民事執行法 第162条(船舶の引渡請求権の差押命令の執行)
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- 船舶の引渡請求権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、第三債務者に対し、船舶の所在地を管轄する地方裁判所の選任する保管人にその船舶を引き渡すべきことを請求することができる。
- 2.前項の規定により保管人が引渡しを受けた船舶の強制執行は、船舶執行の方法により行う。
- 3.第一項に規定する保管人が船舶の引渡しを受けた場合において、その船舶について強制競売の開始決定がされたときは、その保管人は、第百十六条第一項の規定により選任された保管人とみなす。
この条文の基本情報
船舶の引渡請求権の差押命令の執行とは何ですか?
定義船舶の引渡請求権の差押命令の執行とは、民事執行法第162条に定められた規定で、「船舶の引渡請求権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、第三債務者に対し、船舶の所在地を管轄する地方裁判所の選任…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第162条(船舶の引渡請求権の差押命令の執行)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第162条の条文原文は「船舶の引渡請求権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、第三債務者に対し、船舶の所在地を管轄する地方裁判所の選任…」で始まります。
- 民事執行法第162条は第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第162条の前の条は民事執行法第161条の2です。
- 民事執行法第162条の次の条は民事執行法第163条です。
- 民事執行法第162条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第162条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第162条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/162
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法162条は、船舶引渡請求権を差し押さえた債権者が、差押命令送達から一週間経過後、第三債務者に保管人への船舶引渡しを請求できると定める。引渡し後は船舶執行で換価される。
Q · 債務者に現金がなくても、まだ引き渡されていない船を差し押さえて回収できるの?
できる。引渡請求権を差し押さえ保管人経由で競売する
民事執行法162条により、債務者が第三者に対して持つ「船を引き渡してもらう権利(船舶引渡請求権)」を差し押さえれば、船がまだ物理的に債務者の手元になくても回収の網にかけられます。差押命令が債務者に送達された日から一週間を経過すると、第三債務者(造船所・売主)に対して、船舶所在地を管轄する地方裁判所が選任した保管人への船舶引渡しを請求できます。引渡し後の船は船舶執行(強制競売)で換価され、あなたの債権に充てられます。
解説
取引先が倒産し、あなたへの支払いは絶望的になった。銀行口座は空、めぼしい不動産もない。ここで多くの債権者は回収を諦める。だが、その債務者が造船所に発注済みで、まだ引渡しを受けていない漁船が一隻あったとしたらどうか。162条は、その「船を受け取る権利」(引渡請求権)を差し押さえた債権者に、隠れた回収経路を開く。差押命令が債務者に送達された日から一週間が過ぎれば、あなたは第三債務者(造船所や売主、つまり船を引き渡す義務を負う側)に対し、船を裁判所が選任した保管人へ引き渡せと請求できる。保管人が船を受け取れば、その船は船舶執行(強制競売)の対象となり、換価されてあなたの債権に充てられる。船がまだ物理的に債務者の手元になくても、権利という形で捕捉し、競売台に載せられる。現金と不動産しか見ない債権者が丸ごと見落とす資産が、ここに眠っている。
法的な位置づけ
船舶引渡請求権の差押えとは、債務者が第三者に対して有する船舶の引渡しを求める権利を執行対象とする債権執行の一態様である。差押命令送達から一週間の経過後、第三債務者に対し裁判所選任の保管人への船舶引渡しを請求でき、引渡しを受けた船舶は船舶執行の方法により換価される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.債務者の船舶引渡請求権を特定する 債務者が造船所・売主など第三者に対して持つ船舶引渡請求権の存否と範囲を精査する。造船契約書、売買契約書、船舶登記の状況を突き合わせ、代金完済の有無を確認する
- 2.債権差押命令を申し立てる 民事執行法143条以下に基づき債権差押命令を申し立て、第三債務者として船舶の引渡義務者(造船所・売主)を指定する。同時に差押えの処分禁止効を第三債務者へ明確に通知する
- 3.一週間の経過を待ちつつ保管人選任を準備 差押命令が債務者に送達された日から一週間の経過を待つ。並行して船舶所在地を管轄する地方裁判所での保管人選任を準備し、船の所在地を常時把握しておく
- 4.第三債務者へ保管人への引渡しを請求 一週間経過後、第三債務者に対し、裁判所選任の保管人への船舶引渡しを請求する。第三債務者が差押えを無視して債務者へ引き渡しても、なお保管人への引渡しを請求でき、二重弁済リスクは第三債務者が負う
- 5.船舶執行で換価する 保管人が船舶の引渡しを受けたら、船舶執行(強制競売)の方法で換価する。船が移動して回収不能にならないよう、出港阻止の付随処分も並行して検討する
よくある質問 AI による整理
Q1船舶引渡請求権とは何ですか?
