保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
要点健康保険法61条は、保険給付を受ける権利について譲渡・担保提供・差押えを全面的に禁止する。ただし振り込まれた後の預金債権には効力が及ばない。
Q · 借金の取り立てを受けていますが、傷病手当金も差し押さえられてしまいますか?
受給権は全額守られるが、口座に入った後の預金は守られない
健康保険法61条により、保険給付を受ける権利は譲り渡すことも、担保に供することも、差し押さえることもできません。傷病手当金や高額療養費の請求権は、給与のように4分の3だけが保護される(民事執行法152条)のではなく、全額が保護されます。ただし守られているのは受給権であり、口座に振り込まれた瞬間に預金債権へ転化し、61条の効力は及びません(最判平成10年2月10日)。差押予告が届いた段階で、給付の振込先を専用口座に切り替えておくことが実務上の分岐点になります。
借金の取り立てに追われている最中に、病気で働けなくなったとする。傷病手当金が入る予定だが、それも持っていかれるのではないか。答えは否である。健康保険法61条は、保険給付を受ける権利について譲渡・担保提供・差押えの三つをまとめて封じている。しかも厚生年金保険法41条や国民年金法24条が但書で国税滞納処分を例外に置いているのに対し、本条には但書がない。給与は4分の3までしか守られない(民事執行法152条)が、傷病手当金・出産手当金・高額療養費の請求権は割合の議論すら起きず、丸ごと手つかずで残る。ただし決定的な落とし穴がある。振り込まれた瞬間、それは銀行に対する預金債権へ姿を変え、61条の傘の外に出る。守られているのは「受け取る権利」であって、「受け取った後の金」ではない。
健康保険法61条は、保険給付を受ける権利の処分制限を定める規定であり、当該権利を譲り渡すこと、担保に供すること、及び差し押さえることをいずれも禁止する。傷病手当金、出産手当金、高額療養費等の請求権が対象となり、割合による制限ではなく全部について効力が及ぶ。保護の対象は受給権そのものであり、支給後に転化した預金債権は含まれない。
法律により差押えが禁じられた債権のことです。健康保険法61条の保険給付受給権、生活保護費、年金などが該当し、債権者は強制執行の対象にできません。
残ります。差押禁止財産は破産法34条3項2号により自由財産とされ、破産財団に組み込まれません。現金99万円の自由財産枠とは別勘定で扱われます。
差し押さえられません。高額療養費(健康保険法115条)も保険給付であり、支給決定前の請求権の段階から健康保険法61条の保護が及びます。
2年です(健康保険法193条1項)。起算点は傷病手当金なら労務不能であった日ごとにその翌日、療養費なら費用を支払った日の翌日となります。
差押禁止債権の範囲変更の申立て(民事執行法153条)により取戻しを図れます。給付由来の入金だと特定できるかが結果を大きく左右します。
厚生年金保険法41条や国民年金法24条は但書で国税滞納処分を例外としますが、健康保険法61条には但書がなく、受給権自体への滞納処分は条文上想定されていません。
なりません。医療機関が受け取る仕組みは債権譲渡ではなく代理受領として構成されています。61条が譲渡を禁じているため、この制度設計が採られました。
狙われているのが受給権か預金残高かを切り分けます。受給権なら61条で全額守られ、預金なら範囲変更の申立てを急ぐ必要があります。
かかりません。健康保険法62条が、保険給付として支給を受けた金品を標準として租税その他の公課を課すことを禁じているためです。確定申告にも載せません。業界裏話ヒント:非課税ということは翌年の住民税や保育料の算定にも乗らない一方、所得証明書上は収入がほぼゼロに見える。休職明けに住宅ローンや賃貸の審査を受ける予定があるなら、この空白期間の説明材料を先に用意しておく。
受給権そのものには手が出せません(健康保険法61条)。ただし口座に振り込まれた後は預金債権に変わり、差押えの対象になりえます(最判平成10.2.10)。業界裏話ヒント:差押命令は債務者本人に届くより先に銀行へ送達されるのが通常で、通知が来た時にはもう凍結されている。だから予告の段階で口座を分けるかどうかが実質的な勝負どころになる。
できません。61条が担保提供を明文で禁じているため、金融機関も担保に取れません。年金には独立行政法人福祉医療機構の年金担保貸付がありましたが、これは年金だけの特例で、しかも2022年3月末で新規申込みが終了しています。業界裏話ヒント:代わりに保険者側に高額医療費貸付制度があり、健保組合では傷病手当金相当額の独自貸付を持つところもある。組合のサイトに大きく載っていないことが多く、電話で聞いて初めて出てくる。
事業主の代理受領は本人の委任があれば可能ですが、保険者からの給付を会社側が一方的に相殺・控除することは受給権の処分にあたり、61条の趣旨から原則として認められません。業界裏話ヒント:傷病手当金支給申請書の振込先欄は本人口座を指定できる。事業主証明欄への記入は必要でも、金の流れ自体は本人指定に切り替えられる。この一枠を書き換えるだけで、力関係が入れ替わる。
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 保護の方式 | 健康保険法61条:譲渡・担保・差押えを全部禁止(割合の議論なし) | — |
| 本人自身の処分 | 本人による譲渡・担保提供も無効(意思の自由まで制限) | — |
| 国税滞納処分 | 但書がなく、受給権への滞納処分は条文上想定されていない | — |
| 振込後の扱い | 預金債権に転化した後は61条の効力が及ばない(最判平成10.2.10) | — |
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