労働契約法 第10条
クイックジャンプ
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 労働契約法第10条は、日本の労働契約法に含まれる条文です。
- 労働契約法第10条の条文原文は「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変…」で始まります。
- 労働契約法第10条は第二章 労働契約の成立及び変更に置かれています。
- 労働契約法の公布日は平成19年12月5日です。
- 労働契約法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年4月5日時点では廃止情報はありません。
- 労働契約法第10条の前の条は労働契約法第9条です。
- 労働契約法第10条の次の条は労働契約法第11条です。
- 労働契約法第10条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第10条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128 - 本サイト収録
労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第10条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年4月5日)https://lawplayer.com/jp/article/419AC0000000128/10
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点労働契約法10条は、就業規則の不利益変更が有効となる要件として、変更後の就業規則の周知と、不利益の程度・必要性・相当性・労使交渉を総合した合理性を要求する。
Q · 会社が就業規則を変えて退職金や給料を下げると言ってきたら、従うしかないの?
従うとは限らない。周知と合理性を欠けば変更は無効
労働契約法10条により、就業規則の不利益変更が労働者を拘束するのは、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ変更が合理的なときに限られます。合理性は、労働者の受ける不利益の程度・変更の必要性・内容の相当性・労働組合等との交渉の状況を総合して裁判所が判断します。とくに退職金や賃金など重要な労働条件の引き下げには高度の必要性が要求され、代償措置のない一方的カットは無効を争えます。
解説
ある朝、会社から「就業規則を改定し、来月から退職金の計算方式を変えます」というメールが届く。将来の退職金が数百万円削られるかもしれない。多くの人は「会社が決めたなら従うしかない」と肩を落とす。だが労働契約法10条を読んだあなたは、そこに四つの戦場があることを知る。会社が就業規則の不利益変更で労働条件を引き下げられるのは、(1)変更後の規則を労働者に周知し、(2)その変更が合理的なとき、に限られる。そして合理性は「労働者の受ける不利益の程度」「変更の必要性」「内容の相当性」「労働組合等との交渉の状況」を総合して裁判所が判断する。会社の一方的な宣言で自動的に決まるのではない。四つの天秤すべてで会社が釣り合いを取れなければ、その不利益変更は無効になりうる。さらに但書を使えば、個別に「就業規則では変えない」と合意した部分は守られる。あなたが諦めるかどうかは、この四つの天秤を知っているかどうかで決まる。
法的な位置づけ
労働契約法10条は、就業規則の不利益変更による労働条件の変更が労働契約を拘束するための要件を定める規定である。変更後の就業規則の労働者への周知と、不利益の程度・変更の必要性・内容の相当性・労使交渉の状況を総合した合理性を要件とし、合理性を欠く変更は労働契約の内容とならない。但書により個別合意で変更しないとした部分は除かれる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.変更後の就業規則が周知されたか確認 掲示・配布・イントラ掲載など、労働者が内容を知り得る状態に置かれた実態があるかを確認する。周知がなければ10条本文により変更そのものの効力が生じず、賃下げの根拠が崩れる
- 2.不利益の程度を金額で数値化 退職金・賃金・手当などの引き下げ額を具体的な金額で算出する。重要な労働条件であるほど会社側に高度の必要性が要求されるため、深刻度を金額で示すことが合理性否定の足場になる
- 3.労使協議の段階で反対意見を書面で記録 過半数組合または過半数代表として、変更案の協議段階で反対意見を正式に書面で残す。後の裁判で『労働組合等との交渉の状況』が争点になったとき、合理性を否定する決め手になる
- 4.旧条件で働き差額請求または無効確認で争う 合理性を欠くと考える場合、変更前の労働条件で働き続けて差額を請求する形、または変更の無効確認を求める形で争う。個別合意で『就業規則では変更しない』とした部分は但書で守られるため、契約書・合意書・メールを確保する
よくある質問 AI による整理
Q1就業規則の不利益変更とは何ですか?
使用者が就業規則を変えて賃金・退職金・手当などの労働条件を引き下げることです。労働契約法10条により、周知と合理性がなければ労働者を拘束しません。
Q2就業規則の合理性はどう判断されますか?
労働者の受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況などを総合して裁判所が判断します。一つでも欠けると無効になり得ます。
Q3退職金の減額は違法ですか?
ただちに違法とは限りませんが、退職金は重要な労働条件のため、最高裁は高度の必要性に基づいた合理的な内容を要求します。代償措置のないカットは無効を争えます。
Q4就業規則の周知とはどの程度必要ですか?
労働者が内容を知ろうと思えば知り得る状態にすることです。掲示・配布・イントラ掲載などの実態が必要で、金庫にしまったままでは変更の効力が生じません。
Q5第四銀行事件とはどんな判例ですか?
