人事訴訟法 第38条(履行の勧告)
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- 第三十二条第一項又は第二項(同条第三項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による裁判で定められた義務については、当該裁判をした家庭裁判所(上訴裁判所が当該裁判をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判所)は、権利者の申出があるときは、その義務の履行状況を調査し、義務者に対し、その義務の履行を勧告することができる。
- 2.前項の家庭裁判所は、他の家庭裁判所に同項の規定による調査及び勧告を嘱託することができる。
- 3.第一項の家庭裁判所及び前項の嘱託を受けた家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に第一項の規定による調査及び勧告をさせることができる。
- 4.前三項の規定は、第三十二条第一項又は第二項の規定による裁判で定めることができる義務であって、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る訴訟における和解で定められたものの履行について準用する。
この条文の基本情報
履行の勧告とは何ですか?
定義履行の勧告とは、人事訴訟法第38条に定められた規定で、「第三十二条第一項又は第二項(同条第三項において準用する場合を含む。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 人事訴訟法第38条(履行の勧告)は、日本の人事訴訟法に含まれる条文です。
- 人事訴訟法第38条の条文原文は「第三十二条第一項又は第二項(同条第三項において準用する場合を含む。」で始まります。
- 人事訴訟法第38条は第二章 婚姻関係訴訟の特例に置かれています。
- 人事訴訟法の公布日は平成15年7月16日です。
- 人事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 人事訴訟法第38条の前の条は人事訴訟法第37条です。
- 人事訴訟法第38条の次の条は人事訴訟法第39条です。
- 人事訴訟法第38条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第38条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000109 - 本サイト収録
人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第38条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/415AC0000000109/38
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点人事訴訟法38条は、離婚判決等で定めた養育費・財産分与の義務について、権利者の申出により家庭裁判所が履行状況を調査し履行を勧告できると定める。強制力はない。
Q · 離婚裁判で決まった養育費が止まったら、弁護士なしで裁判所に何かしてもらえる?
家庭裁判所に申し出れば無料で履行勧告をしてもらえる
人事訴訟法38条により、離婚判決や離婚訴訟上の和解で定められた養育費・財産分与などの義務が履行されないとき、権利者が申し出れば、第一審の家庭裁判所が履行状況を調査し、義務者に支払いを勧告します。費用はかからず、家庭裁判所調査官が担当することもあります。ただし勧告に強制力はないため、応じない場合は同法39条の履行命令や民事執行法による強制執行へ進む判断が必要です。
解説
離婚判決で「月5万円の養育費」と決まった。相手が三か月払わない。ここで多くの人が思い浮かべるのは「また弁護士に頼んで強制執行か、費用がかかる」である。だが人事訴訟法38条は、その手前にもう一段の梯子を置いている。判決や和解で決まった養育費・財産分与などの義務について、権利者が申し出れば、その判決を出した家庭裁判所自身が履行状況を調査し、義務者に履行を勧告してくれる。しかも家庭裁判所調査官という国家公務員の専門職が動く。費用は無料、申出は電話や簡単な書面でよい。裁判所からの連絡というだけで支払いが再開する事例は実務上珍しくない。ただし勧告には強制力がない。ここを理解せずに履行勧告だけに賭けると、時間だけ流れる。この条文の正しい使い道は「強制執行の前に置く、費用ゼロの一撃」であり、効かなければ次へ進む判断材料になる点にある。
法的な位置づけ
人事訴訟法38条は履行勧告を定める規定であり、婚姻の取消し又は離婚の訴えに附帯する処分の裁判(同法32条)で定められた義務、及び当該訴訟上の和解で定められた同種の義務について、権利者の申出を要件として、第一審の家庭裁判所が履行状況の調査と義務者への履行の勧告を行う手続である。勧告自体に強制力はない。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.判決書・和解調書と事件番号を確認する 手元の判決書または和解調書を取り出し、事件番号、担当した家庭裁判所、定められた金額と支払期日を確認する。上訴審で決まった場合は第一審の家庭裁判所が申出先になる
- 2.滞納状況を整理する 滞納が始まった月、未払いの回数と総額、直近の入金日を一覧にする。通帳や振込記録の該当ページを控えておく
- 3.第一審の家庭裁判所に履行勧告を申し出る 家庭裁判所に電話または書面で履行勧告を申し出る。事件番号と滞納状況を伝え、相手の転居先が不明であればその旨も伝える
- 4.並行して相手の勤務先・口座情報を集める 勧告の結果を待つ間に、相手の勤務先や取引銀行・支店の情報を整理しておく。分からない場合は財産開示手続や第三者からの情報取得手続の利用を検討する
- 5.改善がなければ次の手続に切り替える 勧告後おおむね二か月で支払いが再開しなければ、履行命令の申立て(人事訴訟法39条)または強制執行の申立てへ切り替える
よくある質問 AI による整理
Q1履行勧告とは何ですか?
