不動産登記法 第86条(建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記)
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- 建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記については、当該建物の所有者となるべき者を登記義務者とみなす。この場合においては、第二十二条本文の規定は、適用しない。
- 2.前項の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号(第三号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
- 一新築する建物並びに当該建物の種類、構造及び床面積は設計書による旨
- 二登記義務者の氏名又は名称及び住所
- 3.前項第一号の規定は、所有権の登記がある建物の附属建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記について準用する。
この条文の基本情報
建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記とは何ですか?
定義建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記とは、不動産登記法第86条に定められた規定で、「建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記については、当該建物の所有者となるべき者を登記義務者とみなす。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 不動産登記法第86条(建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記)は、日本の不動産登記法に含まれる条文です。
- 不動産登記法第86条の条文原文は「建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記については、当該建物の所有者となるべき者を登記義務者とみなす。」で始まります。
- 不動産登記法第86条は第三節 権利に関する登記に置かれています。
- 不動産登記法の公布日は平成16年6月18日です。
- 不動産登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 不動産登記法第86条の前の条は不動産登記法第85条です。
- 不動産登記法第86条の次の条は不動産登記法第87条です。
- 不動産登記法第86条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第86条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 本サイト収録
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第86条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/416AC0000000123/86
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点不動産登記法86条は、新築建物の不動産工事の先取特権の保存登記について、所有者となるべき者を登記義務者とみなし、建物の種類・構造・床面積を設計書で特定すると定める。
Q · まだ建っていない建物に、工事代金の担保を登記できるんですか?
できます。設計書があれば着工前に登記可能です
不動産登記法86条1項は、建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記について、所有者となるべき者を登記義務者とみなし、共同申請の原則を定める22条本文を適用しないと定めます。2項により、建物の種類・構造・床面積は設計書によることが登記事項となるため、建物が存在しない段階でも登記記録上の特定が可能です。ただし効力の保存には工事を始める前の登記が必要(民法338条1項)で、着工後の登記では優先弁済権は得られません。
解説
家を建てるとき、あなたが施主でも工務店でも、必ず一度は考える問いがある。「工事代金を踏み倒されたらどうする」「前金を払ったのに途中で会社が飛んだらどうする」。不動産登記法86条は、その恐怖に対して法が用意した数少ない事前装置の入口だ。通常、登記は権利者と義務者が共同で申請する(22条の共同申請主義)。ところが新築建物には決定的な問題がある。建物がまだ存在しない以上、所有権登記も登記名義人もいない。そこで本条は「建物の所有者となるべき者」を登記義務者とみなし、22条本文の適用を外した。存在しない不動産に、設計書だけを頼りに担保を打ち込む。この登記を工事着手前に済ませておけば、後から抵当権が付こうが差押えが入ろうが、工事代金債権が優先弁済を受ける。逆に、着手後に一日でも遅れれば、その効力は永久に手に入らない。
法的な位置づけ
不動産登記法86条は、建物の新築工事に関する不動産工事の先取特権の保存の登記について、登記名義人が存在しない段階でも登記を可能にする規定である。所有者となるべき者を登記義務者とみなして共同申請の原則を外し、建物の種類・構造・床面積は設計書によって特定する。所有権の登記がある建物の附属建物を新築する場合にも準用される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.契約と同時に設計書を確保する 請負契約の締結時に、建物の種類・構造・床面積が特定できる設計書を施主から入手する。契約書に設計書交付条項を入れておくと、着工前の数日で慌てずに済む
- 2.工事費用の予算額を確定する 登記事項となる工事費用の予算額を確定させる。予算額を超える部分には先取特権の効力が及ばないため(民法338条1項後段)、追加工事の見込みを織り込んで額を設定する
- 3.着工日から逆算して司法書士に依頼する 着工日を起点に逆算し、登記完了が着工日前になるよう司法書士へ依頼する。86条1項により22条本文の適用がないため、請負人側で申請を進められる
- 4.着工前に保存登記を完了させる 工事を始める前に登記を完了させる。この時点を過ぎると先取特権の効力は保存されず、以後どのような手続でも順位を取り戻せない(民法338条1項)
- 5.完成後の表題登記・変更登記と連携する 建物完成後は表題登記との連携処理を行い(不動産登記法87条)、実際の工事費用が予算額と異なる場合は変更登記の要否を確認する。代金完済後は抹消登記まで見届ける
よくある質問 AI による整理
Q1不動産工事の先取特権とは?
工事の請負代金債権を担保するため、工事によって生じた不動産の増価額について法律上当然に生じる担保物権です(民法327条)。効力を保存するには工事開始前の登記が必要です。
Q2不動産登記法86条の登記はいつまでにする?
工事を始める前です。民法338条1項が工事開始前の登記を効力保存の要件としているため、着工後に申請しても先取特権としての優先弁済権は保存されません。
Q3先取特権の保存登記は誰が申請するの?
請負人が申請します。86条1項が所有者となるべき者を登記義務者とみなし22条本文を外すため、登記識別情報の提供を伴う通常の共同申請より手続負担が軽くなります。
Q4先取特権の保存登記は司法書士に頼むべき?
