保険業法 第58条(損失てん補準備金)
クイックジャンプ
相互会社は、基金(第五十六条の基金償却積立金を含む。)の総額(定款でこれを上回る額を定めたときは、その額)に達するまでは、毎決算期に剰余金の処分として支出する金額(第五十五条の二第二項の準備金のうち内閣府令で定めるものに積み立てる金額を含む。)の千分の三以上を、損失てん補準備金として積み立てなければならない。
この条文の基本情報
損失てん補準備金とは何ですか?
定義損失てん補準備金とは、保険業法第58条に定められた規定で、「相互会社は、基金(第五十六条の基金償却積立金を含む。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 保険業法第58条(損失てん補準備金)は、日本の保険業法に含まれる条文です。
- 保険業法第58条の条文原文は「相互会社は、基金(第五十六条の基金償却積立金を含む。」で始まります。
- 保険業法第58条は第四目 基金償却積立金及び損失てん補準備金に置かれています。
- 保険業法の公布日は平成7年6月7日です。
- 保険業法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 保険業法第58条の前の条は保険業法第57条です。
- 保険業法第58条の次の条は保険業法第59条です。
- 保険業法第58条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
保険業法(平成七年法律第百五号)第58条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105 - 本サイト収録
保険業法(平成七年法律第百五号)第58条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/407AC0000000105/58
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点保険業法58条は、相互会社に対し、基金の総額に達するまで、毎決算期に剰余金の処分として支出する金額の千分の三以上を損失てん補準備金として積み立てる義務を課す。
Q · 相互会社の生命保険に入っていると、契約者配当はそのまま全部もらえるんですか?
配当の原資から千分の三以上が必ず社内に積み残されます
保険業法58条により、相互会社は毎決算期に剰余金の処分として支出する金額の千分の三以上を、損失てん補準備金として積み立てなければなりません。積立は基金(56条の基金償却積立金を含む)の総額、定款でこれを上回る額を定めたときはその額に達するまで続きます。算定の基礎となる支出額には、55条の2第2項の準備金のうち内閣府令で定めるものへの積立額も算入されます。短期的には契約者配当を圧縮しますが、損失発生時に取り崩されて保険金支払能力を支える仕組みです。
解説
相互会社という言葉を聞いても、自分の生命保険がその形態だと気付いている契約者は少ない。相互会社には株主がいない。だから資本金の代わりに「基金」という外部からの拠出金が財務の土台になっている。保険業法58条が命じているのは、その基金が全額返し終わるまで、毎決算期に剰余金として社外へ出す金額の千分の三以上を「損失てん補準備金」として社内に積み残せということだ。つまり、あなたが受け取る配当金の原資から、必ず一定割合が抜き取られて金庫に鍵をかけられている。この一見あなたの取り分を削る仕組みこそが、大災害や株価暴落で保険会社が傾いたとき、契約者に約束された保険金を守る最後のクッションになる。基金の総額に達するまで、と上限が切られているのもポイントで、無限に貯め込ませて契約者配当を圧迫することも法は許していない。
法的な位置づけ
保険業法58条は、相互会社の損失てん補準備金の積立義務を定める規定である。相互会社は、基金(56条の基金償却積立金を含む)の総額、定款でこれを上回る額を定めたときはその額に達するまで、毎決算期に剰余金の処分として支出する金額の千分の三以上を損失てん補準備金として積み立てなければならない。算定基礎には内閣府令で定める準備金への積立額も含まれる。
手順
- 1.基金総額と定款上限を確定する 56条の基金償却積立金を含めた基金の総額を算定し、定款にこれを上回る積立上限の定めがあるかを確認する。上限が確定しないと、そもそも積立義務が続いているのかを判定できない
- 2.剰余金処分として支出する金額(分母)を確定する 当期に剰余金の処分として支出する金額を集計する。ここに55条の2第2項の準備金のうち内閣府令で定めるものへ積み立てる金額を必ず算入する。この算入漏れが法定積立額の過少計上を招く定番の落とし穴
- 3.千分の三以上の法定最低額を算定し上限と突合する 確定した支出額に1000分の3を乗じて法定最低積立額を算出し、既存の損失てん補準備金残高に加算した額が基金総額(または定款上限額)を超えないかを突合する。上限を超える部分は積立義務の範囲外となる
- 4.剰余金処分計算書へ計上し、決算公告で開示する 算定結果を剰余金処分計算書に計上し、社員総代会の承認手続に載せる。決算公告および基礎資料で積立額を開示し、法定最低額か上乗せ額かを説明できる資料を残す
よくある質問 AI による整理
Q1損失てん補準備金とは何ですか?
