要点不動産登記法 87 条は、着工前に不動産工事の先取特権の登記をした建物が完成したとき、所有者が遅滞なく所有権の保存の登記を申請しなければならないと定める。
Q · 着工前に工事の先取特権が登記された建物、完成したら誰がどんな登記をするの?
完成したら所有者に遅滞なく所有権保存登記の申請義務が生じます
不動産登記法 87 条 1 項により、86 条 1 項の先取特権保存登記がされた建物の建築が完了したときは、その建物の所有者が遅滞なく所有権の保存の登記を申請しなければなりません。附属建物の場合は 2 項が適用され、申請人はその附属建物が属する建物の所有権の登記名義人です。87 条は 164 条 1 項の過料の対象に列挙されていませんが、放置すれば先取特権者が民法 423 条の債権者代位により(不動産登記法 59 条 7 号)、所有者の同意や委任状なしに保存登記を入れることができます。
登記所のコンピュータには、まだ一本の柱も立っていない建物の記録が存在することがある。工事代金を確保したい業者が、着工前に不動産工事の先取特権を登記したケースだ(86 条 1 項)。設計書に書かれた種類・構造・床面積だけを頼りに、実体のない建物の表題部が先に作られる。87 条が動くのは、その建物が現実に建ち上がった瞬間である。所有者は遅滞なく所有権の保存の登記を申請しなければならない。附属建物なら、母屋の所有権の登記名義人が表題部の変更の登記を申請する。ここであなたが押さえるべきは、通常の新築なら任意にすぎない所有権保存登記が、この場面では法律上の申請義務に変わるという点だ。そして完成した建物に残った先取特権は、民法 339 条により、あとから設定された抵当権に優先する。あなたが買おうとしている新築住宅の乙区に、その一行が眠っていることがある。
不動産登記法 87 条は、建物の新築に係る不動産工事の先取特権の保存の登記(86 条 1 項)がされた後、その建物の建築が完了した場合における登記の申請義務を定める規定である。1 項は建物の所有者に所有権の保存の登記を、2 項は附属建物が属する建物の所有権の登記名義人に建物の表題部の変更の登記を、それぞれ遅滞なく申請すべきものとする。
工事の請負人が工事代金を担保するために、法律上当然に発生する担保物権です(民法 327 条)。効力を保存するには、工事を始める前に費用の予算額を登記する必要があります(民法 338 条 1 項)。
不動産登記法 87 条 1 項の期限は「遅滞なく」であり、日数の明文はありません。表題登記の 1 箇月以内(47 条 1 項)とは異なる書き方になっている点に注意が必要です。
87 条は 164 条 1 項の過料の列挙に含まれていないため、直接の制裁はありません。ただし先取特権者による代位申請で外から登記を入れられるため、放置が安全という意味ではありません。
所有権の保存の登記ではなく、建物の表題部の変更の登記です(87 条 2 項)。申請人は附属建物が属する建物、つまり母屋の所有権の登記名義人本人になります。
原則として不動産登記法 74 条の申請適格者(表題部所有者、その相続人、所有権を確認する確定判決を得た者など)です。87 条の場面では建物の所有者に申請義務が課されます。
表題登記は建物の物理的現況を表題部に記録するもの、所有権保存登記は甲区に最初の所有者を記録するものです。87 条 1 項が義務づけるのは後者です。
民法 339 条により、着工前に登記された不動産工事の先取特権は、後から設定された抵当権に優先します。買主のローン抵当権が後順位に落ちる場面が生じます。
できます。民法 423 条の債権者代位により、不動産登記法 59 条 7 号を根拠として代位による所有権保存登記が可能です。所有者の同意も委任状も不要です。
できる。86 条 1 項により、建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存登記では、所有者となるべき者が登記義務者とみなされ、設計書上の種類・構造・床面積だけで表題部が作られる(86 条 2 項)。完成後に 87 条 1 項の所有権保存登記で、この記録を現実の建物と接続する。業界裏話ヒント:この登記記録は完成前でも登記事項証明書が取れる。契約前に取得すると、その現場が担保でどう縛られているかが先に見える
既に着工しているなら使えない。民法 338 条 1 項は工事を始める前に費用の予算額を登記することを効力保存の要件としており、一日でも遅れれば復活しない。残るのは仮差押え、請負代金債権の保全、同時履行の主張といった手段になる。業界裏話ヒント:この制度がほぼ死んでいる理由は手続ではなく資金にある。着工前登記があると銀行の抵当権が劣後するため融資が止まり、施主が協力しない
乙区に工事の先取特権が残ったまま決済すると、民法 339 条により、あなたの住宅ローンの抵当権はその後順位になる。決済と同時に抹消することを売買契約の条件として明記し、抹消書類を司法書士が当日確認する段取りを組む。業界裏話ヒント:抹消が渋られる理由の大半は売主と工務店の代金争いである。渋られた時点で、その現場は資金繰りに問題があるというシグナルだと読む
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 対象となる登記 | 87 条:完成建物の所有権の保存の登記(1 項)/附属建物完成時の表題部の変更の登記(2 項) | — |
| 申請人 | 1 項は当該建物の所有者、2 項は附属建物が属する建物の所有権の登記名義人 | — |
| 期限 | 遅滞なく(日数の明文なし) | — |
| 懈怠したときの効果 | 164 条の列挙外で過料なし。先取特権者が民法 423 条・不動産登記法 59 条 7 号により代位申請できる | — |
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