。
不要です。中用権は法律上当然に発生する通常実施権で、特許法 99 条の当然対抗により、登録なくして特許権者に対抗できます。
再審で特許が覆り回復することを知らなかったことを指します。官報や J-PlatPat で無効・取消を確認して事業判断した記録が、善意を裏づける証拠になります。
通常実施権として一定の要件のもとで移転しうるものですが、実務では事業とともに移転するか、権利者の承諾など個別の条件を確認する必要があります。
確定後・再審請求の登録前に善意で実施していれば、176 条の中用権により、後に特許が復活してもその範囲の実施は適法として保護されます。
実施・準備していた発明と事業目的の範囲内であれば、差止請求も損害賠償請求も及びません。ただし範囲を超えた増産・転用部分は保護外です。
善意で再審登録前に実施していた範囲なら、176 条の中用権により通常実施権を持つので、その範囲の実施は適法で、差止めも損害賠償も及びません。範囲を超えた拡大分は別です。業界裏話ヒント:79 条の先使用権と同じく、176 条の中用権は条文に対価(ライセンス料)の規定がありません。一方、無効審判系の 80 条の中用権には対価を払う規定がある。同じ『中用権』でも有償・無償が分かれるので、相手が金銭を要求してきたら、どの条文を根拠にしているか確認すべきです(最新の改正状況をご確認ください)
176 条は『その事業の準備をしている者』も明文で保護します。ただし『準備』と認められるには、即時実施の意図が客観的に分かる程度の具体性が必要で、設備発注、工場確保、事業計画の確定などが目安になります。業界裏話ヒント:単なる構想や社内検討メモでは『準備』に足りないと判断されやすい。先使用権をめぐる最高裁判例(最判昭和 61.10.3 ウォーキングビーム事件)が示した『準備』の基準が、176 条の解釈でも事実上の物差しとして使われています
そこが落とし穴です。中用権は『実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内』に限られます。元の事業目的の範囲内での増産は認められる余地がありますが、別事業への転用や全く異なる製品への展開は範囲外と判断されうる。業界裏話ヒント:どこまでが『事業の目的の範囲内』かは実務上、解釈が分かれている論点です。先使用権の範囲論を準用する見解が有力ですが、増産や態様変更の限界はケースバイケース。事業拡大を計画するなら、範囲外リスクを織り込んで権利者とのライセンス交渉を並行させるのが安全です
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 発生原因(基準となる出来事) | 176 条:再審による特許権の回復 | — |
| 基準時(いつまでの実施か) | 再審の請求の登録前 | — |
| 対価(ライセンス料) | 条文に対価の規定なし(無償) | — |
| 保護範囲 | 実施・準備した発明および事業の目的の範囲内 | — |
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