労働基準法 第17条(前借金相殺の禁止)
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使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。
この条文の基本情報
前借金相殺の禁止とは何ですか?
定義前借金相殺の禁止とは、労働基準法第17条に定められた規定で、「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 労働基準法第17条(前借金相殺の禁止)は、日本の労働基準法に含まれる条文です。
- 労働基準法第17条の条文原文は「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。」で始まります。
- 労働基準法第17条は第二章 労働契約に置かれています。
- 労働基準法の公布日は昭和22年4月7日です。
- 労働基準法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 労働基準法第17条の前の条は労働基準法第16条です。
- 労働基準法第17条の次の条は労働基準法第18条です。
- 労働基準法第17条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第17条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - 本サイト収録
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第17条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/322AC0000000049/17
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点労働基準法17条は、使用者が前借金など労働を条件とする前貸債権を賃金と相殺することを禁じる。同意があっても無効で、違反には刑事罰が科される。
Q · 借金があるからって、給料から勝手に天引きされるのは合法なの?
労働の対価との相殺は禁止。同意書があっても違法
労働基準法17条により、使用者は前借金その他「労働することを条件とする前貸の債権」を賃金と相殺してはなりません。これは当事者が合意していても破れない強行規定で、借用書や同意書があっても天引きは正当化されません。違反すると刑事罰(同法119条、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)が科されます。ただし借金(消費貸借)の返済義務そのものは別問題として残り、貸主は賃金とは別ルートで請求できます。
解説
ホストクラブで「売掛」を背負わされた、来日のための渡航費を会社に立て替えてもらった、スカウトに前金をもらって店に入った。形は違っても構図は同じだ。「借金があるから辞められない、給料から天引きされて当然」と思い込まされている。労働基準法17条は、その思い込みを正面から壊す。「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」。つまり、働くことを条件に貸し付けた金を、雇い主が一方的にあなたの給料から差し引くことは法律で禁じられている。たとえあなたが借用書にサインしていても、だ。これは戦後、人を借金で縛りつける年季奉公や人身売買を断ち切るために置かれた条文で、違反した使用者には刑事罰(労基法119条、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)まで科される。借金の返済義務そのものは別問題として残るが、給料を盾に取られて働き続ける筋合いは、最初からない。
法的な位置づけ
労働基準法17条にいう前借金相殺の禁止とは、使用者が労働することを条件として労働者に貸し付けた金銭債権を、その労働者に支払うべき賃金と一方的に相殺することを禁ずる規律をいう。賃金全額払いの原則(同法24条)を前借金による人身拘束の場面で強化する強行規定であり、当事者の同意の有無を問わない。
手順
- 1.天引きを示す証拠を全て保存する 給与明細、借用書・同意書、振込記録、雇用主とのLINE・メールを保存する。何月分にいくら引かれたかを時系列で一覧化し、相殺の事実を客観的に示せる状態にする
- 2.在職中なら書面で中止を求める 「労基法17条違反の相殺にあたるため天引きの中止を求める」と書面またはメッセージで通知する。相手は刑事罰(119条)のリスクを意識して天引きを止めることが多く、在職中の一言が交渉力と証拠を残す
- 3.労働基準監督署へ申告する 管轄の労働基準監督署へ申告する。費用はほぼかからず、監督官の是正勧告という行政の圧力を引き出せる。相手が弁護士をつける前に動くと守勢に回らせやすい
- 4.未払賃金は民事で請求し、借金は切り分ける 違法な天引き分は未払賃金として民事請求する。借金の返済義務自体は別問題として残るため、相殺ではなく分割返済の協議として独立に処理し、両者を混ぜない
よくある質問 AI による整理
Q1前借金とは何ですか?
労働することを条件に使用者が労働者へ貸し付ける金銭です。入店時の衣装代立替、技能実習生の渡航費立替などが典型で、労基法17条はこれと賃金の相殺を禁じます。
Q2借用書にサインしても天引きは違法ですか?
違法になりえます。労基法17条は当事者の合意があっても相殺を禁じる強行規定で、同意書は天引きを正当化しません。ただし借金の返済義務自体は民法上残ります。
Q3前借金相殺禁止に違反するとどうなりますか?
使用者に刑事罰(労基法119条、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)が科されます。天引きされた分は未払賃金として請求できます。
Q4天引きされた給料は取り返せますか?
取り返せます。違法な相殺は無効なので、天引き分は未払賃金として請求可能です。労働基準監督署への申告と並行して民事請求できます。
Q5ホストの売掛金を給料から引かれるのは合法ですか?
