不動産登記法 第87条(建物の建築が完了した場合の登記)
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- 前条第一項の登記をした場合において、建物の建築が完了したときは、当該建物の所有者は、遅滞なく、所有権の保存の登記を申請しなければならない。
- 2.前条第三項の登記をした場合において、附属建物の建築が完了したときは、当該附属建物が属する建物の所有権の登記名義人は、遅滞なく、当該附属建物の新築による建物の表題部の変更の登記を申請しなければならない。
この条文の基本情報
建物の建築が完了した場合の登記とは何ですか?
定義建物の建築が完了した場合の登記とは、不動産登記法第87条に定められた規定で、「前条第一項の登記をした場合において、建物の建築が完了したときは、当該建物の所有者は、遅滞なく、所有権の保存の登記を申請しなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 不動産登記法第87条(建物の建築が完了した場合の登記)は、日本の不動産登記法に含まれる条文です。
- 不動産登記法第87条の条文原文は「前条第一項の登記をした場合において、建物の建築が完了したときは、当該建物の所有者は、遅滞なく、所有権の保存の登記を申請しなければならない。」で始まります。
- 不動産登記法第87条は第三節 権利に関する登記に置かれています。
- 不動産登記法の公布日は平成16年6月18日です。
- 不動産登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 不動産登記法第87条の前の条は不動産登記法第86条です。
- 不動産登記法第87条の次の条は不動産登記法第88条です。
- 不動産登記法第87条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第87条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 本サイト収録
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第87条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/416AC0000000123/87
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点不動産登記法87条は、着工前に不動産工事の先取特権の登記をした建物が完成したとき、所有者が遅滞なく所有権の保存の登記を申請しなければならないと定める。
Q · 着工前に工事の先取特権が登記された建物、完成したら誰がどんな登記をするの?
完成したら所有者に遅滞なく所有権保存登記の申請義務が生じます
不動産登記法87条1項により、86条1項の先取特権保存登記がされた建物の建築が完了したときは、その建物の所有者が遅滞なく所有権の保存の登記を申請しなければなりません。附属建物の場合は2項が適用され、申請人はその附属建物が属する建物の所有権の登記名義人です。87条は164条1項の過料の対象に列挙されていませんが、放置すれば先取特権者が民法423条の債権者代位により(不動産登記法59条7号)、所有者の同意や委任状なしに保存登記を入れることができます。
解説
登記所のコンピュータには、まだ一本の柱も立っていない建物の記録が存在することがある。工事代金を確保したい業者が、着工前に不動産工事の先取特権を登記したケースだ(86条1項)。設計書に書かれた種類・構造・床面積だけを頼りに、実体のない建物の表題部が先に作られる。87条が動くのは、その建物が現実に建ち上がった瞬間である。所有者は遅滞なく所有権の保存の登記を申請しなければならない。附属建物なら、母屋の所有権の登記名義人が表題部の変更の登記を申請する。ここであなたが押さえるべきは、通常の新築なら任意にすぎない所有権保存登記が、この場面では法律上の申請義務に変わるという点だ。そして完成した建物に残った先取特権は、民法339条により、あとから設定された抵当権に優先する。あなたが買おうとしている新築住宅の乙区に、その一行が眠っていることがある。
法的な位置づけ
不動産登記法87条は、建物の新築に係る不動産工事の先取特権の保存の登記(86条1項)がされた後、その建物の建築が完了した場合における登記の申請義務を定める規定である。1項は建物の所有者に所有権の保存の登記を、2項は附属建物が属する建物の所有権の登記名義人に建物の表題部の変更の登記を、それぞれ遅滞なく申請すべきものとする。
手順
- 1.着工前日までに予算額を登記する 工事を始める前に、費用の予算額を明らかにして不動産工事の先取特権の保存の登記を申請する(民法338条1項、不動産登記法85条・86条1項)。建物新築の場合は所有者となるべき者が登記義務者とみなされるため、施主の協力書類を先に確保する
- 2.登記記録の作成内容を確認する 未完成建物について設計書による旨が表題部に記録されるため(86条2項)、種類・構造・床面積が設計書と一致しているかを登記事項証明書で確認する。完成後の建物と食い違うと87条の接続で補正になる
- 3.建築完了後、所有者が所有権保存登記を申請する 建物の建築が完了したら、当該建物の所有者が遅滞なく所有権の保存の登記を申請する(87条1項)。附属建物の場合は申請人が変わり、母屋の所有権の登記名義人が表題部の変更の登記を申請する(87条2項)
- 4.所有者が放置したら債権者代位で申請する 先取特権者は、施主が87条1項の申請を怠っている場合、民法423条の債権者代位により所有権保存登記を申請できる(不動産登記法59条7号)。相手の同意も委任状も不要で、登記が入った時点で競売申立ての土台が整う
- 5.買主側は決済前に乙区を確認する 新築建売を購入する場合、決済前に登記事項証明書の乙区に工事の先取特権が残っていないか確認する。残っていれば民法339条により住宅ローンの抵当権が後順位になるため、決済と同時抹消を売買契約の条件として明記する
よくある質問 AI による整理
Q1不動産工事の先取特権とは何ですか?
