要点民事保全法 38 条は、被保全権利や保全の必要性の消滅など事情の変更があれば、債務者の申立てにより、発令裁判所または本案裁判所が保全命令を取り消せると定める。事情変更は疎明で足りる。
Q · 借金を返したら、仮差押えは自動で消えるんですか?
いいえ、債務者が申し立てないと保全は消えません
民事保全法 38 条により、被保全権利や保全の必要性が消滅するなど事情の変更があっても、保全命令は自動では消えません。債務者が、保全命令を発した裁判所または本案を審理している裁判所に取消しを申し立てて初めて取り消されます。しかも要件は「証明」ではなく「疎明」で足り、弁済の領収書や本案の敗訴判決の写しなど、一応確からしいと裁判官に思わせる資料でよいとされます(同条 2 項)。この一手を知らない債務者は、権利が消えた保全に財産を縛られ続けます。
取引先とのトラブルで、ある日いきなり銀行口座を仮差押えされた。その後あなたは争いの元になった借金を完済した、あるいは本案の裁判で相手の請求が退けられた。ならば口座の凍結は自動的に解ける、と思っていないだろうか。解けない。仮差押えや仮処分は、いったん出されると、事情が変わっても裁判所が勝手に取り消してはくれない。動かせるのは債務者であるあなた自身だ。民事保全法38条は、被保全権利が消滅した、保全の必要性が消えた、その他事情が変わったときに、債務者の申立てによって保全命令を取り消せると定める。しかも申立て先は、命令を出した裁判所だけでなく、本案を審理している裁判所でもよい。証明までは要らず、疎明、つまり一応確からしいと裁判官に思わせる程度で足りる。この一手を知らない債務者は、権利がとっくに消えた保全に、自分の財産を縛られ続ける。
民事保全法 38 条は、事情変更による保全取消しを定める規定である。被保全権利若しくは権利関係、又は保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるとき、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所が、債務者の申立てにより保全命令を取り消すことができる。前提となる事情の変更は、証明ではなく疎明で足りるとされる。
AI 輔助整理,以條文原文為準
発令後に事情が変わったことを理由に、債務者の申立てで保全命令を取り消す手続です。民事保全法 38 条が根拠で、被保全権利や必要性の消滅が対象です。
弁済完了や本案敗訴など事情変更があれば、発令裁判所または本案裁判所に 38 条の取消しを申し立てます。自然消滅はせず、自分から動く必要があります。
保全命令を発した裁判所と、本案を審理している裁判所のどちらでも可能です(民訴保全法 38 条 1 項)。速く動かせる方を選べます。
申立書に加え、事情変更を疎明する資料が要ります。弁済なら領収書、本案勝訴なら判決書の写し、時効なら援用の内容証明などです。
消えません。完済は被保全権利の消滅にあたりますが、債務者が 38 条の取消しを申し立てるまで保全命令は生き続けます。
取消しの申立て自体に法定期限はありません。ただし取消決定への保全抗告は、決定送達から 2 週間の不変期間内です(民事保全法 41 条)。
自動抹消されません。勝訴の事実を疎明資料として 38 条の取消しに載せて初めて、仮処分の登記や効力が現実に外れます。
38 条は発令後の事情変更を理由とする取消し、37 条は債権者が本案訴訟を起こさないことを理由とする取消しです。動く原因が別です。
どちらも債務者が保全に対抗する手段ですが、狙う時点が違います。保全異議(26条)は「そもそも命令を出した時点で要件がなかった」と発令自体の当否を争う、保全取消し(38条)は「発令は正しかったが、その後に事情が変わった」と主張する。返済や本案敗訴のような発令後の変化なら38条です。業界裏話ヒント:両者は排他的ではなく、事案によっては異議と取消しを併せて申し立てる戦い方もある。弁護士はまず「変化は発令の前か後か」で入口を振り分けるが、依頼者が自分でその時系列を整理して持ち込めるかで、初動の速さが変わる。
そのとおりで、38条2項は事情変更を「疎明」すればよいとしています。証明が「裁判官に確信を抱かせる」レベルなのに対し、疎明は「一応確からしい」と思わせる程度で足り、その場で取り調べられる資料で行います。業界裏話ヒント:疎明で足りる裏返しとして、相手も疎明で反証してくる。だから領収書や確定判決の写しのように、一枚で心証を動かす書面を最初にそろえた側が有利になる。口頭の説明を重ねるより、決定的な紙を一枚出す発想が効く。
取消し自体は将来に向けて保全を解くだけで、過去に凍結されて被った損害は別枠です。保全が不当だった場合、債権者が立てていた担保(保全命令の際の供託金)から回収する、あるいは民法709条の不法行為として賠償を請求する道があります。業界裏話ヒント:債権者が保全を打つときに供託した担保金の額と所在は、記録を見れば分かる。取消しを勝ち取ったら、その担保に対する権利行使を忘れずに押さえる。ここを放置して債権者に担保を取り戻されると、損害の受け皿が消える。
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 取消しの原因 | 民事保全法 38 条:発令後の事情変更(被保全権利・必要性の消滅等) | — |
| 争う対象の時点 | 発令は正しかったが、その後に事情が変わった | — |
| 立証の程度 | 事情変更を疎明(38 条 2 項) | — |
| 26 条の保全異議との関係 | 取消しは発令『後』の変化を主張(38 条) | — |
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