民事執行法 第110条(弁済による強制管理の手続の取消し)
クイックジャンプ
各債権者が配当等によりその債権及び執行費用の全部の弁済を受けたときは、執行裁判所は、強制管理の手続を取り消さなければならない。
この条文の基本情報
弁済による強制管理の手続の取消しとは何ですか?
定義弁済による強制管理の手続の取消しとは、民事執行法第110条に定められた規定で、「各債権者が配当等によりその債権及び執行費用の全部の弁済を受けたときは、執行裁判所は、強制管理の手続を取り消さなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第110条(弁済による強制管理の手続の取消し)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第110条の条文原文は「各債権者が配当等によりその債権及び執行費用の全部の弁済を受けたときは、執行裁判所は、強制管理の手続を取り消さなければならない。」で始まります。
- 民事執行法第110条は第一款 不動産に対する強制執行に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第110条の前の条は民事執行法第109条です。
- 民事執行法第110条の次の条は民事執行法第111条です。
- 民事執行法第110条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第110条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第110条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/110
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法110条は、各債権者が配当等で債権と執行費用の全部の弁済を受けたとき、執行裁判所が強制管理を取り消さなければならないと定める。所有権は債務者に残る。
Q · 強制管理をかけられた建物は、完済したらちゃんと戻ってくるの?
家賃で全債権者に完済すれば裁判所が必ず取り消し、建物は戻る
戻ります。民事執行法110条は、各債権者が配当等によって債権および執行費用の全部の弁済を受けたとき、執行裁判所が強制管理の手続を取り消さなければならないと定めています。「できる」ではなく「しなければならない」義務規定であり、要件が満たされれば職権で取り消されます。強制管理は競売と違い建物を売却しないため、所有権は終始債務者に残り、家賃という自分の収益で完済すればそのまま手元に戻ります。ただし一人でも未完済の債権者が残れば手続は続きます。
解説
賃貸ビルのオーナーが融資を返せなくなった。債権者は競売ではなく強制管理を選び、裁判所が選任した管理人がテナントから家賃を集め始める。オーナーは「もう建物を失った」と絶望する。だがここで見落とされているのが民事執行法110条だ。強制管理は建物を売らない執行方法であり、集めた家賃が各債権者の債権と執行費用の全部を弁済し終えた瞬間、執行裁判所は手続を取り消さなければならない。「できる」ではなく「しなければならない」である。所有権は一度もあなたから離れず、完済とともに管理も解け、建物はまるごとあなたの手に戻る。競売なら他人のものになって二度と戻らない財産が、強制管理なら家賃という自分の収益で買い戻される。この出口を知っているかどうかで、執行を受けた後の景色が丸ごと変わる。
法的な位置づけ
民事執行法110条は強制管理の取消を定める規定であり、各債権者が配当等によって債権および執行費用の全部の弁済を受けた時点で、執行裁判所が職権により手続を取り消す義務を負う旨を規定する。建物を売却せず収益から満足を得る執行方法において、目的達成後の財産返還を保障する終結規範として機能する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.競売でなく強制管理であることを確認 強制管理の開始決定を受けたら、まず競売ではなく管理であること、つまり建物は売却されず所有権が自分に残る前提であることを確認する。この一点で完済後の景色が変わる
- 2.管理人と連絡し収益・配当の進捗を把握 裁判所が選任した管理人に連絡を取り、家賃収入と配当の進捗を把握する。全債権者の債権額と執行費用の総額を確認し、記録として残す
- 3.家賃であと何か月で完済できるか試算 全債権者の債権総額+執行費用の合計を、管理人が配当できる月次純収益で割り、完済見込みの月数を算出する。完済窓が閉じる前が交渉可能な期間
- 4.完済が近づいたら配当計算の完了を裁判所に確認させる 完済が近づいたら、管理人と裁判所書記官に配当計算の完了を促し、完済を裏付ける資料を提出する。黙って待つより締めが早まり、110条の取消しを引き出せる
よくある質問 AI による整理
Q1強制管理はどうなったら取り消されますか?
