刑事訴訟法 第350条の6
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- 検察官は、司法警察員が送致し若しくは送付した事件又は司法警察員が現に捜査していると認める事件について、その被疑者との間で第三百五十条の四の協議を行おうとするときは、あらかじめ、司法警察員と協議しなければならない。
- 2.検察官は、第三百五十条の四の協議に係る他人の刑事事件について司法警察員が現に捜査していることその他の事情を考慮して、当該他人の刑事事件の捜査のため必要と認めるときは、前条第一項の規定により供述を求めることその他の当該協議における必要な行為を司法警察員にさせることができる。この場合において、司法警察員は、検察官の個別の授権の範囲内で、検察官が第三百五十条の二第一項の合意の内容とすることを提案する同項第二号に掲げる行為の内容の提示をすることができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第350条の6は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第350条の6の条文原文は「検察官は、司法警察員が送致し若しくは送付した事件又は司法警察員が現に捜査していると認める事件について、その被疑者との間で第三百五十条の四の協議を行おうとするとき…」で始まります。
- 刑事訴訟法第350条の6は第一節 合意及び協議の手続に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第350条の6の前の条は刑事訴訟法第350条の5です。
- 刑事訴訟法第350条の6の次の条は刑事訴訟法第350条の7です。
- 刑事訴訟法第350条の6には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第350条の6 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第350条の6(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/350_6
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法350条の6は、協議・合意制度において検察官が被疑者との協議前にあらかじめ司法警察員と協議すべきこと、及び授権の範囲内で警察に供述聴取等を行わせられることを定める。
Q · 司法取引って検察官と二人だけの密談なんですか?
違います。350条の6で警察も連携します
刑事訴訟法350条の6により、検察官は被疑者と協議を行う前にあらかじめ司法警察員と協議しなければなりません。さらに他人の刑事事件の捜査に必要なときは、検察官の個別の授権の範囲内で、司法警察員が供述聴取などを行い、合意内容の提示までできます。つまり司法取引はあなたが向き合う相手が検察官一人ではなく、連携した捜査機関全体です。協議自体には弁護人の関与が必須です(350条の3)。
解説
「司法取引はアメリカの話」と思っている人は、知識が2018年で止まっている。日本にも協議・合意制度という名の司法取引が実在する。ただし致命的に重要な違いがある。日本版は「自分の罪を認めれば軽くしてもらう」自己負罪型ではなく、「他人の犯罪についての供述や証拠を差し出せば、自分の処分が軽くなる」捜査・公判協力型だ。350条の6は、その取引の舞台裏で検察官と警察(司法警察員)がどう連携するかを定める。検察官は単独で被疑者と取引を進めるのではなく、事件を捜査してきた警察と事前に協議し、供述聴取などの行為を警察に担わせ、合意内容の提示まで授権できる。なぜこれがあなたに関係するのか。あなたが何もしていなくても、誰かが自分の刑を軽くしたい一心であなたの名前を捜査機関に差し出す。その瞬間、あなたは会ったこともない取引の標的になる。引っ張り込みの危険、これがこの制度の影である。
法的な位置づけ
刑事訴訟法350条の6は、協議・合意制度における検察官と司法警察員の連携手続を定める規定である。検察官は被疑者との協議に先立って司法警察員と事前協議をすべき義務を負い、捜査上必要なときは個別の授権の範囲内で供述聴取等の行為を司法警察員に行わせることができる。捜査機関側の段取りを枠づけ、取引の濫用を内部から抑える手続的歯止めとして機能する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.接触されたら即答せず弁護人を呼ぶ 検察官や警察から「協力すれば軽くする」「まず話だけ」と接触されても、その場で一言も認めず黙秘権を行使し、直ちに弁護人を選任する。協議には弁護人の関与が必須であり(350条の3)、弁護人抜きの供述は避ける
- 2.何を誰についてどこまで話すかを弁護人と精査 提供する供述や証拠の範囲を弁護人と詳細に検討する。虚偽や誇張は合意破棄と虚偽供述等の罪に直結する。警察も供述聴取に関与する(350条の6)前提で、誰に何を話すかを一貫させる
- 3.見返りを合意書面で確定する 不起訴・軽い求刑などの見返りは、必ず書面の合意内容として確定する。口約束は無効。合意内容の提示が検察官の個別の授権の範囲内で行われているかも確認する
- 4.名指しされた側は相手供述が取引由来かを確認する 突然共犯として捜査対象になったら、相手の供述が協議・合意の見返りで得られたものでないかを最優先で疑う。弁護人を通じて他人の合意の存在と内容の開示を求め、取引供述の信用性を公判で争う
よくある質問 AI による整理
Q1協議・合意制度とは何ですか?
