医師、歯科医師、薬剤師若しくは手当を行った者又はこれを使用する者が、第六十条第一項(第百四十九条において準用する場合を含む。)の規定により、報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を命ぜられ、正当な理由がなくてこれに従わず、又は同項の規定による当該職員の質問に対して、正当な理由がなくて答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、十万円以下の過料に処する。
要点健康保険法215条は、医師等が同法60条1項の報告・診療録提示命令に正当な理由なく従わず、又は質問に虚偽答弁した場合、10万円以下の過料を科す。過料は刑罰ではなく前科はつかない。
Q · カルテの提示を拒んだら、10万円払えば終わりですか?
罰金ではなく過料。前科はつかないが、払って終わりでもない
健康保険法215条は、同法60条1項の報告・診療録等の提示命令に正当な理由なく従わず、又は職員の質問に答弁せず若しくは虚偽の答弁をした医師等に、10万円以下の過料を科します。過料は行政上の秩序罰で刑罰ではないため前科はつかず、医師法4条の欠格事由にも当たりません。ただし命令に従わなかった事実は、個別指導から監査、保険医療機関の指定取消しへ進む判断材料として残ります。
厚生労働省から一通の文書が届く。「貴殿が行った診療について、診療録及び帳簿書類を提示されたい」。健康保険法60条1項に基づく提示命令である。正当な理由なくこれを無視すると215条が動き出し、10万円以下の過料が科される。ここで多くの医療従事者が読み違える。過料は罰金ではない。刑罰ではないから前科はつかず、医師法4条の欠格事由(罰金以上の刑)にも当たらない。手続も刑事訴訟ではなく、非訟事件手続法に基づいて地方裁判所が決定で科す。ただし安心するのは早い。命令に従わなかったという一行は、保険医療機関の指定取消しや保険医登録取消しを判断する別ルートの材料として残る。あなたが本当に恐れるべきは10万円ではなく、その先にある行政処分(役所があなたに直接下す具体的な決定)のほうだ。条文が「これを使用する者」と書いている以上、名宛人は書いた本人だけでなく、雇用している医療法人や開設者にも及ぶ。
健康保険法215条は、保険給付の適正化を目的とする行政調査の実効性を担保する秩序罰規定である。医師、歯科医師、薬剤師、手当を行った者及びこれらを使用する者が、同法60条1項に基づく報告・物件提示命令への不従、質問への不答弁又は虚偽答弁を行った場合に、10万円以下の過料を科す。過料は刑罰ではなく、非訟事件手続法により地方裁判所が決定で科す。
10万円以下の過料です。上限額であり、実際の額は事案に応じて地方裁判所が決定で定めます。刑罰である罰金とは異なり、前科としては記録されません。
健康保険法60条1項の提示命令に正当な理由なく従わなければ215条の過料の対象となり、同時に監査への移行や保険医療機関の指定取消しを検討する材料として記録に残ります。
災害や第三者による滅失など、提示が客観的に不可能な事情が典型です。システム移行中などの事情は、期限内に理由と代替提出方法を書面で示してはじめて評価されます。
刑事裁判ではなく、非訟事件手続法119条以下により地方裁判所が決定で科します。検察官の起訴も、刑事公判も経ません。
医師法24条により診療録は5年間の保存義務があります。保険医療機関及び保険医療養担当規則では帳簿書類は3年、診療録は5年とされ、提示命令の前提となります。
終わりません。過料は不提示という行為への秩序罰にすぎず、指導・監査・指定取消しは別ルートで進みます。金銭を払っても記録は消えません。
本条は「これを使用する者」も名宛人に含めます。作成した医師が退職していても、使用者である医療法人や開設者が提示命令の名宛人となり得ます。
罰金は刑罰で前科が残り刑事手続で科されますが、過料は行政上の秩序罰で前科はつかず、地方裁判所が非訟事件手続で決定します。免許の欠格事由にも当たりません。
つきません。215条の過料は行政上の秩序罰であって刑罰ではなく、非訟事件手続法119条以下により地方裁判所が決定で科します。医師法4条の欠格事由である「罰金以上の刑」にも当たりません。業界裏話ヒント:行政側が本条の過料を裁判所に申し立てるより先に、個別指導から監査という別ルートで動くのが通例です。つまり本当の勝敗は「過料で済んだか」ではなく「監査に進まなかったか」で決まる。
断る理由にはなりません。法令に基づく提供は個人情報の保護に関する法律27条1項1号の例外に当たり、本人同意なしに提示できます。刑法134条の秘密漏示罪も、法令に基づく以上「正当な理由」があるため成立しません。業界裏話ヒント:ただし命令の範囲を超える資料まで出す義務はない。対象患者・対象期間を条項単位で特定して確認し、範囲外は分離して提出する。過剰提出が、無関係な患者からの損害賠償請求の火種になる。
本条は正当な理由のない不答弁も対象にしています。刑事手続の黙秘権(憲法38条1項)は、刑事責任の追及を目的としない行政調査には直接及ばないとするのが判例の一般的な立場ですが、答弁がそのまま刑事責任追及の資料に直結する場面では自己負罪拒否特権が及ぶ余地があり、実務上、解釈が分かれています。業界裏話ヒント:現場では「拒否」ではなく「確認して後日書面で回答する」が最も安全。即答して記録と食い違えば、虚偽答弁のリスクを自分で作ることになる。
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 条文の機能 | 215条:命令違反・不答弁・虚偽答弁への制裁(10万円以下の過料) | — |
| 発動の要件 | 正当な理由のない不従・不答弁・虚偽答弁があること | — |
| 手続と機関 | 非訟事件手続法により地方裁判所が決定で科す | — |
| 実務上の重さ | 金額は軽いが、不従の記録が指定取消しの材料として累積 | — |
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