各債権者が配当等により債権と執行費用の全部の弁済を受けたときです(民事執行法110条)。その時点で執行裁判所は職権で必ず手続を取り消します。
Q2強制管理はいつ終わりますか?
終期は決まっておらず、家賃などの収益で全債権者への完済と配当が完了した瞬間に義務的に終了します。完済が早ければ早いほど終結も早まります。
Q3強制管理中の家賃は誰が集めますか?
裁判所が選任した管理人が集めます(民事執行法94条)。賃貸借契約はそのまま続き、テナントの支払先が所有者から管理人に変わるだけです。
Q4強制管理の執行費用は誰が負担しますか?
集めた収益から執行費用が優先的に充当されます。110条の取消しには債権本体だけでなく執行費用の全部の弁済も必要です。
Q5競売と強制管理は併用できますか?
できます。民事執行法43条は不動産執行の方法として競売と強制管理の選択・併用を認めています。安定した賃料があれば管理が有効な場合があります。
Q6強制管理の途中で債権者が増えたらどうなりますか?
配当要求で新たな債権者が加わると完済のゴールが遠のきます。配当要求の終期(民事執行法107条等)までに加われるため、その把握が重要です。
Q7強制管理の取消しに申立ては必要ですか?
不要です。110条は執行裁判所に取消しを義務づける規定で、要件が満たされれば職権で取り消されます。役割は完済と配当完了の確認を促すことです。
Q8強制管理中も建物の所有権は残りますか?
残ります。強制管理は建物を売却しない執行方法なので所有権は終始債務者にあり、完済とともに管理も解けて建物がまるごと戻ります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1強制管理って、競売と何が違うんですか?
競売は建物を売却して代金を債権者に分配し、所有権は買受人に移って二度と戻りません。強制管理は建物を売らず、管理人が家賃などの収益を集めて配当し、各債権者が全部の弁済を受ければ110条で手続が取り消され、所有権はあなたに残ったまま。実務のポイント:どちらの方法にするかは債権者が選べます(43条、併用も可)が、安定した賃料のある物件なら、債務者側から強制管理を望む余地がある。多くの債務者は方法を選べることすら知らず、競売で建物を失う。
Q2完済したのに、まだ管理人が家賃を集めているんですが?
各債権者への全部弁済と配当が確認されれば、執行裁判所は職権で手続を取り消さねばなりません(110条)。あなたの申立ては不要ですが、配当計算の完了確認までタイムラグがあります。実務のポイント:取消しは自動でも瞬時でもない。管理人や裁判所書記官に配当の進捗を確認し、完済を裏付ける資料を出すと、手続の締めが早まる。黙って待つ人ほど返還が遅れる。
Q3債権者が二人いて、一人にだけ全部払ったら手続は止まりますか?
止まりません。110条は「各債権者」が全部の弁済を受けたときと定めており、一人でも未完済の債権者が残れば強制管理は続きます。実務のポイント:途中で新たな債権者が配当要求で加わると、完済のゴールが遠のく。配当要求ができる終期は手続上決まっている(民事執行法107条等)ので、いつ誰が加われるかを把握すると、完済までの見通しが立つ。
間違えやすい点 AI による整理
- 「強制管理をかけられたら、建物はもう戻ってこない」と思い込んでいる人が多いが、実は競売と正反対である。売却されないため所有権は終始あなたに残り、家賃で完済すれば110条で必ず手続が取り消され、建物は自由に戻る。競売が「失う執行」なら、強制管理は「一時的に預ける執行」だ。
- 「取消し=手続の終わり」は分かっていても、その要件の厳しさを見落としている。110条が求めるのは『各債権者』の債権と執行費用の『全部』の弁済である。一人でも、一円でも残っていれば手続は止まらない。途中で配当要求により新たな債権者が加われば、ゴールはさらに遠のく。
- 「建物を返してもらうには、こちらから取消しの申立てをしなければならない」と思っている人が多いが、問いの立て方自体がずれている。110条は執行裁判所に取消しを義務づける規定であり、要件が満たされれば職権で取り消される。あなたの役割は申立てではなく、完済と配当完了を裁判所に確認させ、締めを早めることだ。
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 執行の結果 | 110条:強制管理は建物を売らず、完済で取消し・返還 | 43条:競売なら建物は売却され所有権喪失 93条:強制管理の開始(手続の起点) |
