特許法 第176条
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取り消し、若しくは無効にした特許に係る特許権若しくは無効にした存続期間の延長登録に係る特許権が再審により回復したとき、又は拒絶をすべき旨の審決があつた特許出願若しくは特許権の存続期間の延長登録の出願について再審により特許権の設定の登録若しくは特許権の存続期間を延長した旨の登録があつたときは、当該取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第176条は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第176条の条文原文は「取り消し、若しくは無効にした特許に係る特許権若しくは無効にした存続期間の延長登録に係る特許権が再審により回復したとき、又は拒絶をすべき旨の審決があつた特許出願若…」で始まります。
- 特許法第176条は第七章に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第176条の前の条は特許法第175条です。
- 特許法第176条の次の条は特許法第177条です。
- 特許法第176条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第176条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第176条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/176
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法176条は、無効・取消の確定後、再審の請求の登録前に善意で発明を実施・準備していた者に、回復した特許権についての通常実施権(中用権)を認める規定である。
Q · 無効になった特許が再審で復活したら、それを信じて始めた事業は全部やめないといけないの?
善意なら中用権で続けられる場合があります
特許法176条により、取消決定・無効審決が確定した後、再審の請求の登録前に、覆ることを知らず善意で日本国内でその発明を実施する事業や準備をしていた者は、復活した特許について通常実施権(中用権)を当然に取得します。ライセンス交渉も登録も不要で、その範囲では差止めや損害賠償も及びません。ただし保護されるのは、実施・準備していた発明および事業の目的の範囲内に限られ、その後の大幅な増産や別用途への転用には及ばないおそれがあります。
解説
特許庁が一度「この特許は無効」と公示した。あなたはそれを信じて、その技術を使った製品ラインに数千万円を投じた。ところが特許権者が再審で逆転し、特許が復活する。理屈だけ追えば、復活の効力は過去に遡り、あなたは今や特許侵害者だ。だが特許法176条はそうはさせない。取消決定や無効審決が確定した後、再審請求が登録される前に、善意で(つまり覆ることを知らずに)日本国内でその発明を実施する事業をしていた者、またはその準備をしていた者には、復活した特許について「通常実施権」が法律上当然に与えられる。ライセンス交渉も登録も要らず、その発明を使い続けられる権利だ。ただし守られる範囲は、あなたが現に実施・準備していた発明と事業の目的の内側に限られる。公的な無効公示を信じて動いた者を、後出しの逆転劇から守る安全装置である。
法的な位置づけ
特許法176条の中用権とは、取消決定または無効審決の確定後、再審の請求の登録前に善意で発明の実施である事業をし、またはその準備をしていた者に対し、再審により回復した特許権について法律上当然に付与される通常実施権をいう。権利範囲は当該実施・準備に係る発明および事業の目的の内側に限定される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.実施・準備の開始日を客観的証拠で固定する 設備の発注書、出荷記録、会計帳簿、賃貸契約、確定した事業計画書、タイムスタンプ付きデータなど、いつから発明を実施・準備していたかを客観的に示す証拠を揃える。再審の請求の登録日より前であることが最大の争点になる
- 2.善意を裏づける確認記録を保全する 事業判断の時点で官報や J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)により当該特許が無効・取消であったことを確認したスクリーンショットや調査記録を保存し、覆ることを知らなかった(善意)ことを示せるようにする
- 3.再審請求の登録日と実施開始日の前後関係を確定する 特許原簿・J-PlatPat で再審の請求の登録日を照合し、自社の実施・準備開始日が登録日より前であることを時系列で整理する。ここが中用権成立の分水嶺になる
- 4.侵害警告・訴訟に対し早い段階で176条の中用権を主張する 権利者から侵害警告や訴訟を受けたら、答弁の早い段階で176条の通常実施権(中用権)を、実施開始日・善意・範囲の証拠とともに提示する。相手は差止め・賠償が通らないと悟り、共存(ライセンス交渉)モードへ切り替わりやすい
- 5.範囲外となる増産・転用はライセンス交渉を並行させる 中用権は実施・準備していた発明と事業の目的の範囲内に限られるため、その後の大幅な増産や別用途への展開を計画するなら、範囲外リスクを織り込み、権利者との通常実施権許諾の交渉を並行して進める
よくある質問 AI による整理
Q1特許の中用権とは何ですか?