相互会社が損失の穴埋め専用に社内へ積み残す準備金です。保険業法58条を根拠に、毎決算期の剰余金処分支出額の千分の三以上を積み立てます。契約者への還元原資ではありません。
Q2相互会社の基金とは何ですか?
株式会社の資本金に相当する、外部からの拠出金です。ただし返済(償却)される借入的性格を持ち、56条の基金償却積立金を含めた総額が58条の積立上限の基準になります。
Q3損失てん補準備金はいつまで積み立てるのですか?
基金(56条の基金償却積立金を含む)の総額に達するまでです。定款でこれを上回る額を定めたときは、その額に達するまで積立が続きます。上限に達すれば義務は終わります。
Q4損失てん補準備金は取り崩せますか?
損失のてん補という本来目的のために取り崩されます。契約者配当の原資として自由に振り向けるものではなく、逆風時に保険金支払能力を支えるクッションとして機能します。
Q5相互会社の社員総代会とは何ですか?
契約者=社員の代表である社員総代が議決する、株主総会に相当する機関です。剰余金処分方針や組織変更が議題に上がるため、準備金の扱いは総代会の判断対象になります。
Q6保険業法58条の積立義務に違反したらどうなりますか?
法定積立額の不足は決算の是正対象となり、金融庁の検査・監督上の指摘や業務改善命令等の対象となり得ます。過年度分を含めた追加積立の要否を早期に検討する必要があります。
Q7相互会社が株式会社になったら準備金はどうなりますか?
組織変更では基金・基金償却積立金・各種準備金の承継と分配の扱いが手続の中核になります。社員への分配額に直結するため、総代会の議案書で個別に確認が必要です。
Q8損失てん補準備金は決算書のどこに載っていますか?
剰余金処分計算書(剰余金の処分に関する書類)と貸借対照表の純資産の部に現れます。決算公告や会社公表の基礎資料で、積立額が法定最低か上乗せかを確認できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1うちの生命保険、相互会社って書いてあるんですけど、株式会社と何が違うんですか?
相互会社には株主がいません。契約者自身が「社員」として会社の構成員になり、社員総代会で議決に加わります。株主配当がない代わり、剰余金は契約者配当として還元されます。財務の土台は資本金ではなく基金(56条の基金償却積立金を含む)です。実務のポイント:相互会社の社員総代は公募されている場合があり、応募すれば契約者本人が総代会に出席できる。この制度の存在を知って実際に応募する契約者はごく僅かである
Q2損失てん補準備金って、契約者配当が減るってことですか?
短期的にはその通りで、剰余金の一部が社外に出ずに積み立てられます。ただし基金の総額(定款で上回る額を定めた場合はその額)に達するまでという上限があり、無制限に配当を圧迫する仕組みではありません。積み立てた分は損失発生時に取り崩され、保険金支払能力を支えます。実務のポイント:積立額が法定最低の千分の三に張り付いているか上乗せしているかは決算資料で確認でき、会社の財務姿勢の指標として読める
Q3千分の三って計算のもとになる金額は、決算の利益全部ですか?
違います。基準となるのは「毎決算期に剰余金の処分として支出する金額」であり、そこには55条の2第2項の準備金のうち内閣府令で定めるものに積み立てる金額も含めて計算します。利益総額でも純資産でもありません。実務のポイント:この算入対象の範囲は内閣府令に委ねられているため、条文本文だけを読んで計算すると分母を過少に見積もる。実務では必ず現行の保険業法施行規則にあたる
間違えやすい点 AI による整理
- 「準備金」と名の付くものは全部同じ、と思われがちだが、相互会社の財務には基金償却積立金、損失てん補準備金、契約者配当準備金、価格変動準備金、危険準備金と性格の異なるものが並んでいる。損失てん補準備金は文字通り損失の穴埋め専用で、契約者への還元原資ではない。名前が似ているだけで混同すると、決算書の読み方を根本から間違える
- 「千分の三なんて微々たる額だから、あってもなくても同じ」という感覚は、法が守ろうとしているものを見誤っている。この条文の本質は積立額の大きさではなく、剰余金を社外に出すときに必ず一定割合を残せという強制のメカニズムにある。好況期に配当を出し切ってしまう誘惑を、法が構造的に封じている点にこそ意味がある
- あなたから見れば保険料を払って保険金をもらう契約関係でしかないが、相互会社の法律構成では、あなたは契約者であると同時に「社員」(会社の構成員)である。だから会社の内部留保をいくら積むかという経営判断は、外部の話ではなくあなた自身の持分に関わる決定だ。この落差を知らないまま社員総代選挙の通知を捨てている契約者が大多数である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 積立の目的 | 58条 損失てん補準備金:損失のてん補専用のクッション | 56条 基金償却積立金:基金の償却(返済)に備える 116条 責任準備金:将来の保険金支払債務に備える |
