労働基準法 第102条
クイックジャンプ
労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 労働基準法第102条は、日本の労働基準法に含まれる条文です。
- 労働基準法第102条の条文原文は「労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。」で始まります。
- 労働基準法第102条は第十一章に置かれています。
- 労働基準法の公布日は昭和22年4月7日です。
- 労働基準法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 労働基準法第102条の前の条は労働基準法第101条です。
- 労働基準法第102条の次の条は労働基準法第103条です。
- 労働基準法第102条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第102条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - 本サイト収録
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第102条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/322AC0000000049/102
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点労働基準法102条は、労働基準監督官が同法違反の罪について司法警察官の職務を行うと定める。監督官は令状に基づく捜索・差押えや逮捕ができる特別司法警察職員である。
Q · 労働基準監督官って、ただの役所の指導員じゃないんですか?
違います。労基法違反を捜査できる司法警察官です
労働基準法102条により、労働基準監督官は同法違反の罪について刑事訴訟法上の司法警察官の職務を行います。つまり行政指導や是正勧告だけでなく、裁判官の令状に基づいて会社のタイムカードや賃金台帳を差し押さえ、関係者を逮捕し、供述調書を作成できます。一般の警察官と違うのは、その権限が労働関係法令違反に限定されている点だけです。監督署からの呼び出しを「行政指導」と侮ると、刑事手続の入口に立っていることに気づけません。
解説
労働基準監督署から一通の通知が届く。多くの経営者はこれを「役所の指導」と受け止め、せいぜい是正勧告の紙が来る程度に考える。そこに落とし穴がある。労働基準法102条は、労働基準監督官に「刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務」を与えている。つまり彼らは行政の指導員ではなく、労基法違反という犯罪を捜査する権限を持つ役人だ。裁判官に逮捕状や捜索差押許可状を請求し、あなたの会社のタイムカードや賃金台帳を差し押さえ、あなたの発言を供述調書にできる。一般の警察と違うのは、その権限が労働関係の法令違反に限定されている点だけである。残業代の未払いを「あとで払えばいい」と放置していたものが、ある日、刑事事件の入口に変わる。監督官の聞き取りに応じるとき、あなたは行政手続の中ではなく、刑事手続の中にいる。この一行を知っているかどうかが、最初の一手を分ける。
法的な位置づけ
労働基準法102条は、労働基準監督官の司法警察権を定める規定である。監督官は同法違反の罪について刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行い、その権限は労働関係法令違反の犯罪捜査に限定される。一般の警察官と異なり職務範囲が特定分野に限られる特別司法警察職員にあたり、令状に基づく逮捕・捜索・差押えを行う。
手順
- 1.連絡の性質を最初に確認する 労基署から連絡が来たら、まずそれが労基法101条に基づく行政調査(臨検・尋問)なのか、102条の司法警察官としての捜査なのかを確認する。前者は行政手続、後者は刑事手続で黙秘権が働く。性質を取り違えると不用意な発言が証拠になる
- 2.証拠を保全し、改ざんは絶対にしない タイムカード・賃金台帳・出勤記録を現状のまま保全する。臨検前にこれらを改ざん・破棄すると、元の違反に証拠隠滅という新たな犯罪を上塗りすることになる。最悪手なので絶対に行わない
- 3.社労士と弁護士の役割を分けて相談する 労務管理の是正は顧問社労士に、刑事手続への対応は刑事事件に対応できる弁護士に相談する。聞き取りが捜査である可能性があるなら、応じる前に弁護士へ一報を入れるだけで初動が大きく変わる
- 4.是正できる違反は速やかに是正し記録に残す 未払い賃金の支払いや労働時間管理の改善など、是正できる違反は速やかに実行し、是正報告と再発防止策を書面で残す。これは起訴・量刑の判断で情状として有利に働く
よくある質問 AI による整理
Q1労働基準監督官とは何をする人ですか?
労働条件の監督と労基法違反の取締りを行う厚生労働省の職員です。労基法102条により、違反の罪については司法警察官として捜査・逮捕・送検まで担う特別司法警察職員でもあります。
Q2労基署の立ち入り(臨検)はどんな流れですか?
監督官が事業場に臨検し、帳簿・タイムカード・賃金台帳の提出を求め、関係者から聞き取りをします。是正勧告で終わる場合もあれば、悪質なら102条に基づく捜査に移行し送検されることもあります。
Q3残業代の未払いで逮捕されることはありますか?
あります。悪質・常習・隠蔽を伴う未払いは犯罪として立件され、監督官が司法警察官として捜査します。実際の逮捕は多くありませんが、送検され社長個人が被疑者になる例はあります。
Q4是正勧告に従わないとどうなりますか?
