商標法 第32条の2
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- 他人の地域団体商標の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
- 2.当該商標権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 商標法第32条の2は、日本の商標法に含まれる条文です。
- 商標法第32条の2の条文原文は「他人の地域団体商標の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務につ…」で始まります。
- 商標法第32条の2は第一節 商標権に置かれています。
- 商標法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 商標法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 商標法第32条の2の前の条は商標法第32条です。
- 商標法第32条の2の次の条は商標法第33条です。
- 商標法第32条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第32条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127 - 本サイト収録
商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第32条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000127/32_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点商標法32条の2は、地域団体商標の出願前から不正競争の目的なく使用してきた者に、周知性なしで継続使用の権利を認める規定。商標権者は混同防止表示を請求できるにとどまる。
Q · 地元の組合が地域名の商標を登録したら、前から同じ名前で売ってきた小さな店はもう使えなくなるの?
出願日より前から使っていれば、有名でなくても使い続けられる
商標法32条の2により、地域団体商標の登録出願前から日本国内で不正競争の目的なく同一・類似の商品役務にその商標を使ってきた者は、登録後も継続してその商標を使う権利を有します。通常の先使用権(32条)が要求する「周知性(広く知られていること)」は不要で、地元でこつこつ売ってきただけでも保護されます。代わりに、商標権者(組合)は使用者に対し、組合員の商品と混同しないための適当な表示を付すよう請求できます(2項)。排除ではなく共存のルールです。
解説
あなたが祖父の代から「○○味噌」の看板で商売してきたとする。ある日、地元の協同組合がその名前を「地域団体商標」として登録した、という通知が届く。やめろと言われる筋合いはあるのか。商標法32条の2は、その問いに明確な防壁を用意している。組合の出願より前から、不正競争の目的なく同じ商品にその名前を使っていたなら、あなたには使い続ける権利がある。ここが肝心だ。普通の先使用権(32条)は「あなたの商品名が世間に広く知られていること(周知性)」を要求するが、地域団体商標の先使用権にはその条件がない。全国区の有名店でなくても、こつこつ地元で売ってきただけで守られる。その代わり、組合はあなたに「うちの組合員の商品と混同しないよう表示を付けてくれ」と求めることができる。排除ではなく共存のルールが、この一条に書かれている。
法的な位置づけ
商標法32条の2は地域団体商標の先使用権を定める規定であり、地域団体商標の登録出願前から国内で不正競争の目的なく当該商標を使用してきた者に、継続使用の権利を認める。通常の先使用権(32条)と異なり周知性を要件とせず、商標権者には混同防止表示の請求権のみが与えられる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.J-PlatPat で相手の地域団体商標の出願日を特定する 警告状を受け取ったら、まず特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で相手の地域団体商標を検索し、経過情報から『出願日』を確認する。この日付が先使用権の基準線になる
- 2.出願日より前からの使用を示す証拠を集める 出願日より前を示せる古い商品包装、ラベル、チラシ、新聞・雑誌広告、納品書、領収書、ネット販売の注文履歴やページ公開記録など、日付が特定できる資料を時系列に整理する
- 3.不正競争の目的がなかったことを説明できる材料を整える 先代からの継続使用や自然発生的な使用など、商標を不正競争の目的で使っていなかった経緯を示す資料を準備する。屋号の由来や創業からの沿革をまとめる
- 4.先使用権を主張する回答書を書面で送付する 使用を直ちに中止せず、商標法32条の2第1項に基づく先使用権を主張する旨を書面で回答する。集めた証拠の存在を示し、相手の使用中止請求が成り立たないことを伝える
- 5.混同防止表示の請求には共存ラインで応じる 組合が2項に基づき混同防止表示を求めてきたら、その範囲が適当であれば応じつつ使用は継続する、という共存ラインを提示する。過大な請求はその適当性を争う
よくある質問 AI による整理
Q1地域団体商標とは何ですか?
「地名+商品名」を組合などが団体で登録できる商標です(商標法7条の2)。全国的な知名度がなくても一定地域で認識されていれば登録でき、地域ブランドの保護に使われます。
Q2地域団体商標は誰が登録できますか?
事業協同組合・農業協同組合・商工会・NPO 法人など、一定の団体に限られます(商標法7条の2)。個人事業者や一般の株式会社は単独では登録できません。
Q3先使用権はいつ消滅しますか?
明確な時効はありませんが、使用を中断すると「継続して」の要件を満たさなくなり権利を失うおそれがあります。使い続けることが事実上の維持条件です。
Q4業務を承継したら先使用権も引き継げますか?
引き継げます。32条の2第1項後段は「当該業務を承継した者についても、同様とする」と定め、事業譲渡・相続による承継者にも先使用権を認めています。
Q5ネット販売でも先使用権は認められますか?