工事の請負人が工事代金を担保するために、法律上当然に発生する担保物権です(民法327条)。効力を保存するには、工事を始める前に費用の予算額を登記する必要があります(民法338条1項)。
Q2建物が完成したら登記はいつまでにしますか?
不動産登記法87条1項の期限は「遅滞なく」であり、日数の明文はありません。表題登記の1箇月以内(47条1項)とは異なる書き方になっている点に注意が必要です。
Q3不動産登記法87条に違反すると過料はありますか?
87条は164条1項の過料の列挙に含まれていないため、直接の制裁はありません。ただし先取特権者による代位申請で外から登記を入れられるため、放置が安全という意味ではありません。
Q4附属建物を建てたときはどの登記をしますか?
所有権の保存の登記ではなく、建物の表題部の変更の登記です(87条2項)。申請人は附属建物が属する建物、つまり母屋の所有権の登記名義人本人になります。
Q5所有権保存登記は誰が申請できますか?
原則として不動産登記法74条の申請適格者(表題部所有者、その相続人、所有権を確認する確定判決を得た者など)です。87条の場面では建物の所有者に申請義務が課されます。
Q6建物表題登記と所有権保存登記は何が違いますか?
表題登記は建物の物理的現況を表題部に記録するもの、所有権保存登記は甲区に最初の所有者を記録するものです。87条1項が義務づけるのは後者です。
Q7工事の先取特権と住宅ローンの抵当権はどちらが優先しますか?
民法339条により、着工前に登記された不動産工事の先取特権は、後から設定された抵当権に優先します。買主のローン抵当権が後順位に落ちる場面が生じます。
Q8先取特権者が所有者に代わって登記できますか?
できます。民法423条の債権者代位により、不動産登記法59条7号を根拠として代位による所有権保存登記が可能です。所有者の同意も委任状も不要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1まだ建ってない建物の登記なんて、本当にできるんですか?
できる。86条1項により、建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存登記では、所有者となるべき者が登記義務者とみなされ、設計書上の種類・構造・床面積だけで表題部が作られる(86条2項)。完成後に87条1項の所有権保存登記で、この記録を現実の建物と接続する。実務のポイント:この登記記録は完成前でも登記事項証明書が取れる。契約前に取得すると、その現場が担保でどう縛られているかが先に見える
Q2工事代金を払ってもらえないんですが、今からでもこの先取特権は使えますか?
既に着工しているなら使えない。民法338条1項は工事を始める前に費用の予算額を登記することを効力保存の要件としており、一日でも遅れれば復活しない。残るのは仮差押え、請負代金債権の保全、同時履行の主張といった手段になる。実務のポイント:この制度がほぼ死んでいる理由は手続ではなく資金にある。着工前登記があると銀行の抵当権が劣後するため融資が止まり、施主が協力しない
Q3新築の建売を買うんですが、この登記が付いてたらどうすればいいですか?