他人の犯罪についての供述や証拠を捜査機関に提供する見返りに、自分の処分が軽くなる日本版司法取引です。2018年施行で、対象は財政経済犯罪や薬物銃器犯罪などに限られます。
Q2日本の司法取引の対象となる犯罪は?
贈収賄・脱税・談合などの財政経済犯罪と、薬物・銃器に関する組織犯罪が中心です。殺人など生命身体に関する重大犯罪は原則対象外とされています。
Q3引っ張り込みの危険とは何ですか?
取引相手が自分の刑を軽くしたい一心で、無関係な第三者を共犯として虚偽に名指しする危険です。制度に構造的に内在するため、弁護人関与や虚偽供述等の罪で歯止めがかけられています。
Q4司法取引に弁護人は必須ですか?
必須です。刑訴法350条の3により、協議は弁護人の関与なしには行えません。検察官や警察が弁護人抜きで接触してきたら、その場で弁護人を呼ぶことが定石です。
Q5刑訴法350条の6は何を定めていますか?
司法取引における検察官と司法警察員の連携手続です。検察官は協議前に警察と事前協議し、授権の範囲内で警察に供述聴取や合意内容の提示を担わせることができます。
Q6司法取引で虚偽の供述をするとどうなりますか?
合意が破棄されるうえ、虚偽供述・証拠偽造等の罪に問われます。嘘や誇張を混ぜて取引を有利に進めようとすると、かえって新たな刑事責任を負います。
Q7司法取引で不起訴になることはありますか?
あります。協力内容に応じて検察官が不起訴や軽い求刑を合意内容とすることがあります。ただし見返りの内容は必ず合意書面で確定する必要があり、口約束は無効です。
Q8司法取引はいつから日本で始まりましたか?
2018年6月1日に協議・合意制度として施行されました。平成28年(2016年)の刑事訴訟法改正で新設され、最初の適用は同年の海外贈賄事件でした。
この条文についての質問 AI による整理
Q1日本にも司法取引ってあるんですか? 海外ドラマの話だと思ってました。
あります。2018年施行の協議・合意制度(刑訴法350条の2以下)がそれです。ただしアメリカと違い、自分の罪を認めて軽くする型ではなく、他人の犯罪の証拠を出して自分が軽くなる『捜査・公判協力型』に限られ、対象も財政経済犯罪や薬物銃器犯罪などの特定犯罪のみです。実務のポイント:弁護士の間でも、この制度は『使い勝手が悪く件数が伸びない』と見られてきました。最初の適用は2018年の海外贈賄事件で、年間の合意件数はごく少数です。だからこそ自分が標的にされたケースは珍しく、弁護人選びでこの制度に通じた人かどうかが決定的に効きます。
Q2誰かが取引で私の名前を出したら、私は反論できないんですか?
反論できます。協議・合意による供述は『自分の刑を軽くしたい』動機で歪む危険(引っ張り込みの危険)があり、公判で信用性を厳しく争えます。合意の存在と内容は公判で明らかにされ、検察官と警察の連携の範囲も350条の6で枠がはめられています。実務のポイント:取引供述だけで他人を有罪にすることへの警戒は裁判所も共有しており、補強証拠を求める傾向があります。名指しされた側は、まず相手の供述が取引の見返りかを確認するのが定石。これを知らずに『証言されたから不利だ』と諦める人と、信用性を突く人とで結論が真逆になります。
間違えやすい点 AI による整理
- 「日本に司法取引はない」と思っている人が大半だが、2018年から協議・合意制度として存在する。ただしアメリカ型の『自分の罪を認めて軽くする』自己負罪型ではなく、『他人の犯罪を明かして自分が軽くなる』捜査・公判協力型に限られる。この一点を誤解すると、制度の怖さの方向を間違える
- 司法取引の存在は知っていても、その最大のリスクである引っ張り込みの危険を軽く見ている人が多い。取引相手が自分の刑を軽くしたい一心で、無関係なあなたを共犯に仕立てる動機が制度に構造的に組み込まれている。だからこそ法は弁護人の必須関与(350条の3)や虚偽供述等の罪で歯止めをかけている。リスクの深刻度を知る者だけが、名指しされたとき正しく動ける
- 「取引なら検察官とだけ話せばいい」と考えがちだが、問いの立て方が間違っている。350条の6によれば、警察が供述聴取を担い、検察官の授権の範囲内で合意内容の提示までできる。あなたが向き合う相手は一人ではなく、連携した捜査機関全体である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 350条の6:検察官と司法警察員の連携手続(捜査機関側の段取り) | 350条の2:合意の定義と対象となる特定犯罪 350条の3:協議における弁護人の必須関与 |
| 主たる行為者 | 検察官 + 司法警察員(連携) | 検察官と被疑者・被告人 弁護人(被疑者側の防御) |
| 守ろうとする利益 | 捜査機関連携の枠づけによる取引濫用の抑制 | 制度の適用範囲の明確化 被疑者の防御権・取引の適正性担保 |