判決や和解で決まった養育費などの支払いが滞ったとき、権利者の申出を受けた家庭裁判所が相手に支払いを促す制度です。人事訴訟法38条が根拠です。
Q2履行勧告の申出に費用はかかりますか?
申出の手数料はかかりません。弁護士に依頼する必要もなく、権利者本人が家庭裁判所に申し出ることができます。
Q3履行勧告はどこの裁判所に申し出ればいいですか?
その義務を定める裁判をした家庭裁判所です。高等裁判所など上訴審で決まった場合も、第一審の家庭裁判所に申し出ます(38条1項)。
Q4公正証書で決めた養育費も履行勧告できますか?
できません。履行勧告は家庭裁判所の判決・和解・調停・審判で定めた義務が対象です。公正証書(執行認諾文言付き)は直接の強制執行で対応します。
Q5履行勧告を無視されたらどうなりますか?
勧告そのものに罰則はありません。次の段階として人事訴訟法39条の履行命令、または民事執行法に基づく給与・預金の差押えを検討します。
Q6財産分与の未払いも履行勧告の対象ですか?
対象です。人事訴訟法32条の附帯処分として判決で定められた財産分与、養育費、面会交流以外の子の監護に関する処分などが含まれます。
Q7調停で決めた養育費の履行勧告は何条ですか?
調停・審判で定めた義務は家事事件手続法289条が根拠です。人事訴訟法38条は離婚訴訟の判決・和解で定めた義務を対象とします。
Q8履行勧告の結果は教えてもらえますか?
実務上、調査・勧告の結果は申出人に連絡されるのが通常です。相手の回答内容は次の手続を選ぶ判断材料になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1履行勧告って、結局は裁判所が相手に電話してくれるだけですか?
調査と勧告であり、強制力はない(38条1項)。ただし家庭裁判所調査官が関与し(同3項)、履行状況の調査として就労や収入の実情に踏み込むことがある。実務のポイント:実務では、裁判所名義の書面や調査官からの連絡というだけで支払いが再開する割合は決して低くない。効かない相手は最初の一、二か月で判別できる。そこが強制執行へ切り替える見極め時で、漫然と勧告を繰り返す期間が長い人ほど回収率が落ちる
Q2相手が遠方に引っ越したら、また裁判をやり直すんですか?
不要である。38条2項により、裁判をした家庭裁判所が他の家庭裁判所に調査と勧告を嘱託できる。あなたは元の家裁に申し出るだけでよい。実務のポイント:引っ越し先が不明な場合でも、申出時に「転居先不明」と伝えれば住民票の調査が行われることがある。自力で探偵に頼む前に、まず無料の制度を通す順序が費用対効果として正しい
Q3調停じゃなく裁判で離婚したんですが、和解で終わった場合も使えますか?
使える。38条4項が、婚姻の取消しまたは離婚の訴えに係る訴訟上の和解で定められた義務にも準用している。判決でなければ対象外という誤解が多い。実務のポイント:和解調書は確定判決と同一の効力を持ち、債務名義として強制執行もできる。引き出しにしまった和解調書は、実は執行力のある武器そのものである。まず手元の書面の表題を確認するところから始まる
Q4履行勧告をしたのに払われません。次は何をすればいいですか?
民事執行法に基づく強制執行へ移る。養育費など扶養義務に係る債権は、給与の差押え可能範囲が通常債権より広く(民事執行法152条3項)、将来分もまとめて差し押さえられる特則がある(同151条の2)。実務のポイント:相手の勤務先が分からない場合、財産開示手続や第三者からの情報取得手続(同204条以下)で市町村や年金機構から勤務先情報を得られる。ここを知らないと「相手の職場を知らないから諦める」で止まってしまう(最新の改正状況をご確認ください)
間違えやすい点 AI による整理
- 履行勧告を「知っているが軽く見ている」人は多い。強制力がないから意味がない、という理解である。実務上の深刻な誤りはその逆側にある。強制力がないと知らずに履行勧告だけを何か月も繰り返し、その間に義務者が退職・転居して差押え対象を見失うケースだ。この条文の価値は速度にあり、持久戦の道具ではない
- 「裁判で決まったのだから裁判所が取り立ててくれる」という前提そのものが誤っている。日本の民事執行は当事者主義であり、権利者が動かなければ何も起きない。38条ですら「権利者の申出があるときは」と条件を付けている。判決確定の瞬間に、ボールは裁判所からあなたの手に戻っている
- あなたから見れば「相手が払わない」という単純な事実だが、家庭裁判所から見れば「義務者が履行できない事情があるかもしれない」という調査対象である。この落差を理解していないと、調査官が相手の事情を聴取する過程を「相手の味方をしている」と感じて怒りをぶつけてしまう。調査官を敵に回すと、あなたに有利な事実の記録が残らない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 手続の性質 | 人訴38条:履行状況の調査と履行の勧告 | 人訴39条:一定期間内の履行命令 人訴34条:家庭裁判所による事実の調査 |
| 強制力 | なし(説得・促しにとどまる) | 正当な理由なく従わない場合は過料の制裁がある 審理のための調査であり、履行確保の手段ではない |
| 開始要件 | 権利者の申出 | 権利者の申立て+義務者の陳述聴取 附帯処分等の審理に必要な場合、裁判所の判断 |