債務者が造船所や売主など第三者に対して持つ「船を引き渡してもらう権利」です。船そのものではなく、この権利を差し押さえて回収に使います(民事執行法162条)。
Q2引渡請求権の差押えはどうやって申し立てますか?
債権差押命令の申立て(民事執行法143条以下)を行い、第三債務者として引渡義務者を指定します。船そのものへの直接執行ではなく債権執行の方式です。
Q3民事執行法162条の一週間は何のための期間ですか?
差押命令が債務者に送達された日から起算される猶予期間で、債務者に弁済や是正の最後の機会を与えるものです。経過後に保管人への引渡請求が可能になります。
Q4船舶の保管人は誰が選任しますか?
船舶の所在地を管轄する地方裁判所が選任します。保管人が引渡しを受けると、船舶執行では116条1項の保管人とみなされます。
Q5船舶執行と不動産の強制競売は何が違いますか?
船舶執行は移動する高額資産を対象とするため、出港阻止など逸失防止の手当てが重要になります。換価自体は競売による点で共通します。
Q6差し押さえた船が海外へ出港したらどうなりますか?
船は自走して国外へ抜けやすいため、出港後は回収が著しく困難になります。差押えと同時に管轄・保管人選任・出港阻止を段取りしておくのが実務の勘所です。
Q7動産の引渡請求権も同じように差し押さえられますか?
はい。動産の引渡請求権は民事執行法163条が同じ設計図で規律します。倉庫の機械やリース明け車両など、引渡しを受ける権利全般が射程です。
Q8船舶引渡請求権の差押えの管轄裁判所はどこですか?
保管人への引渡請求は、船舶の所在地を管轄する地方裁判所が選任した保管人に対して行います。所在地の把握が手続の起点になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1船を差し押さえるって、いきなり港で船に乗り込んで押さえるんですか?
いいえ。ここで押さえるのは船そのものではなく、債務者が持つ「船を引き渡してもらう権利」で、方式は債権差押え。第三債務者に差押命令を送達し、送達から一週間経過後に保管人への引渡しを請求し(162条1項)、その後に船舶執行(競売)へ進みます。実務のポイント:船は移動する資産なので、所在地の地裁管轄と保管人選任のタイミングを一手でも外すと、船が出港して回収不能になる。差押えと同時に出港阻止の手当てまで組むのが実務の勘所です
Q2第三債務者が差押えを無視して債務者に船を渡しちゃったら、もう終わりですか?
