仲裁法 第29条(仲裁手続の開始並びに時効の完成猶予及び更新)
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- 仲裁手続は、当事者間に別段の合意がない限り、特定の民事上の紛争について、一方の当事者が他方の当事者に対し、これを仲裁手続に付する旨の通知をした日に開始する。
- 2.仲裁手続における請求は、時効の完成猶予及び更新の効力を生ずる。ただし、当該仲裁手続が仲裁判断によらずに終了したときは、この限りでない。
この条文の基本情報
仲裁手続の開始並びに時効の完成猶予及び更新とは何ですか?
定義仲裁手続の開始並びに時効の完成猶予及び更新とは、仲裁法第29条に定められた規定で、「仲裁手続は、当事者間に別段の合意がない限り、特定の民事上の紛争について、一方の当事者が他方の当事者に対し、これを仲裁手続に付する旨の通知をした日に開始する。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 仲裁法第29条(仲裁手続の開始並びに時効の完成猶予及び更新)は、日本の仲裁法に含まれる条文です。
- 仲裁法第29条の条文原文は「仲裁手続は、当事者間に別段の合意がない限り、特定の民事上の紛争について、一方の当事者が他方の当事者に対し、これを仲裁手続に付する旨の通知をした日に開始する。」で始まります。
- 仲裁法第29条は第五章 仲裁手続の開始及び仲裁手続における審理に置かれています。
- 仲裁法の公布日は平成15年8月1日です。
- 仲裁法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 仲裁法第29条の前の条は仲裁法第28条です。
- 仲裁法第29条の次の条は仲裁法第30条です。
- 仲裁法第29条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第29条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000138 - 本サイト収録
仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第29条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/415AC0000000138/29
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点仲裁法29条は、別段の合意がない限り、相手方への仲裁付託の通知日に仲裁手続が開始すると定め、仲裁での請求に時効の完成猶予及び更新の効力を認める。
Q · 仲裁っていつ始まったことになるの?時効は止まるの?
原則は相手への通知日。機関規則を選んでいればその規則による
仲裁法29条1項により、当事者間に別段の合意がなければ、特定の紛争を仲裁に付する旨を相手方に通知した日に仲裁手続が始まります。ICC などの機関規則を契約で選んでいる場合は、その規則が別段の合意となり、機関が申立書を受け取った日などが基準になりえます。同条2項により、仲裁手続での請求は時効の完成猶予及び更新の効力を生じますが、仲裁判断によらずに手続が終了した場合、この効力は生じません。
解説
仲裁は、手続がいつ始まるかを当事者側で動かせる珍しい紛争手続である。裁判では訴状が裁判所に提出された日が起点になる。これに対し仲裁法29条1項は、当事者が別段の合意をしていなければ、相手方に「この紛争を仲裁に付す」と通知した日を開始日とする。裁判所の受付印は要らない。さらに2項は、仲裁手続での請求に時効の完成猶予及び更新の効力を与える。完成猶予とは時効の完成をいったん止めること、更新とは時効期間をゼロから数え直すことである。そのため、時効満了の数日前でも、紛争を特定した通知を相手に届ければ間に合う可能性がある。ただし落とし穴が二つある。一つ目に、契約で ICC などの仲裁機関の規則を選んでいれば、それが「別段の合意」になり、開始日は機関が申立書を受け取った日に変わりうる。二つ目に、仲裁判断に至らずに手続が終われば、本条による効力は及ばない。通知の宛先と日付の証拠、選んだ規則、手続の終わり方。この三つを押さえている側だけが、時効の壁の手前で踏みとどまれる。
法的な位置づけ
仲裁法29条は、仲裁手続の開始時期と時効への効果を定める規定である。1項は、当事者間に別段の合意がない限り、特定の民事上の紛争を仲裁手続に付する旨を一方当事者が他方当事者に通知した日を開始日とする。2項は、仲裁手続における請求に時効の完成猶予及び更新の効力を認め、仲裁判断によらずに終了した場合はこの限りでないとする。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.仲裁条項と選択された規則を確認する 契約書の仲裁条項を読み、仲裁機関やその規則が指定されているかを確認する。指定があれば規則上の開始日の定義を調べ、なければ仲裁法29条1項の通知日が基準になる
- 2.時効満了日を計算する 対象債権の起算点(権利を行使できることを知った時など)を特定し、民法166条の期間から満了日を算出する。開始日が満了日より前に来るよう逆算して作業日程を組む
- 3.紛争を特定した仲裁開始通知を送付する 契約名、請求の内容と金額、仲裁に付する意思を明記した通知を作成し、契約の通知条項が定める宛先・方法で送る。郵送なら配達証明付き内容証明を使う
- 4.仲裁判断まで手続を維持する設計をする 取下げや手続終了で2項ただし書が適用されるリスクに備え、和解する場合は和解内容を仲裁判断とする(仲裁法38条)段取りを先に決める。終了した場合は6か月以内の訴訟等を前提に動く
よくある質問 AI による整理
Q1仲裁手続の開始日とはいつですか?