認められます。重要なのは販売形態ではなく使用開始日です。出願日より前からの注文履歴やページ公開記録で使用開始を示せれば対抗できます。
Q6混同防止表示とは具体的にどんな表示ですか?
「当店は○○組合の組合員ではありません」「○○組合の地域団体商標とは無関係です」といった、需要者の誤認を避ける注記です。使用そのものは継続できます。
Q7J-PlatPat で出願日はどう調べますか?
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で商標を検索し、該当する地域団体商標の経過情報から「出願日」を確認できます。誰でも無料で利用できます。
Q8内容証明で使用中止を求められたら従う義務はありますか?
出願日より前から正当に使っていたなら、直ちに従う義務はありません。先使用権(32条の2第1項)を書面で主張し、証拠を整えて対応できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1普通の先使用権と何が違うんですか?
最大の違いは「周知性」の要否です。通常の先使用権(商標法32条)は、あなたの商品名が需要者の間で広く知られていることを要求します。一方、地域団体商標の先使用権(32条の2)はその周知性を要件としません。出願日より前から不正競争の目的なく使っていれば足ります。実務のポイント:地域団体商標は、そもそも全国的な周知性がなくても一定の地域で認識されていれば登録できる制度です。登録の入口が緩い分、既に使っている人の保護も周知性なしで認める、という設計のバランスになっている。だから「うちは有名じゃないから無理」と諦める必要は、この条文に限ってはない
Q2先使用権があれば、扱う商品を増やしても使えますか?
できません。32条の2が保障するのは「継続して、その商品又は役務について」使う権利であり、出願前に使っていた商品の範囲に限られます。新しい商品ジャンルへ広げると、その部分は先使用権の外で、侵害になり得ます。実務のポイント:先使用権は現状維持の盾であって、事業拡張の剣ではありません。だから記録を残すときは「いつから、どの商品に」使っていたかをセットで証拠化しておくのが鉄則。商品の範囲が曖昧だと、後で拡張部分と元々の部分の線引きで揉める
Q3証拠は具体的に何を残しておけばいいですか?
日付が特定できるものすべてです。出願日より前を示せる古い商品包装、ラベル、チラシ、新聞・雑誌広告、納品書、領収書、ネット販売なら注文履歴のスクリーンショットなどが有効です。実務のポイント:勝敗を分けるのは「出願日との前後関係を一目で示せるか」です。組合の出願日はJ-PlatPatで誰でも確認できるので、まずそれを押さえ、自分の最古の使用証拠と並べて時系列を作る。口頭の記憶や「昔からやっている」という主張だけでは、裁判では弱い
Q4組合から「混同しないよう表示を付けろ」と言われたら、断れますか?
原則として、混同を防ぐのに適当な範囲の請求であれば応じる必要があります(32条の2第2項)。これは商標権者に認められた請求権だからです。ただし請求内容が過大(実質的に使用を不可能にするような表示の強制)であれば、その適当性を争う余地はあります。実務のポイント:2項は「排除」ではなく「共存」の条文です。組合側も全面排除はできないと分かっているからこそ表示請求に出てくる。だから交渉では『混同防止表示は受け入れる、その代わり使用は認めよ』という取引材料に使える。対立ではなく落とし所を作る道具だと捉える
間違えやすい点 AI による整理
- 「商標登録されたら、それより前から使っていても即アウト」と思われているが、事実は逆。出願日より前から善意で使っていた者には、登録後も使い続ける先使用権が法律で保障されている。登録は万能の排除権ではない
- 先使用権を主張するには「自分の店が有名でないとダメ」と多くの人が思い込んでいる。これは普通の先使用権(32条)の話であって、地域団体商標の先使用権(32条の2)では周知性の要件がそもそも外されている。あなたが知っておくべきは、地域団体商標は登録のハードル自体が低い分、先使用者の保護も周知性なしで認められるという設計の対称性だ
- 「だったら自分も同じ名前を商標登録し返せばいい」という問いの立て方が、そもそも誤っている。先使用権は登録ではなく、あくまで「今までと同じ商品に、これまでどおり使い続ける」防御的な権利。商品の種類を増やしたり全国展開したりする攻めの武器にはならない。守れるのは現状であって、拡張ではない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 周知性の要否 | 32条の2:周知性は不要(地元での使用で足りる) | 32条:需要者間で広く知られていること(周知性)が必要 7条の2:登録自体は一定地域での認識で足りる |
| 条文の役割 | 地域団体商標に対する先使用者の継続使用権 | 通常の商標に対する一般の先使用権 地域団体商標の登録要件(組合等が主体) |
| 商標権者ができること | 混同防止表示の請求のみ(排除はできない) | 混同防止表示の請求のみ(排除はできない) 登録に基づく専用権・禁止権の行使 |