終わりではありません。差押えの効力に反する引渡し(弁済)は差押債権者に対抗できない(差押えの処分禁止効、民法481条の趣旨)ので、あなたは第三債務者に対しなお保管人への引渡しを請求でき、二重弁済のリスクは第三債務者が負います。実務のポイント:だからこそ造船所や売主は差押命令が届いたら安易に債務者へ引き渡さない。債権者側は差押えの効力を第三債務者へ明確に通知しておくと、引渡しを事実上止められます
間違えやすい点 AI による整理
- 船そのものを直接押さえないと執行できないと思われがちだが、実際は「船を受け取る権利(引渡請求権)」を差し押さえれば足りる。船がまだ債務者の手元に来ていなくても、権利の段階で回収の網にかけられる
- 引渡請求権さえ差し押さえれば安心、と考える債権者は多い。だが差押えだけでは船は一ミリも動かない。保管人への引渡請求(差押命令送達から一週間の経過が要件)、そして船舶執行という二段階を踏んで初めて換価に到達する。差押えは終点ではなくスタート地点にすぎない
- 「船の差押えなんて特殊すぎて自分には無縁」という問いの立て方そのものがずれている。真に問うべきは『この債務者は、誰かから引渡しを受ける予定の高額な物を持っていないか』であり、船はその代表例にすぎない。同じ構造は動産引渡請求権(163条)にも通じ、あなたの案件に直結しうる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 執行対象 | 民執162条:船舶の引渡請求権 | 民執163条:動産の引渡請求権 民執159条:転付命令(券面額での債権移転) |
| 換価の方法 | 保管人への引渡し後、船舶執行(強制競売) | 執行官への引渡し後、動産執行として売却 券面額で債権が差押債権者へ移転し弁済に充当 |
| 時間の壁 | 差押命令送達から一週間の経過が要件(162条1項) | 差押命令送達から一週間の経過が要件(163条1項) 確定により効力発生(第三債務者への送達時に遡及) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も債務者が第三人に対して持つ動産交付請求権を執行対象とする点で構造が近い。船舶は別に船舶執行の規律が及ぶ
韓国も有体物引渡請求権を独立の執行対象とし、保管人的な管理を経て換価する枠組みを持つ
ドイツは船舶の引渡請求権について専用規定を置き、引渡しを受けた船舶を船舶執行へ接続する。日本の162条と発想が近い
米国は海事法固有の maritime attachment により船舶や船舶に関する権利を差し押さえる。制度の系譜は大陸法と異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先が倒産、あなたへの数千万円の支払いは望み薄。だが登記や契約を洗うと、その会社は造船所に発注した新造漁船の引渡しをまだ受けていない。この引渡請求権を差し押さえられるか。答えはイエス。差押命令が債務者に届いて一週間経てば、船を保管人へ引き渡すよう造船所に請求できる
- あなたが債務者側。運送事業で使う予定の中古貨物船を購入し、引渡しを待っていた。ところが取引先の一社があなたの引渡請求権を差し押さえた。一週間後、その船はあなたの手に渡らず、裁判所選任の保管人のもとへ運ばれ、船舶執行にかけられる。事業計画が根底から崩れる
- 第三債務者である造船会社が、差押えを無視して債務者に船を引き渡してしまった。それでもあなたは、保管人への引渡しをなお請求できる。造船会社が二重弁済のリスクを負う。
- あと一週間。差押命令が債務者に送達された日から一週間の経過を、あなたは指折り数えて待っている。その日を過ぎた瞬間、船の所在地を管轄する地裁の保管人への引渡請求権が発動する。だが船が先に出港して海外へ抜ければ、回収は一気に困難になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 債務者が第三者に対して持つ船舶引渡請求権を特定(造船契約書、売買契約書、船舶登記の状況を精査) 2. 債権差押命令を申し立てる(民事執行法143条以下)、第三債務者として引渡義務者を指定3. 差押命令が債務者に送達された日から一週間の経過を待つ、同時に船舶所在地を管轄する地裁での保管人選任を準備4. 経過後、第三債務者へ保管人への船の引渡しを請求5. 引渡し後は船舶執行(強制競売)で換価。船が移動しないよう出港阻止の付随処分も並行検討
訴えられた側:1. 差押命令を受け取ったら、差し押さえられた引渡請求権の存否と範囲を確認2. 手続に違背があれば執行異議・執行抗告の余地を検討3. 一週間の経過前が勝負、弁済や担保提供による解放、債権者との和解を急ぐ4. 船が事業に不可欠なら、代替措置で船自体の確保ができないか執行に強い弁護士へ即相談。一週間を過ぎると船は保管人へ移り、取り戻しは格段に難しくなる
時効(請求できる期限):保管人への引渡請求ができるのは、差押命令が債務者に送達された日から一週間を経過したとき(本条1項)。この一週間は債務者に弁済・是正の最後の猶予を与える期間。なお執行手続に対する執行抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間(民事執行法10条2項)
学説
通説:162条は船舶引渡請求権を債権執行の対象とし、差押命令送達から一週間の経過を要件に保管人への引渡請求を認める。引渡しを受けた船舶は船舶執行により換価され、当該保管人は116条1項の保管人とみなされる。動産引渡請求権に関する163条と並行する構造とされる。
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