売掛金の性質は事案で分かれますが、賃金天引きの形を取れば前貸債権との相殺として17条違反を主張する余地があります。記録の保存が反撃の起点になります。
Q6前借金相殺禁止と賃金全額払いの違いは何ですか?
24条は賃金の全額払いを一般的に定め、17条はそのうち前借金による相殺を特に名指しで禁じます。17条は人身拘束の遮断という趣旨が強い規定です。
Q7社会保険料や税金の天引きも違法ですか?
違法ではありません。所得税・社会保険料の控除や労使協定に基づく控除(24条但書)は適法です。17条が禁じるのは前借金との相殺に限られます。
Q8技能実習生の渡航費返済を理由に賃金を引けますか?
前借金による足止めの典型で、17条と強制労働の禁止(労基法5条)が同時に問題になります。返済を理由とする賃金控除は違法と評価されやすい場面です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1借用書にサインしてるんですけど、それでも天引きは違法なんですか?
違法になりえます。労基法17条は当事者の合意があっても相殺を禁じる強行規定なので、あなたがサインした同意書は天引きを正当化しません。ただし借金の返済義務そのものは民法上残る点に注意してください。実務のポイント:使用者側は『本人が同意した』を盾にしがちですが、17条では同意は抗弁にならない。だから労基署に持ち込むと、相手は『合意があった』という主張が通らないことを知っていて、急に態度を軟化させることが多い
Q2ホストの売掛金を給料から引かれてます。これも17条で取り返せますか?
売掛金の法的性質は事案により判断が分かれる論点ですが、それを賃金から天引きする形を取っていれば、前貸金との相殺として17条違反を主張する余地があります。客の未払いをキャストに転嫁する構造自体の有効性も別途争えます。実務のポイント:夜職の売掛は『業界の慣習だから仕方ない』と思わされがちですが、給料天引きという形式に落とし込まれた時点で労働法の土俵に乗る。慣習を理由に諦めず、給与明細と天引き記録を残しておくことが反撃の起点になる
Q3天引きが違法なら、借りたお金も返さなくていいってことですか?
それは違います。17条が禁止するのは『賃金との相殺』という回収方法だけで、消費貸借(借金)の返済義務自体は有効に残ります(民法587条)。貸主は賃金とは別ルートで返済を請求できます。実務のポイント:ここを誤解して『踏み倒せる』と動くと、後で別訴で返済を求められて不利になる。賢いのは、違法な天引き分を未払賃金として取り戻したうえで、借金は分割返済として独立に協議する切り分け方。両者を混ぜないことが交渉を有利にする
間違えやすい点 AI による整理
- 「借りた金は給料から引かれて当たり前、サインもした」と思っている人が多いが、17条は当事者が合意していても相殺を禁じる強行規定だ。あなたの同意の有無を問わない。同意書があるから諦める、という発想そのものが法律の前提とずれている
- 「天引きが禁止なら、借金も返さなくていい」と早合点する人がいるが、これは前提が逆。借金(消費貸借)の返済義務自体は民法上有効に残る。17条が禁じるのは『賃金との相殺』という回収方法だけで、貸主は別途返済を請求できる。禁止されているのは縛りの手段であって、債務の消滅ではない
- 「給料からの天引きは全部違法」と思われがちだが、それも正確ではない。所得税・社会保険料の控除や、労使協定に基づく控除(労基法24条)は適法。17条が狙い撃ちにするのは『労働することを条件とする前貸』に限られる。どの天引きが許され、どれが禁止かの線引きを知らないと、争うべき相手を間違える
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 禁止の対象 | 17条:前借金その他労働を条件とする前貸債権と賃金の相殺 | 24条:賃金の一部控除(全額払いの原則) 16条:労働契約不履行の賠償額の予定 |
| 趣旨 | 前借金による人身拘束(足止め)の遮断 | 賃金の確実な受領の確保 違約金による足止めの禁止 |
| 同意があれば適法か | 不可(強行規定、同意は抗弁にならない) | 労使協定があれば一部控除は可 不可(賠償予定そのものを禁止) |
| 罰則 | 119条(6か月以下の拘禁刑等) | 120条(30万円以下の罰金) 119条(6か月以下の拘禁刑等) |
他国ではどう定めているか 4 か国
雇主が前もって賃金を控除して違約金・賠償費用に充てることを禁止。前借金そのものより違約金的控除に焦点があるが、賃金からの一方的控除を封じる点で趣旨が重なる
