特許法 第70条(特許発明の技術的範囲)
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- 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
- 2.前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
- 3.前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。
この条文の基本情報
特許発明の技術的範囲とは何ですか?
定義特許発明の技術的範囲とは、特許法第70条に定められた規定で、「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第70条(特許発明の技術的範囲)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第70条の条文原文は「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」で始まります。
- 特許法第70条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第70条の前の条は特許法第69条です。
- 特許法第70条の次の条は特許法第71条です。
- 特許法第70条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第70条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第70条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/70
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法70条は、特許発明の技術的範囲を特許請求の範囲(クレーム)の記載に基づき定めると規定する。用語が不明確なときのみ明細書・図面を参酌し、要約書は考慮しない。
Q · 相手の特許公報に書いてあることをやったら、全部特許侵害になるの?
いいえ、侵害はクレームの文言で決まります
特許法70条1項により、特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲(クレーム)の記載に基づいて定まります。明細書に詳しく書かれた技術でも、クレームに記載がなければ原則として権利は及びません。クレームの構成要件が一つでも欠ければ、原則として文言侵害は成立しません(オールエレメントルール)。用語が不明確なときに限り明細書・図面を参酌して解釈し(2項)、要約書は解釈材料から排除されます(3項)。ただし文言を外れても均等論で侵害とされる余地は残ります。
解説
あなたの会社が新製品を世に出した三か月後、競合から内容証明が届く。「弊社の特許を侵害している、製造販売を即刻中止せよ」。さあ、あなたは本当に侵害しているのか。その答えを決める唯一の物差しが、この70条だ。侵害かどうかは、製品が「特許の技術的範囲」に入るかで決まる。そしてその範囲は、特許公報の本文(明細書)でも図面でもなく、まず『特許請求の範囲』(クレーム)という一区画の文言だけで定まる(1項)。クレームに書いていない要素は、いくら明細書で詳しく説明されていても原則として権利範囲の外。逆に、クレームの用語が曖昧なときに限り、明細書と図面を手がかりにその意味を解釈する(2項)。そして、出願人が便宜的に書いた要約書は、解釈材料から完全に締め出される(3項)。つまり勝負は、相手の特許のクレーム一文をどう読むかに、ほぼすべて懸かっている。
法的な位置づけ
特許法70条にいう技術的範囲とは、特許発明の効力が及ぶ客観的な範囲を指し、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて確定される。クレームの用語が不明確な場合に限り、明細書および図面を参酌してその意義を解釈し、要約書の記載は解釈上一切考慮されない。侵害判断の基礎となる権利の外縁を画する規定である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.相手クレームを構成要件に分解する 特許公報の本文(明細書)ではなく、まず『特許請求の範囲』の欄を読み、クレームを構成要件ごとに番号を振って分解する。侵害判断はここから始まる
- 2.クレームチャートで自社製品と照合する 分解した各構成要件を自社製品と一対一で突き合わせるクレームチャートを作成する。一つでも欠ける要件があれば、原則として文言侵害は成立しない(オールエレメントルール)
- 3.均等論の5要件を検討する 文言上いずれかの要件を欠く場合でも安心せず、均等論の5要件(本質的部分の同一性・置換可能性・置換容易性・公知技術でない・意識的除外がない)を満たさないかを検討する
- 4.相手の出願経過(包袋)を取り寄せる 特許庁で相手特許の出願経過(包袋)を取り寄せ、審査段階で出願人が権利範囲から除外した主張を確認する。除外部分は包袋禁反言で均等主張を封じる材料になる
- 5.無効の抗弁を準備し期限内に相談する 並行して特許自体の無効理由(新規性・進歩性の欠如等)を調査し、104条の3の抗弁を準備する。警告書の回答期限内に弁理士・弁護士へ相談して方針を固める
よくある質問 AI による整理
Q1特許の技術的範囲とは何ですか?
特許発明の効力が及ぶ範囲のことです。特許法70条により、特許請求の範囲(クレーム)の記載に基づいて客観的に確定され、侵害判断の物差しになります。
Q2特許請求の範囲と明細書はどちらが優先されますか?
クレーム(特許請求の範囲)が優先です。明細書は、クレームの用語が不明確なときに限り、その意義を解釈するために参酌されます(70条2項)。
Q3オールエレメントルールとは何ですか?