乙区に工事の先取特権が残ったまま決済すると、民法339条により、あなたの住宅ローンの抵当権はその後順位になる。決済と同時に抹消することを売買契約の条件として明記し、抹消書類を司法書士が当日確認する段取りを組む。実務のポイント:抹消が渋られる理由の大半は売主と工務店の代金争いである。渋られた時点で、その現場は資金繰りに問題があるというシグナルだと読む
間違えやすい点 AI による整理
- 登記できるのは完成した建物だけだと思われているが、86条1項の先取特権保存登記に限っては、まだ存在しない建物に登記記録が作られ、設計書による旨が表題部に記録される(86条2項)。87条は、その例外的な記録を現実の建物へ着地させるための条文である
- 所有権保存登記が義務だと知っている人でも、その義務に過料の裏付けがないところまでは知らない。表題登記の懈怠(47条1項)は164条1項で10万円以下の過料だが、87条は164条の列挙に入っていない。制裁がないから放置しても安全という意味ではなく、制裁がない代わりに、先取特権者の代位申請で外側から盤面を動かされるという意味である
- 「工事代金を担保するには抵当権を設定してもらうしかない」という問いの立て方そのものが誤っている。不動産工事の先取特権は当事者の合意なしに法律上当然に発生する担保であり(民法327条)、必要なのは設定契約ではなく着工前の登記だけだ。ただし登記義務者とみなされるのは所有者となるべき者なので(86条1項)、結局は施主の協力が要る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる登記 | 87条:完成建物の所有権の保存の登記(1項)/附属建物完成時の表題部の変更の登記(2項) | 47条:新築建物の表題登記 74条:所有権の保存の登記の申請適格一般 |
| 申請人 | 1項は当該建物の所有者、2項は附属建物が属する建物の所有権の登記名義人 | 新築建物の所有権を取得した者等 表題部所有者、その相続人その他の一般承継人、確定判決により所有権を確認された者等 |
| 期限 | 遅滞なく(日数の明文なし) | 所有権の取得の日から一箇月以内 期限の定めなし(原則として任意) |
| 懈怠したときの効果 | 164条の列挙外で過料なし。先取特権者が民法423条・不動産登記法59条7号により代位申請できる | 164条1項により10万円以下の過料 制裁規定なし(登記をしないと第三者に対抗できない不利益にとどまる) |
他国ではどう定めているか 6 か国
台湾は法定担保を直接発生させず、承攬人(請負人)が定作人に対して抵当権設定登記を請求できる構成をとる。日本のように未完成建物へ先行して登記記録を作る仕組みではなく、工事完成前でも登記請求は可能とされる点で入口が異なる。
韓国も台湾と同じく、請負人の抵当権設定請求権という債権的構成。日本の先取特権のように法律上当然に担保物権が発生する構造ではないため、着工前登記という一点集中の締切は生じない。
中国は登記ではなく、催告後の協議による工事目的物の換価・競売代金からの優先受償という構成。公示手段としての登記を介さない点が日本と大きく異なる。
ドイツは請負人に保全抵当権(Sicherungshypothek)の設定請求権を認める構成。日本の先取特権が着工前登記を効力保存要件とするのに対し、ドイツは工事の履行に応じて請求できる点で時間軸が異なる。
フランスの建築士・請負人の担保は、日本の先取特権の直接の系譜にあたる。工事前後の状態を確認する調書(procès-verbal)の作成を要件とする点が、日本の着工前予算額登記に対応する発想である。
米国は州ごとの制定法により、工事完了後一定期間内の lien 申立てで担保を確保する。着工前ではなく完了後に期限が置かれる点で、日本の着工前一発勝負とは締切の位置が逆になる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 見積書に施主の判をもらった翌週から基礎工事に入る予定になっている。不動産工事の先取特権の保存登記を打てるのは、その着工前日まで。重機が土を掘った瞬間に民法338条1項の窓は閉じ、以後どれだけ工事代金を踏み倒されても、この担保は二度と手に入らない。残された時間は、施主の実印をもらいに行く数日しかない