| 使いどころ | 滞納初期に費用ゼロで相手の反応と現況を確認 | 勧告に応じない義務者への一段強い圧力 判決前、養育費や財産分与の額を決める段階 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も債権者の申立てにより法院が義務の履行状況を調査し、債務者に履行を勧告できる。日本と同じく強制執行とは別の任意履行促進の手段
韓国は養育費履行管理院による取立て支援と家庭法院の履行命令を組み合わせる。行政機関が回収支援に関与する点が日本と異なる
フランスは公的機関 ARIPA が養育費の仲介・取立てを担う。裁判所の勧告ではなく行政による回収支援が中心
米国は州の Child Support Enforcement 機関が給与天引きや運転免許停止など強力な行政執行手段を持つ。日本の勧告より強制色が強い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 離婚判決から半年、養育費の振込が止まった。相手の勤務先も知らず、預貯金口座も分からない。強制執行するには差押えの対象を特定する必要があるが、そこで詰まる。まず38条の履行勧告を申し出れば、家庭裁判所調査官が義務者に接触し、支払えない事情や現在の就労状況が明らかになることがある。その情報自体が、次の一手の地図になる
- もし、あなたが払う側で、勤務先の倒産により収入が三分の一になったとしたら? 家庭裁判所から履行勧告の連絡が来る。ここで無視するのが最悪手である。調査官に現在の収入状況を正直に伝え、同時に養育費の減額請求調停(家事事件手続法に基づく)を申し立てる。勧告の場は、あなたが事情を記録に残せる数少ない機会でもある
- 財産分与として決まった300万円の分割払いが、二回目から滞った。あなたは「裁判所が決めたのに」と怒りに任せて相手に連絡し続けている。その労力を、申出一本に替える。権利者の申出があってはじめて裁判所は動く、裁判所は自動的には監視していない
- 友人から「調停じゃなくて裁判で離婚したんだけど、養育費が止まった」と相談された。あなたは三分でこう答えられる。家裁に履行勧告を申し出ろ、無料だ、ただし強制力はないから同時に相手の勤務先と口座の情報を集めておけ、と
- 相手が別の県に引っ越した。判決を出したのは東京家裁だが、相手は福岡にいる。38条2項があるので、東京家裁は福岡家裁に調査と勧告を嘱託できる。あなたが引っ越し先の裁判所に申し出し直す必要はない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 判決書または和解調書を手元に用意し、事件番号を確認する2. その裁判を担当した家庭裁判所(上訴審で決まった場合は第一審の家裁)に履行勧告の申出をする。電話でも受け付けられることが多く、費用は無料3. 滞納の開始月と未払総額をメモにして伝える4. 同時に、相手の勤務先・取引銀行・支店の情報収集を開始する5. 勧告後およそ二か月で改善がなければ、強制執行または財産開示手続へ切り替える判断をする
訴えられた側:1. 裁判所からの履行勧告の連絡を無視しない。無視は後の手続であなたの不誠実さとして評価されうる2. 支払えない事情(減収、失職、疾病)があれば、資料とともに調査官に説明する3. 事情が継続するなら、養育費・婚姻費用の減額を求める調停を家庭裁判所に申し立てる。勧告に応じるだけでは義務額は変わらない4. 一部でも払える額があれば支払いを再開し、その記録を残す。給与差押えに至ると勤務先に知られる
時効(請求できる期限):履行勧告の申出自体に法定期限はない。ただし対象となる債権の消滅時効に注意が必要で、確定判決または和解調書で確定した権利は原則10年(民法169条)。定期金として将来分が発生し続ける養育費は各支払期ごとに進行する。差押え対象である義務者の給与・預金は時間とともに失われるため、実務上の勝負は滞納発生から数か月以内(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:履行勧告は強制執行に先立つ任意履行促進の制度であり、強制力を持たない点に意義がある。義務者の事情を調査して自発的履行を引き出す、家庭裁判所の後見的機能の表れと理解されている
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成15年(2003年) 新設:人事訴訟法の制定により、人事訴訟の第一審管轄が地方裁判所から家庭裁判所へ移管され、附帯処分の裁判で定めた義務についても家庭裁判所による履行勧告の制度が設けられた
- 人事訴訟法 第32条履行勧告の対象となる附帯処分の裁判
- 人事訴訟法 第39条履行命令、勧告に応じない場合の次段階
- 人事訴訟法 第33条附帯処分に係る審理と調査官の関与
- 人事訴訟法 第34条事実の調査、家庭裁判所調査官の職務基盤
- 家事事件手続法 第289条調停・審判で定めた義務の履行勧告の並行規定
- 民事執行法 第151条扶養義務等に係る将来分の差押えの特則(現行効力を要確認)
- 民事執行法 第152条扶養義務債権の差押禁止範囲の緩和
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