クレームの構成要件を一つでも欠けば、原則として文言侵害は成立しないという原則です。全要件を充足して初めて技術的範囲に属すると判断されます。
Q4均等論の5要件とは何ですか?
本質的部分でないこと、置換可能性、置換容易性、公知技術でないこと、意識的除外がないこと。ボールスプライン事件でこの枠組みが確立しました。
Q5要約書は特許の権利範囲に影響しますか?
影響しません。特許法70条3項は、技術的範囲の解釈にあたり要約書の記載を考慮してはならないと明文で定めています。
Q6包袋禁反言とは何ですか?
出願人が審査段階で権利範囲から意識的に除外した部分について、後から均等侵害を主張できないという原則です。相手の出願経過が防御材料になります。
Q7クレームチャートとは何ですか?
相手のクレームを構成要件ごとに分解し、自社製品が各要件を満たすかを一対一で照合する表です。侵害の成否を見極める実務上の第一手です。
Q8特許侵害かどうかはどうやって判断しますか?
対象製品が特許の技術的範囲に属するかで判断します。まずクレームの各構成要件の充足を確認し、文言を外れる場合は均等論の5要件を検討します。
この条文についての質問 AI による整理
Q1特許公報に書いてあることをやったら、全部アウトなんですか?
いいえ。アウトかどうかは『特許請求の範囲』(クレーム)の構成要件をすべて満たすかで決まります(70条1項)。明細書に詳しく書かれた技術でも、クレームに記載がなければ原則として権利は及びません。実務のポイント:弁理士は他社特許を評価するとき、まず明細書を飛ばしてクレームだけを読み、構成要件に番号を振って分解します。素人が公報を頭から読んで怯えている間に、プロはクレーム一文の充足判断で侵害の成否をほぼ見切っている。
Q2相手の特許とちょっと違う作りにすれば、回避できますよね?
文言上クレームから外れれば文言侵害は免れますが、均等論という第二関門があります。最高裁(最判平成10.2.24、ボールスプライン事件)は、本質的部分が同一であるなどの5要件を満たせば、文言が違っても侵害になるとしました。実務のポイント:均等論を封じる最強の盾は相手の『出願経過』です。出願人が審査段階で『この部分は権利範囲に含めない』と限定していれば、後から均等を主張できない(包袋禁反言)。回避設計の前に、まず相手の包袋を取り寄せる。
Q3ソフトウェアやビジネスモデルの特許って、範囲がよく分からないんですが?
ソフトウェア特許はクレームが抽象的で、技術的範囲の確定が難しいのが実情です。だからこそ70条2項の出番で、明細書の実施例や図面を使ってクレーム用語の意味を限定的に解釈できる余地があります(70条2項)。実務のポイント:抽象的なクレームほど、明細書の具体例を盾に『この用語はこの実施例の範囲に限られる』と限定解釈へ追い込めます。広く見えるクレームは、実は明細書の薄さが弱点になっていることが多い。
間違えやすい点 AI による整理
- 「特許公報に書いてあることは全部その会社の権利範囲だ」と思い込んでいる人が多いが、逆だ。明細書に詳しく書かれた技術でも、クレームに記載がなければ原則として権利は及ばない。明細書は『説明書』であって『権利書』ではない。権利の境界線を引くのはクレームの文言だけだ
- クレームの文言が大事なのは知っていても、その『一語の重み』を甘く見ている。『略円形』か『円形』か、『接続する』か『直接接続する』か、たった一語の差が数億円の賠償の有無を分ける。技術者が出願時に何気なく削った一語が、後で権利範囲を致命的に狭めることがある
- 「自分の製品は相手の特許と仕組みが違うから安全だ」という問いの立て方そのものが危うい。法律が見るのは『仕組みが違うか』ではなく『クレームの構成要件をすべて充たすか』だ。あなたが『全く別物』と思っていても、クレームの抽象的な文言にすっぽり収まっていれば侵害になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 70条:技術的範囲(権利の外縁)を確定する物差し | 68条:特許権の効力(業としての独占的実施権) 36条:クレーム・明細書の記載要件(出願側のルール) |
| 判断の基準 | 特許請求の範囲の記載、不明確なら明細書・図面を参酌 | 技術的範囲に属する実施行為かどうか 発明が明確・サポート・実施可能に記載されているか |
| 実務での使いどころ | 侵害訴訟・警告対応でクレーム解釈を争う中核 | 差止・損害賠償の前提となる権利の存在確認 出願時のクレーム作成、記載不備による無効・拒絶 |
