要点労働保険徴収法 32 条は、事業主が雇用保険料の被保険者負担分を賃金から控除できると定める。控除時は計算書を作成し控除額を本人に通知する義務があり、労災保険料は控除できない。
Q · 給与から労働保険料を引かれているけど、会社は何を根拠に引いているの?
徴収法 32 条。引けるのは雇用保険料の労働者負担分だけ
労働保険徴収法 32 条 1 項が根拠です。事業主は同法 31 条により被保険者が負担すべき額に相当する額を賃金から控除できます。控除できるのは雇用保険料の労働者負担分のみで、労災保険料は全額事業主負担のため 1 円も控除できません。さらに 1 項後段は、事業主に労働保険料控除に関する計算書を作成し、控除額を本人に知らせる義務を課しています。控除の権限と内訳開示の義務がセットになった条文です。
給与明細の控除欄にある「雇用保険料」の一行。事業主があなたの同意を毎月取らずにその金額を引けるのは、この条文が根拠になっているからだ。労働基準法24条は賃金の全額払いを命じており、本来、勝手な天引きは違法である。その例外を作っているのが徴収法32条1項だ。ただし例外の射程は驚くほど狭い。引けるのは31条が定める被保険者の負担額、つまり雇用保険料の労働者負担分だけである。労災保険料は全額事業主負担であり、1円たりとも賃金から引くことはできない。さらに1項後段は、事業主に「労働保険料控除に関する計算書」を作成し、その控除額を本人に知らせる義務を課している。金額を引く権利と、内訳を開示する義務がセットで書かれているのがこの条文の構造だ。あなたが明細の一行を問い詰めたとき、事業主には答える法的義務がある。
労働保険徴収法 32 条は、賃金からの労働保険料控除を定める規定であり、事業主が同法 31 条により被保険者が負担すべき額に相当する額を賃金から控除する権限と、労働保険料控除に関する計算書を作成して控除額を本人に通知する義務を規定する。労働基準法 24 条の賃金全額払いの原則に対する、法令上の例外にあたる。
労働保険は雇用保険と労災保険の総称で徴収法が規律します。健康保険・厚生年金などの社会保険とは根拠法も負担割合も別で、労災保険は全額事業主負担、雇用保険も折半ではありません。
被保険者資格を取得した日以後に支払われる賃金から控除されます。入社月の給与から引かれるのが通常で、資格取得前の賃金から控除する権限は徴収法 32 条には含まれません。
引かれます。雇用保険料は賃金総額を基礎に算定され、賞与も賃金に含まれるためです。健康保険・厚生年金の標準報酬制と異なり、支払われた賞与額にそのまま料率を掛けます。
その月に賃金が支払われる限り、資格喪失日の前日までの被保険者期間に対応する賃金から控除されます。ただし過去の未控除分をまとめて引く運用は、労働基準法 24 条違反のリスクがあります。
雇用保険の被保険者に該当すれば引かれます。該当しない働き方であれば控除の前提となる 31 条の負担額自体が発生せず、天引きは根拠を欠くことになります。
控除だけ行われ資格取得届が出ていない疑いがあります。ハローワークで被保険者資格の確認請求ができ、給与明細は控除の事実を示す有力な証拠になります。
返還を求められます。31 条の負担額を超える控除は 32 条の権限外で、超過分は賃金の未払として請求できます。賃金請求権の消滅時効は当分の間 3 年です。
不要です。労働基準法 24 条但書の「法令に別段の定めがある場合」に徴収法 32 条が該当するためです。逆に 32 条の範囲を超える控除には、別途労使協定などの根拠が必要になります。
確かめられる。賃金総額に労働者負担分の料率を掛けるだけである(徴収法31条1項)。労働者負担率は近年1000分の5.5から6程度で推移しているが、事業の種類と年度で改定されるため最新の料率をご確認ください。業界裏話ヒント:通勤手当や賞与も賃金総額に含まれる。基本給だけで計算して合わないと騒ぐと足元を見られるので、明細の支給欄の合計で計算する
普通ではない。徴収法31条は雇用保険分についてしか被保険者の負担を定めておらず、労災保険料は全額事業主負担である。32条1項の控除権限も31条の負担額に限られるため、労災分の天引きは労働基準法24条違反にもなる。業界裏話ヒント:明細に「労働保険料」とまとめて書かれている場合が最も危ない。名目が曖昧なほど検証されにくいことを、経理側も分かっている
32条1項後段は計算書の作成と控除額の通知を義務付けているが、実務では給与明細に雇用保険料の額を明示することで通知を満たす扱いが定着している。逆に言えば、明細に独立した項目として金額が出ていなければ、通知義務の履行として不十分と主張できる。業界裏話ヒント:ここを突かれると弁明が難しいと分かっている事業主は多い。金額の当否を争う前に、まず内訳を出させるところから入る方が交渉は動く
おかしくない。建設の請負事業では徴収法8条により元請負人が事業主とみなされるが、32条2項が元請から下請への控除の委託を認めている。3項でその場合にも1項の通知義務が準用される。業界裏話ヒント:委託関係が明確でない現場ほど、誰が保険料を預かり誰が納付したのか追えなくなる。控除されているのに雇用保険の被保険者資格が届け出られていない事例は、この曖昧さから生まれる
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 徴収法 32 条:賃金から控除する権限と通知義務 | — |
| 対象となる保険料 | 31 条が定める雇用保険料の労働者負担分のみ | — |
| 義務の名宛人 | 事業主(元請とみなされる者を含む、8 条) | — |
| 違反したときの争い方 | 労働基準法 24 条違反として監督署へ申告、超過分は賃金請求 | — |
ログインすると、他の読者と一緒にこの条文へメモを残せます。
ログインして共同ノートを始める以下は各文が単独で意味の通る客観的事実です。引用は e-Gov法令検索を基準としてください。