労働基準法 第85条(審査及び仲裁)
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- 業務上の負傷、疾病又は死亡の認定、療養の方法、補償金額の決定その他補償の実施に関して異議のある者は、行政官庁に対して、審査又は事件の仲裁を申し立てることができる。
- 2.行政官庁は、必要があると認める場合においては、職権で審査又は事件の仲裁をすることができる。
- 3.第一項の規定により審査若しくは仲裁の申立てがあつた事件又は前項の規定により行政官庁が審査若しくは仲裁を開始した事件について民事訴訟が提起されたときは、行政官庁は、当該事件については、審査又は仲裁をしない。
- 4.行政官庁は、審査又は仲裁のために必要であると認める場合においては、医師に診断又は検案をさせることができる。
- 5.第一項の規定による審査又は仲裁の申立て及び第二項の規定による審査又は仲裁の開始は、時効の完成猶予及び更新に関しては、これを裁判上の請求とみなす。
この条文の基本情報
審査及び仲裁とは何ですか?
定義審査及び仲裁とは、労働基準法第85条に定められた規定で、「業務上の負傷、疾病又は死亡の認定、療養の方法、補償金額の決定その他補償の実施に関して異議のある者は、行政官庁に対して、審査又は事件の仲裁を申し立てることができる…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 労働基準法第85条(審査及び仲裁)は、日本の労働基準法に含まれる条文です。
- 労働基準法第85条の条文原文は「業務上の負傷、疾病又は死亡の認定、療養の方法、補償金額の決定その他補償の実施に関して異議のある者は、行政官庁に対して、審査又は事件の仲裁を申し立てることができる…」で始まります。
- 労働基準法第85条は第八章に置かれています。
- 労働基準法の公布日は昭和22年4月7日です。
- 労働基準法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 労働基準法第85条の前の条は労働基準法第84条です。
- 労働基準法第85条の次の条は労働基準法第86条です。
- 労働基準法第85条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第85条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - 本サイト収録
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第85条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/322AC0000000049/85
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点労働基準法85条は、災害補償の認定や金額に異議のある者が行政官庁へ審査・仲裁を申し立てられると定める。申立ては時効の完成猶予・更新につき裁判上の請求とみなされる。
Q · 会社の労災補償の提示に納得できないとき、裁判するしかないの?
いいえ、裁判の前に労基署へ審査や仲裁を申し立てられます
労働基準法85条により、業務上の負傷・疾病・死亡の認定や補償金額の決定その他補償の実施に異議のある者は、行政官庁(実務では所轄の労働基準監督署長)に対して審査又は事件の仲裁を申し立てることができます。行政官庁は必要なら医師に診断・検案をさせることもできます(4項)。さらに第5項により、この申立ては時効の完成猶予及び更新について裁判上の請求とみなされ、補償請求権の時効(原則2年)の進行を止められます。ただし同じ事件で民事訴訟が提起されると、行政官庁は審査・仲裁をしません(3項)。
解説