전차금(前借金)その他労働を条件とする前貸債権と賃金の相殺を禁止。日本法17条をほぼ同趣旨で継受しており、構造が最も近い
差押えが禁止される債権(賃金の一定部分を含む)については相殺を禁止。前借金に限定しないが、賃金の生計保障部分を相殺から守る点で機能が共通する
債務を理由に労働を強制する peonage を禁止。賃金相殺の技術的規律ではなく債務労働そのものの禁止だが、前借金拘束を断つという根本目的を共有する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、入店時に「衣装代・講習代」として数十万円を会社に立て替えてもらい、その分を毎月の給料から天引きされていたら、それは合法だろうか。前貸金と賃金の相殺にあたる可能性が高く、17条違反として返還を求められる。あなたが署名した同意書があっても結論は変わらないことが多い
- ホストやキャバクラで客の未払い分を「売掛」としてキャストに背負わせ、給料から引いていく。これが「労働することを条件とする前貸」と評価されれば17条の射程に入る。実務上、売掛金の法的性質は事案により判断が分かれており、安易に有効・無効を断言できない論点だが、給料天引きという形を取った時点で争う余地が生まれる
- 技能実習生として来日し、送り出し機関への手数料や渡航費を会社が立て替え、その返済を理由に賃金から控除され、辞めたら一括返済を迫られる。これは前借金による足止めの典型で、17条と強制労働の禁止(労基法5条)が同時に問題になる場面
- あなたが小さな会社の経営者で、辞めると言い出した従業員に「入社時に貸した引っ越し代があるだろう、給料から引くぞ」と言ったとする。残り14日で退職という局面で、その一言が17条違反の証拠になりかねない。貸付と賃金は切り離して処理しないと、刑事罰のリスクを自分で作ることになる
- 友人が『借金を理由に店を辞めさせてもらえない』と相談してきた。あなたが「その天引きは労基法17条で禁止されている、借金の返済と給料は別だ」と一言伝えられれば、友人は労基署に駆け込む足場を得る
取るべき行動
被害を受けた側:1. 給与明細、借用書・同意書、天引きを示す振込記録、雇用主とのやり取り(LINE・メール)を全て保存する、これが立証の核になる2. 天引きされた金額を時系列で集計し、何月分にいくら引かれたかを一覧化する3. 在職中なら書面で『労基法17条違反の相殺にあたるため中止を求める』と通知、辞めた後でも未払賃金として請求できる4. 労働基準監督署へ申告(無料、是正勧告を引き出せる)、並行して未払賃金は民事で請求。借金の返済義務は別問題なので、相殺ではなく別途協議として切り分ける
訴えられた側:1. 従業員への貸付がある場合、絶対に賃金から直接相殺しない、貸付契約と賃金支払を別々に処理する2. 既に天引きしているなら、速やかに該当分を賃金として支払い直し、貸付金は別途返済請求の形に組み替える3. 返済を求めること自体は適法なので、分割返済の合意書を賃金とは独立に作る4. 17条は強行規定で当事者の同意があっても違反になる点を理解し、『本人が納得していた』という抗弁は通用しないと心得る
時効(請求できる期限):天引きされた分は未払賃金として請求でき、賃金請求権の消滅時効は当分の間3年(労働基準法115条、附則。本来は5年、最新の改正状況をご確認ください)、起算点は各賃金の支払期日。17条違反の罰則(労基法119条)の公訴時効は別途進行する
学説
通説:17条の「労働することを条件とする前貸の債権」とは、貸付が労働の継続を担保する関係に立つものをいい、純然たる生活資金の貸付などは含まれないと解される。賃金全額払い(24条)の特則として、前借金による足止めの場面で相殺を絶対的に禁止する強行規定と位置づけられる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和22年(1947年) 新設:労働基準法の制定により新設。戦前の年季奉公・芸娼妓の身売り等、前借金による人身拘束を断ち切る目的で、強制労働の禁止(5条)・賠償予定の禁止(16条)と一体の規律として置かれた
- 労働基準法 第5条強制労働の禁止、前借金拘束と表裏の関係
- 労働基準法 第16条賠償予定の禁止、足止め手段の禁止で同趣旨
- 労働基準法 第18条強制貯金の禁止、賃金拘束防止で連続
- 労働基準法 第24条賃金全額払いの原則、相殺制限の一般則
- 労働基準法 第119条本条違反に対する刑事罰
- 民法 第505条相殺の一般規定を労働者保護で修正
- 民法 第587条消費貸借、前借金の返済義務の根拠
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