| 所有権の帰趨 | 終始債務者に残り、完済後も自分の手元 | 買受人に移転し二度と戻らない 開始後も所有権は残る(管理のみ) |
| 終了の条件 | 各債権者の債権+執行費用の全部弁済(義務的取消) | 売却代金の配当完了 収益からの配当を継続 |
| 取消しの性質 | 職権による義務的処分(申立て不要) | 手続の性質上、返還はない 管理人選任・収益管理が継続 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も不動産執行の方法として拍賣(競売)と強制管理を並置し、収益からの弁済完了で手続を終える点で日本と近い
韓国も収益執行としての強制管理を持ち、債権者の満足が完了した時点での取消しという構造は日本110条と類似
ドイツの強制管理(Zwangsverwaltung)が日本法の範型。目的達成後の手続廃止(Aufhebung)を § 161が定め、110条の淵源にあたる
米国では管財人(receiver)が賃料収益を収取し債権者に充当する制度が機能的に対応。ただし判例法・州法ベースで統一法典化されていない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたが所有する賃貸マンションが、ローン滞納で強制管理にかけられた。管理人が入り、テナントの家賃は管理人へ流れる。だが競売と違い建物は売られず、家賃が借金と費用を完済した日、裁判所は必ず手続を取り消してあなたに返す。
- もし債権者が三人いて、そのうち二人が完済しても、最後の一人が残っていたら手続は止まるのか。答えはノーである。110条は「各債権者」の全部弁済を要求する。一人でも残れば、家賃はその債権者のために集められ続ける。
- あなたが債権者として強制管理で回収中。家賃が毎月あなたの取り分を積み上げていくが、あなたと他の全債権者が完済した瞬間、裁判所は手続を閉じる。あと数か月で完済見込みなら、追加担保や条件変更の交渉は、その窓が閉じる前にしか通らない。
- 相続で受け継いだ収益ビルに、亡くなった親の借金がぶら下がっていて強制管理が続いていた。相続人のあなたは「こちらから申し立てないと返してもらえない」と思い込んでいたが、完済さえ確認されれば裁判所が職権で取り消す。あなたがすべきは配当の進捗確認だ。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 強制管理の開始決定を受けたら、まず競売でなく管理であること、つまり所有権が残ることを確認する。2. 選任された管理人と連絡を取り、収益と配当の進捗を把握する。3. 全債権者の債権額+執行費用の総額を確認し、家賃であと何か月で完済できるか試算する。4. 完済が近づいたら配当計算の完了を裁判所に確認させ、110条による取消しを促す。5. 収益が費用に満たず完済が見込めない場合は、任意売却など早期決着の選択肢と比較する。
訴えられた側:1. 執行方法として競売か強制管理かを選択する(民事執行法43条、併用も可)。安定した賃料収入がある物件なら管理が有効。2. 他の債権者や後から配当要求で加わる者の存在を確認する。全員が完済した時点で手続は必ず終了する。3. 配当要求の終期を管理し、回収漏れを防ぐ。4. 全債権者の完済後は110条で手続が取り消され、それ以上の収益回収はできない点を回収計画に織り込む。
時効(請求できる期限):110条の取消しに期限はなく、各債権者が配当等により債権および執行費用の全部の弁済を受けた時点で当然に行われる義務的処分である。特定の時効はないが、配当を受けるには手続上の配当要求の終期(民事執行法107条等)までに配当要求をする必要があり、また債務名義上の請求権自体は別途消滅時効の管理を要する(最新の改正状況をご確認ください)。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和54年(1979年) 新設:民事執行法の制定により、旧競売法・旧民事訴訟法の執行規定を統合。不動産執行の方法として競売と並び強制管理を整備し、各債権者の全部弁済による義務的取消しを110条に置いた
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める