| 使用の範囲 | 出願前に使っていた商品・役務に限り継続(拡張不可) | 出願前に使っていた商品・役務に限り継続(拡張不可) 指定商品・役務の全範囲に及ぶ |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も登録出願前からの善意使用者に継続使用を認め、商標権者は区別表示の付加を請求できる点で32条の2と構造が酷似する。
韓国も登録出願前からの善意使用者を保護するが、一般の先使用権では一定の認知度を要する場面があり、地理的表示団体表章との関係で扱いが分かれる。
ドイツでは先行する権利(§ 12)と団体商標・地理的出所表示(§ 102 ff.)で保護枠組みが分かれ、地理的表示は EU 規則とも重層的に保護される。
米国は団体商標を登録可能とし、先使用者には common law 上の地理的限定された prior use の抗弁が認められるが、周知性不要という日本のような明文の特則はない。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、先代から30年「○○漬」の名で漬物を売ってきたあなたのもとに、地元の農協がその名を地域団体商標に登録したという内容証明が届き、使用中止を求めてきたら。看板を下ろすしかないのか。32条の2を知っていれば、答えは「出願日より前から使っていたなら、有名でなくても使い続けられる」だ
- あなたが地域団体商標を登録した組合の理事だとする。登録前から同じ名前で売っている非組合員の店が数軒ある。全員を排除はできない。だが2項を使えば「組合員の商品と混同しないよう表示を付けろ」と請求できる。ブランドの希釈を防ぎつつ共存させる手だ
- 同じ「○○牛」を名乗る二つの店。片方は組合員、片方は先使用権者。看板の文字は同じでも、法的な立ち位置はまったく違う
- 内容証明には「2週間以内に使用を中止せよ」とある。だがあなたが出願日より前から使っていた証拠、古い包装、領収書、当時の広告を揃えれば、その請求は崩せる。問題は、その証拠を14日で倉庫から掘り出せるか
- あなたがネットショップで地元の特産品を産地名付きで売っていたら、組合から出品削除を求められた。出願日より前からの注文履歴が残っていれば、先使用権で対抗できる。販売開始がいつだったか、その一点が分水嶺になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 警告状を受け取ったら、J-PlatPatで相手の地域団体商標の「出願日」を特定する、これが基準線2. その日より前から使っていた証拠を集める:古い包装、ラベル、チラシ、新聞広告、納品書、領収書、注文履歴、SNS投稿など日付の入ったもの3. 不正競争の目的がなかったこと(先代からの継続、自然発生的な使用)を説明できる材料を整理4. これらを添えて、使用を直ちに中止せず、先使用権(32条の2第1項)を主張する旨を書面で回答5. 組合が混同防止表示を求めてきたら(2項)、その範囲なら応じつつ使用は継続する、という共存ラインを提示する
訴えられた側:1. あなたが地域団体商標を登録した組合の側なら、まず相手の使用が本当に出願日より前からかを調査、後発なら通常の侵害として排除できる2. 出願前からの使用が認められる相手には、全面排除ではなく2項の混同防止表示請求で対応、組合員との識別を確保3. 相手が出願後に商品の種類を拡張していれば、その拡張部分は先使用権の射程外として争える4. 損害賠償を求めるなら、相手に先使用権がない部分に限定して構成、過大請求は和解を遠ざける
時効(請求できる期限):先使用権の主張それ自体に特定の時効はない。ただし使用を中断すると「継続して」の要件を満たさなくなり権利を失うおそれがあるため、使い続けることが事実上の維持条件になる。商標権侵害を理由とする損害賠償請求権には、一般の消滅時効(民法724条、損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年)が適用される。警告状の「2週間以内」などの期限は法律上の時効ではなく交渉上の圧力なので、それに追われて証拠を揃える前に屈する必要はない(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:32条の2の先使用権は、地域団体商標が一定地域での認識で登録できる(周知性のハードルが低い)ことと対称的に、既存使用者の保護も周知性なしで認める制度設計と理解される。保護は出願前に使用していた商品役務の範囲に限られ、商標権者の対抗手段は2項の混同防止表示請求に限定される。
改正沿革 AI による整理
- 平成17年(2005年)公布、平成18年(2006年)4月1日施行 地域団体商標制度の創設(7条の2)に伴い新設された条文。通常の先使用権(32条)と異なり、周知性を要件としない先使用権を地域団体商標について特別に設け、登録前からの地場事業者を保護した
改正の年表
- 1.平成17年(2005年) 新設:地域団体商標制度の創設(7条の2)に伴い新設。通常の先使用権(32条)と異なり周知性を要件としない先使用権を地域団体商標について特別に設け、登録前からの地場事業者を保護した(平成18年〔2006年〕4月1日施行)。
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