民事執行法 第117条(保証の提供による強制競売の手続の取消し)
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- 差押債権者の債権について、第三十九条第一項第七号又は第八号に掲げる文書が提出されている場合において、債務者が差押債権者及び保証の提供の時(配当要求の終期後にあつては、その終期)までに配当要求をした債権者の債権及び執行費用の総額に相当する保証を買受けの申出前に提供したときは、執行裁判所は、申立てにより、配当等の手続を除き、強制競売の手続を取り消さなければならない。
- 2.前項に規定する文書の提出による執行停止がその効力を失つたときは、執行裁判所は、同項の規定により提供された保証について、同項の債権者のために配当等を実施しなければならない。この場合において、執行裁判所は、保証の提供として供託された有価証券を取り戻すことができる。
- 3.第一項の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
- 4.第十二条の規定は、第一項の規定による決定については適用しない。
- 5.第十五条の規定は第一項の保証の提供について、第七十八条第三項の規定は第一項の保証が金銭の供託以外の方法で提供されている場合の換価について準用する。
この条文の基本情報
保証の提供による強制競売の手続の取消しとは何ですか?
定義保証の提供による強制競売の手続の取消しとは、民事執行法第117条に定められた規定で、「差押債権者の債権について、第三十九条第一項第七号又は第八号に掲げる文書が提出されている場合において、債務者が差押債権者及び保証の提供の時(配当要求の終期後にあつ…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第117条(保証の提供による強制競売の手続の取消し)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第117条の条文原文は「差押債権者の債権について、第三十九条第一項第七号又は第八号に掲げる文書が提出されている場合において、債務者が差押債権者及び保証の提供の時(配当要求の終期後にあつ…」で始まります。
- 民事執行法第117条は第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第117条の前の条は民事執行法第116条です。
- 民事執行法第117条の次の条は民事執行法第118条です。
- 民事執行法第117条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第117条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第117条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/117
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法117条は、差押債権者らの債権と執行費用の総額に相当する保証を買受けの申出前に提供すれば、執行裁判所が強制競売の手続を取り消さなければならないと定める。
Q · 船を差し押さえられました。競売を止めて船を動かすことはできますか?
全債権額相当の担保を買受けの申出前に積めば競売を取り消せます
民事執行法117条により、差押債権者および配当要求債権者の債権と執行費用の総額に相当する保証を、買受けの申出前に提供すれば、執行裁判所は強制競売の手続を取り消さなければなりません。前提として、債務名義を争う一時停止の裁判や、弁済受領・弁済猶予を示す文書(39条1項7号・8号)が必要です。取消決定には12条が適用されないため、確定を待たずに効力が生じ、船を差押えの枠から解放して稼働へ戻せます。担保は後日、停止が失効すれば債権者への配当原資になります。
解説
あなたの貨物船が、燃料代の未払いを理由に港で差し押さえられた。船は動かせず、乗組員の給料も停泊料も保険料も毎日出ていく。競売が進めば、船そのものを失う。ここで多くの船主が知らないのが民事執行法117条だ。あなたが債務名義を争って「強制執行の一時停止」の裁判を得ている、または債権者が弁済を受けた・弁済猶予を認めた文書がある。その状況なら、差押債権者と配当要求した債権者の債権額に執行費用を足した総額に相当する担保を、買受けの申出より前に積めば、執行裁判所は競売手続を取り消さなければならない。船は競売の枠から外れ、再び動かせる。担保は船の身代わりになり、後で執行停止が覆れば、その担保から債権者に配当される。船を売られる代わりに、担保を差し出して稼働と時間を買い戻す仕組みだ。
法的な位置づけ
民事執行法117条は、船舶等に対する強制競売において、債務者が執行停止文書の提出を前提に、差押債権者および配当要求債権者の債権と執行費用の総額に相当する保証を買受けの申出前に提供したとき、執行裁判所が競売手続を取り消すべきことを定める規定である。物としての船を金銭的担保に置き換え、資産の稼働価値を保全する仕組みとして機能する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.時間軸を最優先で確認する 開始決定・売却期日・買受けの申出のタイミングを押さえ、「買受けの申出前」という窓が残っているかを最初に確認する。売却期日の公告から逆算して準備に入る
- 2.一時停止の根拠文書を用意する 債務名義を争う手続で39条1項7号の一時停止の裁判を取るか、債権者から弁済受領・弁済猶予を承諾した旨の文書(8号)を得る。この文書が117条発動の前提になる
- 3.担保額を算定する 差押債権者と配当要求債権者の債権に執行費用を足した総額を算定する。基準時は保証提供の時、配当要求の終期後はその終期であることに注意する
- 4.担保の形を選んで取消しを申し立てる 現金供託に限らず有価証券などの方法も検討し(15条・78条3項準用)、執行裁判所に保証提供による強制競売手続の取消しを申し立てる。却下されたら執行抗告できる
よくある質問 AI による整理
Q1民事執行法117条とは何ですか?
