民事執行法 第170条(目的物を第三者が占有する場合の引渡しの強制執行)
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- 第三者が強制執行の目的物を占有している場合においてその物を債務者に引き渡すべき義務を負つているときは、物の引渡しの強制執行は、執行裁判所が、債務者の第三者に対する引渡請求権を差し押さえ、請求権の行使を債権者に許す旨の命令を発する方法により行う。
- 2.第百四十四条、第百四十五条(第四項を除く。)、第百四十七条、第百四十八条、第百五十五条第一項及び第三項並びに第百五十八条の規定は、前項の強制執行について準用する。
この条文の基本情報
目的物を第三者が占有する場合の引渡しの強制執行とは何ですか?
定義目的物を第三者が占有する場合の引渡しの強制執行とは、民事執行法第170条に定められた規定で、「第三者が強制執行の目的物を占有している場合においてその物を債務者に引き渡すべき義務を負つているときは、物の引渡しの強制執行は、執行裁判所が、債務者の第三者に対す…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第170条(目的物を第三者が占有する場合の引渡しの強制執行)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第170条の条文原文は「第三者が強制執行の目的物を占有している場合においてその物を債務者に引き渡すべき義務を負つているときは、物の引渡しの強制執行は、執行裁判所が、債務者の第三者に対す…」で始まります。
- 民事執行法第170条は第二章 強制執行に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第170条の前の条は民事執行法第169条です。
- 民事執行法第170条の次の条は民事執行法第171条です。
- 民事執行法第170条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第170条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第170条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/170
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法170条は、第三者が占有する物の引渡執行を定める。執行裁判所が債務者の引渡請求権を差し押さえ、その行使を債権者に許す方法で行い、手続は債権執行を準用する。
Q · 勝訴判決で『物を返せ』と決まったのに、その物が相手ではなく別の会社の倉庫にあったら取り戻せる?
はい。第三者への引渡請求権を差し押さえて取り戻せます
民事執行法170条により、第三者が目的物を占有し債務者への引渡義務を負う場合、執行裁判所が債務者の第三者に対する引渡請求権を差し押さえ、その行使を債権者に許す命令を発します。債権者は債務者に成り代わり、第三者から直接引渡しを受けられます。動産引渡執行(169条)は債務者本人が占有する物にしか効かないため、第三者占有の場面ではこの権利差押えルートを使います。手続は債権執行(145条・147条・155条)を準用します。
解説
判決で『あの機械をあなたに引き渡せ』と勝った。ところが相手のもとに現物がない。修理業者に預けたまま、あるいは倉庫会社が保管したまま。ここで多くの人が詰まる。執行官に頼んでも、動産の引渡執行(169条)は債務者が自分で握っている物にしか使えないからだ。第三者の倉庫へ執行官が押し入って持ち出すことはできない。170条はこの袋小路の抜け道だ。執行裁判所は、債務者が第三者に対して持っている『返せ』という請求権そのものを差し押さえ、その行使をあなたに許す。つまりあなたは債務者の立場に成り代わって、第三者へ直接『引き渡せ』と言える立場になる。仕組みは金銭債権の差押え(債権執行)をそっくり借りてくる。物を追う執行から、権利を追う執行へ。着眼点が一段上がる条文だ。
法的な位置づけ
民事執行法170条は、第三者占有物の引渡しの強制執行を定める規定である。第三者が目的物を占有し債務者に引き渡す義務を負う場合、執行裁判所が債務者の第三者に対する引渡請求権を差し押さえ、その行使を債権者に許す命令を発する方法により執行を行う。手続は債権執行(145条以下)の規定を準用する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.現物が今どこの誰の占有下にあるか特定する 引渡しを命じる確定判決等の債務名義を確保し、目的物が債務者本人の手元か、第三者(倉庫・修理工場等)の手元かを確認する。占有者が誰かで執行方法が169条か170条かに分岐する
- 2.引渡請求権の差押命令を執行裁判所へ申し立てる 第三者が占有し債務者が返還請求権を持つ場合、執行裁判所へ170条の引渡請求権差押命令を申し立てる。物ではなく債務者の第三者に対する請求権を差押対象として特定する
- 3.第三者への送達を先回りさせる 差押えの効力は第三者への送達で生じる(145条準用)。送達前に第三者が物を債務者へ返還すると対象が消えるため、判決確定と同時に申立て、送達のタイミングを早める
- 4.陳述の催告で物の有無・状態を確認する 147条準用の陳述催告を第三者にかけ、物の有無・保管状態・他の差押えの有無を早期に申告させる。取り立てる価値のある請求権かを費用をかける前に見極める
- 5.直接取立てで第三者から引渡しを受ける 155条準用の取立てとして第三者から直接引渡しを受ける。応じなければ取立訴訟による引渡請求を検討する。現物が滅失していれば損害賠償請求権の差押えという次善策も検討する
よくある質問 AI による整理
Q1民事執行法170条とは何ですか?