- 引渡し予定の新築建売の登記事項証明書に、着工前の日付で工事の先取特権が付いていたらどうなる? あなたの住宅ローンの抵当権は民法339条によりその後順位に落ちる。決済日までに抹消されるかを司法書士に確認しないまま鍵を受け取ると、売主と工務店の未払い争いがそのまま自分の家に付いてくる
- 建物が完成した。あなたは引っ越しと電気・ガスの手配に追われ、登記のことは頭から抜けている。だが87条1項の申請義務はその日から動いており、先取特権者はあなたの同意も委任状もなしに、代位で所有権保存登記を入れることができる
- 工場の敷地に新しい倉庫を建て増した。母屋には既に所有権の登記があるので、必要なのは所有権保存登記ではなく表題部の変更の登記だ(87条2項)。申請人は工事業者でも設計士でもなく、母屋の所有権の登記名義人であるあなた本人。誰の名前で出すかを取り違えると、法務局で補正になり、引渡し後の融資実行がずれ込む
取るべき行動
被害を受けた側:1. 着工前に不動産工事の先取特権の保存登記を打てているか確認する、打てていなければこの武器は既に失われている2. 打てている場合、建物完成後に施主が87条1項の保存登記を怠っているなら、民法423条による代位で自ら登記を入れる(不動産登記法59条7号) 3. 登記後は競売を申し立て、民法339条により後順位の抵当権に優先して配当を受ける4. 予算額を超えた分には先取特権が及ばない(民法338条1項後段)ので、追加工事は別途保全を組む
訴えられた側:1. 完成したら、自分の建物に先取特権付きの登記記録が既にあるかを確認する、あれば入口は表題登記ではなく87条1項の所有権保存登記になる2. 工事代金に争いがあっても支払いを止めるだけでは登記は消えない、抹消には弁済・合意・訴訟のいずれかが要る3. 増価額を超える請求、予算額を超える請求には先取特権が及ばない点を主張材料にする4. 附属建物なら申請人は母屋の所有権の登記名義人本人である点を確認する
時効(請求できる期限):87条の期限は「遅滞なく」であり、日数の明文はない。表題登記の懈怠に科される10万円以下の過料(164条1項)の列挙に87条は含まれておらず、直接の制裁は用意されていない(最新の改正状況をご確認ください)。実質的な最終期限は前段階にあり、工事の先取特権は民法338条1項により工事を始める前に予算額を登記しなければ効力を保存できない。着工日の前日が事実上の一発勝負の締切である
学説
実務上の一般的理解:87条1項・2項の申請義務は登記記録と現実の建物を一致させるための公法上の義務と位置づけられるが、164条の過料の列挙外であるため、その実効性は先取特権者による債権者代位申請という私的インセンティブに委ねられていると説明される。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)不動産登記法全部改正 旧不動産登記法下の建物新築工事の先取特権に関する規定を整理し、現行87条として条文化。工事完了後の所有権保存登記の申請義務(1項)と、附属建物完成時の表題部変更登記の申請義務(2項)を2項構成で明示した
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 改正:不動産登記法の全部改正により、旧不動産登記法下の建物新築工事の先取特権に関する規定を整理し、現行87条として条文化。工事完了後の所有権の保存の登記の申請義務(1項)と、附属建物完成時の表題部の変更の登記の申請義務(2項)を2項構成で明示した。
- 不動産登記法 第86条前条、着工前の先取特権保存登記
- 不動産登記法 第85条予算額を明らかにする申請要件
- 不動産登記法 第74条所有権保存登記の申請適格者
- 不動産登記法 第47条建物表題登記の一箇月以内の申請義務
- 不動産登記法 第164条表示登記懈怠の過料、87条は列挙外
- 民法 第338条着工前の予算額登記が効力保存要件
- 民法 第339条登記した先取特権は抵当権に優先
- 民法 第327条不動産工事の先取特権の発生と増価額
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