工場のプレス機に指を挟まれた、配送中に追突されて腰を痛めた、過労で倒れて入院した。業務中の怪我や病気をめぐって、会社が「それは業務上のものではない」「補償額はこれで十分だ」と言ってきたとき、あなたが取れる道は裁判だけではない。労働基準法85条は、補償の認定や金額に異議がある者は、行政官庁(実務では所轄の労働基準監督署長)に対して審査または仲裁を申し立てられると定める。裁判より速く、費用も抑えられる行政ルートだ。そして見落とされがちな切り札が第5項にある。この申立てをした瞬間、それは裁判上の請求とみなされ、補償請求権の時効(原則2年)の進行が止まる。会社と交渉しているうちに時効が来てしまう、その悪夢を一通の申立書が止める。多くの被災労働者は、この制度の存在すら知らないまま、会社の言い値に印鑑を押している。
法的な位置づけ
労働基準法85条は災害補償に関する不服申立て手続を定める規定であり、業務上の負傷・疾病・死亡の認定や補償金額の決定その他補償の実施に異議のある者が、行政官庁に対して審査又は事件の仲裁を申し立てられる旨を規定する。第5項は、この申立てを時効の完成猶予及び更新について裁判上の請求とみなす。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.受傷・発症の証拠を確保する 診断書、通院記録、業務との関連を示すメモ・シフト表・同僚の証言を集める。過労なら勤怠記録を確保し、業務起因性を裏づける資料を整える
- 2.所轄労基署へ労災保険給付を請求する 並行して所轄の労働基準監督署へ労災保険給付を請求する。業務上か否かの一次判断がここで出て、これが会社との交渉でも事実上の基準になる
- 3.補償の認定・金額に審査又は仲裁を申し立てる 会社の補償認定や金額に異議があれば、85条1項により行政官庁へ審査又は事件の仲裁を申し立てる。必要なら4項で医師の診断・検案を求める
- 4.時効が近いなら署名前に申立てで時効を止める 災害発生から2年の時効が迫る場合、和解書への署名を急がず、まず申立てを行う。85条5項により裁判上の請求とみなされ、時効の進行が止まる
よくある質問 AI による整理
Q1労働基準法85条とは何ですか?
災害補償の認定や金額に異議のある者が、行政官庁(所轄の労働基準監督署長)へ審査又は事件の仲裁を申し立てられると定めた規定です。申立ては時効の完成猶予・更新につき裁判上の請求とみなされます。
Q2労災の審査・仲裁の申立てはどこにするのですか?
行政官庁、実務では災害発生地を管轄する所轄の労働基準監督署長に対して申し立てます。労災保険給付の請求と並行して進めるのが一般的です。
Q3労災補償の時効は何年ですか?
災害補償請求権の時効は原則2年です(労働基準法115条、最新の改正状況は要確認)。85条5項の審査・仲裁の申立てで完成猶予・更新の効果が生じます。
Q4労災の審査申立てに費用はかかりますか?
行政官庁への審査・仲裁は訴訟より軽い簡易手続として設計され、訴訟費用や高額な弁護士費用を要さず利用できる点が利点です。
Q5民事訴訟を起こすと労基署の審査は受けられないのですか?
同じ事件で民事訴訟が提起されると、行政官庁はその事件の審査・仲裁をしません(85条3項)。まず行政で事実を固め、不服なら訴訟という順番が定石です。
Q6精神疾患(うつ病)も労災補償の対象になりますか?
過労によるうつ病・適応障害など精神疾患も「業務上の疾病」として補償対象になりえます。会社の一方的な「業務外」認定には審査申立てで争えます。
Q7労災の審査・仲裁の結果に不服があるときは?
審査・仲裁の結果に不服がある場合は、最終的に裁判所での民事訴訟で権利義務を確定できます。行政手続が司法の道を奪うものではありません。
Q8行政官庁は職権で労災の審査を始められますか?
できます。85条2項により、行政官庁は必要があると認める場合、職権で審査又は事件の仲裁を開始できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1労災保険が下りたのに、会社にも別で何か請求できるんですか?
できる場合があります。労災保険給付がある範囲では使用者の災害補償義務は免れます(労基法84条)が、労災保険は治療費や休業補償をカバーする一方、慰謝料は含みません。精神的損害や保険の上乗せ分は安全配慮義務違反として会社に民事請求(民法415条)できます。実務のポイント:弁護士は「労災保険=終わり」とは考えず、保険給付で固めた業務起因性をそのまま使って会社への慰謝料請求に進みます。保険の決定通知は、次の戦いの強力な証拠になる
Q2会社が『その怪我は業務外だ』と言い張って補償を拒んでます。どうすれば?