着工前という時間制約が厳しく、設計書による特定や予算額の記載も専門的です。着工日が決まった時点で司法書士に相談し、逆算スケジュールを組むのが実務的です。
Q5先取特権の登記があると住宅ローンに影響する?
影響します。先に登記された先取特権は後順位の抵当権に優先するため(民法339条参照)、金融機関は融資審査時に登記記録を確認し、抹消時期の説明を求めることがあります。
Q6建物が完成したら登記はどうなる?
新築後は建物の表題登記と連携した処理が必要になります(不動産登記法87条)。設計書による仮の特定から、実際の建物の表示へ引き継ぐ手続が予定されています。
Q7先取特権の保存登記の費用はいくら?
登録免許税は債権金額を課税標準として計算され(税率は登録免許税法別表による)、これに司法書士報酬が加わります。予算額が大きいほど税額も増える構造です。
Q8先取特権の登記は抹消できる?
できます。工事代金の完済など被担保債権が消滅すれば抹消登記を申請します。施主側は契約書に完済後の抹消手続と費用負担を明記しておくのが安全です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1建物がまだ建ってないのに、どうやって登記の対象を特定するんですか?
本条2項1号が答えで、種類・構造・床面積は設計書によると登記記録に記載する。実際の建物ではなく設計図面が特定の基準になる。実務のポイント:設計変更で床面積が動くケースは珍しくないが、そのとき先取特権の効力範囲がどこまで及ぶかは実務上の判断が分かれる。設計書は変更履歴ごと保管しておくべきだ
Q2施主が協力してくれない場合、登記できないんですか?
本条1項が22条本文(登記識別情報の提供を伴う共同申請の原則)の適用を外しているため、通常の共同申請より負担は軽い。ただし登記義務者とみなされるのは所有者となるべき者であり、その氏名・住所は登記事項(2項2号)だ。実務のポイント:実務では設計書の入手が事実上の関門になる。契約書に設計書交付条項を入れておくかどうかで、着工前の数日が生死を分ける
Q3工事が予算を超えたら、超えた分も担保されますか?
されない。民法327条2項は工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合にその増価額についてのみ存在すると定め、登記した予算額を超える部分は先取特権の枠外になる(民法338条1項後段)。実務のポイント:だからこそ予算額の見積りは保守的すぎても攻めすぎてもいけない。追加工事が見込まれる案件では、当初の予算額設定そのものが回収戦略になる
Q4リフォームや増築でもこの登記は使えますか?
既存建物の工事は本条1項の新築ではなく、通常の不動産工事の先取特権の保存登記(83条、85条)として扱われる。ただし所有権登記のある建物の附属建物を新築する場合は、3項により2項1号が準用される。実務のポイント:新築か既存建物の工事かで申請構造が変わるため、着工前に区分を確定させないと申請自体がやり直しになる
間違えやすい点 AI による整理
- 「先取特権は法律上当然に発生する担保だから、登記しなくても優先される」と理解している人は多い。動産の先取特権ならおおむねそうだ。だが不動産工事の先取特権は違う。工事を始める前に登記しなければ効力を保存できず(民法338条1項)、登記を欠けば第三者に対抗できない。法定担保物権という言葉の安心感が、そのまま実務の落とし穴になっている
- 「まだ建物がないのに登記できるはずがない」という前提そのものが誤りである。本条2項は、種類・構造・床面積を設計書によって特定すると定める。存在しない建物を紙の上で先に登記記録に立ち上げる、これが不動産登記法の中でも特異な構造だ。問いを「登記できるか」ではなく「いつまでに登記するか」に立て直した瞬間、実務の風景が変わる
- 施主から見れば「自分の家に勝手に担保を付けられる制度」に見える。だが法から見れば、これは登記義務者としてのあなたが手続に関与する制度である。この落差を放置すると、工務店から設計書と登記の協力を求められた段階で感情的に拒否し、結果として前金比率を吊り上げられる。損をするのは施主の側だ
- 「増築や附属建物の新築には使えない」と思われがちだが、3項は所有権登記のある建物の附属建物を新築する場合にも2項1号を準用する。母屋がすでに登記済みでも、新たに建てる離れや車庫について同じ仕組みが使える
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる場面 | 86条:建物を新築する場合(附属建物の新築を含む) | 85条:不動産工事の先取特権保存登記の原則形(既存不動産の工事) 22条:権利に関する登記一般の共同申請主義 |
| 登記義務者 | 所有者となるべき者をみなし登記義務者とする(まだ登記名義人でない) | 既存不動産の所有権登記名義人 登記上直接に不利益を受ける登記名義人 |
| 共同申請の要否 | 22条本文の適用を除外(登記識別情報の提供を伴う共同申請を要しない) | 原則どおり共同申請の枠組み 共同申請かつ登記識別情報の提供が原則 |
| 目的物の特定方法 | 種類・構造・床面積は設計書による旨を登記(2項1号) | 現存する不動産の登記記録上の表示 現存する不動産の登記記録上の表示 |
他国ではどう定めているか 5 か国
台湾は法定抵当権として構成し、承攬人は工事開始前に抵当権設定登記(予告登記)を請求できる。担保類型の名称は異なるが、着工前に順位を確保させる発想は日本の先取特権保存登記と共通する