是正勧告自体に直接の罰則はありませんが、無視して違反を続けると悪質と判断され、監督官が刑事事件として捜査・送検する根拠になります。改善の記録を残すことが情状面でも重要です。
Q5送検とは何ですか?
監督官が捜査の結果、犯罪の嫌疑が固まった事件を検察官に引き継ぐことです。労基署の送検は厚生労働省が公表することもあり、企業名・代表者名が公になる場合があります。
Q6労基署に申告する方法は?
労基法104条に基づき、勤務先を管轄する労働基準監督署に対し、書面・来署・電話などで違反事実を申告できます。タイムカードや給与明細など証拠を揃えて相談するのが実務上有効です。
Q7特別司法警察職員とは何ですか?
特定分野に限って司法警察官の職務を行う職員です。労働基準監督官のほか、海上保安官や麻薬取締官などが該当し、その分野では一般の警察と同じく逮捕・捜索・差押えができます。
Q8監督官の臨検を拒否できますか?
正当な理由なく臨検を拒否・妨害したり、虚偽の帳簿を提出すると、労基法上の罰則の対象になり得ます。協力義務がある一方、刑事捜査に移行した場面では黙秘権が働く点に注意が必要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1労働基準監督官って、結局のところ警察と何が違うんですか?
権限の範囲が違います。一般の警察官(刑事訴訟法189条)はあらゆる犯罪を捜査できますが、労働基準監督官は労基法違反という特定分野に限って司法警察官の職務を行う「特別司法警察職員」です(労基法102条、刑事訴訟法190条)。逆に言えば、その分野では逮捕・捜索・差押えまで一般の警察と同じことができます。実務のポイント:実際に逮捕まで至る件数は多くありませんが、悪質・常習・死亡災害がからむケースでは送検され、社長個人が被疑者として実名報道されることがある。「行政指導の範囲」と侮ると、ある一線を越えた瞬間に刑事の世界に入る
Q2監督官に聞かれたこと、正直に全部しゃべらないとまずいですか?
それが司法警察官としての捜査(102条)であれば、刑事手続なので黙秘権が働きます。行政調査としての尋問(101条)には答える義務がありますが、自己が刑事訴追を受けるおそれのある事項についてはなお慎重であるべきです。実務のポイント:監督官の聞き取りは「任意でちょっとお話を」という柔らかい入り方をすることが多い。だが応じた発言は供述調書になり、後で「故意だった」「知っていた」の証拠に使われる。安易に弁解を並べる前に、弁護士に一報を入れるだけで初動がまるで変わる
Q3会社を労基署に申告したら、誰が言ったか会社にバレますか?
監督官には守秘の運用があり、申告者を特定する情報は原則として会社に伝えません。さらに労基法104条2項は、申告を理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁止しています。実務のポイント:とはいえ、申告内容が具体的すぎると「あの件を知っているのは数人だけ」と事実上特定されることがある。在職中に申告するなら、申告のタイミングと、不利益取扱いを受けた場合の証拠(評価の急変、配置転換の通知など)をあらかじめ残しておくのが実務上の鉄則
間違えやすい点 AI による整理
- 「労基署は是正勧告や行政指導しかできない」と思われているが、労働基準監督官は司法警察官として、裁判官の令状に基づき逮捕・捜索・差押えができる。行政指導は入口の一つにすぎず、その奥には刑事捜査という別の回路がつながっている
- 「監督官が来ても、その場で是正すればいい」ことは知っていても、その聞き取りが刑事手続であることの重みを分かっていない人が多い。任意の聞き取りでも、応じた発言は供述調書として記録され、後に自分に不利な証拠として使われうる。行政の面談感覚で饒舌に話すことが、最も危ない
- 労働者側にもよくある誤解がある。あなたから見れば労基署への相談は「困りごとの相談」だが、法律から見ればそれは「犯罪捜査の端緒となる申告」である。この見え方の差を知っていると、相談前にタイムカードや給与明細の証拠を確保しておくべき理由が腑に落ちる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 権限の性質 | 労基法102条:司法警察官の職務(刑事手続) | 労基法101条:臨検・尋問(行政調査) 労基法104条:労働者の申告と不利益取扱い禁止 |
| 適用される手続 | 刑事訴訟法(令状主義・黙秘権・適正手続) | 行政手続、答弁義務あり 行政上の申告手続 |
| 主体 | 特別司法警察職員としての監督官 | 行政官としての監督官 労働者(申告者) |
| 想定される帰結 | 逮捕・捜索・差押え・送検 | 是正勧告・指導 監督官の調査開始・不利益取扱いの禁止 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は労働検査機構と検査員を法定するが、検査員は原則として司法警察の身分を持たず、刑事捜査は別途検察・警察が担う点で日本と異なる