二つ動かせます。一つは所轄労基署への労災保険給付の請求で、監督署が業務起因性を判断します。もう一つが85条の審査・仲裁の申立てで、第4項により医師に診断・検案をさせることもできます。実務のポイント:実務では労災保険の認定が先に出ると、その判断が会社との交渉でも事実上の物差しになります。会社の「業務外」という主張は、監督署が業務上と認定した瞬間に説得力を失う。まず行政の判断を取りにいくのが定石
Q3交渉がもつれて、もう二年経ちそうです。時効でもう無理ですか?
まだ間に合う可能性があります。85条5項により、審査または仲裁の申立てをすれば、それは裁判上の請求とみなされ、補償請求権の時効の進行が止まります(完成猶予・更新)。実務のポイント:内容証明での催告(民法150条)が稼げる猶予は六か月だけですが、85条の申立ては「裁判上の請求」級の効果を持つ。時効が迫ったら催告で粘るより、この申立てを打つほうが格段に強い。多くの人がこの差を知らずに権利を失っている
間違えやすい点 AI による整理
- 労災の手続そのものは聞いたことがある人でも、85条の審査・仲裁の申立てが「時効を止める効果」まで持つことを知らない。ここを知らないと、交渉が長引いた末に補償請求権が時効で消え、被害は事実なのに一円も取れないという最悪の結末を招く。深刻さの桁が違う
- 「労災保険が下りたのだから、会社に請求するものはもう何もない」という前提自体が誤っている。労災保険は治療費や休業補償をカバーするが、慰謝料は含まない。精神的損害や保険の上乗せ分は、安全配慮義務違反として会社に別途請求できる。問いの立て方が間違っていると、取れるはずの賠償を取りこぼす
- あなたから見れば「役所に審査を申し立てる」のは大ごとで、訴訟と同じくらい重い決断に感じる。だが制度から見れば、審査・仲裁は訴訟より軽い簡易手続として設計されている。重さの感覚が逆。この落差のせいで、本来なら気軽に使えるはずの救済ルートを、多くの人が自ら遠ざけている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 85条:補償をめぐる不服の審査・仲裁手続 | 75・76条:療養補償・休業補償の実体的な内容 86条:審査・仲裁の結果への不服と訴訟 |
| 時効との関係 | 5項で申立てを裁判上の請求とみなし時効の完成猶予・更新 | 補償請求権そのものを定める(時効は115条で2年) 結果に不服な場合の次の手段を定める |
| 労災保険との関係 | 保険でカバーされない部分の争いで実益 | 84条で労災保険給付がある範囲は使用者の補償義務を免責 保険・補償の最終判断は司法へ |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も使用者の職災補償義務を法定し、労災保険化が進む。補償争議は労資争議処理や行政救済で扱われる点で日本に近い
韓国は労災を保険制度に統合し、不服は심사청구・재심사청구という行政不服手続で争う構造
ドイツは労災を社会保険(災害保険)でカバーし、不服はWiderspruch(異議申立て)と社会裁判所での訴訟で争う
米国は州ごとの労災補償法で行政委員会による審査が中心。不法行為訴訟は原則排除され、補償手続が専属的救済となる州が多い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 倉庫でフォークリフトに足を轢かれ三か月の入院。会社は「もう十分払った」と一括の示談書を出してきた。あなたが署名する前に労基署へ審査を申し立てれば、補償額の妥当性を行政が判定し、必要なら第4項で医師に診断させることもできる。会社の言い値が唯一の答えではなくなる
- もし、過労でうつ病になり休職したのに、会社が「個人的な体調不良で業務とは無関係」と補償を拒んだとしたら? 精神疾患も「業務上の疾病」として補償対象になりうる。身体の怪我だけが労災ではない。会社の一方的な「業務外」認定に、あなたは異議を申し立てて事実認定の土俵を作れる