韓国は請負人に抵当権設定請求権を与える構成をとる。法律上当然に成立する担保ではなく設定請求権であるため、施主の協力または裁判が必要となる点で日本と手続構造が異なる
中国は建設工事代金について、催告後に工事目的物の優先受償権を認める。登記を効力要件とせず、権利行使期間の制限で調整する点が日本と大きく異なる
ドイツは建設業者に保全抵当権の設定請求権を認める。加えて § 650f で建築主に対する担保提供請求(Bauhandwerkersicherung)が用意され、登記以外の資金保全ルートが併存する
米国は州法ごとに Mechanic's Lien を定め、工事完了後の一定期間内に lien claim を記録する方式が一般的。着工前登記を要件とする日本とは、時間軸の設計が正反対である
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 地元の工務店として4,000万円の注文住宅を受注した。施主は上場企業の社員で信用も十分に見える。だが着工から引渡しまで8か月、その間に施主が転職・離婚・破産する確率はゼロではない。着工前日までに86条の保存登記を入れておけば、引渡し前に施主が破産しても、あなたの工事代金は他の債権者を飛び越えて回収できる。入れなければ、一般債権者として数パーセントの配当を待つ側に回る
- 設計事務所から「先取特権の登記をしたいので設計書をください」と言われた施主のあなた。「うちに担保を付けるってこと? 信用されてないのか」とムッとするかもしれない。だが視点を変えれば、この登記があるからこそ工務店は前金比率を下げられる。あなたが手元資金を温存できるカードでもある
- もし着工した翌週に「そういえば先取特権の登記を忘れていた」と気付いたら、どうなるか。答えは、もう手遅れである。工事を始める前に登記することが効力の絶対条件(民法338条1項)で、遅れた分を後から取り戻す手段は法にない
- 銀行の融資担当として住宅ローンの抵当権設定を準備していたら、登記記録に見慣れない不動産工事の先取特権が先に入っていた。あなたの抵当権はその後順位になる。融資実行前の登記調査でこれを見落とすと、行内で説明のつかない事故になる
- あなたが施工中の建物、あと3日で基礎工事に入る。元請から下請への支払条件が悪化しているという噂が回ってきた。この3日が、あなたの会社が優先弁済権を持つ側に立てるか、それとも一般債権者として並ぶかの分水嶺だ
取るべき行動
被害を受けた側:工事代金の回収に不安がある請負人の立場なら、1. 契約締結と同時に施主から設計書(種類・構造・床面積が特定できるもの)を入手2. 工事費用の予算額を確定させ、本条2項の登記事項を整理3. 着工前に司法書士へ依頼し、単独申請で保存登記を完了4. 工事完了後は費用額の変更登記・建物表題登記との連携を確認。回収不能が現実化してからでは、この順位は買い戻せない
訴えられた側:施主として登記への協力を求められた場合、1. 予算額が請負代金と整合しているか確認、過大な額の登記は将来の融資枠を圧迫する2. 工事が予算を超えた部分には先取特権の効力が及ばない点(民法327条2項)を踏まえ、額の妥当性を交渉3. 拒否すれば前金増額を求められる可能性が高いため、拒否ではなく額と抹消時期の条件交渉に持ち込む4. 工事完了・代金完済後の抹消登記の手順を契約書に明記させる
時効(請求できる期限):効力の絶対期限は「工事を始める前」(民法338条1項)。着工日そのものが期限であり、一日でも遅れれば先取特権の効力は保存されない。請負代金債権自体の消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年(民法166条1項)
学説
通説:不動産登記法86条は、登記の真正を担保する共同申請主義に対する手続的例外であり、その正当化根拠は工事債権者の実効的保護に求められる。手続を緩和する代わりに、工事開始前という時間的制約と増価額限度という金額的制約が課されることで、例外の濫用が抑止されていると説明される。
実務的理解:新築建物については86条、既存不動産の工事については85条という区分が申請構造を分けるため、着工前に区分を確定させることが不可欠とされる。所有権の登記がある建物の附属建物の新築は3項により2項1号が準用され、母屋が登記済みでも同じ仕組みを利用できる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 改正:不動産登記法の全部改正(平成16年法律第123号)により現行86条が置かれた。旧法下の新築建物に対する不動産工事の先取特権保存登記の取扱いを、みなし登記義務者と設計書による特定という形で条文上明確化した
- 不動産登記法 第22条共同申請主義の原則、本条が適用除外
- 不動産登記法 第83条先取特権保存登記の一般的登記事項
- 不動産登記法 第85条不動産工事の先取特権保存登記の原則形
- 不動産登記法 第59条権利に関する登記の共通登記事項
- 不動産登記法 第87条建物新築後の表題登記との連携処理
- 民法 第338条工事開始前の登記が効力保存の要件
- 民法 第327条不動産工事の先取特権の実体的成立要件
- 民法 第339条登記した先取特権と抵当権の順位関係
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