| 算定の基準 | 毎決算期の剰余金処分支出額の千分の三以上 | 基金の償却額に相当する額を積み立てる 保険数理に基づき契約ごとに算定 |
| 上限の有無 | 基金の総額(定款で上回る額を定めればその額)まで | 償却した基金の額に対応 上限の観念はなく、必要額を full で積む |
| 契約者配当との関係 | 剰余金の社外流出を千分の三以上だけ強制的に抑える | 基金拠出者への返済原資、配当とは別系統 配当以前の負債性の積立、そもそも剰余金ではない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は保険業の組織を株式有限公司または合作社に限り、相互会社という類型を持たない。準備金の強制積立という機能は、責任準備金と法定盈餘公積が分担している
韓国の保険業法は日本法を経由して相互会社制度を継受しており、基金と損失補填のための準備金という構造が類似する。ただし実際の相互会社は極めて少ない
ドイツは相互保険社団の本家であり、Gründungsstock(基金に相当)と Verlustrücklage(損失準備金に相当)を置く。日本の58条の発想はこの系譜に連なる
米国は相互保険会社が広く存在するが、規律は剰余金処分比率ではなく surplus 水準と RBC(リスクベース資本)による監督が中心で、設計思想が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたが加入している生命保険会社の「基礎資料」や決算公告を開くと、剰余金処分計算書に損失てん補準備金という行がある。この額が法定の千分の三ちょうどで止まっているか、それとも大きく上積みされているかで、その会社の財務姿勢が読める。定款で基金総額を上回る積立上限を定めている会社は、より保守的な経営をしている
- 相互会社が株式会社化(組織変更)を検討していると報道された。契約者であるあなたには社員総代を通じた議決の場面が回ってくる。そのとき損失てん補準備金と基金償却積立金がどう扱われるかは、あなたの分配額に直結する。数字の意味を知らないまま賛否を投じる社員がほとんどだ
- 保険会社の経理担当として決算を組んでいる。剰余金処分として支出する金額に、内閣府令で定める準備金への積立額も算入しなければならない点を見落とすと、法定積立額そのものが過少になる。金融庁検査で真っ先に突かれるのはこの算入漏れだ
- もし加入先の相互会社が巨額の運用損を出したら、契約者配当はどうなる? 損失てん補準備金があれば、それを取り崩して当期の損失に充てるので、契約者配当の即時停止を一段階遅らせられる。決算発表まであと数週間、その一行を見れば会社の体力が分かる
取るべき行動
被害を受けた側:契約者として財務健全性を確かめたい場合、まず加入先が相互会社か株式会社かを約款と会社概要で確認する。相互会社であれば、公表されている決算関係資料の剰余金処分計算書で損失てん補準備金の積立額を見る。定款上の積立上限が基金総額を超えて設定されているかは定款閲覧請求で確認できる。数字に疑問があれば社員総代会への質問、または金融庁の相談窓口への照会という経路がある
訴えられた側:相互会社の経理・企画部門として積立不足を指摘された場合、まず分母の把握を検証する。剰余金の処分として支出する金額には、55条の2第2項の準備金のうち内閣府令で定めるものへの積立額も算入される点が見落としの定番だ。基金償却積立金を含めた基金総額の算定、定款で上回る額を定めているか、この三点を同時に洗い直し、過去決算に遡って差額を追加積立する方針を早期に示す
時効(請求できる期限):毎決算期ごとの義務であり、決算に係る剰余金処分の確定時点が判断の基準時になる。特定の時効規定はないが、積立不足は決算ごとに繰り返し発生し得るため、発見時点で過年度分を含めた是正を検討する必要がある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:58条は、剰余金処分額の千分の三という下限と、基金総額(定款で上回る額を定めたときはその額)という上限を同時に置くことで、契約者への過剰還元と過度な内部留保の双方を抑制する二方向の拘束として理解されている
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和14年(1939年) 改正:旧保険業法(昭和14年法律第41号)が制定され、明治32年商法に置かれていた相互会社規定を保険業の特別法へ集約。相互会社の基金と準備金に関する規律が整備された
- 2.平成7年(1995年) 改正:保険業法の全部改正(平成7年法律第105号、翌年施行)。相互会社の財務規律が再編され、損失てん補準備金の積立義務が現行58条として整理された
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める