第三者が占有する物の引渡しを、債務者の引渡請求権の差押えという方法で実現する規定です。執行裁判所が差押命令を発し、債権者が第三者から直接取り立てます。
Q2引渡請求権の差押えとは?
債務者が第三者に対して持つ『物を返せ』という請求権そのものを差し押さえ、その行使権を債権者に移す手続です。物ではなく権利を執行対象にします。
Q3動産引渡執行と引渡請求権差押えの違いは?
169条の動産引渡執行は債務者本人が占有する物にしか使えません。物が第三者の手にある場合は170条の引渡請求権差押えを用います。占有者が誰かで分岐します。
Q4第三者が占有する物の強制執行はどうする?
執行裁判所に引渡請求権の差押命令を申し立て、第三者に送達された後、147条準用の陳述催告で物の有無を確認し、155条準用で直接取り立てます。
Q5引渡請求権の差押命令はどこに申し立てる?
執行裁判所に申し立てます。債権執行の管轄規定が準用され、原則として債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が執行裁判所となります。
Q6陳述の催告とは何ですか?
第三者(第三債務者)に物の有無・保管状態・他の差押えの有無を申告させる手続です。170条2項が147条を準用し、取り立てる価値の有無を早期に見極められます。
Q7第三債務者が差押えを無視したらどうなる?
差押命令送達後に債務者へ物を返すと二重引渡しの責任を負います。取立てに応じない場合は取立訴訟を提起して引渡しを求めることができます。
Q8引渡執行の費用はいくらかかる?
申立手数料や送達費用のほか、取立てが訴訟に発展すれば弁護士費用が加算されます。取り立てる請求権の中身が空でないかを先に確認するのが費用対効果の要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1うちは他社の荷物を預かる倉庫業なんですが、預け主の債権者から差押命令が来ました。荷物、誰に渡せばいいんですか?
差押命令が届いた以上、原則として元の預け主(債務者)へは渡せません。渡すと差押債権者へもう一度引き渡す二重引渡しの危険があります。170条2項が準用する147条の陳述催告には正確に答え、引渡先は命令の内容と法務局・弁護士への確認で決めてください。実務のポイント:あなた自身の保管料債権や商人間の留置権(商法521条)は、この差押えで消えません。物の引渡しと引き換えに保管料を主張する立場は保てるので、黙って渡す前に自社の債権を必ず洗い出す。
Q2判決で『機械を返せ』と勝ったのに、機械は下請け工場にあって相手は動きません。もう泣き寝入りですか?
泣き寝入りではありません。債務者が下請け工場に対して持つ返還請求権を、170条で執行裁判所に差し押さえてもらい、あなたがその請求権を行使して工場から直接引渡しを受けられます。動産引渡執行(169条)が空振りでも、別ルートが残っています。実務のポイント:鍵は、工場へ差押命令が届く前に相手が機械を引き取ってしまわないこと。差押えの効力は第三者への送達で生じる(145条準用)ため、それまでに返還されると対象が消える。判決確定と同時に動く速さが結果を分ける。
Q3そもそも第三者が物を持っていない、あるいは既に壊れていたらどうなりますか?