韓国も근로감독관に司法警察権を付与し、特別司法警察として労基法違反を捜査する。日本に近い制度設計
ドイツの監督官庁は広範な調査・是正命令権を持つが、犯罪捜査は原則として一般の警察・検察が担当し、行政と刑事の主体が分離する傾向が強い
米国の労働省(DOL)監督官は調査・是正・民事制裁を担い、刑事訴追は司法省への付託を通じて行う。監督官自身が逮捕権を持つわけではない点が日本と対照的
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 未払い残業代を半年放置していた会社に、ある朝、労働基準監督官が訪れる。任意の聞き取りだと思って気軽に応じたら、それは司法警察官による捜査の一環だった。あなたの「忙しくて手が回らなくて」という一言が供述調書に残り、後の刑事事件で故意性を裏付ける証拠になる。社長個人が被疑者になる構図を、その場で理解できているかどうか
- もし、退職した元従業員があなたの会社を労基署に申告したら、何が起きる? それは行政指導の入口であると同時に、刑事捜査の端緒(きっかけ)にもなりうる。労働基準監督官は労基法違反を「犯罪」として捜査する権限を持つため、悪質と判断されれば是正勧告では終わらない
- サービス残業を強いられ、会社が是正に応じない。あなたは労基署に申告できる。動くのは指導員ではなく、捜査権を持つ監督官だ
- 労働基準監督官の臨検が入り、帳簿の提出を求められた。あと数日のうちに、タイムカードを改ざんすれば、それは元の違反に証拠隠滅という新たな犯罪を上塗りすることになる。社労士と弁護士のどちらに、いつ相談するかを今夜中に決めなければならない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 労働者として申告する場合、まずタイムカード・給与明細・業務指示の記録・LINE やメールのやり取りを手元にコピーで確保する。会社のシステム上の記録は退職後に消される2. 労基署に申告(104条)するか、悪質なら刑事告発も視野に入れて相談3. 申告を理由とした解雇・降格などの不利益取扱いは104条2項で禁止されている、不利益を受けたら証拠化して別途争う4. 未払い賃金の回収は刑事手続とは別軌道、民事の請求(労基法115条の賃金請求権の時効、最新の改正状況をご確認ください)も並行して進める
訴えられた側:1. 監督官の聞き取りに応じる前に、それが行政調査か司法警察官の捜査かを確認、後者なら黙秘権が働く2. 顧問社労士だけでなく、刑事事件に対応できる弁護士に早期に相談する3. 帳簿・タイムカードの改ざんや破棄は絶対にしない、証拠隠滅は新たな犯罪を上塗りする最悪手4. 是正できる違反は速やかに是正し、未払い分の支払いと再発防止策を記録に残す、起訴・量刑の判断で情状として働く
時効(請求できる期限):労基法違反の罪の公訴時効は、各違反条文の法定刑によって異なる(刑事訴訟法250条)。罰金刑中心の軽い違反(119条・120条等)は公訴時効3年、強制労働など重い違反(117条)は刑が重く時効も長い。起算点は犯罪行為が終了した時、未払いの継続中は時効が進行しない場合がある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:労基法102条の監督官は、刑事訴訟法190条の特別司法警察職員にあたり、労働関係法令違反の捜査に限り一般の司法警察職員と同等の権限を持つ。臨検等の行政調査(101条)と司法警察活動(102条)は手続的性格を異にし、後者には令状主義・黙秘権など刑事手続上の保障が及ぶと解される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和22年(1947年) 新設:労働基準法制定にあたり、労働基準監督官に司法警察官の職務を付与する規定として設けられた。労働行政の実効性を刑事的強制力で裏打ちする制度的基礎。
- 労働基準法 第101条監督官の臨検・尋問等の行政調査権限
- 労働基準法 第97条労働基準監督機関の組織・監督官の設置
- 労働基準法 第104条監督機関に対する申告と不利益取扱いの禁止
- 労働基準法 第105条監督官の守秘義務
- 労働基準法 第117条強制労働等に対する罰則、捜査対象となる重い犯罪類型
- 刑事訴訟法 第190条特別司法警察職員を法律で定める根拠規定
- 刑事訴訟法 第189条司法警察職員の職務内容の準拠規定
- 労働安全衛生法 第92条労安衛法違反についても監督官が司法警察員の職務を行う並行規定
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める