再審で回復した特許権に対し、善意の先行実施者へ法律上当然に与えられる通常実施権です。特許法176条が根拠で、ライセンス交渉や登録は不要です。
Q2特許法176条はどんな場合に適用されますか?
無効審決や取消決定が確定した特許が、再審で回復した場面です。確定後・再審請求の登録前に善意で実施・準備していた事業者が保護されます。
Q3中用権と先使用権(79条)はどう違いますか?
先使用権は出願前からの実施が基準、中用権は再審請求の登録前の実施が基準です。どちらも無償の法定通常実施権ですが、発生原因となる時点が異なります。
Q4再審で回復した特許権に中用権を主張するのに登録は必要ですか?
不要です。中用権は法律上当然に発生する通常実施権で、特許法99条の当然対抗により、登録なくして特許権者に対抗できます。
Q5中用権が認められる「善意」とはどういう意味ですか?
再審で特許が覆り回復することを知らなかったことを指します。官報や J-PlatPat で無効・取消を確認して事業判断した記録が、善意を裏づける証拠になります。
Q6中用権は他人に譲渡や相続ができますか?
通常実施権として一定の要件のもとで移転しうるものですが、実務では事業とともに移転するか、権利者の承諾など個別の条件を確認する必要があります。
Q7無効審決が確定した特許を使い始めても違法にならないの?
確定後・再審請求の登録前に善意で実施していれば、176条の中用権により、後に特許が復活してもその範囲の実施は適法として保護されます。
Q8中用権があると相手からの差止めは止められますか?
実施・準備していた発明と事業目的の範囲内であれば、差止請求も損害賠償請求も及びません。ただし範囲を超えた増産・転用部分は保護外です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1無効になった特許でも、復活したら今までの分まで損害賠償を払わされるんですか?
善意で再審登録前に実施していた範囲なら、176条の中用権により通常実施権を持つので、その範囲の実施は適法で、差止めも損害賠償も及びません。範囲を超えた拡大分は別です。実務のポイント:79条の先使用権と同じく、176条の中用権は条文に対価(ライセンス料)の規定がありません。一方、無効審判系の80条の中用権には対価を払う規定がある。同じ『中用権』でも有償・無償が分かれるので、相手が金銭を要求してきたら、どの条文を根拠にしているか確認すべきです(最新の改正状況をご確認ください)
Q2まだ製品を売ってなくて、機械を買って準備してただけでも守られますか?
176条は『その事業の準備をしている者』も明文で保護します。ただし『準備』と認められるには、即時実施の意図が客観的に分かる程度の具体性が必要で、設備発注、工場確保、事業計画の確定などが目安になります。実務のポイント:単なる構想や社内検討メモでは『準備』に足りないと判断されやすい。先使用権をめぐる最高裁判例(最判昭和61.10.3ウォーキングビーム事件)が示した『準備』の基準が、176条の解釈でも事実上の物差しとして使われています
Q3中用権があれば、生産量を増やしても自由ですよね?
そこが落とし穴です。中用権は『実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内』に限られます。元の事業目的の範囲内での増産は認められる余地がありますが、別事業への転用や全く異なる製品への展開は範囲外と判断されうる。実務のポイント:どこまでが『事業の目的の範囲内』かは実務上、解釈が分かれている論点です。先使用権の範囲論を準用する見解が有力ですが、増産や態様変更の限界はケースバイケース。事業拡大を計画するなら、範囲外リスクを織り込んで権利者とのライセンス交渉を並行させるのが安全です
間違えやすい点 AI による整理
- 「特許が復活したら、無効期間中に始めた事業は全部やめなければならない」と思い込みがちだが、176条はその真逆を定める。善意で再審登録前に実施していた者は通常実施権を得て、その範囲では操業を続けられる
- 「中用権があるなら安泰」と考える人が多いが、保護されるのは『実施・準備していた発明及び事業の目的の範囲内』に厳格に限られる。投資後に生産量を別次元に拡大したり、別用途へ転用した部分には及ばないおそれがある。権利の存在は知っていても、その狭さを知らないと足をすくわれる
- 「相手の特許が本当に無効だったか」を争点だと思い込んでいる人がいるが、176条の世界ではその問い自体が的外れだ。問われるのは『あなたが、覆ることを知らずに(善意で)、再審登録前に実施・準備していたか』という、まったく別の事実である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 発生原因(基準となる出来事) | 176条:再審による特許権の回復 | 79条:出願前からの善意の実施・準備(先使用) 80条:無効審判の請求の登録前の善意の実施・準備 |