- 示談交渉が一年以上もつれ、気づけば災害発生から二年の時効が目前。あと数十日。ここで第5項が効く。審査または仲裁の申立てをすれば、それは裁判上の請求とみなされ、時効の進行が止まる。交渉のテーブルを維持したまま、請求権だけ守れる
- 経営者のあなたが、退職した元従業員から「在職中の腰痛は業務上だ」と補償を求められた。労災保険給付がある範囲では使用者の補償義務は免れる(労基法84条)が、保険でカバーされない部分や安全配慮義務違反の損害賠償は別問題。審査の場で医学的因果関係をどう争うかが、その後の民事訴訟の布石になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受傷・発症の時点から証拠を確保:診断書、通院記録、業務との関連を示すメモ・シフト表・同僚の証言、過労なら勤怠記録2. 並行して所轄の労働基準監督署へ労災保険給付を請求(業務上か否かの一次判断がここで出る、これが事実上の基準になる) 3. 会社の補償認定・金額に異議があれば、85条の審査または仲裁を申し立てる、必要なら第4項で医師の診断を求める4. 時効が近いなら、署名や和解を急がず、まず申立てで時効を止めてから条件を詰める
訴えられた側:1. 労災保険給付がある範囲では使用者の補償義務を免れる(労基法84条)ことをまず確認、保険でカバーされる事案かを切り分ける2. 業務起因性を争うなら、医学的因果関係の資料を準備、第4項の医師診断・検案に対応3. ただし安全配慮義務違反による民事損害賠償(民法415条)は災害補償とは別軌道、慰謝料を含めて請求されうると認識する4. 審査・仲裁での認定が後の民事訴訟の前提になるため、早い段階で労務に強い弁護士・社会保険労務士と方針を固める
時効(請求できる期限):災害補償請求権の時効は原則2年(労働基準法115条、最新の改正状況をご確認ください)。起算点は補償の種類ごとに異なる(療養補償は費用支出ごと、休業補償は各支払日、障害補償は傷病治癒時、遺族補償は死亡時)。第5項により、審査・仲裁の申立てまたは行政官庁による開始は裁判上の請求とみなされ、時効の完成猶予および更新の効果が生じる。なお安全配慮義務違反の損害賠償は別の時効(人の生命・身体の侵害は知った時から5年、不法行為時から20年)
学説
通説:85条の審査・仲裁は訴訟より軽い簡易・迅速な被災者救済手続として設計されているとするのが一般的理解。第3項は行政と司法の判断の並走・矛盾を避け、最終的な権利義務の確定を裁判所に委ねる趣旨と解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成29年(2017年)民法改正連動、令和2年(2020年4月1日)施行 民法債権法改正に伴い、第5項の文言を「時効の中断」から「時効の完成猶予及び更新」へと改めた。審査・仲裁の申立てを裁判上の請求とみなす効果の内容を、新しい時効制度の枠組みに合わせて整理した
改正の年表
- 1.昭和22年(1947年) 新設:労働基準法制定により災害補償の不服申立て手続を整備。被災労働者が行政官庁へ審査・仲裁を申し立てられる救済ルートを設けた。
- 2.令和2年(2020年4月1日) 改正:民法債権法改正に伴い、第5項の文言を『時効の中断』から『時効の完成猶予及び更新』へ改め、申立てを裁判上の請求とみなす効果を新しい時効制度の枠組みに整理した。
- 労働基準法 第75条療養補償、審査・仲裁の対象となる補償の一つ
- 労働基準法 第76条休業補償、補償金額決定の異議の典型場面
- 労働基準法 第84条労災保険給付による使用者の補償義務の免責
- 労働基準法 第86条審査・仲裁の結果への不服申立てと訴訟提起
- 労働基準法 第115条災害補償請求権の消滅時効(第5項が止める対象)
- 労働者災害補償保険法 第38条業務災害補償を保険化した特別制度、不服は審査請求による(現行の条番号を要確認)
- 民法 第147条裁判上の請求による時効の完成猶予・更新、第5項のみなしの効果先
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