船舶等の強制競売で、債務者が全債権と執行費用相当の担保を買受けの申出前に積めば、執行裁判所が競売手続を取り消さなければならないと定める規定です。船を担保に置き換えて解放する仕組みです。
Q2保証の提供による強制競売の取消しの担保額はどう計算しますか?
差押債権者と、保証提供の時(配当要求の終期後はその終期)までに配当要求した債権者の債権に、執行費用を足した総額です。基準時によって算入範囲が変わります。
Q3「買受けの申出前」とは具体的にいつまでですか?
入札や競り売りで買受けの申出が入る前までです。売却期日で申出が入ってしまうと117条の取消しは行使できません。開始決定から売却期日までの数週間が勝負です。
Q4執行停止文書(39条1項7号・8号)にはどんなものがありますか?
7号は強制執行の一時停止を命じる裁判の正本、8号は債権者が弁済を受け、または弁済猶予を承諾した旨を記載した文書です。これが117条発動の前提になります。
Q5供託した担保の有価証券は誰が換価しますか?
執行停止が失効して配当に回す際、執行裁判所が換価します。78条3項が準用され、金銭以外で提供された保証の換価方法が定められています。
Q6船舶競売の取消しは担保権実行(任意競売)にも準用されますか?
準用されます。189条により、船舶を目的とする担保権実行としての競売にも117条が及びます。抵当権実行による船舶競売でも取消しカードが使えます。
Q7漁船が競売にかけられた場合も117条で止められますか?
止められます。船舶であれば漁船でも対象です。担保を積んで解放し、その漁期の水揚げで返済原資を作る余地があります。買受けの申出前が条件です。
Q8国際海運の船舶アレストと117条の担保供託は同じですか?
発想は近いですが別制度です。117条は日本国内の強制競売手続の取消しで、船舶アレストはP&Iクラブの保証状(LOU)などで解放します。船を金額に翻訳する点は共通です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1船を差し押さえられました。借金を全部返さないと競売は止められないんですか?
全額返済は必須ではありません。117条は「弁済」ではなく「担保の提供」を求めます。差押債権者と配当要求債権者の債権に執行費用を足した総額に相当する担保を、買受けの申出前に積めば、裁判所は競売を取り消さなければなりません。実務のポイント:担保は現金供託に限らず、有価証券などの方法でも組めます(15条・78条3項準用)。現金を全額寝かせる前提で諦める船主が多いが、担保の形を工夫すれば資金繰りを保ったまま船を解放できる。ここを知る海事弁護士とそうでない弁護士で、船主の生死が分かれる
Q2担保を積んで船が戻ったあと、もし争いに負けたら担保はどうなりますか?
一時停止が失効すれば、執行裁判所はその担保から債権者に配当を実施します(117条2項)。船を売る代わりに、積んだ担保が弁済原資になるわけです。供託した有価証券は裁判所が換価します(78条3項準用)。実務のポイント:この仕組みは「船を金額に置き換える」ものなので、勝つ見込みが薄い争いで時間稼ぎに使うと、結局担保を失った上に稼働日数だけ買った形になる。117条は本案で勝てる見込みがある船主が船を守りながら戦うための道具であって、敗色濃厚な延命策ではない、と海事実務家は割り切る
Q3取消しの申立てが却下されたら、もう打つ手はないんですか?