別段の合意がなければ、特定の紛争を仲裁に付する旨を相手方に通知した日です(仲裁法29条1項)。仲裁機関への申立日ではない点に注意が必要です。
Q2仲裁を申し立てると時効はどうなりますか?
仲裁手続における請求は、時効の完成猶予及び更新の効力を生じます(仲裁法29条2項)。仲裁判断に至れば、時効期間は新たに進行を始めます。
Q3時効の完成猶予と更新の違いとは?
完成猶予は時効の完成を一時的に止めること、更新はそれまでの経過期間をリセットしてゼロから数え直すことです。2020年施行の改正民法で導入された用語です。
Q4仲裁法29条の「別段の合意」とは何ですか?
開始日について当事者が別に定めた合意です。典型例は契約で選んだ仲裁機関の規則で、規則上の開始日(機関の申立書受領日など)が通知日に優先します。
Q5内容証明郵便で仲裁を開始できますか?
別段の合意がなければ可能です。紛争と請求の対象、仲裁に付す意思を明記し、配達証明を付けて到達日の証拠を残すのが実務上の基本です。
Q6メールで仲裁開始の通知をしても有効ですか?
法律上の方式の限定はありませんが、到達の立証が課題になります。契約の通知条項でメール送付先が指定されていれば、それに従うのが安全です。
Q7仲裁判断が出た後の時効は何年ですか?
仲裁判断は確定判決と同一の効力を持つ(仲裁法45条1項)ため、民法169条により新たな時効期間は10年と解されています。
Q8仲裁合意があるのに裁判所に訴えるとどうなりますか?
被告の申立てにより、原則として訴えは却下されます(仲裁法14条)。却下後も民法147条で6か月の完成猶予はありますが、その間に仲裁を起こす必要があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1仲裁を始めるための通知って、決まった書式とかあるんですか?
法定の書式はない。29条1項が求めるのは、特定の民事上の紛争を仲裁に付す旨を相手方に通知することだけである。ただし、何についての紛争か(契約名、請求の内容と金額)が特定されていないと、開始の効力を争われる。実務のポイント:通知の到達については同法12条にも規定があるが、実務で本当に効くのは契約書の「通知条項」である。宛先を担当部署やメールアドレスに指定している契約は多く、本社に郵送しただけでは足りないと反論されることがある
Q2仲裁が判断まで行かずに終わったら、時効ってどうなるんですか?
29条2項ただし書により、仲裁判断によらずに終了した場合、本条による完成猶予及び更新の効力は及ばない。終了後、民法147条のように6か月の猶予が残るかについては、実務上解釈が分かれている。実務のポイント:慎重な代理人は、どちらの解釈になっても大丈夫なように、終了から6か月以内に訴訟や再度の請求を済ませる前提で動く。安全側の解釈に賭けて期限を延ばす人はいない
間違えやすい点 AI による整理
- 仲裁は仲裁機関に申立書を出した日に始まる、と思われがちである。だが法律上の原則は「相手方への通知の日」である。逆に、契約で機関の規則を選んでいる場合は、その規則が別段の合意として優先し、機関の受領日が基準になりうる。自分の契約がどちらに当たるかを確かめないまま日付を計算すると、数日のずれで時効を落とすことがある
- 「仲裁を始めれば時効は止まるか」という問いの立て方そのものが半分誤っている。本当に問うべきは「どう終われば止まったままでいられるか」である。仲裁判断によらずに終わった場合(取下げ、仲裁廷による手続の終了決定など)、2項ただし書により本条の効力は及ばない。その場合に民法147条のような終了後6か月の猶予を認めるべきかは、実務上解釈が分かれている
- あなたにとって仲裁条項は「揉めたら仲裁で」という穏やかな取り決めにすぎない。しかし法律の目から見れば、裁判所への扉を閉める合意である(14条により、仲裁合意の対象事項について訴えても原則として却下される)。時効を止めるつもりで地裁に訴えて却下されると、民法147条1項により終了から6か月は完成が猶予されるが、その6か月の間に結局仲裁を起こし直さなければならない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 効力が生じる行為 | 仲裁法29条:仲裁手続における請求(開始は相手方への通知日が原則) | 民法147条:裁判上の請求(訴えの提起) 民法150条:催告(裁判外の請求) |
| 時効への効果 | 完成猶予及び更新 | 完成猶予(確定判決等で権利が確定すれば更新) 6か月の完成猶予のみ(更新なし) |
| 途中で終わった場合 | 仲裁判断によらずに終了すれば本条の効力は生じない(終了後の猶予は解釈が分かれる) | 権利確定なく終了しても終了時から6か月は完成猶予 猶予期間中の再度の催告は効力なし |
| 裁判所の関与 | 不要(当事者間の通知で開始) | 必要(訴状の提出) 不要 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も当事者の別段の約定がない限り、相手方が仲裁付託の通知を受領した時に仲裁程序が開始する。提付仲裁は民法上の時効中断事由とされる。