差し押さえた引渡請求権に中身がなければ、現物の回収はできません。だからこそ170条2項は147条の陳述催告を準用し、第三者に物の有無・状態を早期に申告させる仕組みを置いています。実務のポイント:現物が滅失していれば、別途、債務者が第三者に対して持つ損害賠償請求権を差し押さえる(債権執行)という次善策を検討できる。『物が無い=終わり』ではなく、金銭に化けた権利を追えないか、次の一手まで詰めておく。
間違えやすい点 AI による整理
- 『物がある場所へ執行官を送れば取り返せる』という前提でいると、この場面では必ず空振りする。動産引渡執行(169条)は債務者本人が占有する物にしか効かない。第三者が握っている時点で、問うべきは『どこへ執行官を送るか』ではなく『債務者が第三者に対して持つ返還請求権をどう差し押さえるか』に変わっている。立てるべき問いそのものが違う
- 『第三者が持っていても、自分の物なら取り返せるはず』と分かっていても、その回収が金銭債権の差押え(債権執行)と同じ手順・同じ期間・同じリスクを背負うことまでは意識されにくい。第三者への陳述催告、送達のタイミング、取立ての段取りまで視野に入れないと、判決を得ても現物は戻ってこない
- 『無関係の第三者を巻き込むのは酷だ』と感じるかもしれないが、第三者は元の預け主(債務者)に対してもともと負っていた引渡義務を、差押命令によって引渡し先だけ債権者へ向け直されるにすぎない。新たな義務が増えるわけではなく、履行の相手方が付け替わるだけだ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 占有者 | 170条:第三者が目的物を占有(債務者は引渡請求権を保有) | 169条:債務者本人が動産を占有 168条:債務者が不動産を占有 |
| 執行の対象 | 物ではなく債務者の第三者に対する引渡請求権 | 現物の動産そのもの 現物の不動産そのもの |
| 執行機関・方法 | 執行裁判所が差押命令を発する(債権執行を準用) | 執行官が動産を取り上げて債権者へ引き渡す 執行官が占有を解いて債権者へ引き渡す |
| 取立て・準用条文 | 145条・147条・155条準用、陳述催告と直接取立て | 執行官による直接的実力行使 執行官による明渡実施 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も金銭債権以外の財産権(物の交付請求権)に対する執行として構成し、執行法院が差押・取立てを命じる点で日本と同系統
韓国も日本法を継受し、第三者占有物は債務者の引渡請求権を押留して執行する構造をとる
ドイツは、第三者が引渡義務を負う場合に債務者の引渡請求権を債権者に移付(Überweisung)する。日本170条の母法的位置にある
米国は現物回収は replevin、第三者が握る場合は債務者の返還請求権を garnishment で差し押さえる。制度の分岐は州法により差がある
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし判決で勝ち取った物が、相手ではなく赤の他人の倉庫にあったら、あなたはどうやって取り戻す? 執行官はその倉庫に踏み込めない。答えは、相手(債務者)がその倉庫会社に対して持つ『返せ』という請求権を差し押さえ、あなたが代わりに行使することだ。第三者の扉を叩き割るのではなく、権利を経由して中の物に手を届かせる。
- あなたが商品を預かる3PL倉庫の担当者だとする。ある日、預け主ではなく、その預け主の債権者から差押命令が届く。以後、元の預け主へ商品を返すと二重引渡しの責任を負いかねない。あなたは引渡先を法的に確認し直す必要に迫られ、無関係だったはずの執行手続の当事者にされる。
- 友人が『機械を返せの判決は取ったのに、物は別の業者のところにある』と相談してきた。動産引渡執行では届かない。170条の引渡請求権差押えという別ルートがある、と教えてやれる。
- 第三者が保管料の未払いを理由に商品の処分をちらつかせている。第三者側の事情で引渡請求権が空になる前に、170条の差押命令を取って権利関係を凍結し、取立ての立場を確保したい。動けるのはおそらく、あと数日だ。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 引渡しを命じる確定判決等の債務名義を確保し、現物が今どこの誰の占有下にあるかを特定する2. 債務者本人が占有するなら169条の動産引渡執行、第三者が占有し債務者が返還請求権を持つなら170条の引渡請求権差押えを執行裁判所へ申し立てる3. 第三者(第三債務者)へ差押命令が送達されたら、147条準用の陳述催告で物の有無・保管状態を確認する4. 155条準用の取立てとして第三者から直接引渡しを受ける。応じなければ訴訟による取立ても検討する
訴えられた側:(あなたが物を保管する第三者、つまり第三債務者の立場なら)1. 差押命令が届いた後は、その物を元の預け主(債務者)へ返してはならない。返すと二重引渡しの責任を負う2. 147条準用の陳述催告には正確に回答し、物の有無・状態・他の差押えの有無を述べる3. 誰に引き渡すべきか迷う場合は、法務局や弁護士に相談し二重引渡しのリスクを避ける4. 自分が保管料債権や留置権を持つなら、それは差押えとは別に主張できるので放棄しない
時効(請求できる期限):執行手続そのものに固有の申立期限はない。ただし引渡請求権の基礎となる債務名義上の権利は、確定判決で確定していれば消滅時効10年(民法169条)。実質的な時間リスクは、差押えの効力が第三者への送達で生じるため、送達前に第三者が債務者へ物を返還すると対象が消える点にある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:170条は第三者から現物を直接取り上げるのではなく、債務者の第三者に対する引渡請求権を差し押さえ債権執行を準用する構成をとる。第三者は新たな義務を負わず履行の相手方が付け替わるだけであり、二重引渡しの危険を陳述催告等の手続保障で回避する点に均衡がある。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和54年(1979年) 新設:民事執行法制定(昭和54年法律第4号)により旧民事訴訟法の強制執行規定を独立法典化。第三者占有物の引渡しを引渡請求権の差押えとして構成し、債権執行手続を準用する現行170条が置かれた。
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