執行抗告ができます(117条3項)。却下裁判に対して上級審の判断を求められます。逆に取消決定が出た場合、12条が適用されないため(117条4項)、確定を待たずに効力が生じ、船を即座に動かせるのが特徴です。実務のポイント:「取消決定は確定するまで効力がない」という一般ルール(12条)が船執行で外されているのは、船を一日でも早く稼働へ戻すため。この非適用を知らない相手方が「まだ確定していないから船は動かせないはず」と誤解して交渉してくることがある。制度設計の意図を握っている側が交渉で優位に立つ
間違えやすい点 AI による整理
- 「競売を止めるには、まず借金を全額返すしかない」と考えて絶望する船主が多い。だが問いの立て方が違う。117条が求めるのは弁済ではなく担保の提供だ。金銭でなくても、有価証券などの方法でよい(15条・78条3項準用)。返済ではなく「身代わりを置く」という発想に切り替えた瞬間、選択肢が現れる
- 「一時停止の文書さえあれば競売は止まる」と理解している人は多い。だがその深刻さを見落としている。一時停止は競売の進行を止めるだけで、船の差押えそのものは続く。船は港に縛られたまま、費用だけが出続ける。117条の担保を積んで初めて、船は差押えの枠から解放され、動かせるようになる
- 取消しの決定が出ても「確定するまで船は動かせない」と思い込む。実は逆で、117条1項の取消決定には12条が適用されない(117条4項)。確定を待たずに効力が生じるよう設計されている。船を一日でも早く稼働に戻すための特則で、この一点が船主にとっての時間の勝敗を分ける
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 効果 | 民執117条:強制競売手続の取消(船が差押えの枠から解放され稼働可能) | 民執39条:執行の一時停止(進行が止まるだけ、差押えは継続) 民執12条:執行処分への不服申立(執行抗告・執行異議)の一般則 |
| 発動要件 | 39条1項7号・8号文書+全債権+執行費用相当の担保を買受けの申出前に提供 | 一時停止を命じる裁判等の停止文書の提出 執行抗告できる旨の定めがある裁判の存在 |
| 船への影響 | 差押えの枠から抜け、船を動かせる | 差押えは続き、船は港に拘束されたまま費用が流出 処分の当否を争うのみで解放効果はない |
| 確定前の効力 | 12条不適用で確定を待たずに効力(117条4項) | 停止の効力は文書の効力次第で失効しうる 原則として裁判の確定により効力 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も担保を供して強制執行の停止を認める枠組みを持ち、船舶執行に固有の解放手続が併存する点で機能的に近い。
中国は海事訴訟の特別手続で、担保提供により扣押(差押え)された船舶の解除を認める。船を担保に置き換える発想は共通する。
ドイツはSchiffsarrest(船舶仮差押え)を担保提供により解放する構造を持ち、現物を金額に翻訳する点で類似する。
米国のアドミラルティ手続では、差し押さえられた船舶を保証(bond/security)の提供により解放できる。P&Iクラブの保証状(LOU)が実務で用いられる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたが債務名義を不服として争い、一時停止の裁判を得たのに、船だけは港に縛られたままだとしたら? 117条の担保を積めば、争いの決着を待たずに船を稼働へ戻せる。停泊料と乗組員費の流出が止まる
- あなたが燃料を供給した相手が代金を払わず、船を差し押さえた。回収は確実だと思っていたら、相手が担保を積んで競売が取り消された。慌てる必要はない。停止が覆れば、その担保からあなたに配当される。船が金額に置き換わっただけだ
- 買受けの申出が入る前が勝負。入札が始まってしまえば117条の取消しはもう使えない。残された窓は、開始決定から売却期日までの数週間しかない
- 漁協からの融資が焦げ付き、漁船が競売にかけられた。漁期は待ってくれない。担保を積んで船を戻せば、その漁期の水揚げで返済原資を作れる。船を失えば、返済と廃業が同時に来る
取るべき行動
被害を受けた側:1. 時間軸の確認を最優先:開始決定・売却期日・買受けの申出のタイミングを押さえ、「申出前」の窓が残っているか見る2. 一時停止の根拠を用意:債務名義を争う手続で39条1項7号の一時停止裁判を取るか、債権者から弁済受領・弁済猶予の文書(8号)を得る3. 担保額を算定:差押債権者と配当要求債権者の債権に執行費用を足した総額。基準時は保証提供の時、配当要求の終期後ならその終期4. 担保の形を選び(15条)、執行裁判所に取消しを申し立てる
訴えられた側:1. 慌てない:船が担保に置き換わっても回収原資は消えない。一時停止が失効すれば、その担保から配当を受けられる(117条2項) 2. 担保額の妥当性を検証:自分の債権と執行費用が正しく算入されているか、配当要求の終期との関係で不足がないか確認3. 停止の根拠を争う:39条1項7号・8号の文書の効力を争い、一時停止自体を失効させれば担保からの配当手続へ進める4. 供託された有価証券の換価方法も監視する(78条3項準用)
時効(請求できる期限):消滅時効の問題ではなく、手続段階による窓:担保の提供は「買受けの申出前」に完了しなければ使えない。担保額の基準時は保証提供の時、配当要求の終期後はその終期。売却期日で入札が入ればこの取消しは行使できなくなる。取消しの申立てを却下する裁判には執行抗告ができる(117条3項)
学説
通説:117条は執行停止文書の提出を前提に、全債権と執行費用相当の保証を買受けの申出前に提供させることで、現物としての船を金銭的担保に置き換え、稼働価値の保全と債権者の回収確保を両立させる特則と理解されている。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和54年(1979年) 新設:民事執行法制定。旧民事訴訟法の強制執行編を分離独立させ、船舶執行に関する諸規定とともに保証提供による強制競売手続の取消しを整備した。
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