他国ではどう定めているか 4 か国
発明専利権の範囲は申請専利範囲を基準とし、解釈にあたり説明書・図面を審酌できる点で日本70条と構造が近い
特許発明の保護範囲は請求範囲の記載事項によって定まると規定。日本と同じくクレーム基準主義を採り、均等論も判例で認められている
保護範囲は特許請求の範囲の内容によって定まり、明細書・図面を解釈に用いる。EPÜ Art. 69議定書が文言主義と中心限定主義の中庸を示す
クレーム解釈(claim construction)は法律問題として裁判所が行い、内在的証拠(明細書・出願経過)を優先。均等論とプロセキューション・ヒストリー・エストッペルが並存
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたのスタートアップが大手から特許侵害で訴えられたら、最初にやるべきは謝罪でも開発中止でもない。相手のクレーム文言を一語ずつ自社製品と突き合わせる「クレームチャート」作りだ。一つでも欠けている構成要件があれば、原則として侵害は成立しない(オールエレメントルール)。慌てて生産を止める前に、まずこの照合をやる
- 量産ラインを動かす前、あなたは競合特許のクレームを読む。明細書に「望ましい実施例」として書かれた機能を自社製品が使っていても、それがクレーム本文に入っていなければ侵害ではない。多くの技術者がここを誤解して、必要のない設計変更でコストを膨らませる
- クレームには『金属製』とある。あなたの製品は樹脂製。文言上は範囲から外れる。だが相手は均等論で食い下がってくる
- 警告書には『14日以内に回答せよ』とある。この14日でクレーム解釈の見立てを固められるかが、和解金が一桁変わる分水嶺だ。相手の出願経過(包袋)を取り寄せ、審査段階で出願人が何を諦めたかを掴む時間が要る
- あなたがアプリをリリースした途端、ある会社から『この処理フローはうちの特許だ』と言われた。ソフトウェア特許のクレームは抽象的で、技術的範囲の確定が難しい。明細書の実施例を盾に、相手のクレームを限定解釈へ追い込めるかが反論の鍵になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 相手製品を入手し、自社特許のクレームを構成要件ごとに分解、すべて充足するか『クレームチャート』で照合2. 文言上一部が欠ける場合は均等論の5要件(本質的部分の同一性など)を検討3. 充足を確認したら警告書を送付、差止請求(特許法100条)と損害賠償(同102条)を提示4. 相手が無効の抗弁(同104条の3)を出す可能性に備え、自社特許の有効性も事前に点検。提訴は技術的範囲の見立てが固まってから動く
訴えられた側:1. 相手クレームを構成要件に分解し、自社製品で欠けている要件を探す(一つ欠ければ原則として非侵害) 2. 出願経過(包袋)を取り寄せ、出願人が審査で限定した範囲を確認(包袋禁反言で反撃材料に) 3. 並行して特許自体の無効理由(新規性・進歩性の欠如等)を調査し、104条の3の抗弁を準備4. 設計変更で回避する場合も均等論を考慮し、本質的部分を変えること。回答期限内に弁理士・弁護士へ相談
時効(請求できる期限):技術的範囲の判断自体に期限はないが、差止請求は特許権の存続中(出願から原則20年)に限られる。侵害による損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年で時効消滅する(民法724条)。警告書記載の回答期限(通常2週間程度)は法定のものではない(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説(周辺限定主義・文言基準説):技術的範囲は特許請求の範囲の記載を基準に確定するのが原則であり(文言主義)、明細書・図面はクレーム用語の意義が不明確な場合の解釈資料にとどまる。過度の文言拘束による潜脱を防ぐため、判例上の均等論が補完的に機能すると理解されている
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行特許法(昭和34年法律第121号)の制定により、特許発明の技術的範囲を特許請求の範囲の記載に基づいて定める旨を規定
- 2.平成2年(1990年) 改正:要約書制度の導入に伴い、技術的範囲の解釈にあたって要約書の記載を考慮してはならない旨(3項)を整備し、要約書を解釈材料から排除
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