| 基準時(いつまでの実施か) | 再審の請求の登録前 | 特許出願の時 無効審判の請求の登録前 |
| 対価(ライセンス料) | 条文に対価の規定なし(無償) | 条文に対価の規定なし(無償) 相当の対価を支払う旨の規定あり(有償型) |
| 保護範囲 | 実施・準備した発明および事業の目的の範囲内 | 実施・準備した発明および事業の目的の範囲内 実施・準備した発明および事業の目的の範囲内 |
他国ではどう定めているか 3 か国
韓国特許法は日本法を強く継受し、再審により回復した特許権に対する善意実施者の通常実施権をほぼ同旨で定める。
ドイツは善意の先使用者に継続実施権を認める先使用権制度を持ち、権利の復権局面でも善意の中間実施者を保護する枠組みがある。176条の中用権とは発生原因が完全一致しないが、善意実施保護という同種事項を規律する。
米国は再発行(reissue)や再審査に伴い、既存の実施者に intervening rights(中間権)を認める。回復・変更された特許権の遡及効を制限し善意の実施を保護する点で176条と機能が近い。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 競合の特許が無効審決で確定した。あなたは官報を確認し、その技術で新ラインに5,000万円を投資。半年後、相手が再審で逆転し特許が復活、侵害警告が届く。だが再審請求の登録前に善意で実施していたなら、176条の中用権で操業を続けられる。勝負を分けるのは投資と実施の日付の記録だ
- もし、まだ製造を始めておらず、設備を発注して工場を借りた「準備段階」で特許が復活したら、どうなる? 176条は「その事業の準備をしている者」も明文で保護する。どこまでが準備かは争いになるが、設備発注書、賃貸契約、確定した事業計画書が分水嶺になる
- 無効が確定した翌週、あなたは生産を開始した。相手の再審請求が登録されたのは、その一か月後。このわずかなズレが、あなたの工場を守る
- あなたが買収しようとしている町工場が、ある復活特許の発明を使っている。デューデリの締切まであと5日。その工場に176条の中用権があるか否かで、買収後に侵害訴訟を抱えるか、合法的に製造を続けられるかが決まる。実施開始日と再審登録日の前後関係を、今すぐ洗い出すしかない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 復活特許の権利者として侵害者を見つけたら、相手の実施開始日が再審請求の登録日より前か後かをまず確定する2. 登録後に始めた、あるいは善意でない(覆ることを知っていた)と立証できれば、差止め・損害賠償を通常どおり追及できる3. 相手が登録前から善意で実施していたなら176条の中用権が成立し、その範囲では差止めも賠償も通らない、過度な金銭要求は禁物4. ただし中用権の範囲を超えた増産・転用部分は侵害として追及可能、範囲の線引きを精査する
訴えられた側:1. 実施・準備の開始日を証明する証拠を固める(発注書、出荷記録、会計帳簿、賃貸契約、事業計画書) 2. 再審で覆ることを知らなかった『善意』を示すため、官報や J-PlatPat で無効・取消を確認した記録を保全3. 侵害訴訟・警告に対し176条の中用権を主張、答弁の早い段階で証拠とともに提示4. 保護範囲は当初の実施・事業目的の内側に限られるため、無計画な拡大は避け、範囲外の展開は権利者とのライセンス交渉を並行させる
時効(請求できる期限):中用権の主張自体に出訴期限はないが、決め手は『時点』である。再審の請求の登録日を基準に、それより前に善意の実施または準備があったことが要件。侵害訴訟を起こされたら答弁段階で中用権を主張する。なお特許権侵害に基づく損害賠償請求権は不法行為として民法724条(損害および加害者を知った時から3年、行為時から20年)の消滅時効に服する(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:176条の中用権は、確定後・再審請求の登録前の善意の実施・準備という要件を満たせば法定で発生する無償の通常実施権であり、特許権者の遡及的回復と、公的な無効・取消公示への信頼保護との調整規定として位置づけられる。
有力説:保護される『事業の目的の範囲内』の限界については、先使用権(79条)の範囲論を準用する見解が有力である。元の事業目的内の増産は認められる余地があるが、別事業への転用や態様の大幅変更は範囲外となりうるとされ、増産・変更の限界はケースバイケースで争いがある。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 制定:現行特許法(昭和34年法律第121号)の制定により、再審により回復した特許権に対する善意の実施者・準備者の通常実施権(中用権)が明文化された。
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