韓国も別段の合意がない限り、被申立人が仲裁要請書を受領した日に開始するとし、モデル法の構造を踏襲している。
ドイツは仲裁付託の申立てを被申立人が受領した日を開始日とし、時効は仲裁手続の開始によって停止(Hemmung)すると民法典に明記している。
米国の統一仲裁法改訂版は記録による通知で仲裁を開始すると定める。時効との関係は州法に委ねられ、扱いは州ごとに異なる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先への代金請求権の時効が来週満了するのに、仲裁申立書を書き上げる時間がない。どうすればいいか? 仲裁機関を指定していない契約なら、仲裁に付す意思と請求の対象を特定した通知が相手に届いた日が開始日になる。配達証明付きの内容証明で日付を残せるかが勝負になる
- あなたは仲裁を申し立てられた側である。相手は時効満了の直前に通知を送ってきた。その通知が本当に「特定の民事上の紛争」を示しているか、契約で選ばれた仲裁規則では開始日がいつになるかを検証する。それ次第で、あきらめかけていた時効完成の主張が生き返る可能性がある
- 申立人が途中で仲裁を取り下げた。時効は止まっていなかった扱いになるおそれがある。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 契約の仲裁条項で、仲裁機関の規則が指定されているかを確認する。指定があれば、その規則上の開始日(例:機関による申立書の受領日)を基準にする2. 指定がなければ、紛争と請求の対象、仲裁に付す意思を明記した通知を配達証明付き内容証明で送り、到達日の証拠を残す3. 契約に通知条項(宛先や方法の指定)があれば、それに従う4. 手続中に取下げを求められても、仲裁判断または和解的仲裁判断(38条)で終わる道筋を確保してから応じる
訴えられた側:1. 通知の到達日と、選ばれた仲裁規則上の開始日を照合し、時効満了日より後でないかを計算する2. 通知が紛争を特定していなければ、開始の効力そのものを争う余地がある3. 仲裁合意の有効性や範囲に疑義があれば、早い段階で仲裁廷の権限を争う4. 時効の抗弁は事実関係の主張と一緒に、最初の書面で明確に出しておく
時効(請求できる期限):本条自体に期限はない。対象となる債権の時効は、原則として民法166条により、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年。仲裁判断は確定判決と同一の効力を持つ(45条1項)ため、民法169条により判断後の新たな時効期間は10年と解されている。仲裁判断の取消しの申立ては、仲裁判断書の写しの送付を受けた日から3か月以内(44条2項)(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通知の特定性に関する見解:1項の通知は、どの民事上の紛争を仲裁に付すのかが相手方に識別できる程度に特定されている必要があると解される。特定を欠く通知では開始の効力が争われうる。
2項ただし書後の猶予をめぐる見解の対立:仲裁判断によらずに終了した場合に、民法147条1項と同様に終了後6か月の完成猶予を認めるべきかについては、肯定・否定の両方の見方があり、実務上解釈が分かれている。
改正沿革 AI による整理
- 平成15年(2003年)制定、平成16年(2004年)施行 UNCITRAL モデル法に準拠した仲裁法の制定で新設。仲裁手続の開始時点を通知日とし、仲裁手続における請求に時効中断の効力を認めた
- 平成29年(2017年)民法改正整備法による改正、令和2年(2020年)4月施行 民法の時効制度の見直しに合わせ、2項の「時効中断の効力」を「時効の完成猶予及び更新の効力」に改めた
改正の年表
- 1.平成15年(2003年) 新設:UNCITRAL モデル法に準拠した仲裁法の制定により新設(平成16年施行)。開始時点を通知日とし、仲裁手続における請求に時効中断の効力を認めた。
- 2.平成29年(2017年) 改正:民法(債権関係)改正に伴う整備法により、2項の「時効中断の効力」を「時効の完成猶予及び更新の効力」に改めた(令和2年4月施行)。
- 仲裁法 第13条仲裁合意の効力と書面要件
- 仲裁法 第14条仲裁合意の対象事項についての訴えの却下
- 仲裁法 第26条手続準則は当事者の合意で定める
- 仲裁法 第40条仲裁手続の終了事由、ただし書の判断基準
- 仲裁法 第45条仲裁判断の確定判決と同一の効力
- 民法 第147条裁判上の請求による完成猶予及び更新の一般則
- 民法 第150条催告による6か月の完成猶予
- 民法 第169条判決等で確定した権利の時効期間10年
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