要点不動産登記法 86 条は、新築建物の不動産工事の先取特権の保存登記について、所有者となるべき者を登記義務者とみなし、建物の種類・構造・床面積を設計書で特定すると定める。
Q · まだ建っていない建物に、工事代金の担保を登記できるんですか?
できます。設計書があれば着工前に登記可能です
不動産登記法 86 条 1 項は、建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記について、所有者となるべき者を登記義務者とみなし、共同申請の原則を定める 22 条本文を適用しないと定めます。2 項により、建物の種類・構造・床面積は設計書によることが登記事項となるため、建物が存在しない段階でも登記記録上の特定が可能です。ただし効力の保存には工事を始める前の登記が必要(民法 338 条 1 項)で、着工後の登記では優先弁済権は得られません。
家を建てるとき、あなたが施主でも工務店でも、必ず一度は考える問いがある。「工事代金を踏み倒されたらどうする」「前金を払ったのに途中で会社が飛んだらどうする」。不動産登記法 86 条は、その恐怖に対して法が用意した数少ない事前装置の入口だ。通常、登記は権利者と義務者が共同で申請する(22 条の共同申請主義)。ところが新築建物には決定的な問題がある。建物がまだ存在しない以上、所有権登記も登記名義人もいない。そこで本条は「建物の所有者となるべき者」を登記義務者とみなし、22 条本文の適用を外した。存在しない不動産に、設計書だけを頼りに担保を打ち込む。この登記を工事着手前に済ませておけば、後から抵当権が付こうが差押えが入ろうが、工事代金債権が優先弁済を受ける。逆に、着手後に一日でも遅れれば、その効力は永久に手に入らない。
不動産登記法 86 条は、建物の新築工事に関する不動産工事の先取特権の保存の登記について、登記名義人が存在しない段階でも登記を可能にする規定である。所有者となるべき者を登記義務者とみなして共同申請の原則を外し、建物の種類・構造・床面積は設計書によって特定する。所有権の登記がある建物の附属建物を新築する場合にも準用される。
AI 輔助整理,以條文原文為準
工事の請負代金債権を担保するため、工事によって生じた不動産の増価額について法律上当然に生じる担保物権です(民法 327 条)。効力を保存するには工事開始前の登記が必要です。
工事を始める前です。民法 338 条 1 項が工事開始前の登記を効力保存の要件としているため、着工後に申請しても先取特権としての優先弁済権は保存されません。
請負人が申請します。86 条 1 項が所有者となるべき者を登記義務者とみなし 22 条本文を外すため、登記識別情報の提供を伴う通常の共同申請より手続負担が軽くなります。
着工前という時間制約が厳しく、設計書による特定や予算額の記載も専門的です。着工日が決まった時点で司法書士に相談し、逆算スケジュールを組むのが実務的です。
影響します。先に登記された先取特権は後順位の抵当権に優先するため(民法 339 条参照)、金融機関は融資審査時に登記記録を確認し、抹消時期の説明を求めることがあります。
新築後は建物の表題登記と連携した処理が必要になります(不動産登記法 87 条)。設計書による仮の特定から、実際の建物の表示へ引き継ぐ手続が予定されています。
登録免許税は債権金額を課税標準として計算され(税率は登録免許税法別表による)、これに司法書士報酬が加わります。予算額が大きいほど税額も増える構造です。
できます。工事代金の完済など被担保債権が消滅すれば抹消登記を申請します。施主側は契約書に完済後の抹消手続と費用負担を明記しておくのが安全です。
本条 2 項 1 号が答えで、種類・構造・床面積は設計書によると登記記録に記載する。実際の建物ではなく設計図面が特定の基準になる。業界裏話ヒント:設計変更で床面積が動くケースは珍しくないが、そのとき先取特権の効力範囲がどこまで及ぶかは実務上の判断が分かれる。設計書は変更履歴ごと保管しておくべきだ
本条 1 項が 22 条本文(登記識別情報の提供を伴う共同申請の原則)の適用を外しているため、通常の共同申請より負担は軽い。ただし登記義務者とみなされるのは所有者となるべき者であり、その氏名・住所は登記事項(2 項 2 号)だ。業界裏話ヒント:実務では設計書の入手が事実上の関門になる。契約書に設計書交付条項を入れておくかどうかで、着工前の数日が生死を分ける
されない。民法 327 条 2 項は工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合にその増価額についてのみ存在すると定め、登記した予算額を超える部分は先取特権の枠外になる(民法 338 条 1 項後段)。業界裏話ヒント:だからこそ予算額の見積りは保守的すぎても攻めすぎてもいけない。追加工事が見込まれる案件では、当初の予算額設定そのものが回収戦略になる
既存建物の工事は本条 1 項の新築ではなく、通常の不動産工事の先取特権の保存登記(83 条、85 条)として扱われる。ただし所有権登記のある建物の附属建物を新築する場合は、3 項により 2 項 1 号が準用される。業界裏話ヒント:新築か既存建物の工事かで申請構造が変わるため、着工前に区分を確定させないと申請自体がやり直しになる
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 対象となる場面 | 86 条:建物を新築する場合(附属建物の新築を含む) | — |
| 登記義務者 | 所有者となるべき者をみなし登記義務者とする(まだ登記名義人でない) | — |
| 共同申請の要否 | 22 条本文の適用を除外(登記識別情報の提供を伴う共同申請を要しない) | — |
| 目的物の特定方法 | 種類・構造・床面積は設計書による旨を登記(2 項 1 号) | — |
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