要点民事保全法 62 条は、占有移転禁止の仮処分の執行後に係争物を占有した第三者に対しても、本案の債務名義で明渡しの強制執行ができると定める。以後の占有者すべてに判決の効力が及ぶ。
Q · 明渡し訴訟の途中で借主が部屋を別人に又貸ししたら、勝訴判決は無駄になるの?
占有移転禁止の仮処分をかけていれば無駄にならない
民事保全法 62 条により、事前に占有移転禁止の仮処分を執行しておけば、その後に係争物を占有した者や債務者の占有を承継した第三者に対しても、本案の債務名義(勝訴判決など)で明渡しの強制執行ができます。占有者がすり替わっても、承継執行文(民事執行法 27 条)を取得して新占有者にそのまま執行できるため、訴え直しは不要です。ただし仮処分を打っていなければ、判決の効力は原則被告にしか及ばず、占有者すり替えで振り出しに戻ります。
明渡し訴訟には昔から抜け道があった。訴えられた側が、判決が出る前に部屋を親戚や知人に又貸ししてしまう。判決はあくまで『被告』に対するもの。占有者が別人にすり替わっていれば、その紙を握って強制執行に行っても、執行官は『この人は判決の名宛人ではない』と手を引く。原告は勝訴判決を握ったまま、また一からやり直しだ。この不条理を封じるのが占有移転禁止の仮処分であり、62条はその効力を定める。仮処分の執行後にその物を占有した第三者は、たとえ訴訟の当事者でなかったとしても、本案の債務名義(勝訴判決など)で引渡し・明渡しを受ける対象になる。しかも2項で『執行を知って占有した』と推定されるから、第三者の側が『知らなかった』を立証しなければならない。あなたが貸した物件を取り返す側なら最強の保険、うっかり他人の係争物を占有した側なら、ある日見知らぬ判決で追い出される落とし穴だ。
民事保全法 62 条は占有移転禁止の仮処分の効力を定める規定であり、仮処分執行後に係争物を占有した者や債務者の占有を承継した第三者に対し、債権者が本案の債務名義に基づいて引渡し・明渡しの強制執行をなしうる旨を規定する。以後の占有者を判決の射程に取り込む当事者恒定効の根拠として機能する。
AI 輔助整理,以條文原文為準
係争物の占有を第三者に移させないための保全処分です。執行しておくと、その後に占有した者にも本案の債務名義で明渡しを執行できる当事者恒定効が生じます(民事保全法 62 条)。
申立手数料のほか担保金(保証金)が必要です。担保額は物件の価値や事案により裁判所が定め、目的物返還後に取り戻せます。別途弁護士費用がかかります。
債権者への保全命令の送達日から 2 週間を経過すると執行できなくなります(民事保全法 43 条 2 項)。発令後は速やかに執行する必要があります。
仮処分の執行後に占有者が誰に代わっても、判決の効力をその新占有者に及ぼす効果です。占有者すり替えによる執行妨害を封じる、民事保全法 62 条の核心的機能です。
債務名義の効力が及ぶ承継人に対して強制執行を行うために付与される執行文です(民事執行法 27 条)。占有者が変わっても訴え直さず執行できます。
原則対象になります。2 項で執行を知って占有したと推定されるため、独立に占有を始めた善意者であることを本人が立証しない限り、明渡しを免れません。
執行時点で誰が占有しているか分からない現場でも網をかけられる仮処分です(民事保全法 25 条の 2)。占有者が入れ替わる係争地で有効です。
占有移転禁止の仮処分を事前に執行していれば、承継執行文を得て新占有者にそのまま執行できます。かけていなければ、その第三者を改めて訴える必要があります。
大家が占有移転禁止の仮処分をかけていて、あなたがその執行後に元借主から占有を引き継いだ場合、あなたは債務者の占有を承継した者として、仮処分を知らなくても明渡しの対象になります(62条1項2号)。業界裏話ヒント:又貸し・転貸で入る前に、その物件が係争中かどうか確認する人はまずいない。しかも仮処分は登記に出ないことも多く、外からは見えない。相場より格安の又貸し話には、この爆弾が埋まっていることがある
いいえ、判決の効力は原則として被告にしか及びません。被告が占有者をすり替えていた場合、その第三者を追い出すには、事前に占有移転禁止の仮処分を打っておくか(62条)、改めて訴え直すかになります。業界裏話ヒント:弁護士が明渡し事件を受けたとき、真っ先に検討するのが仮処分の要否。ここを飛ばして本案訴訟だけ進めると、勝訴後に占有者すり替えで振り出しに戻る。着手時点のこの判断が、事件の成否を分ける
必ずしも安全ではありません。2項で『執行後に占有した者は執行を知って占有したと推定』されるため、あなたが『知らなかった』を立証する責任を負います。さらに債務者の占有を承継した場合は、知らなくても対象になります(62条1項2号)。業界裏話ヒント:『善意なら守られる』は半分正しく半分間違い。守られるのは、債務者の占有を承継せず独立に占有を始めた善意者だけ。この二重の条件をどちらも満たすケースは、実務上そう多くない
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 対象となる権利 | 民事保全法 62 条:係争物の引渡し・明渡請求権(占有の移転を封じる) | — |
| 効力の中心 | 執行後の占有者・承継人に本案債務名義の執行力を拡張(当事者恒定効) | — |
| 第三者への効力 | 執行を知って占有した者・債務者の占有を承継した者に及ぶ(1 項) | — |
ログインすると、他の読者と一緒にこの条文へメモを残せます。
ログインして共同ノートを始める以下は各文が単独で意味の通る客観的事実です。引用は e-Gov法令検索を基準としてください。