賃金・退職金など重要な労働条件の不利益変更には高度の必要性に基づいた合理的な内容を要するとした最高裁判決(最判平成9.2.28)です。合理性審査の基準を示しました。
Q6就業規則の変更に同意していない場合どうなりますか?
原則は労働契約法9条で個別合意が必要ですが、10条の周知と合理性を満たせば同意がなくても変更が及びます。合理性を欠けば旧条件が維持されます。
Q7賃金請求権の時効は何年ですか?
労働基準法115条により、賃金請求権は当面3年(本則5年、2020年改正の経過措置)、退職金請求権は5年です。最新の改正状況をご確認ください。
Q8就業規則変更の意見聴取とは何ですか?
労働基準法90条が定める、過半数組合または過半数代表者から意見を聴く手続です。意見聴取の瑕疵は10条の合理性判断を揺さぶる材料になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1会社が就業規則を変えて給料を下げるって言ってきました。従うしかないんですか?
従うしかないとは限りません。10条は、変更後の就業規則を労働者に周知し、かつ変更が合理的なときに限って労働条件の引き下げを認めます。合理性を欠けば、9条の合意原則に戻り、あなたの旧条件が維持されます。実務のポイント:会社は「就業規則を変えた」と言うが、実質的な周知(労働者が内容を知りうる状態にすること)を怠っているケースが驚くほど多い。周知がなければ変更の効力自体が生じない。まず掲示・配布・イントラ掲載の実態があったかを確認するのが第一手
Q2みんな一律で下げられたから、文句は言えないですよね?
一律でも争えます。全員が下がったことは合理性を保証しません。とくに賃金・退職金のような重要な労働条件の引き下げには、最高裁は高度の必要性を要求します(第四銀行事件、最判平成9.2.28)。実務のポイント:合理性判断の分かれ目は代償措置の有無です。経過措置や激変緩和、他の手当の増額といった埋め合わせがあるかどうかで結論が変わる。代償措置ゼロの一方的カットは無効と判断されやすい。会社の説明資料に代償措置が書かれているかを真っ先に見る
Q3うちの会社、労働組合がないんですが、それでも争えますか?
争えます。10条の「労働組合等との交渉の状況」は合理性を判断する一要素にすぎず、組合がない会社では過半数代表者との協議や個別の意見も考慮されます。合理性全体は周知・不利益の程度・必要性・相当性で総合判断されます。実務のポイント:組合のない会社では、過半数代表者の選出手続が形骸化していることが多い。代表者が会社の指名だったり、選出の実態がなかったりすれば、労働基準法90条の意見聴取手続に瑕疵があるとして、合理性を大きく揺さぶれる。誰がどう代表に選ばれたかを確認する
間違えやすい点 AI による整理
- 「就業規則は会社が作るものだから、会社が自由に書き換えられる」と思い込んでいる。だが不利益な変更には合理性という壁があり、合理性を欠けば変更は無効。あなたの旧条件がそのまま生き残る
- 合理性が必要なこと自体は知っていても、その合理性のハードルが賃金や退職金のような重要な労働条件では格段に高くなることまでは知らない人が多い。最高裁は重要な権利の不利益変更には、単なる必要性ではなく「高度の必要性に基づいた合理的な内容」を要求する(第四銀行事件、最判平成9.2.28)。深刻度を見誤ると交渉の構えを間違える
- あなたから見れば「全員一律に下がったのだから不公平ではない、文句は言えない」だが、法律から見れば、集団的に下げられたこと自体が不利益変更の問題。全員が下がっても、合理性がなければ全員分の変更が無効になりうる。この落差を知らないと、争えるものを泣き寝入りで手放す
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 変更の効力要件 | 労契法10条:周知 + 合理性(四要素総合)があれば同意なく拘束 | 労契法9条:原則として労働者の個別合意が必要 労契法7条:採用時の合理的就業規則の周知で契約内容を決定 |
| 場面 | 既存の労働条件を不利益に変更する場面 | 就業規則による不利益変更の原則禁止(例外が10条) 労働契約の成立(採用)時点の契約内容の決定 |
| 個別合意との関係 | 但書により『就業規則では変更しない』とした合意部分は守られる(12条該当時を除く) | 合意原則そのもの。合意なき不利益変更を許さない 周知された合理的就業規則が契約内容となる |
| 最低基準効 | 但書が12条を明示参照 | — 労契法12条:就業規則を下回る労働契約を無効とする |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も工作規則による一方的な労働条件引き下げを判例上制限し、個別合意や合理性を問題とする点で日本と類似する
韓国は就業規則の不利益変更に労働者の集団的同意(過半数の同意)を原則要求しており、合理性判断中心の日本より同意要件が厳格