| 違反・欠落時の効果 | 授権の範囲を超えた警察行為は適法性を争われる | 対象外犯罪の合意は無効 弁護人関与を欠く協議・合意は無効 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は汚点証人(窩裡反)による刑の減免と、自己負罪型の認罪協商手続を分けて規定する。日本の捜査・公判協力型に最も近いのは證人保護法の汚点証人制度。
韓国は協議・合意に相当する一般的な司法取引制度を正式には導入していない。協力者の保護・減免は個別法令に断片的に存在するにとどまる。
ドイツは「主たる証人規定」により、重大犯罪の解明に協力した者の刑を減軽・免除できる。実体法上の量刑事由として規律する点が日本の手続法的構成と異なる。
米国の cooperation agreement は捜査協力に基づく量刑の大幅減免を広く認め、検察官の訴追裁量が極めて強い。日本は対象犯罪と手続を限定し裁量を絞る。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 経済事件で会社ぐるみの不正に関与してしまったあなた。検察官から「上層部の関与を話せば、あなた個人の処分は軽くする」と持ちかけられる。これが協議・合意制度だ。ただし弁護人の関与なしには協議自体ができず(刑訴法350条の3)、話す相手も検察官だけではない。350条の6により、事件を追ってきた警察が同席し供述を聴取する
- もし、ある日突然、会ったこともない誰かがあなたを共犯として名指ししたら? その人は司法取引で自分の刑を軽くするために、あなたを差し出したのかもしれない。引っ張り込みの危険だ。反証の準備期間はほとんどない
- 組織的な詐欺事件。末端のあなたが最初に捕まる。検察の狙いは本丸。あなたの供述が取引の材料になる
- 薬物事件で逮捕。あと数日で検察官が起訴か取引かを決める。弁護人は「上の売人の情報を出せば不起訴の可能性がある」と言う。だが嘘や誇張を混ぜれば合意は破棄され、虚偽供述等の罪に問われる。残された時間で何を、どこまで話すかを決めねばならない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 突然、共犯として捜査対象になったら、相手の供述が協議・合意(司法取引)の見返りで得られたものでないかを最優先で疑う2. 直ちに弁護人を選任し黙秘権を行使、取調べで安易に「知り合いだ」等を認めない3. 弁護人を通じ、他人の合意の存在と内容の開示を求める。取引供述は信用性を争える4. 引っ張り込みの危険は制度の既知の弱点であり、裁判所も警戒している点を主張の柱にする
訴えられた側:1. 取引を持ちかけられても即答しない。協議には弁護人の関与が必須(350条の3)、弁護人なしの供述は避ける2. 何を、誰について、どこまで話すかを弁護人と精査。虚偽や誇張は虚偽供述等の罪に直結し、合意も破棄される3. 見返り(不起訴や軽い求刑等)の内容は必ず合意書面で確定する。口約束は無効4. 警察も供述聴取に関与する(350条の6)前提で、誰に何を話すかを一貫させる
時効(請求できる期限):この連携規定自体に固有の期限はない。協議・合意は捜査段階、原則として公訴提起前に行われ、標的となる他人の犯罪の公訴時効が完成すれば取引の前提が消える。被疑者として接触を受けた場合、逮捕後最大23日の身柄拘束期間内に検察官が起訴・不起訴を決めることが事実上のタイムリミットになる(最新の運用状況をご確認ください)
学説
通説:協議・合意制度の最大の弱点は引っ張り込みの危険であり、これを抑えるため弁護人の必須関与(350条の3)、虚偽供述等の処罰、合意内容の書面化と公判での開示、そして350条の6による捜査機関連携の授権範囲限定が安全装置として組み合わされている、と理解するのが一般的である。
改正沿革 AI による整理
- 平成28年(2016年)公布、平成30年(2018年)6月1日施行 刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)により協議・合意制度が新設され、本条もゼロから新設された。検察官が司法警察員と事前協議し、協議における供述聴取等の行為を個別の授権の範囲内で警察に担わせる連携の枠組みを定めた
改正の年表
- 1.平成28年(2016年) 新設:刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)により協議・合意制度が新設され、本条もゼロから新設された。検察官が司法警察員と事前協議し、個別の授権の範囲内で供述聴取等の行為を警察に担わせる連携の枠組みを定めた。
- 2.平成30年(2018年) 改正:2018年6月1日に協議・合意制度が施行され、本条も同日効力を生じた。最初の適用は海外贈賄事件であった。
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