ドイツは事業所委員会の共同決定(Mitbestimmung)を通じて就業規則類の変更を規律し、個別の合理性審査より集団的協議手続を重視する
米国は随意雇用が原則で、使用者はハンドブックを比較的自由に変更できるが、明示的約束や黙示の契約があれば修正が制限される州もある
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 勤続15年、退職金だけを心の支えに働いてきた。ある日「経営難のため退職金規程を見直す」と就業規則が改定され、見込額が四割減る。だが10条は、退職金のような重要な労働条件の引き下げには「高度の必要性に基づいた合理的な内容」を要求する(第四銀行事件)。代償措置のない一方的カットは、合理性を欠くとして無効を争える
- もし会社が、変更後の就業規則を金庫にしまったまま誰にも見せず「先月から変わっている」と言い出したら、どうなる? 周知がなければ、そもそも変更は効力を生じない(10条本文)。賃下げの根拠が崩れる
- あなたが中小企業の経営者で、固定残業代制度を導入して人件費を抑えようと就業規則を変えた。従業員が「不利益変更だ」と訴えてきた。周知・必要性・相当性・労使協議、四つのどれか一つでも欠けると、変更全体が無効になり、過去の差額を遡って払う羽目になる
- 在宅勤務手当が突然「制度見直し」の名目で廃止された。福利厚生の整理というラベルでも、実質的な不利益変更なら10条の合理性審査の対象。手当の額が大きいほど、会社側の説明責任は重くなる
- 労使交渉が大詰めで、あと数日で改定就業規則の施行日。反対するなら、過半数代表として正式な反対意見を今のうちに書面で残しておかないと、後の裁判で「交渉の状況」を有利な証拠にできなくなる
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず変更後の就業規則が本当に周知されたか確認、掲示・配布・イントラ掲載などの実態がなければ変更は効力を生じない(10条本文) 2. 不利益の程度を金額で数値化、退職金・賃金など重要な権利なら会社に高度の必要性が要る3. 変更前の労働条件で働き続け、差額を請求する形で争う、または変更の無効確認を求める4. 入社時や個別合意で「就業規則では変更しない」と約束した部分があれば但書(第10条但書)で守る。契約書・合意書・メールを確保
訴えられた側:1. 変更の必要性を経営資料で裏付け、特に賃金・退職金カットは高度の必要性を立証できるか精査2. 代償措置(経過措置、激変緩和、他の手当の増額)を用意し内容の相当性を高める3. 過半数組合または過半数代表との誠実な協議を記録に残す(労働基準法90条の意見聴取と10条の交渉状況) 4. 変更後の就業規則を確実に周知(労働基準法106条)、周知の証拠を残す。四要素のどれか一つでも欠けると変更全体が無効化しうる
時効(請求できる期限):不利益変更そのものの出訴期限はないが、未払賃金・退職金の差額請求権には消滅時効がある。賃金請求権は労働基準法115条により当面3年(本則5年、2020年4月改正の経過措置、最新の改正状況をご確認ください)、退職金請求権は5年。起算点は各支払日
学説
通説:10条の合理性は四要素の総合判断であり、重要な労働条件(賃金・退職金)の引き下げには加重された合理性(高度の必要性)が要求される。代償措置・経過措置の有無が合理性判断の分水嶺になるとされる
改正沿革 AI による整理
- 平成19年(2007年)労働契約法制定 秋北バス事件(最大判昭和43.12.25)、第四銀行事件(最判平成9.2.28)などで確立した「就業規則の合理的変更による労働条件変更」の判例法理を明文化して新設。周知要件と合理性判断の四要素(不利益の程度・必要性・内容の相当性・労使交渉の状況)を条文化した。以後、本条自体の実質的改正はない
改正の年表
- 1.平成19年(2007年) 新設:労働契約法制定により、秋北バス事件・第四銀行事件等で確立した『就業規則の合理的変更による労働条件変更』の判例法理を明文化。周知要件と合理性判断の四要素(不利益の程度・必要性・内容の相当性・労使交渉の状況)を条文化した。以後、本条自体の実質的改正はない
- 労働契約法 第7条合理的な就業規則の周知による労働契約内容の決定、変更場面の前提規定
- 労働契約法 第9条労働者の合意なき不利益変更を原則禁止、本条はその例外
- 労働契約法 第11条就業規則変更の手続を労働基準法に委ねる接続規定
- 労働契約法 第12条就業規則を下回る労働契約を無効とする最低基準効、本条但書が明示的に参照
- 労働基準法 第89条就業規則の作成・届出義務、変更手続の前提
- 労働基準法 第90条就業規則変更時の過半数代表の意見聴取義務
- 労働基準法 第106条就業規則の周知義務、本条の周知要件と連動
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める